まずはこんなにも更新遅れて申し訳ありません。実はもっと早めに投稿するつもりがインフルエンザにかかりまして、治るまで寝るだけの習慣を過ごしていました。
一応治って色々やっているのですが一度リズムを崩すと小説を書くのが大変で。
それでもこうして戻ってきました。そんな今回の話もごゆるりとなさってくださいな。
■【八神龍斗】■
『さぁ、フットボールフロンティア一回戦。雷門対戦国伊賀島! どのような試合となるのでしょう!』
「我々伊賀島流忍術が負けるはずがない!」
「皆、勝つぞ!」
相手チームの霧隠さんと雷門のキャプテン。円堂守さんは味方を鼓舞する。勿論僕の士気も上がる。
妖夢もきっと何処かで見てくれているだろうからという現金な理由かもしれないが、それでも。
「行くぞ!」
ホイッスルが鳴り響くと共に試合は開始する。どんなプレーを出来るか。なんて考えながらもキックオフ。
まずはフォワードの染岡さんと豪炎寺さん。そして僕も含め前線へボールを運ぼうとする。染岡さんがドリブルをしているその時。
「伊賀島流忍法。蜘蛛の糸!」
「っ、なんだこりゃ!?」
その技名の通り蜘蛛の糸がフィールドに張り巡らされ、相手チームのミッドフィールダーがボールを奪い去る。
忍術ってこういう事か! と内心で舌打ちしながらも自分がボールを奪い返そうとしたら相手が透けた。
「伊賀島流忍法。残像!」
「……はぁ!?」
ちょっと待て。どうやったらそうなるんだ。とか言いたいことは沢山あるがこれはまずいとすぐに戻る。
するとディフェンダーの壁山さんがボールを奪う。体格のでかさは武器となるものだな。と味方であることに感謝しながらもボールを受け取る。
「それじゃあ、行きますか!」
だが、ともすれば一度見たのだから種は読めた。恐らく相手は自分の足元に必殺技の罠をしかけるのだろうから、飛び上がればオフサイドにならないように、尚且つすぐに前に出られるようにしていた豪炎寺さんに上空からのパス。
綺麗に通ったパスと共に豪炎寺さんは空へと舞い上がる。ということは。
「ファイアトルネード!」
「伊賀島流忍法! つむじ風!」
だが、相手ゴールキーパーは大きなつむじ風を起こしてボールを止める。
なるほど。そういう技なんだな。と理解をした上で相手ゴールキーパーの投げたロングスローパスを飛んでパスカットする。
「そこだ!」
ウイークポイントであろう飛び上がっている間にシュートをゴールに叩き込む。だが。
「つむじ風!」
再び竜巻のようなつむじ風がボールの進路を阻むとボールは再び相手ゴールキーパーの手の中に収まる。
飛んでいる間も使えるのか。と内心舌を巻きつつも着地すると、再びのロングスローで通過したボールを追いかける。
ボールを持ったのは戦国伊賀島のキャプテン。霧隠才蔵。そのボールを蹴るとボールが土を纏った。
「……は?」
「伊賀島流忍法。土だるま!」
いや、待て。それは忍法なのかとツッコミをしたい所ではあったが威力を増しながら転がる土だるまを前に円堂先輩は手を構えた。
「ゴットハンド!」
光の手は土だるまを受け止める。だが、土だるまの転がりの強さは増してゴットハンドにヒビをいれるとそのまま押し通った。
「っ、止められないのか!」
全国に来たからには分かっていたことだがゴットハンドではシュートを止められないということに、ここからは自分達が点を取るしかないなと腹を括る。
やるしかないと決めたら自分は自分の全力を出すしかないのだ。
「……試合はまだ始まったばかり、か」
■【音無春奈】■
「ゴットハンドが破られちゃいました……」
「そうね、厳しいわね」
「守君……」
現在私達マネージャーはベンチにて試合を見ているけど、戦況は雷門が一点を追う形になっている。
ゴットハンドが通じないということは、必殺シュートを撃たれたら危ないということ。
でも、雷門サッカー部の皆は諦めていない。これからが勝負だと息巻いている。
「八神さん……」
今までは完全に入っていた八神さんのシュートは止められてしまった。精神的なダメージを受けてないか心配になる。
「もしかして、八神君が心配?」
「え?」
「そんな顔してたからよ」
木野先輩が私に問いかけたのは私がちょうど考えていたこと。
八神さんの事はとても心配なために頷くと、ふふっと木野先輩は笑った。何かおかしかったのかな? と首を傾げると手をひらひらと振った。
「何かがおかしかった訳じゃないわ。でもね、ピッチに居る八神君の様子。見てみたら分かるわ」
「は、はい」
言われた通りに八神さんの様子を見ているとその答えはすぐに目に入る。なんとも楽しそうな笑顔だ。私も今まで見た事がなかったかもしれない。
もしかして、だけれども。
「魂魄妖夢さんがこの場所に? もしくは……」
__物凄く、ノっている?__
「魂魄妖夢が誰かは分からないけど、ノってるのは確かじゃないかしら」
「そう、ですね」
ボールコントロールもいつもよりキレがあるしスピードも何だか少し早くなっているような。
中学のスピードじゃなくてプロの試合ペースを見ているような感覚を覚えたその先には。
「いいね……"まだやれる"」
確かに聞こえたその呟きは確信をはらんでいるような。その言葉とともに八神さんは走り出した。
次の瞬間、フィールドに風が吹いた。その途端ボールを持った八神さんは相手ゴール前に立っている。……え?
「は、早い!?」
「なんだ、こいつ!?」
「星は、見えた!」
次の瞬間放たれたシュートは光を纏って相手ゴールキーパーの巨大なつむじ風を突き抜けて、ゴールに刺さる。
「……まだまだ、か」
「すごい……!」
八神さんは納得していないみたいだけど、一点をもぎ取ったのは事実だしボールはギュルルっと音を立て高回転でまだ回っている。
「もう一点。頑張って!」
「大丈夫……!」
秋さんや冬花さんの応援を受けつつも皆さんは走り続ける。そうして前半は終わるのだけれども。
「なかなかに次の得点が生まれないな」
「まぁ、とりあえず一点はもぎ取りましたよ」
「流石だとは思うな」
そんな感じで和気あいあいとしている皆さんの中にいる八神さんの隣に私は立つ。やっぱりかっこいい。
「今日は音無さんやけに隣に来ますね」
「嫌ですか?」
「いやまぁ、そうじゃなくて」
とりあえず八神さんはなんだか私のことを気にし始めてきた。これは第一歩かなぁなんて。
それにしても戦国伊賀島はなんとも不思議な技を使うチームだなぁと考えていると八神さんはこちらを見ている。首を傾げると彼は笑った。
「……楽しいかい?」
「はい、全国は凄いですし見ていて楽しいです!」
「それは良かった」
その問いかけの意味は分からないけれど、聞かれたことに対して答えると八神さんは微笑んだ。
それと同時にスイッチが入ったようにも見えるけれども、このあとの後半戦がどうなるか。ワクワクを覚えた私は八神さんの手を握った。
「音無さん?」
「勝ってくださいね、八神さん」
「……勿論」
私の問いかけに答えると、八神さんは後半のためにピッチに向かって走る。
まるで一陣の風のように走り去る姿は新たな世界を感じさせてくれる。そんな気がした。
「……かっこいいな」
ふと出た言葉は聞こえているかは分からないけれど、始まった後半をゆっくりと眺める事にした。
■【八神龍斗】■
「さて、後半か。勝てるかどうかはまだ分からないけど」
見通しを立てながらもかなり時間が経った後半をプレーしている中で、何かしてきそうな相手をすべて封じる覚悟で望む。
恐らくは、相手キャプテンの霧隠さんにボールが集まった時に発動するものだと思えば仕掛けは簡単なのだ。
「行くぞ! 偃月の……なにっ!?」
そのボールをカットすればいい。そんな簡単に言うなとも言われかねないが来る場所がわかっている以上は、誘って奪えばいい。
僕としては相手の星を読む感覚だからわりと楽にできるのだがここからどうやって得点に繋げるかがまだ決まっていない。
誰か特典の出来そうな人は居ないのか。そう思って周りを見渡すと決まった顔の豪炎寺さんと風丸先輩が居た。
あの二人ならば任せていいのかもしれない。そう思って大きくセンタリングをあげて 丁度二人の真ん中 に落とす。
「得点。お願いしますよ!」
「おう!」
「任された!」
二人は丁度真ん中に落ちたボールを見ては走り寄ると笑みを浮かべた。
同じタイミングでボールを蹴りあげると風見鶏は今再び舞い上がる。
「炎の!」
「風見鶏!」
「なにぃ!?」
炎の風見鶏は燃え盛りながらも相手ゴールへと飛んでいく。そして勿論そのボールは止めることは出来ないだろう。
「伊賀島流忍法。つむじ風! ……なにっ!?」
風見鶏はつむじ風などに阻害されずにゴールに入る。そして、勝ち越し点をとったところでホイッスルが三回鳴る。自分たちの勝ちだ。
「よし、全国一回戦突破だ!」
「流石だな、八神!」
「良くやった。龍斗!」
ワンゴールにワンアシスト。この結果は悪くは無いし周りの人達も自分を褒めてくれる。それは嬉しいんだけど、少し足りないものがあった。
必殺技になってない。と言うことから自分のシュートはまだまだ昔程じゃないという事だ。
まだ何が足りないのかは分からない。複雑な気持ちになりながらも今は仲間の皆に微笑む。
「いやー、今回はやらせてもらいました。まぁまだまだですけど」
「それでもだ。相変わらずお前はゴールへの道筋が見えているんだな」
豪炎寺さんからの言葉には「はい。まだ完璧ではありませんが」と返答する。実際まだ自分のシュートやドリブルはまだまだ改善の余地があるのだ。そこを突き詰めない理由には行かない。
そんな事を考えていると音無さんは自分の隣にまた立っている。
自分は何をしたかは覚えていないのだがそれはともかくとして彼女にも微笑んだ。
「勝ったよ、音無さん」
「はい。見ていました」
自分の言葉に律儀に頷く彼女を見てはなんだか可愛らしく見えるのだが、それはそれとしてゆっくりと空を見上げる。
この時間だから、星が見える事なんて早々ないのだがそれでも探すのをやめない。
自分にとって星は大切なもので、それがあるからこそサッカーも上手くいく。
「……やっぱり僕のピッチには妖夢が必要だな」
誰かに聞こえたかは分からないけれども、思ったことは事実である事から少しばかり苦笑いをしてしまう。
そんな自分を見て音無さんはゆっくりと手を握った。
慣れない暖かい感触に少しばかりドギマギしつつもそれでも握り返した。
「……ありがとう音無さん。僕はまだまだ高みを目指さなきゃ」
「はい。頑張ってくださいね!」
僕は頷くと、帰りのバスの方向へと向かう。手を引いていることは気にせずに、今は隣にいる音無さんを連れているにも関わらず妖夢の事を思い出していた。