フェアリーテイル 生命の唄   作:ぽおくそてえ

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どうもです、こちらを更新するのは数年ぶりですが、後日談的な物を載せます

いまだに読んでいただけている事、感謝しきりです
ありがとうございます

それではどうぞ


番外編
第79の唄 あれから


X1300年代、ここはカノンの根城としている古代樹の大木だ。そこにやってきたのは数百年来の盟友アテナだ。あの頃の冒険譚を知る者はほぼ居なくなった。

 

「どうしたのさ、カノン。こんな時に」

「あれから数百年。国も何回か変わった。当時の事を知る世代も居ない。だからこそ、新しい信仰の対象に変わるべきだろうと考えたの」

「代替わりするつもり?」

「左様如何にも。私の信仰は国が変わっても運良く保たれていたけど、そろそろ自分も寿命を迎えそうなのよ」

「そうか、そうだよね」

 

先代チキやその前のナーガの治世より長い間人の世を支え続けた彼女も限界が少しずつ近づいていたのだ。だからここで次代に全てを託そうと考えたのだ。その事をまずは彼女に伝えるべきだろうと呼び寄せたのだ。

 

「楽しかったよね、あの頃は」

「あの冒険の時代は今も確かに心に根付いているわ」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)。今となっては名前を知る者はほぼ存在しないね」

「哀しきかな、それが数十年くらいしか生きられない人の世の運命(さだめ)

「私達が数百年間、真っ直ぐ生きてこれたのもあの頃の温かな記憶があったから。うん、そうに違いないや」

「そうね。そろそろ貴女も考えた方が良いわ、後継者問題は」

「そうだね……貴女は充分生きた、そう言いたいんだね?」

「ええ。母の寿命と同じくらい生きた。様々な争いを見てきたけど、この大陸の人間は力強く生きてきた。そろそろ私の役目も終わりだろうと、そう思う」

 

彼らとの交流が人を結びつけるキッカケになり、心が闇に染まらずに前へと歩く事が出来た。だから後継者の者にはギルドで冒険させていた。知り合いの魔神レインも代替わりしていたし、あれから信仰を集めた新しい現人神も複数現れた。

 

「魔神レインの後継者リリートスにもこの事は?」

「ええ、反対は特にされなかった。私の今後は私自身で決めて欲しいと」

「そっか。長い間ありがとう、そしてお疲れ様でした、カノン(シリル)

「それはこちらの台詞よ。永らく私の我儘に付き合ってもらって感謝してるわ、アテナ(ユリア)

「じゃ、私はここで。次会えるか分からないけど、継承の儀の際は呼んでね」

「ええ」

 

ギルドにて数年間冒険していた後継者候補の愛娘マリアベルを呼び戻し、事情を話して今後を託す。全てを自分と同じ経験を通じて成長した彼女に託すために。

 

「カノン様、お呼びでしょうか?」

「我が娘マリアベル、良くぞ来てくれた」

「ご用件は?」

「貴女に最後の試練を課す」

「……永らくお疲れ様でした。しかし、私で務まるのでしょうか?」

「貴女こそ、優しさと厳しさ、実直さを見出したから」

「ありがとうございます」

「これは数百年前、私が先代から課された修行と試練、それと同じもの」

「生命神チキ様ですか」

「そう」

 

自分がしてきた様に神通力と魔力の器、そして輝かしい思い出を心に満たしてあげる事で今後数百年間続くだろう生命の唄を歌い上げて欲しいから。その為にやってあげられる事はなんでもする。

 

「マリアベル」

「カノン様」

「あれから半年で良くぞここまで……でも貴女に全てを押し付けるかの様な、そんな選択で良かったのか自問自答の日々だった」

「いずれはこうなるだろうと覚悟は決めていましたから。それにアテナ様もいらっしゃいます」

「困った事があれば彼女やリリートスを頼りなさい」

「ははっ」

 

そしていよいよ継承の儀の当日を迎えた。アテナにリリートスも事情を知っているからすぐに駆けつけてくれた。

 

「カノン、来たよ」

「私も呼び出したから何事かと思えば。後はお任せを」

「済まないわね、アテナにリリートス」

「準備、整いました」

「では。私はここで姿を完全に消し、そして全ての信仰は貴女に引き継がれる。これからの未来は貴女が切り開いていきなさい」

「はっ」

「貴女の様な実直な娘を迎えられた事、僥倖であった。アテナ、リリートス、後は託した」

「ご苦労様。しばらくしたらそちらに行くかもしれないから、皆に会えたらよろしく伝えといて」

「うむ」

「先代からの繋がり、維持していきます」

「うむ。ありがとう」

 

全てを託した彼女の肉体は朽ち果て、魂は死後の世界へと向かう事が出来た。

 

「ここが、死後の世界か」

「シリル。貴女も来たのですね」

「母様!数百年ぶりです」

「貴女が人の世を支えたお陰でここまで発展したのですね」

「貴女の道標があったからこそです」

 

まず巡り会ったのは先代チキ。その後ろには先々代ナーガも帯同している。彼女らとは積もる話もあるだろうが、自分とはこれから長い間話せるだろう。それより会うべき人が居るのではと、手を差し伸べた先へと誘う。そこに居たのはかつての友、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバー達だ。

 

「シリル」

「ナツ」

「やっとやってきたんだね」

「ハッピーも」

「皆待ってたぜ」

「数百年、何世代も経つのに待っててくれたなんて驚きね」

「何故か転生出来なかったからな」

「そう」

「後はユリアを待つばかりだな」

「それまで、あの頃から変わった事でも話して待ってましょうか」

「お、楽しみだな」

「あっちに皆が居るからそこで話そうよ」

「さ、冒険の続き、話しましょ」

 

これからは彼女の到来を待つばかりだ。友や親と語り合う時間を楽しみながら。

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