「とりあえず第一陣は崩したわね」
「こんな形で他のギルドの方々を巻き込んでしまうなんて。我がギルドの戦いだと言うのに」
「遅かれ早かれこうなってただろうさ。綺麗事ばかりじゃやられちまう。力を借りる時は借りる、それで良いじゃねぇか」
「ラクサスの言う通り、ここは力を借りるべきだよ。他のギルドの力がどの道必要になるんだ。それに、雷神衆と一夜がやられてるしね」
「俺はフリード達をやった野郎を許さねぇ。仲間に手を出したんだからな」
「ラクサス、アテナ……」
他のギルドとともに総力戦で挑むこととなった今回の戦い。一つのギルドだけで片付けようとするのは無理があるため、大陸の有力なギルドの力を借りることにした。北に
「私達もいずれかへ向かうべきでは?他のギルドの力を借りる以上、我々も打って出るべきかと」
「そうですね。北はミラジェーン、エルフマン、リサーナにガジル、レビィ、リリー、そしてアテナ」
「やってやるか」
「神の力、存分に披露してあげる」
「南へはナツ、グレイ、ジュビア、ウェンディとシャルル、ラクサス、そしてカノン」
「そっちにはフリード達をやった奴がいるんだろうな」
「おそらくはね」
早速移動の準備を始めたが、ここである事に気づく。ナツがいないのだ。マップに記されたマーカーが正しければ、ゼレフのところに向かう一個のマーカーがあり、それがナツではないかと見込まれている。一人でゼレフの所に突っ込みに行ったのか分からないが、ゼレフの事はナツに任せようという事になった。エルザが代わりに来ることとなり、出発してから大きな変化がおこることなく近くまでそれぞれ動けた。南に向かったエルザ達はハルジオンの近くまで来ている。
「明日にはハルジオンに着く。今日はここでゆっくりしていこう」
「激戦が予想されるわ。何があっても解放せねば」
「そういえばラクサスは?」
「さっき飯を食いにいくとか言ってどこかに行ったわ」
「熊でも食べてそうな」
「美味いのか?」
「エルザさん、ヨダレが……」
「私が探してくるわ。グレイも来てくれるかしら?」
「分かった、行こう」
ラクサスは食事をしているわけではなく、近くの倒木に座り、心臓の動悸に苦しめられていた。去年
「言ってくれれば治療したのに」
「これを治すのは出来ねぇだろうさ。それに問題はない、偶に発作が出るだけだ」
「痛み止めくらいは処方出来たわよ」
「良いんだ。この痛みも背負っていかなきゃならねぇ」
「無理をするのは良くないわ」
「戦いが終わるまでは死んだってギルドを守ってみせる。それが俺なりの覚悟だ」
「シリル、どう説得しても動かねぇだろ。ラクサスの思うままにさせてやろうぜ」
「そう……友の命はなによりも重い。苦しい時は呼んで頂戴」
「シリル、ありがとよ」
「良いのよ、友でしょ」
「ははは、そうだな」
「皆が心配してる、戻ろうぜ」
ラクサスは発作が収まったため、ここはひとまず好きなようにさせることとなった。その頃北に向かっていたアテナ達も近くまで到着しており、接近する前に一休み取ろうという状態になった。アテナは眠ることができず、風にあたろうと少し散歩したら、ガジルも起きており、少し話をする。
「誰かと思えばガジルじゃん?寝ないの?」
「お前も寝てねぇじゃねぇか」
「なんでだろう、この戦いが私のギルドと共にする最後の戦いになる気がしてね。寝てる場合じゃない、全てを見聞きして、風や星々の声にまで耳を傾けなきゃって、そう思ったんだよね」
「おいおい、感傷に浸ったり風や星の声を聴くのは戦いが終わってからにすれば良いじゃねぇか」
「……そうかもね。私はね、神になった以上は人の生き死にを長きにわたり見つめなきゃならない」
「……」
「この戦争で以って大きな戦、無益な殺生を止めなきゃって、平和な世の中を作っていかなきゃって思っててね」
「それがお前の役目なら、シリルと共にやってきゃ良い」
「あはは、そうだね。私の側にはカノンや皆がいるもんね。一人で抱え込もうとしてたかも」
自分には仲間や友がいる、彼らに頼るときがあっても良いではないか。彼らとともに前に進む。そんな神がいたって不思議ではないし、実際に人と共生する神も実在している。そんな折にレビィが様子を見にやってきた。
「あれ?二人ともここに居たんだ」
「レビィも来たんだね」
「なんだか寝れなくて」
「なんだ、お前もか」
「何を話してたの?」
「神の仕事について、ちょっとね。レビィはどうしたの?なんか寝れない理由でも?」
「なんだか不安になっちゃって。敵は強大だから、このままギルドに戻れるのかなぁ、なんて」
「らしくないよ。元気なのが貴女らしさだよ」
「え?」
「私もさっきまでちょっと弱気になってたけど、元気にやっていかなきゃ!私達は前向きに生きていくべきながじゃないかな?」
「で、でも……うわっ!」
弱気になっていたレビィに喝を入れる様にガジルが鉄の棒で囲んでみせた。弱音を吐いた弱音罪で捕まえた以上、絶対にギルドの牢に入れてみせる。だから絶対に連れて帰ってみせるという強気な姿勢だが、これが効いたのか少し元気が出た。
「さ、皆の元に戻ろう。明日は闘うしね」
「そうだね。私にも出来ることを……」
====
「ヒーラーは何があっても先に倒さなきゃね」
「ちょっと……」
「てやぁ!」
「ウェンディ!」
「お待たせシェリア!」
「前線を押し上げるぞ、リオン!」
「一気に行きましょう!」
「グレイ、ジュビア!何故お前達がここに居るんだ!」
「他のギルドの厄介事に首を突っ込むとは、感謝する!」
「エルザ!」
翌日、早速ハルジオン港を解放する為に戦っていた
「アヒャヒャヒャ、大勢来たな」
「フリード達をやったのはお前か?」
「あ?誰それ?」
「俺の仲間だ」
「そして私の友よ!せいやっ!」
「ぬぉぅ!くっ、二人も来やがった」
機械仕掛けの体を持つ機械族のワールを相手にカノンとラクサスが挑む。錬金術を得意分野とするワールには大樹の壁や雷による攻撃を仕掛ける。弾丸数で仕掛けるワールに対してこちらは手数で仕掛け、二人による連携で攻撃をする。突然の落雷に周囲では驚く者もいたが、ラクサスの雷はマグノリアでは良く見る天気だ。晴れ、時々ラクサス。所により氷結、さらに気功の嵐と血の雨も降る。
「へぇ、やるじゃねぇか。どれどれ、弱点はっと……
「ラクサス、大丈夫?」
「今のところは。だが、いつ発作が出るか分からねぇのがよ……」
「お前、内臓が!よく立っていられるな」
ラクサスの内臓は魔障粒子によって痛んでおり、生きているのが不思議なくらいだ。気合でどうにかなっているようなものであり、立っているのがやっとであるはずだ。カノンの回復魔法でぎりぎりを維持しているが、いつ倒れてもおかしくないのだ。そんな弱り切った体を攻撃すべく攻め立ててくる。
「すげぇな、どうやって生きてんだよ」
「どうやって生きているのか?そんなもんどうでも良いな」
「援護するわラクサス。神器アウラの弓!」
「んご!?アヒャヒャ、やるねぇ。ほぉら、ミサイルならどうだ!」
「おぉっ!」
「はいや!」
「レールガン装備!発射!」
「まずっ!」
「もらったぁ!」
「この属性なら任せろ!」
「た、助かったわ」
「雷が効かないだと?俺と同じか。こうなったら変身するしかねぇな」
「変身?」
ワールは分析が完了し、魔障粒子に侵されているラクサスはギルドきっての実力者だろうと推測し、それにカノンもなかなかのやり手だと考えた。完全殲滅まで130秒といったところと予測している。アサルト状態に変形し、片付けにかかる。しかし、ここでラクサスが発作を起こし、倒れる直前の状態になってしまう。その隙を見逃さず、追撃を図る。カノンが肩を抱え、どうにか難を逃れる。
「すまねぇ、シリル……」
「(確かあいつは魔法陣、つまり魔障粒子をキャンセルできるはず……)ラクサス、あいつの相手を私が務めるから、術式の準備をお願いできる?出来たら雷を信号弾替わりに打ち上げて」
「何を考えてるか分からねぇが、任せてくれよ。この状態じゃそれくらいしか出来ねぇからな……」
「任せたわよ。貴方の相手は私がやるわ、気功式・シャイニングレーザー!」
「おっと、一人で俺に勝とうと?個別撃破すれば時間短縮も可能か」
「私にそう簡単に勝てるとは思わない事ね」
「このアサルトモード、殺すのに特化した状態だ。お前の力がどんな物であれ、かなう訳がない」
アサルトワールの放つ錬成弾や対物レーザーを躱しながら、ミサイルを発射したそばから撃ち落としていく。ラクサスが魔法陣を組み立てるまで時間を稼ぎつつ、攻撃して力を削っていく。
「分身からの……島津流・双龍正波拳!」
「くぁっ!」
「気功掌!」
「おっと……くそ、時間オーバーか。急ぐとするか」
「(落雷……用意は出来たみたいね)」
「逃すか!」
「逃げる?それは違うわね」
「術式!?」
「はぁ、はぁ、どうにか呼び込めたか」
「まずは弱ったお前を殺そうかと思ったが、術式を解除してからだ!」
術式の中に入り込んだため、それを解除するべく魔障粒子キャンセラーを発動する。しかし、それこそがカノンとラクサスの目的である。魔障粒子が消えたことで体内に蓄積されていたものも同時に消え失せたことで体調が良くなったのだ。敵ながら命の恩人となったワールを倒すのは忍びないが、フリード達を傷つけた以上、許すつもりはない。
「アヒャヒャヒャ、雷は効かない、効きませんぞ!?」
「おおっ!」
「なんだ、赤い雷!?」
「ただの雷じゃないわよ。これは血の属性を纏った特別な雷、神域にさえ轟く雷鳴」
「
「血の赤で染め上げた特殊な雷……流石ね」
====
「着いたよ。ここがセイバーとペガサスの闘ってる場所のはず」
「結局道中で会えなかったな」
「無事だと良いけど」
「敵も近いし、向かってきてるね」
「全員戦闘準備だ」
「待って、この感じ……まさか!」
「セイバーとペガサスが全滅!?」
「どうするの?」
「今から救出に向かおう。私とガジル、エルフマンで道を作るよ。他のメンバーで降ろしてあげて」
「そうね、やるしかないわ」
「まずは私が仕掛けるよ!月光の煌めきの刃は、敵を殲滅せし牙。月煌刃!」
「くそ、仲間を傷つけちまった。こんな目に遭わせちまった」
「お前達の悔しさは俺が背負ってやる」
「ちくしょう……すまねぇ」
「仲間は助け出した。ここは俺達がどうにかしよう」
「何これ?」
「雪が溶けて!」
「周りが花で!」
「向こうには化け物が3人も……」
「こっちには7人いるな」
「えっ、私も?」
「ここに来たからには覚悟してたんでしょ?行こうよ」
数の上では不利だが、一騎当千ともとれる
「くそ、俺が情けないばかりに……」
「スティング、いつまでそうしてるつもりだ?」
「だけどよ……ってぇ!」
「ど、どうしたユキノ?」
「こういう時こそ、先頭に立って皆を鼓舞してください。マスターというのは、そういうものではないでしょうか?」
「……そっか、そうだよな。済まねぇ、痛かっただろ」
「い、いえ……私ったら」
「よっしゃ、動ける奴はついてこい!五日ぶりの飯の時間だぁ!」
落ち込んでいたスティングだったがユキノの一喝によって目を覚まし、
「ヤベェぞ、死神だ!」
「また磔にされるぞ!」
「死神?皆退いて!そいつは私が相手をするから……ガジル!」
「ったく、死神とはな。磔にされる気分はどうだ?俺は最悪の過去を思い出すぜ」
「ガジル、そいつは周りの皆の症状を見る限り魔障粒子で出来てる。私も加わるよ」
「勝手にしろ」
ブラッドマンはあらゆる者を苦しめる体質であるため、魔障粒子に耐性を持つアテナと肺や皮膚が鉄で出来ているガジルが対処に当たる。冥府への案内人を自負しているブラッドマンに対して冥府の女神であるアテナは頼んだ覚えはないとし、倒すことで冥府へ仲間や無垢なる人々を送らずに済むようにしたい。
「我は死神、貴様らを冥府に送ってやろう」
「そう簡単に死にはしないわ。炎爆砲!」
「死に場所を探すのには疲れたんだよ、鉄竜槍!」
「我に物理的な攻撃は無効ぞ。生憎として我が体には効かぬ。我は死神、黄泉の国への案内人」
「ぐぁっ!」
「広範囲攻撃!?全員逃すわ。よっと!」
「くそ、骨が絡みついて!」
「(ここからじゃ遅れちゃう!)冥府神の大一声!」
「てめっ!」
広範囲攻撃を仕掛けたブラッドマンに対して仲間を救出しつつ、ガジルの救出が遅れかけたので、離れた所からブレスを放ち、その勢いをもって攻撃の範囲内から押し出した。そこに心配になったレビィがやってきた。魔障粒子の主な入り口である肺からの流入を防ぐためにマスクをしており、対処もしている。
「三つの印を踏んだ時、生者の世界へは戻れぬぞ」
「こいつ、大した魔力じゃねぇな」
「違う、こいつは呪法の使い手みたいね」
「よくぞ気付いた。しかし遅い。爆螺旋!」
「相殺せしめよう、
「天下五剣・鬼丸!」
「なんつー切れ味だ……」
「耐えてみせるか。ならばこれはどうかな?天地晦冥!」
「まさか、
「でも2度も同じ技は喰らわないよ。
「呪法には神の法で!シャドーハンマー!」
「氷魔の激昂!」
神の法と呪法のぶつかりあいは互角であり、衝突したそばから打ち消しあい、暴風となって辺りに吹き荒ぶ。そこで、ブラッドマンの奥義であるオーバースケルターという呪法で黄泉へとアテナ達を送ろうとする。ガジルとレビィが巻き込まれて運ばれていくが、アテナだけは耐性があるので、骸の海を渡って救出し、範囲外まで運んでいく。
「なんと、死の渦を無傷ですり抜けるか!」
「大丈夫、二人とも!」
「なんとかな」
「ゲホッ、ゴホッ!」
「おいレビィ!マスクが取れてるぞ!」
「あはは、マスクしてても魔障粒子って皮膚から入ってくるんだよね。効果ないんだ」
「無茶しちゃって。下がってて、後は私がやるわ。冥府神の剛拳!」
「実体を捉えられぬ拳など」
「
「何っ!何故我が実体を!」
「魔障粒子に近い属性を混ぜたのよ!冥府神ならではなの!」
自身を守る耐魔障粒子を攻撃に活かし、魔障粒子で出来た体を捉えていく。拳に魔法、神の法とありとあらゆる手段を使って攻めていく。
「冥府神の魔爪!」
「天下五剣・鬼丸!」
「うぁっ!」
「ぬぉっ、またしても我が体を!」
「くっ、痛むなぁ……雷鳴剣!」
「そう何度も喰らわぬわ!」
「冥府神の大一声!」
「氷魔の激昂!」
「喰らえや、鉄竜剣!」
「なぬっ!」
「当たった!?ま、まさかガジル、貴方!」
そう、ガジルは魔障粒子で出来た体を捉えるために、空気中の魔障粒子を吸収して取り込んでやった。約束したのだ、レビィを必ずギルドに戻すと。その約束を果たすためならどんな危険な事でもやってのけるのだ。死ぬ可能性さえあるのに、覚悟ができている。そんな覚悟を決めた拳により、ブラッドマンを倒すに至った。
「ガジル……」
「無茶しちゃって」
「なんとか倒したぜ。さぁ、他の敵に……」
「させぬ!こうなったら道連れじゃあ!」
「がっ!」
「ガジル!」
「ダメだ!来るんじゃねぇ!」
近づけば冥府への門に引き込まれてしまう。仲間の犠牲は出したくないし、レビィを何より大事に思っているガジルは、彼女を巻き込みたくないのだ。彼女に対して感謝や自分の感情を吐露し、最後の別れを告げるように言葉をかける。そして、彼女を引き留めているリリーとアテナに彼女のことを託し、渦に引き込まれる。
「う、うぅ、ガジル……」
「ごめん、私がついていながら……」
「こうする他無かったのか、自問してしまうな……」
「ん?ねぇ、何か聞こえない?」
「なんだ?念話か?」
『ギルドは……の方向よ!』
突然の念話が響き渡り、ギルドが今どちらにあるのか告げる声が聞こえる。メイビスがギルドで捕まっており、彼女を救い出すように伝えている。ギルドの母たる存在のメイビスのピンチを告げており、すぐさま集まるように、とのことだ。
『おいおい、もっと愛らしく喋れないのか?それでも初代の友達かよ』
「これは、ガジルの声!?」
「何で!?」
「こうなったら信用できそうだね。よし、ギルドに向かおう!」