イナズマイレブン 光のファンタジスタ   作:suryu-

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二話目です。三話まで用意しております。


河川敷! 練習を見よう!

■【八神龍斗】■

 

河川敷。僕はあの後彼らの練習を見る為にもそこへと向かっていた。

勿論面と向かって見る訳では無い。まだまだ復帰するかを決めていないから、影から眺めるだけということは確定だった。

でも、久しぶりにサッカーを見る。あの時以来噂程度でしかサッカーに触れる事すら無かったのだから、当然なのだけれども。

 

「豪炎寺! いいシュートだったぞ!」

 

「円堂。お前もよく止めたな!」

 

河川敷近くに来て直ぐ、素直に驚いた。豪炎寺さんのシュートを止めるキーパーが雷門中にいたなんてという衝撃が自分に走る。

確か雷門の次の相手は御影専農だったかな。と自分の記憶と照らし合わせる。彼処は帝国に並ぶと言われるが、この雷門なら平気なのではないかと思うくらいには強く見えた。

 

「……って、やっぱりこれストーカーみたいだよね。影から見ているの」

 

ただ。こうして練習を影から見ていることに今更ながら罪悪感を感じるのだが、そこはなんとも弁明しようにも出来ない。

そんな中、雷門の選手のひとりが気になる技を使った事を僕は目撃した。

 

「……キラースライド? あれって帝国の技だよね」

 

詳しくは覚えていないが、噂程度に聞いたことがある帝国学園の技。その中の一つには、キラースライドという技が含まれていた。

とはいえ、今は僕は部員ではないと自分に言い聞かせると、静観を続ける。しかし、凄く楽しそうだ。

 

「最後に楽しんでサッカーをやったのって、何時だっけ」

 

素直に口から出てきた疑問は、自分の中に問いかけるように入ってくる。

 

”そうだ。僕は妖夢が居なくなってから、サッカーを楽しんでいない”

 

思い返せば心当たりも幾つかあるから、自分の事とはいえため息が漏れる。

だけれども、今はそのようなくらい感情は隅に追いやる。僕はこの場所でサッカーをやるのか。それを見極める事に集中を始めた。

 

「いくぞ、円堂!」

 

「流石だ。豪炎寺!」

 

「行くぜぇ、円堂!」

 

「染岡、いいシュートだったぞ!」

 

しかしまぁ、ここまで見て僕は思う。本当に楽しそうだなぁと。

楽しいという感情は、随分と無くしていた。でも、このチームはそれを思い出せそうなくらいには楽しそうに見える。

特にあのキャプテンの円堂守という人は、あの豪炎寺さんを復帰させるに至った人だ。人を惹きつける何かがあるんだろうな。と僕は少し羨ましく思った。

……そういう意味では、妖夢もそうだった。等と考えていると、また暗くなってしまうから、思考を無理矢理切り替える。

それにしても、偵察の数も増えている。まあ、野生中を倒したんだからそれもそうなるとは思うけれども。

それにしたって多いなと感じる僕は、思い違いではないと信じる。御影専農の人間もちらほらと見えているから。

……本当に影から見ているのがばれたらどうしようか。と悩んだのは内緒だ。

 

「あれ?」

 

そんな事を考えていると、御影専農の選手と思わしき人が円堂さんに決闘らしきものを申し込んでいる。

そんな事をしていいのかなとは思うのだけれども、御影専農の一人がボールを持っている。って、あの技は!?

 

「ファイアトルネード!」

 

「なっ!? ね、熱血パンチ!」

 

流石にあの不意打ちは円堂さんには大きいと僕は思う。でも、威力を見て感じたのは豪炎寺さんほどじゃないなということ。

……ああ、だからデータサッカーなのかと納得してしまった。

あれはデータをもとに模倣しただけであって、本物には遠く及ばないもの。豪炎寺さんならばもっと威力が出ていたと必然的に僕は察する。

ジュニア時代には妖夢と共に彼と何度も戦っているからその程度くらいは分かっていなければ、彼にも失礼だとも思う程にそのシュートは弱かった。

 

「とはいえ、それでも帝国に匹敵する……か。次の試合は勝てるか分からない。なのに」

 

”どうしてあの円堂守という人は楽しそうなのか”

 

不意に声に出してしまった自分の疑問に、まるで最初から分かっていたとでも言うかのように豪炎寺さんはこちらに歩いてきた。

勘で察したのかそれとも見えていたのか。恐らく、後者だと自分は思っている。

 

「アイツを見ていると、サッカー。やりたくならないか?」

 

開口一番の言葉はそれだ。確かに見ていて楽しさを感じるし、あの人は何か違うものが見える。まるで、嘗てのように 星 が見えた時の如く。

でも、今の僕にはその星が見える気がしない。だから雷門中サッカー部に入るかすら悩んでいた。

豪炎寺さんは、ため息をついたと同時に目を閉じる。何を考えているか僕には想像出来ない。

 

「お前、後でもう一度ここに来い。少し付き合え」

 

「……分かりました」

 

その言葉には迫力が込められていて、僕には頷くしか出来ない。ああ、本当に弱くなったな。そう自嘲するしかなかった。

 

 

 

■豪炎寺修也■

 

 

 

 

「……八神龍斗、か。魂魄妖夢と何時も一緒で全国では幾度となく戦った」

 

俺は脳裏で思い出す。そのプレーは圧巻と評したが、具体的な内容となると、それは鮮明に覚えている。

まるで、そこにあるもの全てを自分の絵の中に置いてあるような俯瞰的な視界の広さを持っていて、シュートまでの通り道が全部みえているかのようなプレイヤーだった。

その傍らに居るのが魂魄妖夢。彼女はトップ下の龍斗を支えるワントップのフォワードで、得点力も高く何より龍斗とのコンビネーションは他との追随を許さない程の速さを持つ。

ファンタジスタとしての龍斗と、相棒の妖夢。お互いにかけてはならない存在となっていた。

 

「けれども」

 

あの試合。何故か魂魄妖夢にはラフプレーを何度も向けられた。あのチームの代理の監督は妖夢を下げず酷使し続ける。

見ていて、胸糞の悪いでは済まない試合だった。観客からも当然抗議の声が上がれば、誰もが怒る。そんな試合でも彼女は戦い続けて、結果。

 

「魂魄妖夢は足を怪我して、戻れるかは分からなくなった。か」

 

あの時から何度も気になっていたあの試合。審判は何を考えていたのだろうかと今でも思う。

そして、その日から八神龍斗は表舞台から消え去った。魂魄妖夢が消えるのと同時に、彼奴はサッカーから見かけることが無くなる。もはや都市伝説と化していた。

そんな中、俺はこの雷門で再び八神龍斗と出会ったが、久しぶりに見た彼奴はかなり腑抜けていた。怯えていた。かつての強さはなりを潜めて、抜け殻になったのかとさえ思う。

 

「……だから、か」

 

「来ましたよ、豪炎寺さん」

 

彼奴は。龍斗は俺の前に現れた。やはり、あの時の覇気や存在感は今は見ることが出来ない。

だが、相対して確信した。こいつはまだ、捨てきってないのだと。

 

「龍斗。お前はもう一度サッカーをやらないのか?」

 

「豪炎寺さん。分かっているでしょう。僕はそんな簡単にピッチには戻れない」

 

「なら、なんで河川敷に来た。答えろ」

 

俺の問いかけに、龍斗は押し黙る。こいつもそう簡単に戻るつもりは無いのは分かる。だが、それならば河川敷に此奴が来た意味は見つからない。

俺の考えは分かっている。また、昔は見せなかった苦笑いをした後にこいつは頭を振るった。

 

「あの、円堂守って人。俺は見てみたくなったんです。何故か引き込まれる気がしたので。妖夢のように」

 

「……納得した。お前もか」

 

呟いた言葉にはひどく驚いたように見えたが、此奴も納得した。そんな顔を見せるとふっと笑う。だが、その笑みには力はない。

 

「妖夢からもプレー見てみたいって言われましたよ。でも、豪炎寺さん。でも、俺は……」

 

”此奴は。幼馴染みにすら戻ることを期待されても戻らないのか?”

 

昔見た時はこんな奴ではなかった。だから、俺は怒りを込める。お前はそんなに弱い男だったか。サッカーに対する情熱はなかったのか!

 

「お前……いい加減。目を覚ませ! ファイアトルネード!」

 

「っ……!?」

 

だから。俺は渾身の技をこの馬鹿に叩き込む。此奴はここで止まっていい男ではない。もっと上を目指せる男なのだ。

彼奴は足で受け止めると蹴り返すようにその足を振り抜く。そのボールは纏っているものが炎から光に変わり、返されたボールは重く感じたが受け止めることはできた。

 

「やれば出来るじゃないか」

 

「な、なんていう説得ですか……僕じゃなきゃ吹っ飛んでましたよ」

 

「ふん。お前ならばと思っただけだ」

 

相変わらずの球威に安心はしたものの、蹴り返したお前が言うかとつい口調を荒くしてしまう。情けないなとは思うが此奴が戻るのならそれでいいとすることにした。

龍斗は苦笑を隠さない。前みたいな明るい笑顔には戻っていないが、だがそれでも少しは希望が見えたようだ。少しは変わったと俺には見える。

 

「……分かりましたよ、豪炎寺さん。やりますよ」

 

「そうか。……なら、御影専農。お前も来い」

 

「え、は? 豪炎寺さん?」

 

俺からの宣言に此奴が戸惑ったとしても関係ない。試合には意地でも引きずり出す。そう決めたらやり通すだけだと俺は思ったからだ。

魂魄妖夢はおそらく試合を見る。ならば、あの場に持ってくるしかない。それが俺なりの、こいつに送れるエールなのだから。

 

「……待ってるぞ」

 

「ちょっ、待っ。豪炎寺さん!?」

 

”だから、お前は勘を取り戻しておいてくれよ。これでも期待しているんだからな”

 

 

 

■魂魄妖夢■

 

 

 

「……漸く、でしょうか。龍斗さん」

 

久しぶりに直接ではなく電話で話したこと。私は悪く思っていません。それだけではなく、嬉しいニュースがありました。

龍斗さんのサッカーがもう一度見ることが出来る。それは私にとって最大の幸せです。

 

「龍斗さん。私が怪我をしてから全然サッカーをやらなくなりましたよね」

 

おそらく自分を責めていたんだと私は思います。私でなく自分がそうなればと。

正直、帝国学園の誘いを断ったことは未だに後悔していないし、あの試合も結果勝ったのだから私に文句はない。

けれど、龍斗さんがサッカーをしなくなったのはずっと心残りでした。

 

「後もう少しやらなかったら、リュークさんとはやてちゃんと共に喝をいれていましたね」

 

そんな私の呟きを聞いている人は誰も居ない。でも、豪炎寺さんがきっと龍斗さんを動かしているだろうから、私は雷門中の次の試合相手。御影専農との戦いを見る事に決めた。

 

「……私もまた、ワクワク出来そうですね」

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