フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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第74の唄 終戦

「竜が空を駆けてフェイスが次々と……すごい」

「まるで奇跡だ」

「なんで竜達が急に?」

「さぁ、何故だろうな」

「でも、これでフェイスが全部壊れたわ」

「私たちも向かいましょうか」

 

 

すべてのフェイスが竜たちの行動によって破壊され、冥府の門(タルタロス)の計画は頓挫した。ENDの復活や魔力の欠乏は止められ、魔法界の平穏は無事守られた。竜たちの様子が気になり、駆けていくとナツの父親である竜のイグニールがアクノロギアの左腕と引き換えに受けた致命傷がもとで、瀕死となっていた。

 

「ナツ!」

「シリル!頼む、イグニールを!」

「この傷……」

「待て、女神よ。もう良い」

「しかし!」

「分かっているだろう?もうこの傷では無理だと」

「……ごめんなさい。せめて痛みが和らぐようにするわ」

 

 

イグニールの傷は深く、もはや治らないところに来ている。せめて痛みが引くようにすることしかできないことに引け目を感じている。徐々に生命力が下がってゆき、息を引き取った。その近くでは竜と滅竜魔道士が久しぶりの対面を果たした。

 

 

「ウェンディ、フェイスの破壊、よく頑張ったわね」

「グランディーネ……」

「相変わらず目つきが悪いのう、ガジル」

「久々に会って吐く台詞がそれかよ、メタリカーナ」

「俺とローグは確かに殺す所を見たんだぞ」

「人間の記憶を改竄する事は簡単だ」

「それに死んでいるのはあながち間違ってない」

 

 

竜達はアクノロギアに敗れ魂を抜かれているのだ。滅竜魔道士の竜化を防ぐ為、アクノロギアを倒す為、そして延命の為に体内に居たのだ。一度体内を出てしまえば二度と戻れない。それ故にこの機会を待っていたのだ。アクノロギアはイグニールの力をもってしても倒せなかったが、せめて彼の名誉のために、これからその名誉を傷つける事のないように生きてほしい。それが竜達の望みの一つだ。

 

 

「さて、そろそろお別れね」

「竜達よ、貴方達の希望の子は神たる私が見守ろう。実り多き生を紡ぎ、そして竜化を防ぐために」

「ありがとう、生命神チキの愛した子よ」

「グランディーネ……もうお別れなの?」

「見送ろうぜ、胸張ってな」

「……はい」

 

 

争い、憎しみあった時代は過去のもの、今は手を取り合うこともできた。竜の時代に代わり、これからは人の時代である。人間と竜と神の盟約、大憲章(マグナ・カルタ)に則って、姿を消しても人間達を見守り続けると誓う。これからは亡き竜たちに代わって神であるカノンが責任をもって見守っていくと誓う。

 

 

「さらばだ、人間達と神よ」

「グランディーネ、バイバイ」

「ええ。愛しているわ、ウェンディ」

「目つきが悪いのう」

「最後の台詞がそれかよ、ったく」

 

 

竜たちは姿を消し、昇天した。そして戦いが収束してから一週間、皆は破壊されたギルドに集結していた。今回は修復を行わず、このままにすると伝えられた。そんな中、マスターに呼び出されたカノンは秘密裏にとあることを告げられる。隣の大陸のアルバレス帝国が侵攻してくる可能性があること、そのためにギルドを解散させるということだ。そしてマスター自身が大陸を渡り、交渉に行くとも告げられた。

 

 

「何故また?皆が黙って見過ごすとは思えないわ」

「全てはガキどもを守るためじゃ。分かって欲しいとは言わぬ」

「……止めはしないわ。でも無茶はしないで欲しいわね」

「そうじゃな。これも皆のためじゃ」

「これで暫くはお別れね。無事を祈っているわ」

「お主も無事で在らんことを願うばかりじゃ」

「また会える日を楽しみにしてるわね」

「うむ」

 

 

====

 

 

冥府の門(タルタロス)との闘いから半年か……」

「マカロフさんを始め、多くのメンバーが散り散りになってしまったわね、ユリア(アテナ)

「そうね、カノン」

 

 

ユリアはこの半年の間に冥府神の座を襲名、アテナと名乗っている。他のメンバーもそれぞれ別のギルドに入ったり、自分の仕事を立ち上げたりと各々自分の信じた道を突き進んでいる。今となっては各々の道を行っているため、行方をつかめているものは限られている。

 

 

「マカロフさんの行方は分かってるの?」

「隣の大陸に渡ったと聞いたわ。あっちの大陸に渡るのは危険だから、会いに行けてないのよ」

「なんでまた……もしや何か問題でも?」

「過去にもそこのアルバレス帝国が攻め込んで来るっていう情報があったらしいわ。それを阻止するために交渉に向かっていると告げられたわ。これは貴女だけに今は伝えておくわ」

 

 

他のメンバーには秘密にするようにと伝えられている以上、打ち明けたのはアテナのみである。この事は時期が来るまでは伏せようとなった。さて、せっかく神々が顔を合わせたので、大憲章(マグナ・カルタ)に従い竜の子供らに会いに行こうとなった。

 

 

「さて、竜の子達に会いに行きましょうか」

「約束してたもんね。私も行くわ」

「まずはスティングとローグね」

 

 

訪れたのは剣咬の虎(セイバー・トゥース)である。ミネルバも無事復帰し、スティングがマスターを務めており、和気藹々といった雰囲気である。そのスティングとローグに会いに来たのだ。

 

 

「あれ、カノンさんにアテナさんじゃねえか」

「私達に何か御用でしょうか?」

「竜達との約束、果たしに来たの。スティングとローグが元気にやってるかってね」

「それなら心配ない」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に流れていた仕事が回ってきており、ギルドは順調になっている。その一方でマスターの責というのはなかなか大変であり、皆を纏め上げたり、始末書に追われたりして責任も重大だ。だが、皆と一緒に過ごせることは何よりも楽しいものだ。

 

 

「そういえば、他の3人の滅竜魔道士の行方、掴んでるかしら?」

「ナツさんは分からねえな」

「ガジルは評議院の部隊長をしていると聞いたが」

「あのガジルが?カノン、次はそこよ」

「そうね。2人とも、無理はしないでね」

「ありがとよ。ナツさんに会ったら探してたこと、伝えとこうか?」

「大丈夫、そのうち見つかるだろうから」

 

 

次に訪れたのは新設された評議院である。聖十大魔道の下でイシュガル大陸の安定とアルバレス大陸との調整に追われている。まずは評議員のジュラとウォーロッドに挨拶がてら状況を尋ねる。

 

 

「久々ね、ジュラ。評議員になったこと、おめでとう。ウォーロッド殿も久しぶりです。息災で何よりです」

「おお、カノン殿にアテナ殿か」

「何か用でもあるのかのう?」

「ガジルがここで働いているって聞いて来たんだけど……」

「ガジル殿は今仕事中でのう。場所はここのはず」

「ありがとう。すぐ向かおう」

 

 

二人がやってきたのは森の深い場所である。闇ギルドの摘発を行っており、その為にまずは潜入捜査を行っている。レビィはその潜入のために今は隊から離れている。

 

 

「ガジル、リリー」

「なんだよ、誰かと思えば」

「久しいな、2人とも」

「評議院はどうなの?楽しめてる?」

「楽しいわけではないが、給料は悪くない。食い扶持としては困らない」

「メタリカーナ達に頼まれたとおり、貴方やナツ、ウェンディ、スティングにローグの様子を見守りに来たのよ」

「お前や木のじーさんのおかげで生活には困ってはいねえさ。しかし、余計なおせっかいってやつじゃねえか?」

「あらそう?これも仲間だったよしみってやつだと思うわ」

「けっ」

「まあまあガジル」

 

 

ガジルも現状では元気そうである。仕事には馴染めており、うまくやっていけているようだ。天職ではないかと冗談半分に言えているあたり、楽しめているようだ。仕事柄、ギルドに所属しているメンバーには詳しいので、ウェンディの行方を尋ねる。

 

 

「評議員として働いてるってことはギルドで働いてるメンバーも多少は把握してるってことでいいかしら?」

「ああ、まあな」

「ナツは旅に出ていて居ないから、ウェンディがどこに所属しているか知ってるかしら?」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)だ」

「即答なんて流石ね。じゃ、任務頑張ってね」

「またいつか会いましょ。案外すぐな気もするけど」

「ウェンディやシャルルによろしく伝えておいてくれ」

「ええ、確かに伝えておくわ」

 

 

最後に訪ねたのは蛇姫の鱗(ラミアスケイル)だ。ウェンディとシャルルの様子を見守りに来た。彼女たちが元気で過ごせているかが一番の懸念事項だっただけに、心配をよそにうまく溶け込めていたのには安堵した。一番変わったのはシャルルだ。人間になれる魔法を習得しており、その姿で出迎えてくれた。

 

 

「どう、新しいギルドは?」

「シェリアたちと一緒ですから、楽しくやれていますよ」

「それは良かったわね。貴女とシェリアは仲が良いものね」

「お二人がここを紹介してくださったからです」

「あらあら、そう言ってくれたら嬉しいわね」

「元気そうね。半年前のことで落ち込んでないか心配だったわ」

「どうにかなっています。新しい仲間に会えたのが大きかったと実感してます」

「それにしてもナツはどこに行ったのかしら?」

「どうなのでしょう?旅に出たままなのですか?」

「ええ。未だ行方は掴めぬままよ」

 

 

さて、大憲章(マグナ・カルタ)に従って滅竜魔導士の様子を見てきたが、後はナツだけとなった。大丈夫だと、そう信じるしかない状況に心配もつきない。ルーシィ曰く一年で戻るらしいが、果たして再会できるのか。半年後にまた会い、その時点でナツに再会出来ることを祈るしかない。

 

 

====

 

 

「久しぶりね、カノン」

「ええ、本当に。元気そうで何よりね」

「そういえば貴女への手紙が来てるよ」

「これは……ルーシィからね」

「あれ?貴女のところにも来てたんだ?」

「もしや貴女のところにも?」

「うん。ギルドを復活させるんだって」

「へぇ、やるじゃない」

 

 

この一年で居場所を把握できたメンバーに対して、集結を求める手紙を送っていたのだ。カノンとアテナの所にも来ており、これから共に行動したい旨が記されていた。アテナが神の座についたと聞き、どんな反応をするのか楽しみにしながら、出立をする。ナツが帰ってくるとしていた時期だが、何故このタイミングなのだろうかと疑問に感じながら歩いて行く。数日後、マグノリアに着き、ルーシィと一年ぶりの再会を果たした。

 

 

「ルーシィ」

「シリル!ユリア!」

「今は冥府神アテナよ」

「それってつまり……」

「神の座に就いたの」

「そうなんだ!すごいじゃない!」

 

 

久しぶりの再会に積もる話もあるが、ここに来た目的はギルドの再興を目指すことである。今回は再会を喜ぶだけというわけにはいかない。しかし、近くから感じる気配には出会うために探し出していた気配がある。ナツとハッピーだ。

 

 

「何でここに?」

「仕事中に偶然会ってね」

「一年後に戻るって約束してたからな。そうだ、旅の途中でギルダーツに会ったぞ」

「ギルダーツ、元気なのね。良かったわ」

「2人ともどうしてここに来たんだ?」

「ルーシィから手紙をもらったのよ」

「お?2人もかい?」

「カナ!」

「私も手紙をもらってやって来たのさ。ずっとギルドで育ったからね、正直無くなるなんて実感湧かないんだ」

「でも、皆来てくれてるかな?」

「何弱気になってるんだい。ほら、行くよ」

 

 

カナに連れられてやってきた広場には何人ものメンバーがそこに居た。ルーシィからの手紙を受け取り、それまでの生活を変えてでも駆けつけてくれたのだ。

 

 

「お、来たな」

「待ってたぜ!」

「評議会辞めてきちゃった」

「み、皆……」

「ほら、皆来てくれたでしょ?」

「おかえりなさい、ルーシィ」

「た、ただいま……」

「よし、ギルドはなくなったが旗はまだあるな。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の復活だ!」

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