どうも、suryu-です。
一度インフルエンザで小説を書かなかったりしたことから少しテンポが崩れ気味でなかなか書くのが難しい。
そんな中で書いた今回ですが、漸く。漸く彼女が本格参戦します。
彼女って誰? って人は、これから見たらわかると思いますが、多分予想は簡単だったと思います。それっぽい事書いてたし……
では、今回もごゆるりとなさってください!
■【三人称】■
「漸く、終わりました」
その一言を呟いた存在はとある場所へと向かっていた。やるべき事は一つと見定めているからだ。
存在。否。彼女と言うべきだろう。美しいショートカットの銀髪を靡かせながら、歩き続ける。
彼女は嘗てこの世界。サッカー界から去っていた。だが、不屈の精神から彼女は舞い戻る。完全に治療を終わらせたのだ。
その彼女は辿り着いた学校を見てふっと笑った。そう、漸く。漸くなのだ。
「すいません。取ってくれますか!」
そして、丁度よく飛んできたサッカーボールを手にすると彼女は足元に置く。
「分かりました。その代わりに、受け止めてみてください!」
そうして彼女の蹴りから放たれたボールは、円堂守が受け取ると同時にかなり後ろに下がらせる。
その威力は落ちていない。色褪せていない。誰もが呆然とする中、彼女は微笑んで一人の男の元へと向かい、抱きついた。
「久しぶりですね、龍斗さん」
「……よう、む?」
__遡ること少し程前の事__
■【八神龍斗】■
「そういえば、八神って幼馴染みが居るんだよな?」
突然円堂先輩がそんな質問をしてきた事に何かあるのかな。という表情をしつつ「はい。居ますよ」と答える。
そんな表情を見てなおどういう意図かは分からないが、円堂先輩は気になるような顔をしていた。
「いやさ、八神が良ければ聞いてみたいんだ。その子のプレーとか」
なるほど。と納得が行く。円堂先輩はバカが付くほどサッカーが好きなのだ。
そして、周りの人も気になり集まりだした。確かにこの人達にもそろそろ話していいかなと思い、足元のボールをリフティングの容量で手に取れば前を見る。
「あまり自称するものではありませんが、僕は異名でファンタジスタと呼ばれています。そのファンタジスタにとっては欠かせない存在でした。そもそも、ファンタジスタってどういう人種か理解していますか?」
「ファンタジックな、創造性のある芸術的プレーで周りを魅了する。相手の意表を突いたプレーとかも得意だ。イタリアでは伝統の賞賛だな」
土門先輩の回答に頷くと共に空中に指で線を描く。これなら理解は早いだろうと思いながら。
「ファンタジスタについてはその通りです。加えるなら突出したプレーなども有ります。そして、僕に欠かせない存在が妖夢です」
僕の言葉を聞いて、皆妖夢はどんな人なのか気になり、前屈みになって話を聞き始めた。豪炎寺さんはふっと笑った。
「妖夢は、ゴールまでどう攻めるか。その道筋を決めて、僕が意思を発すると、その意思を汲み取るんです。妖夢はプレイヤーとして最高峰。自分の相棒でした」
なるほど。と皆は頷くと同時に更にプレーが気になる様子なのでそこに加える事にした。
「例えば、僕自身も昔は得点力が高かったけど、妖夢は正確無比なパスも出来るし、僕よりも得点力のあるエースストライカー。加えて僕の意図を完全に理解する上に、ユーティリティプレイヤー。間違いなく一流のプレイヤーですね」
「そして俺とも全国では何度も会った。あの時は良い勝負が出来たな」
「はい、豪炎寺さん」
豪炎寺さんの言うことは自分もそう思っているから素直に頷く。豪炎寺さんと戦っていたあの頃は。
思えば鬼道さんも居たような気がするけど、それはそれとして妖夢の事を思い出したから、会いたくなってしまった。
「僕にとって妖夢は太陽でした。僕が月や星なら、彼女が太陽。そう思ってます」
ちょっと照れくさいけれども、これが僕の本音なのだ。それを知ってか知らずかは分からないが皆は色々妖夢がどんな人か考えだした。
この面子の人達なら、妖夢がもし居たら楽しくサッカーしてるだろうな。なんて柄にもないことを思った後に「練習、再開しましょうよ」と笑った。
「よし、そうだな。八神、撃ってこい!」
「言われなくとも!」
僕のシュートは光を纏う。が、やはりまだ必殺技にはなっていない。それでも円堂先輩は全力だ。
「熱血パンチ!」
まだこの人からゴールを割れないか。とちょっとした苦笑いと遠くに飛んでいったボールを見てから取りに行こうとする。
その時、ふと足が止まってしまった。なんで? なんで。
理解しようとする前に円堂先輩が「取ってくれますか!」と声をかけた。
「分かりました。その代わりに、受け止めてみてください!」
嘘だと言いそうになる。でも、嘘じゃなかった。自分のすぐ隣をボールは通り過ぎたと同時に円堂先輩を大きく仰け反らせる。
結果的に円堂先輩は後ろに大きく下がった後になんとか留めた。
皆が呆然としている中で、彼女は僕に向かって歩いてくると同時に抱き着いてきた。
「久しぶりですね、龍斗さん」
「……よう、む?」
■【魂魄妖夢】■
「す、すげぇや、今のシュート……」
「久しぶりに見たが、まさかここまでとはな」
「……あの人が」
周りを見渡すと龍斗さんに抱き着いたせいかはたまたシュートの威力のせいかは分からないけど、少しざわついています。
まぁ、女子の私が来たということもあるのかもしれませんがそれはともかく。
こうして龍斗さんに自分の足で会いに来て抱きつけた事で、久々に満たされましたから。
「や、八神さん。その人は?」
「え、あ、あぁ、音無さん」
と、ここで私達の間に入ろうとした女子が居ます。おそらくマネージャーじゃないでしょうか。
音無と呼ばれた彼女はもしや、龍斗さんを……? まぁ、負ける気は無いですけれども。
「さっき話していた魂魄妖夢。僕の幼馴染みだよ」
「どうも、魂魄妖夢です。龍斗さんとは幼馴染みでずっと一緒にサッカーをしていました」
私の自己紹介の後におおっと皆さんは湧き上がるように歓声をあげてくれました。
龍斗さんは良い仲間に恵まれていたんだな。と少し嬉しくなりつつもいまだにどこか抜けている龍斗さんの顔に手を当てます。
「夢じゃありませんよ。龍斗さん」
「それは、そうだと思いたいしでも驚いてるし……」
「ふふ。全く……でも、こうして戻ってきましたよ。龍斗さんとサッカーをする為に」
「……妖夢」
こうして向き合って言葉を投げかけると、龍斗さんはとても嬉しそうです。やっぱり私を待っていてくれたんですね。
「ちょっとごめんね。龍斗君を借りていくわー」
「へ?」
「あ、秋さん!?」
突如そこでマネージャーらしき女の子が龍斗さんを連れて行っちゃいました。
いったいどういう事なんだろうと思っていると豪炎寺さんが前に出てきました。
「多分。お前から見た龍斗の話を聞かせたいんだろう。俺も親交があったとはいえ、日常の事やどんなサッカーをしていたか等は、事細かに知っている訳じゃない」
「ああ、なるほど」
そこまで言われると少しばかり思い出すように黙ります。というか、思い出すのはすぐなんですけれど、どれを話すかに迷うんです。
少ししてからまずはサッカーの事から始めようと決めました。
「では、日常の前にまずはサッカーから。私からしたら龍斗さんのサッカーはチームにとって。そして私にとっての太陽みたいなものでした」
「……え?」
「想像性と創造性。同じ読みの違う単語を兼ね備えたファンタジックなプレーに、優しい気質でチームの和を産む。私ですら驚くイメージを皆に見せて、勝利に導きます。私が月ならば、龍斗さんはファンタジスタとしても、チームの一員としても太陽でした」
私の感想を聞いた皆様はなんとも不思議そうな顔をしています。なぜだか分からないので首を傾げると背の高い男の人と、音無と呼ばれた先程のマネージャーが出てきました。
「俺は土門飛鳥って言うんだけどさ。その話、八神が話した時はあんたが太陽って言っててさ。少し感動したぜ」
「八神さんは妖夢さんを凄く大切にしていた事が八神さんのおかげで分かりました。とても羨ましいくらいに」
「……そうですか」
それを聞いた私は少し照れくさくなりました。そして龍斗さんの日常についても話すことにします。私の知る限り、ですが。
「龍斗さんは日常でも優しい人ですね。基本的に滅多な事では怒りません。そして、私が怪我する前は共にサッカーに明け暮れていました」
「二人共、サッカーが好きなんだな!」
「はい。とても大好きですよ。私にとって、私たちにとって。サッカーは絆ですから」
そんな私の語りを聞いていて先程から音無さんは少し不安そうに見えます。
逆に試合で見たキャプテン円堂さんは、私を見てワクワクしているみたいです。サッカーが本当に好きなんですね。
音無さんに関しては、後で色々聞いても良いとは思いますが……それはともかく。
「私も雷門中に先程転入届けを出しました。これからサッカー部で、宜しく御願いしますね」
「おおっ!?」
「すげぇな! 八神がベタ褒めのストライカーか!」
「……久しぶりに。それも味方でのプレーか。楽しみだな」
その私の宣言に先程の土門さんや円堂さん。豪炎寺さんでさえも嬉しそうにしています。
私も漸く復帰できる。フットボールフロンティアでもう一度高みを目指せることに感謝しましょう。
そして、今度こそ。今度こそ龍斗さんと共に。
「凄く。物凄く楽しくなりそうですね」
久方ぶりに希望を手に入れた私は、もう一度ボールを手にします。待ち望んだこの時を噛み締めながら。
■【三人称】■
『な、なんとなんと! 帝国学園に十点目! 世宇子中が止まらない!』
「……なんだ、これは。どうして」
その日。全国が集まるフットボールフロンティアのトーナメントが行われているその場所では、誰もが信じられない光景を目にしていた。
キャプテンの鬼道は皇帝ペンギン二号などの技の使用により足を痛めていた事から、ベンチ外でスタートした。
だが、展開が展開で出ようとした頃には全てが終わっていた。
「源田。佐久間……皆……」
どれだけ悔やんでも悔やみきれない。どうしてこうなってしまったんだ。
そんな苦しみを味わいながらも彼は病院に送られる仲間達と共にスタジアムを去る。
「神に逆らうということがどういう事か、教えてあげよう」
その中で世宇子中の一人がそう呟く。次は雷門だ。そう言わんばかりに笑みを浮かべた。
その笑みはどこか神々しさの中に恐怖を与える事を良しとしている感情を埋め込まれたものだった。