ということで今回も出発前の話です
それではどうぞ!
―U-NASAドイツ支部―
その日の食堂はいつも以上ににぎやかであった。それもそのはず、U-NASA本部から班長であるアドルフが戻ってきたことに加え、ドイツ・南米第五班のメンバーが初めて顔を見せたのである。
「初めまして…エヴァ・フロストと申します。皆さんよろしくお願いします…」
「おー!エヴァちゃんね あたしイザベラ これからよろしくな!」
「オレはエンリケ これからよろしく」
「サンドラといいます。長旅お疲れさま、エヴァちゃん」
「……可愛い」
(アントニオの奴惚れたな…)
初めての環境でやっていけるか不安に感じていたエヴァだったが、第五班の雰囲気を見てひとまず安心した。
一方、にぎやかなエヴァ歓迎メンバーから少し離れたところではルークが班長であるアドルフを出迎えていた。
「ルーク、オレがいない間何かあったか?」
「特にはありません。班長、長旅お疲れ様です」
「そうか、お前もご苦労だったな」
それだけ言うとアドルフは施設の奥へと行ってしまった。
「随分と嬉しそうだな、ルーク」
「あぁ?んだと、『レイ』!」
ルークの目の前には、キャップを被った少年のような人物がいた。
「全く、山賊のリーダーが今じゃ班長に陶酔しきっているとは…呆れるな」
「うるせぇな……ところでお前は向こうに何しに行ってたんだよ、ちび助」
「テスト品が出来上がったから取りに行っただけだ」
そういうとレイは左腰に差したものに手を触れた。腰のそれは、まるで刀のように鞘に収められていた。
「おいおい、
「今の状態じゃあ、武器としての能力は発揮することはできないから問題ない」
「そうかよ……まあお前の場合、武器がなきゃ俺より戦力で劣るもんな」
「何とでも言え」
キャップを深く被り直すと、レイはそのまま施設の奥へと早足で向かった。
その光景を話に区切りがついていた歓迎メンバーたちが見つめていた。ほとんどの者はいつものことと呆れているが、初めて目にしたエヴァは不安げな表情をしていた。
「あ…あの、あの人も五班のメンバーなんですか?」
「ああ、そうだ」
「そういえばまだ紹介してなかったな……あそこのイカツい奴はルークだ」
「口調もキツめで暴力的だが、意外と仲間思いの奴だぜ」
「レイとはそりが合わないみたいで、いつもあんな感じだけどね」
「おいそこ、何コソコソ話してんだ!」
小声で話していたにもかかわらずルークに見つかり、メンバーはエヴァを連れ一目散に食堂から撤退した。
「ついでだからこのまま施設の案内しない?」
「それ、いいアイデアだな!」
撤退しながらもにぎやかに話すメンバー、その様子を見て思わず笑みをこぼすエヴァだった。
(ところでレイさんって…)
―国連航空宇宙局ロシア支部―
ロシア支部のとある一室、男一人に女二人が何やら怪しげな動きを見せていた。
「やっと、やっと!!!やっと見られる!!!」
「まさか、あんな街外れの店で扱っていたとは…」
「ようやくですか……僕、ずっと見たかったんですよ!」
「『ニコライ』君、喜ぶのはいいけど早く準備して!」
「はいはい、わかってますよ『メリア』さん……」
「私、ポップコーンとコーラ持ってきます!」
「『レイラ』ちゃん、私はジンジャーエールがいい」
「わかりましたー!」
そう言うと女が一人、部屋の外へと出て行った。
すると先ほどまで賑やかだった部屋の雰囲気は一変し、しんと静まり返った。
「会合のほうはどうでしたか、
「
男女は小声で情報共有を始めた。その表情は、先ほどまで騒がしくしていた人物たちとは思えないほどの真剣なものだった。
「そっちでは何かあったか?」
「例の青年が手術に成功したと、それからドイツの手術リストが判明したとのことです」
「そうか…また騒がしくなりそうだな」
「ドイツのベースは戦力になるとは言い難いですが、もしこちらが手にできれば強力な切り札に…」
「いや、いい……関われば面倒なことになりそうだ。それにこちらが欲しいのは戦力だ。
「わかりました……彼女が帰ってきたみたいですよ」
すると部屋の扉がドンっと大きな音を立てて開かれた。
「ポップコーンとコーラ、それからジンジャーエール持ってきました!」
「ありがとう!」
「気のせいか、ポップコーンの量が少ない気が…」
(ギクッ)
「そそそそんなことより!ニコライくんは準備終わったんですか!?」
(つまみ食いしたな…)
「終わりましたよ。さ、見ましょうか」
それもそうね、と言うとメリアは紙袋の中身を取り出した。
「やっと見れるわ、シャー○ネードシリーズ全作!!!」
「やったあ!!!」
「……は?」
目を輝かせる二人とは対照的にニコライは凍り付いていた。
「なんで!?いや僕は歴史的名作を買ってくるって聞いてたんですけど!?」
「え?名作だってこれ!!あまりにも伝説的すぎてネットで見つからなかったくらいなんだから!!!」
「いやそれって……僕、ジュラ○ックパークシリーズ期待してたのに…」
「え?この映画恐竜も出るらしいですよ?」
「サメ映画だよね!!?」
先ほどまでの緊張感は鳴りを潜め、部屋には賑やかさが戻った。
―U-NASA本部―
本部のトレーニングルーム。ここでは火星で活動できる体の基礎を作るために、一般人が行う以上に厳しいトレーニングが行われている。
この日も、いつものようにアネックスのクルーとなる人々が体を鍛えていた。そして人々はいつものように、とある二人に視線が釘付けとなっていた。
一人は金髪の女、もう一人は短髪の男だった。
「流石ですね、ミッシェル副長」
「お前もだろ、『マイク』」
そう言いつつ二人は100㎏近いバーベルを持ち上げていた。
両者、にこやかな表情でバーベルを上下させる。この光景は一般兵にとってはもちろん、戦闘員にとっても驚異的なものである。
「おっと、今日は会議があったか…ミッシェルさん、準備をそろそろしたほうがいいですよ」
そう言うと男はバーベルを下した。男の体は鍛え上げられ、筋骨隆々という言葉がふさわしい姿をしていた。
「そうだったな…」
すると何かに気付いた男が二人、ミッシェルとマイクの元に駆け寄った。
「ミッシェルさん、やっぱりここにいたんですか」
「おう、燈に『ビリー』か」
「珍しい組み合わせだな」
「病棟から出たところにビリーさんがいて、会議室に向かっているって聞いて一緒に来たんですよ」
「なるほどな、ところで
「体のほうは安定しているらしいんですが、まだ目を覚まさなくて……そっ、それより今日会議ですよ!」
「おっと、流石に準備しないとマズいな…」
「今日は差し入れにプロテインクッキー持ってきました!」
「おお、それは楽しみだな」
「おい、準備行くぞ!」
「わかりました。じゃあまた後でな」
二人はそう言ってトレーニングルームを後にした。
「僕らも行こうか、燈君」
「そうですね…」
会議室へと向かう中、燈は一人もやもやした気持ちを抱えていた。
(いつになったらまた目を開けてくれるんだ――百合子)
―U-NASA 機器製造部―
アネックスで使用する機器を製造する研究室。その地下、厳重に閉ざされた扉の向こうでは研究員たちが様々な部品やデータを研究、管理していた。
「そっちの研究はどうだ?」
「とりあえず運用できる形にはなりそうです」
研究員は技術部所長に立体映像を表示して見せた。
「……それにしても
「普通の人間なら100パーセントこんなもの扱えない。そしてあの火星のゴキブリ共も扱えない……戦闘員一人ひとりに合わせ作られた奪われない人類の技術、それがこれを含めた専用武器だ」
(しかし戦闘員に合わせているとはいえ、
所長の視線の先には、何の変哲もない手斧の立体画像が表示されていた。
おまけ
燈 「マイクさん、多分火星に行ったらすごく活躍するんだろうな…」
ミッシェル 「戦闘ではそうだろうが、捕獲は下手だからな………私以上にバラしちまうし」
燈 「!!?」
テラフォ-マー (!!!?)