今回は割とオリジナル展開を構築する中でやりたかった事をやりました。どうしても原作では埋められなかった時間を埋めたらどうなるのかな。といった感じで書いてます。
それにしても、なかなかに感想が来ないのでアクセス数は見てるんですがそれでも読者様が居られるのか気になってしまいます。
もし宜しければ感想をお願いします。励みになります。
なんて事も言っておりますが、これからもよろしくお願いします。それでは八話をごゆるりと!
■【八神龍斗】■
開会式が終わってその翌日。雷門中のグラウンドが空いていた事からそこで一人トレーニングをしている。
他の人はイナビカリ修練場で練習しているのだが、自分は久しぶりに普通普遍のトレーニングをしていた。
というのも。自分は昔と違い 明確な必殺技 を使ってないのだ。
ボールが光を纏う事はあっても、その先の必殺技という状態にまでは至ってない。
響木監督のゴットハンドと対決した時が一番それに近い状態に戻っていたが、まだまだアレでは足りないのだ。
そんな練習を続けていると、こちらに一人の女の子が歩いてきた。
「どうなされましたか?」
「えっと、雷門サッカー部は何処にありますか?」
「あぁ、あっちですよ。案内しましょうか?」
「お願いします」
長いラベンダー色の髪をストレートにしていて、少しばかり大人しそうな美人さんだな。なんて感想は内側にしまいつつもサッカー部へと案内する。
ボロボロな小屋だが中は割と綺麗にされているのだ。これは円堂先輩とマネージャーの木野秋さんが創設時にやったらしい。
「此処です。ボロボロですいませんね」
「いえ、ありがとうございます」
それにしても、見たことのない女性を部室に一人放置させるのもどうかと思い、自分も部室に入り取り敢えずのんびりと過ごす。
会話もなく数十分程待っていると秋さんと音無さんが先に戻ってきた。
「八神君。部室に居てどうしたの? ……そっちの女の子は?」
「もしかして入部希望者ですか!?」
「はい。久遠冬花です」
「やった! お手柄よ八神君!」
「どうもです」
入部と分かればテンションの高い二人を眺めていて相当大変だったんだなぁと苦笑いする。
そういえばあの眼鏡先輩は最初は嫌がっていたのにいつの間にかイナビカリ修練場で練習してるよなぁとか関係ないことを考えていると円堂先輩達が戻ってきた。
「おかえりなさい。円堂先輩」
「おう、八神……え?」
と、そこで円堂先輩が冬花さんを見ると静止する。もしかして知り合いなのかなーと眺めていると「ふ、ふゆっぺ!?」と驚いている。やっぱりか。
「久しぶり。かな、守君」
「ど、どうして雷門中に!」
「それは……守君に会いに来たから、かな」
そんなやり取りを見ていると秋さんがどうしようと言った不安と焦りの目で見ている事から色々と僕は理解した。
「ふーん。ほーん? つまりアレですか? 正妻戦争ですか?」
「や、八神お前何言ってるんだ? キャラ違うぞ?」
「なるほど、正妻戦争……」
「お、音無さん!」
「あら、気になる単語ね」
「夏未さんまで!」
混沌としてきた部室だが、流石に弄りすぎたか秋さんの表情が暗い。というかこれ、逃げた方が……
「八神君。逃げないでね?」
と考えた所で秋さんに肩を掴まれる。あの、どうして振りほどけないんですかね。とか疑問は増えるばかりだ。
しかし、それを言っている場合じゃない。なんとかして逃げなければ生き延びられない。
「という訳だから誰か助けてください!」
「えっと。あ、あはは……」
「あら、私も質問がある側なのよ」
「音無さん。ダメだからね。夏未さんも今は待って」
「……八神。頑張れよ」
「そんなー!?」
だが、現実は無情。音無さんは封殺されて夏未さんは秋さん側。円堂先輩に至っては手を振られた。
冬花さんは首を傾げている事から多分気付いてない筈だけど、兎に角逃れようとしたが僕はドナドナされてしまった。
「それじゃあ少しお説教ね?」
「……はい」
■【久遠冬花】■
「雷門中サッカー部でキャプテンになった守君。かぁ」
私は漸く会うことが出来てとても嬉しかった。きっかけはフットボールフロンティアの地区予選をたまたま見ていたら、守君の事を思い出したから、かな。
どうしてこんなに大事な記憶を忘れていたかは分からないけど、私が引っ越す前にずっと仲良くしてくれた事も理解してからお父さんに雷門中に転校出来るように頼んで正解だった。
八神君の正妻戦争って言葉は少しわからなかったけど、それよりも。
「ふゆっぺ。これからまた宜しくな!」
「うん。守君」
こうして守君に再開出来たことが一番嬉しい。でも、ライバルが増えているのがちょっと複雑かな。
さっき名前を聞いた木野秋さん。雷門夏未さんの二人は多分守君が好き、なんだと思う。
そうだとすれば八神君の正妻戦争って言うのも間違いじゃないのかも。
「それにしても八神のやつ、大丈夫かな?」
「秋さん。怒ってたからね……」
「そうなんだよなぁ」
相変わらず守君はその辺りは鈍いみたい。でも、今はそれでいいと思う。
お父さんは私からのお願いに驚いていたけど、許してくれた事に感謝しながら。今は守君の腕に抱きついた。
「ふゆっぺ?」
「……久しぶりだなあって思ったら、つい」
「確かになー。小学校の小さい時以来だからな」
「うん。だからなんだか安心するかも」
「そうか?」
「うんっ」
こうして安心する事が出来るのはとっても久しぶりだし、くっ付いていると胸のドキドキが早くなる。
そんな私を見て音無さんはなんだかもじもじとしていた。
「どうしたんですか?」
「いや、そのー。なんだか少し羨ましいと言いますか。私はそういう相手が居ないので……」
「そっか……ふふ」
そういう事か。となんだかおかしくなって笑っちゃったけど、それはともかく。
本当に相手が居ないのかな? と少しだけ考えると一人だけ思い当たる人が。
「八神君は違うの?」
「は、はいぃ!?」
どんがらがっしゃーんと大きな音を立てて音無さんは転んじゃった。
いきなり聞いた私が悪いんだけど、守君や他のみんなもきょとんとしているからちょっとプレッシャーになるかも? と思いながらも安否確認。
「だ、大丈夫?」
「は、はいっ。大丈夫です!」
「無理しないで、ね?」
「はいっ」
多分大丈夫かなぁ。そう考えていると八神君は真っ白になりながらも帰ってきたみたい。……あれこそ、大丈夫なのかなぁ?
■【音無春奈】■
「私の相手。考えた事はありませんでした」
あのお祭り騒ぎの後に私は一人考えていたのだけれど、どうにも落ち着かない。恋人なんて考えた事が無かったからかもしれない。
でも、今はなんとなく気になる人が居る。とは思っている。
「……八神さん。だよなぁ」
帝国学園との戦いのあと、お兄ちゃんと話すように「頑張って。鬼道さんは今でも音無さんのことを大事に思っているはずだよ」と勇気をくれた人。その時お兄ちゃんと話した事を少し思い出した。
「春奈。大きくなったな」
「……そうだね。あれから何年かな」
久しぶりにお兄ちゃんと話す感覚はとても暖かい気持ちになった。お兄ちゃんも私と話をしたかったみたいだし。
そのお兄ちゃんと話をする勇気を八神さんから貰って話しているとお兄ちゃんがふと思い出したように問いかけてきた。
「そういえば、春奈。好きな人は出来たか?」
「え? そ、それは……」
「おそらく、八神だろうな」
私が戸惑っていると八神さんとお兄ちゃんは確信していた。なんでかは分からないけど。
「頑張れ。彼奴の傍には一人の女が居る。そこを奪わなければならないからな」
「う、うん」
これが久しぶりの兄妹の会話なのかなぁなんてあの時は思ったけど、忠告だったんだなって今なら分かる。
あの後八神さんの名前で検索したらジュニア時代の写真を見つけてしまった。
「……魂魄妖夢さん。かぁ」
八神さんがジュニア時代よりも前から、ずっと一緒にサッカーをしている人。インタビューにはそう書いてあった。
以前言っていた幼馴染みはこの人。とはっきり分かった。八神さんが一度サッカーをやめるきっかけになった試合の事も書いてあった。
「……八神さん。かぁ」
名前を呼ぶと少しだけとくんと心臓が跳ね上がる気がした。
帝国学園で私を気遣ってくれた時。そして私が八神さんを抱きしめた時の事を考えると、とても胸が暖かくなった。
多分、そういう事で良いんじゃないかな。と少しだけ考える。それが答えなのだとしたら。
「八神さんを好き。なのかなぁ。そこまでちょろいと思ってなかったけど……」
今はまだどうなのか分からない。でももし本当にそうなのだとしたら、奪う気持ちで行かなければいけないみたい。
「まぁ。やってみるしかないよねっ」
フットボールフロンティアの初戦。戦国伊賀島の前日にこんな事を考えていていいのかなぁと思うけれど、それでも気になったし私も乙女。突き進んだっていいでしょう!
「……八神さん。覚悟してくださいね!」
■【八神龍斗】■
昨日あんな事はあったけれど今日はフットボールフロンティア初戦。説教なんてなかったんだと言い聞かせている。
相手チームはどんな姿か。確認しているとなんだか本当に忍者みたいなユニフォームを。まさか、いやまさか?
そんな中で今日はなんだか違和感を感じる。というか、具体的には何故か自分の隣に必ず音無さんが居る。
「あ、あのー。音無さん?」
「はい。なんですか?」
首を小さく傾げて反応してくる。可愛いな。じゃなくて、なんでこうなってるんだろうと思いながら。
「今日はどうしてこんなに隣に居るの?」
「それは、秘密ですっ!」
ダメだ。理解できない。僕がそう考えるのを知ってか知らずか僕の腕に音無さんは抱きついた。
秋さんと夏未さん。昨日加わった冬花さんはなんだか微笑ましそうにこちらを見ている。いや、なんで?
「取り敢えず恥ずかしいんだけど……」
「私もです。でもこうします!」
「そ、そう」
試合開始までこうする気なのかなぁ。と僕がなんとも言えない恥ずかしさに襲われていると、相手選手の霧隠さんはなんでかこっちを見ている。
まぁどうでもいいや。と思考停止して僕は意識するのをやめた。
「なぁ秋。ふゆっぺ。夏未。音無どうしちゃったんだ?」
「それは多分。だけど」
「音無さんを変えるきっかけは」
「恋。かしらね? 円堂君」
「……そうなのか?」
後ろではなにか会話している気もするけど、僕は気にするのをやめた。というか、そうしないとこれ恥ずかしさで死にそうなのだ。
こんなので試合まで保てるかなぁ。とか考えても時間は進み、試合は目前になった所で漸く離された為に、色々疲れた感じで試合に望まなければならなかった。