破壊と創造の異世界放浪記~黒龍の兄、白龍の妹~   作:馬王

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過去に書いてたものにアレンジを加えた
オリジナル作品です。

最初ながら、楽しんで頂けたら幸いです。


一話:兄妹、天界に招待される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜中を迎え、人々が就寝している頃。とある一軒家にて、一人の怒号が響き渡った。

 

「ちくしょう! 親父、もう一回だ。もう一回俺と腕相撲しやがれ!!」

 

「ハッハッハ! いいだろう、何度でも受けてやる! 結果は目に見えているがな!!」

 

「ンだとコラァ!!」

 

「やんのかコラァ!?」

 

 リビングにあるテーブルを舞台に、言い合いの末に手を互いに合わせるのは長男の長谷川黒鬼と、その父親。

 黒鬼は歯を噛み締め青筋を浮かべ、父親の方は笑顔でありながらも殺気立っていた。

 

「お母さん、クロにぃとお父さんうるさい」

 

「ふふ、いつものことだわ。こういうのって男の友情?ってやつかしらね」

 

「……違うと思うよ」

 

 腕相撲で白熱し合う黒鬼と父親を、離れた位置にあるソファーで座り観戦するのは長女にして黒鬼の妹である長谷川白姫と母親。

 母親は紅茶を啜りながら笑顔で見ては友情と言うが、白姫はジト目で肯定する。

 

「ぐぬ……ぬぅ……!!」

 

「威勢だけよくても勝てないと意味はないよな黒鬼。ハハハハハハハ!!」

 

「こんのクソ親父ィ……、舐めやがって!!!」

 

「うおっ!?」

 

 挑発してくる父親にブチ切れた黒鬼は精一杯の力を振り絞り父親の腕を押し倒していく。

 それには驚愕を見せる父親。気を緩めていたら間違いなく負けていた。

 

「はぁ……はぁ……! よっしゃ、あと少しだ!!!」

 

「させる……かぁ!!!」

 

「クロにぃがお父さんを押してる……。珍しい」

 

「これは、もしかしたら勝てるのかしら?」

 

「観念しろやクソ親父、腕相撲から定年退職しやがれええええええええええええええ!!!」

 

「ふおおおおおおお!?」

 

 叫びと共により強くなる黒鬼の力。父親はあと少しで手の甲が付いてしまうことに、焦りを見せる。

 そして黒鬼は心の中で感じた。これはいける、やっとの勝利が目の前にあると。

 そうなれば気分は高揚し、やる気に満ちる。だが、あまりにも力んでしまった結果。

 

「は……は……、はっくしょん!!!」

 

「隙を見せたな黒鬼、オラァ!!!」

 

「ぎゃあああああああああああああああッ!?」

 

 ドゴンッ!と鈍い音と共に黒鬼の手の甲が思い切りテーブルに押し付けられる。

 その威力は木製のテーブルにヒビが入る程。黒鬼の口からは絶叫が木霊する。

 

「フハハハハハ! 最後の最後で油断、そして慢心するのは相変わらずだな黒鬼!」

 

「負けた……また負けた……なんでくしゃみしたんだよ、なんで慢心したんだよ俺……ちくしょう、くそったれ……」

 

「あらあら。白姫、黒鬼がネガティブモードに入ったわ、後はお願いね」

 

「うん、任せて」

 

 高らかに勝利したことに喜ぶ父親の元に母親が寄り添い、床でうつ伏せのまま念仏でも唱えるようにぶつくさ言う黒鬼の元に白姫が寄り添った。

 

「クロにぃ、今日はもう終わりにして寝よ?」

 

「うるせぇ……俺は所詮、敗北者だ……。敗北者はベッドに寝る権利は無い、床で十分なんだよクソッたれ……」

 

「はぁ……。クロにぃは強いよ? でも、お父さんは腕相撲の世界チャンピオンなんだから仕方ないよ。今日はもうやめて明日また頑張ろうよ。ね?」

 

「……白姫」

 

「よしよし」

 

「白姫いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!」

 

 妹に慰められる黒鬼は顔を上げ、思い切り抱き着いて悔しさで涙を流す。

 強い表に弱い裏、とはこのことだろうか。抱き着いてくる黒鬼を嫌がることなく、頭を撫でる白姫。

 

「クソ親父はぜってぇに殺す……。息の根を止めてやる」

 

「ちょっと、なんか黒鬼の口から度が過ぎた殺意を感じるんだが!?」

 

「ふふ、後ろから刺されないようにしないとね。さぁ貴方、黒鬼も白姫も寝るみたいだし、私たちも寝ましょうか」

 

「あ、あぁ……」

 

 殺意に満ちている黒鬼に背筋を凍らせる父親を、母親はなだめながら共に部屋へ入っていく。

 白姫もまた、黒鬼を立たせてなだめながら自室へと戻っていく。

 

「明日こそはぜってぇに勝つからな、絶対に」

 

「うん、頑張ってクロにぃ。応援してるから」

 

「おう、見てろよ。俺が親父に勝つところをな!」

 

 高らかに笑い、そのままベッドにダイブする黒鬼。するとものの数分で、いびきが聞こえる。

 動いている時は活発的だが、寝ている時だけは静かにする黒鬼のギャップに白姫は小さく溜め息を吐く。

 

「おやすみなさい、クロにぃ」

 

 黒鬼の自室の電気を消し、白姫は一言だけ残してドアを閉める。そして隣にある自分の部屋にいき、電気を付けずにそのまま同じようにベッドへダイブする。

 

「クロにぃ、頑張ってね……」

 

 白姫は黒鬼が父親に勝つよう応援し、静かに目を閉じて自分も夢の世界に浸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……のです。 起きるのです、若き兄妹』

 

 

「……う……ん……?」

 

 

 エコーが掛かっているように聞こえる透き通った綺麗な声に白姫は目を覚ます。

 身体を起こし、目をこする。そしてまだ覚醒しきれていない目で辺りを見渡す。

 そして気づく、雲の上に居るのだと。そして目の前を見てみるとそこには、女神が居た。

 

「女神……様……?」

 

『如何にも。あまりの出来事で申し訳ありませんが、時間がありません……。よろしければそこに寝ている、その……。パンツだけ履いているお兄さん方を起こして貰ってもよろしいでしょうか……?』

 

「えっ?」

 

 頬を赤らめ恥ずかしそうにそっぽ向く女神に、白姫は惚けた声と共に横を見てみる。

 するとそこには大の字、尚且つパンツ一丁でいびきを掻いて寝ている黒鬼が居た。

 

「クロにぃ、起きて。クロにぃ」

 

「うっせぇな……、あと少しだけ寝かせろ……」

 

 何回か身体を揺らして起こしてみると、黒鬼は白姫の腕を払いのけ、また眠りにつこうとする。

 兄である黒鬼が起きないと判断した白姫は、不意に女神の方を見てどうしようかという困った顔をする。

 

『どうしましょう……。これから話す内容は、貴方とお兄さん方二人の合意が必要なのですが……』

 

「頑張って起こしてみる。クロにぃ、起きて」

 

『起きてください、お兄さん』

 

「ぶっ殺すぞ……」

 

『ひぃ!?』

 

「……。クロにぃ、お父さんが腕相撲したいって――」

 

「なに!? 上等だコラァ!!」

 

 白姫の言葉に、黒鬼は飛び起きて腕を振り回す。その攻撃的でやる気に満ちている黒鬼に、女神は震え、白姫は深い溜息を吐いた。

 

「……って、あぁ? 此処はどこだ……?」

 

「クロにぃ、前を見て前」

 

「前? ……うお!? なんだこの露出メス女は!」

 

『ろ、露出……!? いきなりなんてことを言うのですか貴方は! し、失礼にも程があります!』

 

「透け透けな衣装を着てる時点で露出も同じだろうが! しっかりした服を着やがれ露出メス女!!」

 

『これが正装なんです! しかもそれを言うなら貴方もでしょう!? パンツ以外にも服を着てください!』

 

「これが俺の正装だ!」

 

 女神を目の前にした黒鬼は早くも突っかかり、両腕を組みながらパンツを強調する。

 それには女神も見てられないと顔を両手で覆い隠す。白姫といえば、呆れていた。

 

「女神様、この際此処がどこなのかは置いといて話をしてくれる? 本当は心の中で動揺してるけど、時間が無いって……」

 

『そ、そうですね。このままじゃ埒が明きませんし……。それでは、単刀直入に聞きます。どうか、あなた方二人の力で異世界グランディールを救って欲しいのです』

 

「異世界グランディール? おい、随分とぶっ飛んだ話だな。まるで漫画やアニメみたいな展開だ」

 

『……そう言われても仕方ありません。ですが、貴方たちから見て非現実な状況がこうして目の前にあると思います。信ずるも信じないも、話を聞いてから決めてもらっても構いません。ですので、どうか話だけを……』

 

 突如として異世界を救って欲しいと言ってきた女神に対して黒鬼は白姫に目を向ける。

 すると白姫は小さく頷き、女の子座りで話を聞くことに。

 

「わかった、話してくれ。だが、そっちだけ得するようなことはさせねぇ。俺からの質問を先に答えてくれ」

 

『ありがとうございます。では、質問を』

 

「一つ、この場所について。白姫は時間が無いだとか言っていたがそれらはそっちの都合だ。まず俺と白姫にわかりやすくこの場所について教えてくれ」

 

『やっぱりそうですよね……。此処は神聖な場所、神だけが許される天界という場所です。貴方たちの世界で言えば、天国と解釈してもらっても構いません』

 

「てことは、俺たちは死んだのか?」

 

『いえ、死んではいません。現在貴方たちは魂が具現化してこの場に呼んでいる状態です。本体は現実世界にあり、眠り付いている状態です』

 

 現実世界と天界とては隔離された世界と同じだ。故に現実世界では変わらずベッドの上で寝ている黒鬼と白姫。

 だが女神の説明によると、二人の魂だけを天界に招いているとのことだった。

 

「なるほどな。簡潔に言えば、夢の世界と捉えたほうが話は早いな。じゃあ二つ目の質問だ。あんたは先ほど、単刀直入に異世界グランディール……だっけか? そこを俺たちに救って欲しいと言ったが、もしそれを俺たちが承諾した場合、現実世界での扱いはどうなるんだ」

 

「クロにぃ、どういうこと?」

 

「もし承諾した場合、俺たちは異世界グランディールってとこに行くわけだ。だがそこで危機を回避し、救うとしても一日や二日で出来るようなもんじゃない。その異世界グランディールで迎える日数や年月に対して、現実世界での俺たちはどういう扱いになるのかを聞いてるんだ」

 

「えっと、植物状態……とかかな」

 

「そういうことだ。そうなれば俺の親父やお袋はもちろん、周りは混乱に陥る。我が子が二人も同時に植物状態、普通ならありえないことだからな」

 

 正直、黒鬼は女神の思考を警戒していた。まさか、無償で異世界を救ってくれと言ってるんじゃないかと。

 もしそうであるなら、たまったものじゃない。それだとまるで、都合のいい道具と見られているようだった。

 黒鬼は女神が相手であろうと、目を細め鋭い眼光で睨みつけた。

 

『もし仮に貴方たちが承諾してくれた場合。現実世界で寝ている貴方たちを異世界グランディールに送った際、その現実世界の時間を止めさせてもらいます。なので異世界グランディールで過ごした日々の間、貴方たちが住む現実世界は時間が進むことなく停止したままになります』

 

「ということは、俺たちが異世界グランディールとやらを救った後は、現実世界の時間が動き出すと同時に俺たちは元の場所に戻れるってことだな?」

 

『はい、そういうことになります』

 

「なるほどな……」

 

 黒鬼は顎に手を当て、深く考えた。異世界グランディールを救う間、現実世界の時間は常に止まる。

 よって両親に心配をかけることはない。しかも、救い終えた後はしっかりと元の場所である現実世界に帰れる。

 だがそれは、当たり前のことに過ぎないのだろう。しかし質問に答えられる、ということは女神の本気の想い、そして考えがあったということ……。

 

「正直に言って、俺は未だに繰り広げられている天界だとか救うだとか異世界だとか、信じられねぇ。でも、夢の割にはリアル感もあるし、今だけは信じるしかないようだな」

 

『で、でしたら!』

 

「まぁ焦るなよ、行くとは決めてない。最後の質問だ、異世界グランディールにおいて、俺たちの安全保障はあるのか?」

 

『えっ?』

 

「そりゃあ当たり前のことだろ。たかが人間に、世界を救えるとでも? もちろん異世界っていうからには魔物とかいう存在もあるんだろ。てことは死ぬリスクもあるってことだ。俺はまだしも、そんな世界に妹の白姫を行かせられるわけないだろうがッ」

 

 自分一人だけなら努力して強くなる方法があるが、そこに白姫が入るなら話は別。

 たった一人の妹である白姫を危険な目に合わせるのは、兄として見過ごすわけにはいかない。

 

『本当なら許されることではありませんが、特典……を付けるのは如何でしょうか?』

 

「あ? それっていわゆる、能力みたいなものか?」

 

『そのようなものです。それでしたら、白姫さんの安全はより保障されると思いますが……。そもそも異世界グランディールを救って欲しいというのは私の我儘です、なので白姫さんといわず、貴方にも――』

 

「いらん」

 

『えっ?』

 

「強くてニューゲームなんて面白くないだろ。努力して得た力だからこそ楽しいんじゃねえか。現実世界でも親父に勝つ為にどれだけ努力したかなんて、あんたにはわからないだろうけどな」

 

 黒鬼は両手を見つめ、努力し続けた日の事を思い出す。父親に腕相撲で勝つ為だけに、早朝からランニング、筋トレを毎日欠かさなかったこと。

 最初こそは一秒も経たずに負けていた腕相撲も、努力を重ね続けたことで張り合う程に至った。

 だからその努力を忘れずに、異世界だろうとなんだろうと黒鬼はサボりたくなかった。

 両手を見つめ思い返す黒鬼に、白姫は立ち上がってそっと黒鬼の袖を掴む。

 

「クロにぃはいつもそう。自分は努力でなんとかするって言って、私のことを置いてけぼりにする。兄妹なら、私もクロにぃと一緒に努力する。だから特典はいらない」

 

「……白姫、お前」

 

「生まれた時からずっと一緒に居たのはお母さんとお父さん、そしてクロにぃだけ。だから、クロにぃが努力するなら私も一緒に努力する」

 

 白姫は知っていた。黒鬼自身は隠していたのだろうが、裏で努力し続けていたこと。

 部屋の鍵を閉めてまでバレないようにトレーニングを重ねる日々も、全て。

 

『……絆以上に結ばれた関係、実に素晴らしいです』

 

「白姫がそういうなら否定する権利は無いな。てことで露出メス女、特典なんていらねえよ」

 

『まだその呼び方ですか……。でも、それが貴方たちの意志ならば覆すようなことは致しません』

 

 黒鬼は白姫の頭に手を置いて、白姫は黒鬼の袖を引きながら女神を見る。

 そんな二人の微笑みに、女神もまた微笑んだ。

 

『では本題に移る前に、今一度問います。どうか異世界グランスティールを、救う手助けをお願いできますか?』

 

「此処まで決めたなら断るわけにはいかないな。だから聞かせてくれよ、異世界グランスティールについて」

 

「クロにぃが行くところに私は居る。一緒なら怖くない、不安にはならない。だから、私も聞く」

 

『本当にありがとうございます。では、異世界グランスティールについて話をさせてもらいます。……と、その前に。黒鬼さん、勝手ながら服を着させますね』

 

「ん? ……ほわぁ!?」

 

 やはり黒鬼の恰好が気になるのか、女神は咳払いと共に指を鳴らした。

 すると一瞬にしてパンツ姿から一変。赤の半袖に黒い長そでジャケット。

 ズボンは黒のジーンズ、そして靴はスニーカー。

 

「クロにぃ、似合ってる」

 

「なんじゃこりゃあ!!」

 

『コホン。では、話を進めますね――』

 

 いきなりの恰好に驚愕する黒鬼に、親指を立ててグッとする白姫を他所に女神は話を切り出した。

 

 

――そして。

 

 

 女神から話を聞き終え、あらかた内容を頭に入れ終えた黒鬼と白姫は異世界グランスティールへ転送された。

 転送する際、黒鬼だけではということで女神は白姫の服装も新しくした。

 白のボタンTシャツに、その上から膝元まであるコート。ロングスカートに、スニーカー。

 そして女神の好みで、ブランケットまで。白姫は気にったのか、目を輝かせていた。

 黒鬼といえば、何故か悶えていたが……。

 

 

 




タイトルにある『破壊と創造』や『黒龍、白龍』に関しては
次話で明かされます。

≪キャラ紹介 -兄妹-≫

長谷川 黒鬼-kuroki hasegawa-
年齢:20歳
身長:176cm

備考:全体的に黒のイメージがある。そして周りにも劣らない努力家でもある。腕相撲で父親に勝つ為だけに努力を惜しまず、全てにおいて全力な性格を持っている。言葉遣いは悪く、男女関係なく毒を吐くが優しい心を持っている。

長谷川 白姫-siroki hasegawa-
年齢:16歳
身長:147cm

備考:全体的に白のイメージがある。荒々しい性格を持つ黒鬼とは違い、落ち着いた性格をしている。あまり表情には出さないだけであり、動揺する時は心の底から動揺している。努力を惜しまない黒鬼を尊敬しており、好いている。
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