「早く合流しなくては」
「機械野郎に二代目の霊やら何やらを倒したばかりだってのに。疲れちまったぜ」
「文句言わないの、ラクサス」
「なぁに、ちょっとした愚痴だ。仲間の為なら命を張る、それが今の俺に出来る唯一のことだ」
謎の念話が来てからというもの、カノンとラクサスはギルドがあるとされる方向を目指して走り続けていた。プレヒト達の亡霊と対峙し、勝ったものの体力や魔力の消耗がそれなりにあり、疲れが見える。だが、弱音を吐いている場合ではない。初代を助けるためなら体を張って進むしかない。前線では既に何名か戦っており、そこにようやく合流できた。
「おっ、そろそろよ!」
「よし、押し込んでやる!」
「やってやるわ、レーザー砲よ!
「雷竜の咆哮!」
「シリル!ラクサス!来たんだね!」
「ギルドまで一気に進むぞ」
「敵の数を恐れないで、私達がついてるからね。
魔力消耗を考慮しつつ、敵をなるだけ削っていく。ここで負ければギルドや大陸の明日はない、だから何が何でも勝たなければならない。徐々に味方も増え始め、前線を押し上げていく。そこへやってきたのはアテナだ。
「よーし、追いついた!」
「アテナも来たわね。勝ちが近づいたわ」
「死の恐怖、参る!冥府神秘技・
「魔力を一斉に奪い取るとは、恐ろしい魔法だな」
「後でレビィとリリーも来るよ!」
女神二柱と滅竜魔導士四人、様々な魔導士達が結集し、徐々に前線が押しあがっていく。敵にも怯え始める者も出始めている。そんな中で前方で氷の竜が出て、そこから八竜のゴッドセレナが現れる。イシュガルの四天王の頂点に君臨していたが、アルバレス帝国に寝返り、アクノロギアに殺された経緯がある。
「八竜のゴッドセレナ、ここに再臨。お前達をここから先へは通さねぇ」
「こいつ、一度死んでるわね」
「魔力の質が変わっているような……」
「ほう?よく気付いたな。だが、死せるとも使える力は変わらねぇ」
火に水、風の滅竜魔法の力を一人で放ち、混ざりあうことで凄まじい威力を誇る。このままでは全滅しかねない、そんな予感がしたなか、突如として魔法が割れ、かき消された。何があったのか理解が追い付かないが、その答えがわかった。ギルダーツのクラッシュだ。
「よぉ」
「ギルダーツ!」
「おぉ、帰ってきたか」
「何処ほっついてたんだよクソ親父」
ゴッドセレナの魔法を正面から崩し去り、今も正面からぶつかっていく。すると、周りに凄まじい衝撃波を起こす。大きな魔力同士をぶつけた結果、この様な大きな衝撃波が生まれるのだ。100年クエストにいける実力は伊達ではなく、これで一気に進めそうだ。一人の魔力のおかげで皆に気合が入る。
「ロメオくん大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇよウェンディ姉。こんな数の敵と戦うと思うと足が震えちゃうんだよ」
「皆もきっと同じだよ。だから一緒にがんばろっ!」
「くそ、自分が情けないよ」
ロメオの様に戦場に慣れていない者もおり、まだ足が震えてしまっている。そんな状況でローグとミネルバが参戦してくれているし、エルフマンやリサーナ、ミラも無事であり、
「また割れた!」
「残念だったな。お前の本領を発揮できた時に勝負したかったよ。破邪顕正・一天!」
「よぉし、道ができたよ!」
「進めぇ!ギルドは目の前だぁ!」
「「「おぉっ!」」」
「……よし!行くぞぉ!」
「よく決断したわ、ロメオ。その意気よ」
「へへっ」
ロメオも気合が入り、足の震えが止まり、皆に続いて前線を進む。その前線ではカノンとアテナ、エルザが実力を出して獅子奮迅の活躍を見せている。少しでも前に進むためにも、全力を示して皆を鼓舞していかなければならない。
「気功掌!」
「せい、おおっ!はぁっ!」
「
「強いですね、お三方は。何という勇ましさでしょうか」
「戦場に咲く剣達ですね、はい」
「感心してる場合じゃ無いゾ。私達も行くゾ」
「ふんぬっ!」
「地面を割って攻撃するなんて、凄いなぁ」
「ギルダーツの強さが滲み出てるね」
「私達も負けられないわよ。気功掌!」
進むにつれて敵の数も増えてきており、魔力消耗も増えてくる、それでも進まなければ、初代が危ういのだ。カノンは広範囲を攻める様にし、遠距離攻撃も近距離攻撃も対応しながら前へと進み、鼓舞していく。しかし、仲間も連戦続きで疲労がたまり始めている。
「ちょっとドロイ、大丈夫?」
「もう、立てねぇよ。俺は、ここまで……なんだ」
「諦めるな、神々と竜がついている!ここは下がれ!」
「ガジル!」
「無茶しちゃって。ほら、リリーとレビィも来たよ!」
「えらく頑張っているな、仲間の為に戦うとは」
仲間が疲労と魔力切れでダウンする中、復活したガジルが駆けつけてくれた。そこについてきていたのは先ほどの念話で話しかけてきた少女だ。名前はゼーラ、初代の友である。人と接するのに慣れておらず、少し緊張しているが、彼女がいなければ皆が集まることはなかっただろう。
「貴女、死人なのね?」
「そうなの。今はメイビスが作り出した幻なのよ。あ、私はとっくに死んでるから、あんまりしんみりしないでね?メイビスの事、よろしくね」
「消えた……」
「可愛かったのに……」
「初代には聞きたいことが増えたわね」
一進一退の状況が続く中、突如として空に巨大な目の玉が現れる。敵の魔法であり、逃げたメイビスを逃がさない為に捜索する為の魔法だ。だが、メイビスも逃げるつもりはない。巨大な幻影を作り出し、皆を鼓舞する。
『私の目からは逃れられないわよ、メイビス』
「こいつは敵の……」
「不気味だな」
『私は逃げも隠れもしません、貴女達のいる場所は必ず取り戻してみせます。私の声を聞く全ての同志よ、共に戦え!汝らの剣を妖精軍師が預かる!』
「初代……」
「幻を使って一気にやる気を引き出すとは」
「何だ今度は?」
「不味いな。これは付加術の一種で、付加した者を狂乱させ、強化する魔法のはず!」
「がはっ!」
「急に強く!」
「ぐぇあ!」
付加術の一種により敵は
「あの構えは、
「勝ったな!」
「ダメです!この人数相手に
「初代!」
「そんな事は承知の上じゃ。止めんでくだされ、ワシの花道」
「私の策があれば!」
「黙っとれい!それくらいは分かっとる!それでも、苦しむ皆を救うには我が命、安いくらいじゃ。今ガキどもが苦しんでいる。老兵が出来る事はこれくらいしかない。皆、仲良くな」
自らの命を賭して仲間のために、自分の子供達のために
「マスター……」
「ありがとう、貴方のおかげでここまで来れた気がするわ。後は任せて」
「(マスター、貴方の子で幸せでした)」
「エルザ、カノン……」
「初代、前を向いていこうぜ。じじぃの為にもな。それに、あんたの策が無けりゃ勝てねぇんだ」
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「何をしているんだ、お前達は!」
「ナツ、グレイ、貴方達の敵は目の前の男かしら?違うでしょ!」
「お前達が何故こうなったか分からんが、こんな殺し合いに近い戦いをしている場合ではない!思い出せ、私達を育んだ時間を!」
「良い?よく聞きなさい」
エルザとカノンが駆けつけて見かけたのは何故か全力で殺し合いをしていたナツとグレイだ。その二人を止め、マカロフの言葉を伝える。涙を流しながら、彼が仲間同士仲良く過ごし、互いを信頼するようにという信念を伝える。仲間同士でどんな理由があれ、殺し合いをする理由はないはずだ。
「私は、お前達を愛している。心の底からな」
「エルザ……」
「多少の喧嘩は良いけど、殺し合いに近いのはダメよ」
「シリル……」
「グレイ様!ジュビアは無事です!」
「な、何故……」
「ウェンディの治療のおかげね」
「あんまり心配かけないでよ、ナツ」
「ルーシィ、無事だったんだな」
二人の殺し合いの原因、それは仲間を失ったと勘違いを起こし、その原因たる者である者への怒りをぶつけてしまったことなどである。グレイはENDに対して怒りを持ち、その正体たるナツを止めようとしていた。ナツはゼレフを倒そうと怒りに身を任せてグレイと衝突したのだ。だが、お互いに殺されてしまったと思っていた仲間のルーシィとジュビアは無事であり、安心したため倒れてしまった。そんなナツたちを背負ってポーリュシカの元へと連れていくことになった。
「ナツをポーリュシカさんの所に連れていこう」
「グレイとジュビアもね」
「その件、貴方達に任せても良い?私はまだ戦わなければ」
「そうだね」
「っ!全員伏せろ!」
「うわ、何!?」
突然の爆発に皆驚いてしまう。敵の強襲に遭い、なんとか飛び出してダメージを避けることしかできない。そこに現れたのはアイリーン、緋色の絶望と呼ばれるアルバレス帝国最強の女性魔導士と謳われる人だ。何故ここに現れたのかは分からないが、エルザを知っている口ぶりだ。
「久しいな、エルザ」
「……えらい魔力ね。厄介だわ」
「ねぇ、知り合い?」
「知らん。だが、只者ではないな」
「ここは私とエルザで……」
「私も戦います、シリルさん」
「覚悟ありね、ウェンディ。
三対一と人数の上では優勢だが、最強と言われるだけあって見事に躱し切っている。猛攻をものともせず、余裕さえ見て取れる。だが、時折隙が見え、攻撃が当たることもある。
「おぉっ!」
「ふふ、この程度かしら?」
「島津流・双龍正波拳!」
「おっと、危ないわね」
「せいやっ!」
「くっ!」
「チャンス!気功式・シャイニングレーザー!」
「ちっ!」
「はぁっ!」
「足で剣を?ふん」
「がはっ!」
「はっ」
「爆破!?エルザ!」
「私は無事だ!」
隙はあったとはいえ、押し切れず、逆にダメージを喰らうこともある。だが、勝たねば味方が危うくなることは間違いない。だからここで止めて倒さなければならない。手数と威力の両立を図り、ウェンディの力で魔法の威力を上げてもらう。
「天輪・繚乱の剣!」
「生命神の大一声!」
「うわっと……やりましたか!?」
「いや、駄目だろうな」
「この程度でやられる相手ではなさそうよ、魔力の感じからして……」
「無差別の剣による攻撃と、気功や血の属性を纏ったブレス……よくやりました、花丸」
「剣を全て避けてみせるとは」
「ふざけた奴だ」
「付加術をかけた上に二人がかりで攻めてこの程度とは、話にならんな」
アイリーンの正体、それはエルザの母親だった。だが、エルザにとって親はマカロフただ一人。たとえ血縁関係があろうとも、敵対するなら倒すまでだ。カノンもウェンディもそのつもりで戦っている。だが、ここで恐ろしいことが発覚する。アイリーンは四百年以上生きた付加術のエキスパートであり、滅竜魔法を生み出した張本人なのだ。だが、その魔法の代償は大きく、竜化してしまい、ゼレフに会うまで竜のままとなってしまったし、治った後でも味覚や嗅覚に異常をきたしたこともあった。そこで、身ごもっていた子供に付加術を行使して純粋な人間の体を手に入れようとした。
「だが実子への付加術は不可能だった。だから小さな村に捨てたのよ」
「それが、ローズマリー村だったとはな」
「村の名前など、とうの昔に忘れたわ」
「お前の様な女の元で育たず、捨ててくれた事に感謝する。そのおかげで本当の家族に出会えたんだ」
「エルザ……こうなったら勝つしかないわね。喰らえ、波動バースト!」
「昔話でもすれば親子の情でも湧くと思ったが、まるで感情が動かぬ。その魔法、喰らうとでも?」
「天竜の翼撃!」
「ぐぁっ!」
「紅黒の双刃!」
「気功式・シャイニングレーザー!」
「なんだと!わ、私に傷を!?」
ここまで攻め込まれたことは久方ぶりなのか、ダメージを受けたことに驚きを隠せない。更に、ウェンディが竜化しないことに触れた際に、ドラゴンたちのおかげで防げたことを知り、怒りをあらわにした。
「不公平よ!何故貴女達は竜化しないのよ!こんな体、もう要らないっていうのに!」
「私が楽にしてやる!」
「木術・大木槌!」
「くっ、神というだけあって付加術に詳しいな!付加相殺をしてくるとは……だが!」
「な、何だ!」
こうなったら奥の手として、人間の体を乗っ取る付加術を発動して、ウェンディの体に乗り移ってみせた。ウェンディの体は、付加術を操る天竜の力があるためか、相性が良いという。仲間の体を返してもらうため、攻撃を仕掛けるが、仲間の体を傷つけるのかためらわないかと問いかけられる。だが、敵が乗っ取っている以上、追い出すためにやることはやると決めている、ためらいはない。
「鳳翼扇!」
「なんて娘だ!仲間の体に遠慮なく攻め寄せるとは!」
「すぐに剥がしてやるわ。せいやっ!」
「やらせん!服に
「ダメージ、大した事ない?」
「まさか?」
「同じ付加魔法、私にも出来たみたいですね」
「ウェンディなの?」
「そうです。体を乗っ取ったのは貴女だけでは無いのです」
乗っ取られたはずのウェンディは、逆にアイリーンの体に憑いてみせ、カノンの体に防御の付加術を行ってみせた。魔力の上ではウェンディのほうが上であり、分離
「後は、お任せします」
「ウェンディの治療をするわ」
「ああ、決着は私が着ける」
「小娘どもが!」
「ドラゴンになった!?」
「あぁっ!」
「ぐっ、がはっ!」
「エルザ!」
竜と化してエルザに一撃を加えた所、骨が折れた感触がする。たった一撃でここまで響くのは流石、竜の力というべきか。ここで天体に力を付加して地上めがけて落としてみせる。
「エルザさん!」
「くそ、動け!動けぇ!」
「待った。ここは私がやるわ」
「シリル!」
「我が魔力と神通力、その全てをぶつける!
「隕石を崩せる訳が無い、例え神の一撃といえども」
「おぉぉっ!」
「シリル……」
「はぁあっ!」
「我が秘技が、崩された!?」
「ま、魔力も神通力も、もう……」
「後は私に任せろ、覚悟ぉ!」
「ただの剣で竜の鱗は斬れんぞ!」
「滅竜属性を剣に付与……」
「おぉっ!」
「な、なんだとぉ!」
片手で動き、決死の攻撃で滅竜属性をまとった剣で竜の鱗さえ切り裂いてみせ、元の人間の体に戻してみせた。だが、これで痛みから体が動かなくなり、手放した剣をアイリーンに取られてしまう。
「これで、終わりよエルザ」
「くっ……」
「もう、お終いにするわ。これで……」
「自害!?」
「情けないわ、帝国最強の女魔道士が自分の子さえも殺せないとは。情でも湧いてしまったのかしら」
「……」
アイリーンは自害し、命を絶った。家族としての情か、これ以上戦っても勝てないという諦めからか、負けを認めて命を絶った。そんな折に、ウェンディは急にマスターの匂いが消えたことを不思議に感じていた。そこでエルザとカノンに問うてみるが、返答はできなかった。それで全てを察したのか、涙を流した。すると突然光が走り、三人を包み込んだ。気付けば、先程のところから移動していた。
「しかし、先程の光は何だったのだ?」
「分からないわ」
「エルザさん、歩けますか?」
「お前の魔力のお陰だ、ウェンディ」
「お互い無茶したわね」
「っ、この魔力は!」
「何かが近づいてくるだと!?」
急に巨大な魔力の接近を感じ、足を止めると、そこに現れたのは一人の男である。エルザとウェンディはかつてこの魔力を感じたことがあるが、どこで感じたものなのか、思い出そうと必死だ。
「ははは、我は飽きたぞ。この世界にな」
「こいつ、何処かで……」
「只者じゃないわね。邪悪な何かを感じる」
「うぬであったか、人々に滅竜魔法を授けたのは」
「(こいつ、何を?)」
「ならば、うぬは我の母の様な者。即ち我の罪ぃ!」
「なんて事を」
「えぐい……」
死体となったアイリーンの体を踏み、跡形もなく壊そうとしていた。このような惨い行為は例え敵であった者であれ、許されることではない。エルザが止めに入るが、アイリーンと同じ匂いを感じ取った。
「うぬは、この女と同じ匂いがするなぁ」
「匂い?」
「貴様、何者だ!」
「エルザさん、この魔力!」
「アクノロギア?」
「あの暗黒の翼と名高いアクノロギアですって!?」
黙示録の登場する暗黒の翼であり、かつて天狼島を吹き飛ばそうとした竜であり、人の姿を取ることもできる。アイリーンと同じ匂いをエルザから感じ取り、殺そうとしたが、とある男によって防がれた。ジェラールである。
「もうすぐ着く。ここは俺が時間を稼ごう、
「ほう、天体魔法か」
「
「くはは、この程度か!」
「魔法を喰った!?」
「我は最後の竜にして、全ての魔を喰らいし終焉の竜!魔竜アクノロギア也!」
「くそ、魔力切れって時に……」
「ここは私が!」
「待て、ウェンディ!」
「っ!天馬か!」
「皆の衆、乗りたまえ!ここはあいつを誘導して、とある地点に移動する!」
「振り切れるのか?」
「我がギルドの誇り、
到着した天馬飛空艇クリスティーナに乗り込み、この地点から脱出を図る。竜と化したアクノロギアも後を追い、全員を殺そうと凄まじい勢いで迫ってくる。とある地点を目指して全力で空を駆ける。
「先程、ある場所まで誘導するって言っていたけど……」
「うむ、そうすれば我々にも勝機があるかもしれん。ですよね?」
「本当か!」
「ええ、そうよ」
「ん?貴女は……」