鎮守府の日常   作:弥識

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今回は舞台変って『実家』に帰ったあの人たちの話です。

何時にも増してネタ塗れなのでご注意を。


嵐の帰還

○横須賀鎮守府

 

さて、その後特に何事もなく横須賀に帰還した冴香であったが、それはそれは『良い笑顔』の軽巡艦娘『大淀』が鎮守府入口で仁王立ちしているのを見て、自分が『やらかした』事に今更ながら気付いた。

 

有り体に行ってしまえば、冴香は舞鶴に『居過ぎた』のだ。

 

勿論、冴香の中では『想定内』の期間であったし、査察官である以上半端に切り上げるわけにはいかなかったのも事実。

だがしかし、『想い人』の居る舞鶴に少しでも永く居たいが為に、ちょっとばかし『イロ』を付けていたのも、また事実。

 

そして査察官であると同時に、横須賀鎮守府の将校でもある冴香には、此処での執務もそれなりにある。

ある程度は部下である艦娘に任せていた。先程出てきた『大淀』もその一人。

 

しかし、冴香に『しか』処理できない案件も幾つか在る訳で。

それに関わる案件も、結局それが片付かないと進まない訳で。

 

要するに、仕事が溜まりに溜まっていたのだ。

 

休息もそこそこに執務室に押し込まれた冴香は、

 

 

「大淀君、これは拉致だよ!」

 

 

と某北国出身タレントの如く抗議をしたのだが、

 

 

「いいから仕事をしやがれください」

「あ、はい」

 

 

という、とても分かり易い(ヒエラルキー的な意味で)会話を交わし、この話は終いとなった。

 

―――これが、夕方までの話である。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、摩耶!もう帰ってきてたん?」

「おう龍驤、昨日の夕方位にな」

 

翌朝、執務室に顔を出そうとしていた摩耶の後ろから、同艦隊所属の龍驤が声を掛けてきた。

 

「そか。ウチは昨日はドックに籠ってたからなぁ。気付かへんかったわ」

「ドック?どっか悪いのか?」

 

そう言って、龍驤の体を見る。特別、異常は無いように見えるが……

 

「改二になって艤装の勝手が変わったんよ。せやから色々と、な」

「ふーん、そんなもんか」

「そんなもんや」

「まぁ、何かあったら冴香に言えよ?」

「了解や。ところで……」

 

そう言って、にひゃりと笑う龍驤。何となく、次に続く言葉を察する。

 

「どんな奴やった?提督の『王子様』」

「あー、やっぱりそうなるよな」

「そらそやろ。あんだけ楽しみにしとったし」

 

龍驤の問いは、割と言葉通りである。

 

彼女も摩耶程ではないが古株で、冴香の恋愛事情は知っている。

普段は色恋の『い』の字もない我らが提督を、まるで『遠足前の子供』の様にそわそわさせる意中の相手。

 

気にならない訳がない。

 

「で、どうやった?おかんの御眼鏡に適ったか?」

「誰がおかんだ」

「冴香のおかんみたいなもんやろ」

「あの歳の娘をもった覚えはねぇよ……」

 

そう言って頭を抱える摩耶をみてケラケラ笑う。

そんな龍驤をじとりと見つつ、ため息を一つ。せめて女房役あたりにしてほしかった。

まぁ、やる事は変わらないのだけれど。

 

「……まぁ、あの人となら良いんじゃねぇか」

「お、思ってた以上に好感触やん。そんなに優良物件やったんか?」

「まぁな。でも肝心の冴香がなぁ」

「……立てば芍薬、座れば牡丹、口を開けばエロ親父やからなぁ」

「誰が上手い事言えと」

「ともかく、好感触なんやろ?望みは有りそうなんか?」

 

何だかんだで冴香に世話になっている龍驤だ。良い方向にまとまって欲しいと思う。

と言うか、これを外すといよいよ『貰い手』が……

 

と、此処まで考えて、龍驤はこれじゃぁ自分も摩耶と大差ないわと苦笑する。

 

「本人達次第だよ。……アタシは応援する心算だ」

「……ホンマにマジなんやな。ウチも会ってみたいわー」

「場所が舞鶴だからな。行けないこともねぇだろ」

「そやな。楽しみにしとくわ」

 

そんなやり取りをしつつ、執務室についた二人は、ドアをノックする。

 

「……………」

「返事無いなぁ。おらんとちゃうか?」

「いや、帰ってすぐ大淀に押し込まれてたから、終ってなけりゃ此処に……『あら、摩耶さん』っと、大淀か」

 

聞こえてきた声に目を向けると、洗顔セットと朝食を盆にのせた大淀がこちらに近づいてきた。

 

「冴香は?」

「仕事を片付けて、グロッキーになってますよ。結局徹夜でしたから」

「あー、きっついよなぁ、完徹は」

 

若さ溢れる少年少女なら、一徹二徹はノリノリでこなすだろうが、冴香はそうはいかなかったようだ。

 

リアルな話、こういう無茶をすると、結構『あからさまに』色々と影響が出るのである。

 

「冴香ももうすぐ『カド』やからなぁ」

「日頃鍛えていても、女性には色々ありますし」

「せやな」

「兎も角、入りましょうか。冴香さーん、入りますよー?」

 

 

三人が中に入ると、執務机に突っ伏していた冴香がゆるゆると顔を上げた。

 

目の下には隈。肌の艶も無く、瞳にも生気がない。

 

「……あ゛ー、終った―。終わったよ。やっとゴールできた。もうむり」

「まーた分かり易く憔悴しとんなぁ。これ女子としてあかんやつやろ」

 

確かに、年頃の女性として有るまじき酷いさまである。

尤も、此処の空間に居るのは気の置けない中の者達ばかりなので、問題ない。

 

「もーむりー。しごとしたくなーい」

「駄々捏ねないでくださいよ……」

「おーよどがいじわるするー。まやーおっぱいさわらせてー」

 

机に額をごりごり擦りつけながらセクハラ発言をかます上司にジト目を向けた後、龍驤が摩耶に視線を投げた。

 

「ご指名やで摩耶」

「自分の触ってりゃ良いだろうが」

「自分の触って満足できるわけないでしょー」

「あ……悪い」

「ちょっと待って、そういう意味じゃねーから。大きさ的なそれとかじゃねーから」

「……配慮が足りなかったよな、ごめん」

「おい、摩耶、おい、何でウチの事ちょっとチラ見したん?怒らへんから言うてみ?」

「龍驤のも嫌いじゃないけど今は優しさに包まれたい感じだからパスで」

「うん、嫌いやないで?冴香のそーいう嘘つけへん所。取り敢えずしばいたろかコラ」

「あーもういいから横須賀の潮風と寝汗で良い感じに塩味の効いた摩耶のオッパイ略して『しょっパイ』堪能させろやオラァ!」

 

 

 

―――きゅっ

 

 

 

「へきょ!?」

「はーい冴香さん寝ましょーねー」

「いーの入ったなー今」

「素早く後ろに回って絞め落とすとか流石やな大淀」

「こんなの手馴れたくなかったんですけどね」

「取り敢えず昼まで寝かせとこう。そのうち復活すんだろ」

「せやな」

「そうですね」

 

 

ぐったりした冴香を小脇に抱えつつ、摩耶達は執務室を後にした。

 

 

 

 

正しく、今日も横須賀は平常運行である。




大淀さん
常識人その一。艦隊発足時からの付き合い。呼び方は『冴香さん』
基本的に敬語を使うものの、ヒエラルキーは完全に上。

龍驤ちゃん
常識人その二。摩耶と同じくらいの古株。呼び方は『冴香』
ツッコミ役。彼女がいる事によって生まれる実家の様な安心感。筆者の知識不足の為、関西弁が迷子。

半分眠った頭で書くとちょいちょい『下』が混ざる不思議。
多分筆者がむっつりだからでしょう。

もうちょっと続きます。
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