で、ふと小説情報を確認してみたのですが、
○UA…408656
被お気に入り…2244
となっていました。※2016/1/31現在
因みにこれ、『原作:艦これ』でソートかけると、UA・お気に入り共に中々の評価を頂いているようで、嬉しい限りです。
これからも、本作をよろしくお願い致します。
さて、一発目からシリアス&独自解釈です。
若干とある方の『過去』と幾つかの『伏線』をちりばめつつ行きますのでご了承ください。
彼は暗闇の中に居た。
手に持つナイフは血に塗れ、体も至る所に返り血を浴びている。
その目に感情は無く、表情も醒めたものだった。
ふと目の前に、一人の男の姿が浮かび上がる。
その男は腹から血を流し、顔には脂汗が浮いていた。
会話をする余裕はある。だが、一目で重傷と分かる程度には血を流している。
「……お久しぶりです」
珍しく、不満そうな顔をした青年に、男が苦笑する。
「最近、心労が嵩んだからですかね。貴方に遭うのも、いつぶりですか」
ため息を吐きつつそう言う青年。しかし、男は苦笑いしか返さない。
「……それにしても、どうして『あの時』の画になるんでしょうね。
いや、確かに貴方との『最期』である事は確かなんですが」
彼は、自嘲するように顔を歪めた。
「あの時貴方は……『未来の為』と、そう言いましたね」
そう言うと、男はまるで録音したテープを再生するように語りだした。
『まぁ、強いて言うなら……『未来の為』かな』
『未来の……?』
『そうだ。今回の件で起こりうる未来の……更にその先だ』
『……それは、貴方の『今』を捨ててまで必要なモノだったのですか?』
『まぁ、そうなるな』
そう言って、男は腹を押さえながら壁に背を預け、青年を見て笑った。
『……何ですか?』
『いや、お前はどんなガキを生むのかな、と思ってな』
『……俺は男ですよ』
『例えの話だよ馬鹿。……その頭の固さは、結局治らなかったなぁ』
それは、『彼』と『男』の最期の記憶。
『知っての通り、俺は子供に恵まれなかった。
まぁ、家族もいねぇしな。……でもよ、お前の事は、息子みたいに思ってんだぜ?』
『…………』
『お前には『先』がある。いい女見つけて、子供作れ』
『今の俺には、想像できません』
『お前(息子)にゃ恨まれる結果になっちまったが……まぁ、『孫の世の為』ってな』
『……俺は』
―――貴方を恨んだ事など無かった
そう言いたかった。言えなかった。
―――いっそ、貴方が俺を恨んでくれた方が良かった
そう言いそうになって、その言葉を飲み込んだ。
今となっては、総てが遅いのだから。
「貴方が望んだ『未来』に俺は立てているでしょうか?」
彼の問いに、男は答えない。
代わりに、先程の様に記憶が再生される。
『しかし、本当に、強くなったなぁ……
泣き虫で弱っちかったお前が、こんなに』
そこまで言って、大きく咳き込む。
喉の奥から、血の塊がこぼれ出た。
―――あぁ、そうだ。
―――そうやって、貴方も、俺を置いていく
「とうさん、逝かないで」
何時だって、届かない。
何時だって、手遅れになる。
『生きてりゃそのうち会える。死ぬまで、気長に待ってろ』
遠くで、銃声。戦いは、まだ終っていない。
『とうさん』
『ほら。逝けって。取り敢えず、ここら一帯の奴等ぶっ殺してこい』
そう言って、追い払うように手を振る。
青年はそれでも何かを言おうとして、結局何も言えずに男に背を向け、歩き出した。
もう二度と、振り返る事は無かった。
『其処』にはもう、誰もいないのだから。
暫く歩くと、小銃を持った男達に取り囲まれた。
「―――――!!」
「―――――!!」
銃を構え、喚く男達。
何を言っているかは分からないが、恐らく『武装解除』か『降伏』か。
あるいはもうちょっと『過激』な事を言っていたのかもしれない。
どの道、『当時』ですら解らなかったのだから、意味はないのだが。
『あの時』の様に、ナイフを握りなおす。
『ずるり』と滑る感覚。手袋が血塗れで、握りにくい。
ナイフを納める気は無かったので、空いている方の手袋を口で咥えて脱ぐ。
途端に口の中で血と諸々の味が広がり気分が悪くなるが、手袋ごと吐き捨てた。
ナイフを持ち替え、反対側も同じように外して、握りなおす。
その様子を見て、銃を構えた男たちが更に何かを騒ぎ立てるが、無視だ。
肩が重い。見ると、外套が血を吸って纏わりついていた。
体を揺すって、外套を脱ぎ捨てる。
「ずしゃり」と湿った音を立てて落ちた外套には、部隊章が付いていた。
死者の魂を導く、『鬼灯』を模した其れは、疑いようのない『死神』の証。
さて、いい加減周りの雑音に嫌気がさしたので、『片をつける』事にしよう。
「―――うるさいな、少し黙れ」
―――感情に蓋をする。
―――意識を研ぎ澄ます。
―――敵ノ殲滅ヲ最優先ニ。
そして、あの時の様に、『彼』は『伝説の死神』になった。
○
「…………」
目を開く。そこに映るのは、見慣れた天井。
日の出すら迎えていない窓の外は当然薄暗い。
取り敢えず、上半身を起こした。
全身を覆う、倦怠感。
『あの日』に連なる夢を見たときは、いつも何とも言えない気持ちに包まれる。
とても寝直す気分になれず、寝台から降りた。
そのまま棚からとある物を取り出し、椅子を片手に部屋の中央へ。
椅子を部屋の中央に置いて、其処に座る。
棚から取り出したのは鞘付のナイフ。何時ぞやに冴香に見せたものだ。
右手でナイフを逆手に持ち、鞘は左手で握る。
小さく深呼吸して、鞘からナイフを抜いた。
「…………」
鈍く光るナイフに、彼の顔が映る。
何処か怯えた表情をした、男の目。
「貴方の言う通りだった。結局俺は、何も変わらない。
……俺は、貴方の望んだ未来に、立てていますか?」
右も左もわからず只々怯えていた自分を鍛え、導いてくれた人はこう言っていた。
『お前は、恐怖を捨てる事は出来ない』
例え多くの敵を斃したとしても。
例え『伝説の死神』と畏れられていたとしても。
薄皮を一枚剥いでしまえば、其処に居るのは一人の『臆病者』だ。
「……本当に、何時まで経っても変わらない」
こうして、呪い(まじない)の様にナイフを構えて居ないと、其処に沈んだ恐怖が顔を出す。
勲章なんていらない。
賞賛なんていらない。
英雄(ヒーロー)なんて、興味ない。
「……もう、失うのは、嫌だ」
仲間も、友も、取りこぼさない。
今度こそ、護ってみせる。
ナイフを握る手に力が籠る。
感情に蓋をして、殺意を研ぎ澄ます。
あぁ、そうだ、これでいい。
自分に出来る事は、結局『これだけ』なのだ。
小さく嗤う。
歪んだ笑みだった。死神に相応しい『陰』があった。
邪悪にすら見えた。
「今度こそ、護ってみせる。……絶対に」
自信など欠片もない。
何が起こるかも分からないし、それによって何かを喪うかもしれない事が恐ろしくて堪らなかった。
しかし、その顔には一切の『恐怖』が浮かんでいなかった。
数少ない彼の『何か』が、其れを完全に覆いつくしていた。
今の彼は全てを自分の宣言通りにする心算だった。
そして、それをこの世の誰にも邪魔をさせる気も無かった。
その姿は、正しく『伝説の死神』であった。
○
最初に気付いたのは、『世界』に敏感な妖精たちであった。
続いて、『彼』に近しい者達が気付いた。
「……んぅ……ねぇさま?」
同居人である姉の気配に、山城は目を覚ました。
時刻は早朝ですらない。明かりを消した部屋は、夜と変わらず薄暗い。
体を起こすと、姉である扶桑が寝間着のまま窓際に立っていた。
「……山城?ごめんなさい、起こしてしまったかしら」
「いえ、大丈夫です……って、何事ですか?」
此方に振り返り尋ねてきた扶桑に応えつつ、山城は姉の様子に只ならぬものを感じたのか、身を固くする。
「……貴女には分からないかしら」
「えっと、……さっぱり。只、妖精がちょっと『騒がしい』かな、とは」
扶桑の意味深な言葉に、首を傾げつつ応える。
具体的にどうとは分からないが、何となく妖精たちがそわそわしている、と言うか、落ち着きがないというか。
「大丈夫よ、不安になるようなことは何もないわ」
「そうなんですか?……と言うか、姉さまには分かるんですか?」
そんな山城の様子に、小さく笑いながら応えた。
「えぇ、大まかにはね」
○
「こんな時間に起きてるなんて珍しいな」
「あ、ごめん摩耶、起こしちゃった?」
同居人の動きに気付いていたのは、山城だけではなかった。
同じく起きてきた摩耶に苦笑しつつ、冴香が尋ねる。
「いや、ちょっと妖精が騒がしかったからな……と、雪風?」
同じく一緒に泊まっていた雪風が、少々青い顔をしながら近寄ってくる。
「あの、しれぇ……これって、もしかしなくても」
「うん、彼だね、多分。最近心労が多かったからかなぁ」
「オイ元凶」
雪風の頭を撫でつつ笑う冴香に、ジト目で応える摩耶。
「しかし、これはちょーっと頂けないかな。良い兆候じゃないね」
「そう思うか?」
「多分、他の子たちも何人かは気付いてると思うけどね。扶桑とか、北上とか」
「……だとしたら、どうする?」
摩耶の問いに、そうだねぇ……と応えつつ、小さく笑う。
「ま、このままあの子達に丸投げしても良いんだけど?
折角だし、もうちょっと『御節介』してこうかな」
「……ほどほどにしとけよ?」
摩耶の言葉に、「だいじょうぶだよ」と応える。
「扶桑には一言いっとく心算だし、ある程度は役得、ってね」
そう言って、小さく伸びをする。
「横須賀に帰る前に、最期にもう一肌いこうかね」
今日の夕方には、冴香達一行が横須賀に帰還することになっている。
最後の最後で、もう一波乱が控えているようだった。
はい、何とか滑り込みセーフ……ですよね?
不本意ではありますが、前後編にして更新でございます。
忙しくて泣きそうです。家族も増えますし。
後編もなるべく早めに更新しますので。