出久君の幼馴染がTS転生オリ主だった話   作:Dekoi

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頭をかっらぽにして書こうと思っていたら変に凝ってしまい、碌に掛けなくなってしまう作者です。なんで他の方は会話の所があそこまで上手く書けるのか、とてもすごいと思います。


少年

 私が思うに大抵の人間にとって初めての出来事に直面した時はその存在に対して何らかの感情を示すことは間違いないはずだ。

 例えば初めてイルカを目撃した少年は、己が知ることのなかった未知との遭遇に目を光らせる。もしくは腰が引けるなり泣き出すなり何らかの感情を見せるはずだ。

 例えば初めて大量に咲き乱れる向日葵畑を見かけた少女はその中を走り回るかもしれないし、その余りに大きな花を観察し続けるのかもしれない。

 そう、大抵はそういうものだと私は考える。これは大人になっても変わることのない話だろう。大人であっても談笑している場で唐突に宇宙人が現れ「この地球を征服しに来た」と言われれば何らかの感情を示してくれるはずだ。戸惑い立ち竦むなり、恐れ逃げ出すなり、武器を持ち歯向かうなど様々な行動を示すはずだ。

 

 その反面、人間は慣れていく生物である。

 一度読んだはずの小説を二度三度楽しむことはあれども、百も読み返せば飽きが来てしまう。

 新人の時にあれだけ慌てて取り組んでいた仕事も十年もたてば難なくこなせてしまう。

 もちろんそうでない人もいるのは確かなのだろう。しかして、毎朝昇る太陽に毎朝感動するような人間はそういないはずだ。あれだけ恋焦がれ淫らな日々を送っていた夫婦の将来もいつかは冷え込んでいくものが多いように、人間は出来事に対して慣れていく生物である。

 

 

 この案件は私にも相当するものである。

 “個性”という超能力溢れるもの、“個性”を悪用するヴィランとそれによる被害を防ごうと働くヒーローという存在に対してこそ私は色々と感情を抱きはした。小説や漫画にも登場するヒーロー像とはまた違ったものを見せつけられることは多くあったものの、それに対しての情報は私に新鮮味を与えてくれた。思わずこの案件について詳しく知ろうと思える程度には、とても興味深く感じられた。

 

 だが、それ以外での案件、現在幼稚園児としての生活を送るうえでの日常的なことに関しての飽きはもう始まっているのであった。

 何せ一度は成人としての生活を送っていたのだ。並大抵の遊びは行ってきたし、そもそも今更幼稚園児の遊びに適応できるかというとそれは私の精神衛生上かなり辛いものがある。正直な話、虫を捕まえに森の中を冒険したり、野原で草冠を作ったりするよりかは室内でパソコンでも触るなり本でも読んでいたいのだ。

 あと、“個性”を用いた遊びに巻き込まれるのも大変迷惑である。そもそも“個性”自体多量の危険性が含まれている可能性があるというのに、幼稚園児というストッパーが存在しない環境下での遊びは大変危険で危ない。本当に危険で危ないのだ。何度髪を燃やされかかったと思っている。私の“個性”がいくら便利だからと言って巻き込まないで欲しい。

 

 それとともにこの時期に限るものではないし人間に限った話ではないが、生物は異物を嫌う。己とどうしても違うものを持つものを敵として認識してしまう。人間も古くから異教徒や異民族に対しての弾圧のことを考えれば致し方ない話であろう。

 私のような幼児の振りをした成人など、彼ら特有の謎直感や本能によって排斥されることは考えられた。

 

 特にこの時代においての人間は“個性”が強く関わっている。親からの遺伝物質であるだけであり、それでヒーローを目指す判断材料として用いられる“個性”は幼稚園児であっても分かりやすい指標であった。いや、幼稚園児だからこそというのもあるのだろう。彼らは知識を持っていない。だからこそ、分かりやすい指標や本能的な物での判断が強まる。故に彼らの中で強い“個性”と弱い“個性”という関係が作られるのであった。

 

 その中において私はそれなりに目立ちはしないがそれなりに有能な“個性”だと把握している。だが、それはあくまで私が把握している認識であって、他の子にとっての評価は様々な物になっていた。彼らにとっての強い“個性”を持っている子からは陰に隠れてこそこそしている奴として、弱い“個性”としての子からは己のと比べられての嫉妬を受けていた。私にとっては同じくらいなのではと思っていた“個性”持ちの子からも侮られたりしていてとても複雑なことになっている。

 

 

 ……総合すると私個人の精神的なものとしても、“個性”的なものとしても、この幼稚園にいる間の私は一人でいることが多くなりつつあったのであった。

 

 最もそれが私にとっては大変ありがたいことでもある。

 そもそも素性を隠し演技を行っている身としては下手に化けの皮を剥がす必要が減るため万々歳である。

 あと髪が燃えてなくなることが減ったのも助かっている。男性時ではできなかった長髪にしようと頑張って長くしていたというのに、毛先から燃え広がりまばらになっていく髪の毛を見ると悲しくなってくる。その後も整えるために他の髪ごとバッサリ切られた時は泣きたくなってくる。

 

 言い訳のように聞こえてしまうが、私の頭皮は別に禿げているわけではない。前世も禿げているほどの齢ではない。朝起きた時に枕に散らばった髪の毛を見て虚しくなったことなどない。ないったらない。

 

 

 ~~~~~~~ 

 

 

 そんな扱いをされている私だが、幼稚園においても母に行かされる公園でも特定の棲み処のようなものがある。現在の齢的に言うならば秘密基地みたいなところだ。

 もちろんそんな立派なものでもなく、隠れたところにあるただの岩だったり、公園の端にある東屋だったりを勝手にそう呼んでいるだけだ。

 それでも他の子たちが立ち寄るような場所でも無いため、一人でいたい時にはとても重宝している場所だ。いても子どもの付き添いにいる親と思わしき人程度がいるくらいだ、病弱な少女の振りをしていればそこまで気にしなくてもいいことだろう。

 

 

 そう、普通ならば子どもであればそんなところにはいない筈である。

 

 だが、今世というべきかは分からないが、今の私にとって普通という言葉はかけ離れているものである。

 

 

 

 ―――――――――――――― 

 

 

 

 公園の東屋も今は春だからこそいいが、流石に夏や冬のような季節はどうすべきか検討しなければいけないか。少なくとも本を読むときにべしゃべしゃになったり、手がかじかんでページがめくりにくくなったりすることを避けねば……。

 

 その日はそんなことを考えつつも公園に立ち寄ってきていた筈だ。

 今日もいつも通りゆっくりと本を読めればいいのだが、生憎時間が被ってしまったのかは分からないが、グラウンド部分にあたるところで同世代と思わしき少年らが遊んでいるのを見かけた。

 別に彼らとの直接の面識はなく、私にとっては互いに公園に来ている奴程度のもののはずだ。彼らにとっても私の存在は不思議な存在程度に収まっているのかもしれない。そもそものところ、会話をしたことがないからどう思われているかは不明であるが。

 

 とにかく今日も東屋でゆっくりと本でも読もう。そう思い公園の端から抜けるように東屋に向かったのだ。

 ふと、彼らから目線を外し東屋へと向けたとき、奇妙な影を見かけた。いや、影というには明るすぎる色合いの何かだ。

 また数歩、歩みを進めたところで理解できた。その色は服である。服を着た、人である。その姿や形、服のデザインを考慮して、私や彼らと同年代の子だと推測した。付け加えれば椅子の部分に寝転がっているようだ。

 

 ……。うん、まあ、一人くらいいても問題あるまい。話しかけられても適当にあしらえば勝手に興味を無くしてくれるだろう。

 そう思い、また歩き始める。そして、東屋の影を踏むくらいにやっと気づいた。

 彼は確かに寝転がっていた。それは正しかった。予測通り私と同年代そうな緑髪の男の子、4,5歳程度の幼児であることも正しかった。

 

 しかし、服に着けられたおかしな位置にある泥、手足や膝の所に擦り傷、極めつけに顔だけにとどまらず腕やすねにわたってまばらに、かつ広範囲に広がる打撲の跡。こればっかりはこの位置に立つまでわからなかった。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。え、これ、大丈夫なの?明らかに転んだのとは全く違う傷だよな?私には誰かに殴られたり蹴られたりした後にしか見えないのだけど?大丈夫なの、これ?DVでも受けてんの?それとも虐めでも受けているの?幼児なのにハード過ぎやしない?この歳で虐めとかハード過ぎない?やばくない?

 

 ………………………………あー、うん、流石にこれを無視して本に読みふけるのも、居心地が悪い。少なくとも成人メンタルとして、子供が傷ついているのを見過ごすのも気分が悪い。

 うん、そうだな。治そう。治せなくとも傷の消毒くらいはしてあげた方がいいな。

 

 ……なんか人体実験みたくなって嫌だが、私の“個性”も使って治してあげようかな?一応治療実績は何度もあるし。

 

 

 ~~~~~~~~~~~ 

 

 

 途中、公園で遊んでいた彼らが声を掛けてきた。どうもこの寝ている……気絶している?少年の顔見知りのようだが、まだ目が覚めていないこととその看病に私がいるためか、それだけを確認したらどこかへ行ってしまった。顔見知りなら心配くらいはしてほしいものだが、これを察するに元からこんな扱いだったのかもしれない。割と彼らからの虐めを受けている可能性が強まってきたように思えてくる。

 

 とはいえ今はこの少年の手当てをしなくては。手持ちのペットボトルに水を汲み、擦り傷にそっとかけて泥や砂を洗い流す。途中痛そうな顔をしていたが、消毒はしっかりやらないと後々大変なことになる可能性が十分に考えられる。

 ある程度洗い流したら、傷や打撲跡に痛くならないようにそっと触れ、“個性”を発動する。ゆっくりとだが、徐々に傷が消えていっているのを確認して安心する。つい安堵によるものかの溜息が出てしまうがこればっかりは仕方ないだろう。そもそも超能力自体が空想の世界にいたというのに、たかが数年、いや検査から逆算して十数ヶ月であるのにそれをうまく使いこなせなど自己価値観的な物で困難なのだ。それ故うまくできたのであれば仕方ないはずだ。

 

 とはいえこの“個性”による代償かは知らないが、行ってしまうと疲労感が発生してしまう。特に今回は軽症例とはいえ広範囲にわたっての治療であることから、日常で引っ張り出される例に比べれば当然辛いものがある。

 かといってここで眠るわけにもいかない。そのまま寝過ごし門限を迎えたときの母である存在からの説教を聞くわけにはいかない。放任主義なのを良いことに割と好き勝手している所を変えられてしまっては困る。それに、この少年に怪我の治療のことと先ほどの彼らが別の場所に移動したことも説明しておいた方がいいであろう。

 

 ……それにしても、この少年はよく眠っている。痛みによる刺激に反応はあったとはいえ、ここまで意識が鈍いようだと頭部への衝撃などで脳に損傷が考えられるかもしれない。あと数分、起きてこないようであればどこかの大人に頼んで病院に連れて行ってもらった方がいいかもしれない。

 

 

 ~~~~~~~~ 

 

 

「……う、んんぅ……あ、あれ?かっちゃんは?みんなは……?」

 

 暇つぶしに雲の形を眺めていたら横からの声に視線を戻す。

 どうやら少年はいったん無事のようだ。とはいえ今は良くても後から症状が発生してしまうことは十分に考えられる。あれほどの怪我をしていたのなら、やはり病院に連れていくべきだろうか。だが、見ず知らずの私が先導していくのも奇妙な話だ。この子の親御さんに事情を説明して連れて行ってもらうのが吉だろう。

 

「……あの、君は、誰?」

「?……ああ、すみませんね。少し考え事をしていました」

 

 っと、今は考え事をしている場合ではない。

 

「そうですね……私が誰なのかという事について説明ですね。それでしたら3時間ほどかかってしまいますが、それでもよろしいでしょうか?」

「……えっと、3時間ってどのくらい?」

 

 ……あっ、失敗した。この歳の子たちはまだ時間についての概念はまだ理解していないのかもしれなかったはず。だったら、

 

「具体的には……太陽が沈んじゃうくらい?」

「長いよ!?どれだけ話したいのさ!?」

「……ふふっ、冗談です。冗談ですので気にしないでください」

 

 私自身としては洒落になっておらず冗談では済まない言葉であったが、少なくとも遠慮気味に怯えていた様子は無くなったようで何よりだ。だからあまりこっちを睨まないで欲しい。少し怖い。

 

「端的に私が誰なのかといえばですが、あなたの傷を治した人、でいいですか?」

「たんてきって何……って、あれ、僕の傷が、いたく、ない……?」

「そりゃそうですよ、“個性”もしっかり使ったうえでの治療ですからね。ちゃんとのちのち響かないようにしていますからね」

「のちのち?ひびかない?」

「……あー、ちゃんとしっかり治しましたよってことです」

 

 やはりというべきか話しづらい。そもそもいちいち言い換えるのも面倒なのだ。幼稚園ではできるだけわかりやすいよう話しているが、それでも言い換えは必要だ。早く成長して欲しいものだ。……だから友達も話してくれる子もいないんだろうな。別にいいけど。

 

「……え?あれ、かっちゃんたちは?みんなはどこいったの?」

「先ほどまでここで遊んでいた子たちですか?彼らならもう別の場所に遊びに行ってしまったようですが」

「え。そ、そんなあ……」

 

 がっくりと肩を落としているようで申し訳ないが、彼らを引き留めるほどの義理はない。

 

「とりあえず彼らを追いかけるなり、一旦お家に帰ってはいかがですか?私としては彼らの遊び場所が分からないようでしたらお家に帰る方をお勧めしますが……」

「……ううん、とりあえずかっちゃんたちを追いかけるよ。せっかく遊びに誘ってくれたんだし、最後までいっしょにいたいからね」

 

 ……まあ、本人がそう言っているのなら別にいいか。

 

「それにしてもかっちゃんたち、本当にどこに行ったんだろう……?」

「彼らでしたら公園を左に出て真っ直ぐ歩いていましたよ。その先までは分からないですが……」

「……あっ、それならあそこだ!おしえてくれてありがとう!」

「どういたしましてです……って、いきなり走るのは危ない気が……」

 

 さっきまで寝ていたというのに、急に走り出したら足がもつれだしたりしないだろうか。怪我自体は治しはしたが大丈夫なの―――

 

「むぎゅっ!?」

 

 ……言わんこっちゃない。そのまま走り出した少年はものの数歩で見事なまでに転んでいた。

 

 …………はぁ。

 

「遊ぶ場所が分かっているのなら急がなくてもいいでしょう?とりあえず傷を見せてください。治しますから」

「だ、大丈夫だよ。これくらいなんとも……」

「それで放置したままで悪化したら大変なことになります。それに治せるのに何もしないというのは性に合わないのです。大人しくしてください」

「……は、はい」

 

 というか、割と泣きそうな顔をしているのに大丈夫だと言われても信用できない。大人しく治療されていけ。

 

 この後、この少年の怪我を“個性”で治療し、お互いのことを少し話してから別れた。私はそのまま公園に、少年は彼らの所に遊び場へと。

 ……にしても、彼は大丈夫なのだろうか。私個人としてはいまだ彼のDV疑惑や虐め疑惑、頭部への打撲による脳震盪が考えられて心配だ。

 

 ま、それはまた今度会ったときに聞いてみればいいか。また会ったときに話す約束自体はしておいたし、問題はないだろう。

 

「それにしても……緑谷出久、か」

 

 名は体を表すというが、この世界は“個性”に見合った名前を付けることが多い。そんな中で彼の“個性”はいったい何なのだろうか。あそこまでの怪我を負っていたのだ、それが関与しているのなら何か手助けでもしてあげたいものだ。

 

 

 

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