その男は最強のであった。
「最強にして生きた伝説」
そう呼ばれる理由(わけ)をその戦場にいる兵士、海賊、そして中継で眺めていた大勢の市民たちは理解した。
そして、間もなくその伝説が終わりを告げることも………
『ぶっころせぇぇぇ!!』
顔の左半分は吹き飛び、一斉攻撃で全身に無数の鉛玉を浴びた筋骨隆々の老人はそれでも倒れることなく、眼前の仇敵を睨み付けていた-----そして
「長い旅だった。いい旅だった。礼を言う。さらばだ息子たち」
息子たち---長く共に旅をしてきた船員(クルー)『家族』たちへの感謝。その言葉が最後だった。
「し…死んでやがる!立ったまま!」
「最強の海賊」「生きた伝説」と呼ばれた男の旅はこうして終わりを迎えた。
だが
まさかこの時誰も考えもしなかっただろう最強の海賊『白ひげ』が新たな世界へと旅に出ることなど……。
-冬木市・間桐邸「蟲蔵」-
(なんだ……こいつは……)
「急造の魔術師」・間桐雁夜は汚れた蟲蔵の床に這いつくばりながら自身が召喚した人物を呆然と見つめていた。
特徴的な白い髭を生やし自分を遥かに上回る鍛え上げられた巨体、何度となく凄まじい死闘を演じてきたに違いない闘気(オーラ)。そして(なんだこれは…温かい……?)自身が生涯、憎悪の対象である父親から与えられるはずのないものを雁夜は感じとっていた。
(こいつは、本当に「狂戦士(バーサーカー)」なのか…?)
「……オイ、質問に答えろ、ハナッタレ共。ここはどこで、てめえらはナニモンだ…?」
その言葉とともに男から放たれた威圧感に、雁夜の意識は沈んだ。
意識が沈む直前、憎しみの対象の断末魔が響いた気がした
・・・・・・・・・・
『財宝に興味がねぇって?じゃあお前何がほしいんだよぉニューゲート?』
『…家族』
『なんだあそりゃ!?ぎゃははははは!!』
目を覚まし身体を起こした雁夜は先程見た夢を思い出していた。
広い広い海原を行く海賊船の上で、目が眩むほどの財宝を前にした海賊たちと仲間たちから距離をおいて遠くを眺めている海賊------『財宝なんていい。俺ァ一緒に旅をする家族がほしい』
そう言って、とても、とても優しい目をしてその海賊は微笑み、周りはそれをその海賊なりの冗談だと思ったのか大笑いをしていた。
「あれが、バーサーカーの過去なのか」
「おぅ、起きたかゾンビ小僧」
その声にハッと顔と上げ声のしたドアの方を見ると、先程の夢で見たときと同じく優しい微笑みを浮かべた雁夜が召喚したサーヴァント、「バーサーカー」が右肩に小柄な少女、間桐桜を乗せ佇んでいた。
異世界で「最強」「伝説」と呼ばれた海賊『白ひげ』エドワード・ニューゲート
たったひとりの少女を救うことを願う急造の魔術師・間桐雁夜
新たな『家族』を得た二人の戦いの旅が、始まった--------------