ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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11.ナチスと吸血鬼

 サンタナはあの後、スピードワゴン財団が用意した密室に移され、紫外線を継続的に浴びさせることとなった。

 

「それでシュトロハイム。目覚めさせてみて何かわかったことは?」

 

「計算上サンタナの実力は、残りの柱の男達の一割にも満たない……逆に言えば残りの三体の戦闘力はサンタナの十倍ということだ………サンタナと直接戦った貴様なら、奴らの実力に見当もつくんじゃないのか?」

 

 ガラス越しに石化したサンタナを眺めながら成果を聞く。シュトロハイムは二人の部下を連れて、私と共にスピードワゴンの研究施設に来ていた。

 すると別室から二人を呼ぶ声が聞こえる。

 

「レオン、シュトロハイム。少しこっちに来てくれんか?」

 

 我々を呼びに来たのはスピードワゴンだった。側には研究員と思われる中年男性が立っている。

 

「どうかしたのか?」

 

「サンタナの右腕が再起動しました」

 

 そう言われて私達は別室の実験室に移動した。

 移動した先には、特殊なカプセルに収まったサンタナの腕がある。森で紫外線を照射した際に本体と分離した物だ。意外とおとなしい。

 

「本体が石化しているからでしょうか……血流は正常に流れていますが、何の反応も示しません」

 

 カプセル内に備え付けられたアームで弄ってみるが、サンタナの腕は何の反応も起こさない。

 

「熱しても冷やしても…紫外線を当てても身動ぎすらしないのです」

 

「柱の男は賢い……あえて無反応で油断させようとしてるかもな」

 

「奴は脱走する際に、銃器を一瞬で分解して仕組みを理解する程の賢さを持っています」

 

 シュトロハイムが私にそう言うと、側に立っていた女兵士が付け足すように口を挟む。

 セリフを取られたとばかりに、シュトロハイムは女兵士を見てフンッと鼻を鳴らす。するとおもむろに咳き込み視線を集める。

 

「オホン…ところでレオンよ。今回サンタナを捕らえたのは貴様の成果だ…よってシュトロハイムは貴様の願いを聞くことにした。光栄に思うがいい」

 

 私の願い…か……自分でも軽く忘れかけていた事だが、彼は覚えていたようだ。

 

「いいんだな?」

 

「構わん。現代の医学力ではこれ以上の解明は不可能…好きに使うがいい、だが失敗しても我々は一切の責任を負わん!わかったか⁉︎」

 

「あぁ……ならば今すぐ準備に取り掛かるぞ。スピードワゴンも構わないか?」

 

「もちろんだ」

 

 指揮官二人の許可が出たところで、私は早速行動に移し始めた。

 数人の医学者に声を掛け、私はエリザベスに連絡を入れる。

 

「柱の男達が近い内に目覚める……仮に一週間以内と想定し、今すぐ力をつけなければ……」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 場所は変わってエア・サプレーナ島。

 

「レオン?貴方は何を言っているの?」

 

 俺が波紋の修行に勤しんでいると、リサリサ先生が電話で誰かと話す声が耳に入る。話し相手はレオンさんのようだ。

 

「だからと言って……ハァ…すごい無茶するのね。分かったわ」

 

 電話を終えた先生は受話器を置き、顔だけを俺の方に向けてきた。

 

「シーザー、私は今からメキシコに飛びます」

 

「え…何を言っているんですかリサリサ先生!こんな大事な時に!」

 

「だからこそやらねばならない事が出来ました。貴方はまだ未熟ですがローマへ先に行ってください。ジョジョもすぐに向かわせます」

 

 そう言って先生は歩き去るが、話が終わってないので慌てて追いかける。

 

「いったい何があったのです?訳を教えてください」

 

「詳しくはまだ言えません。ただコレだけは言っておきます……レオンの指示です」

 

「レオンさんが?」

 

 そう言われると何故か不思議な気持ちにかられる。レオンさんはツェペリ家の運命を変えるほどの力を持った俺の尊敬にあたる人物……

 先生はレオンさんの名前を出せば、半信半疑でも従う事を知っているんだろう……まったくその通りだ。

 

「わかりました。すぐローマへ飛ぶ準備に入ります」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「………少し無茶を言ってしまったか?」

 

 エリザベスが受話器をきちんと置かなかったのか、シーザーとエリザベスの話が筒抜けになっていた。

 

「ここに来るまで最短で半日……プロジェクトに掛かる時間は不明」

 

 間に合うか?奴らが目覚めるまでに。

 

「ところでレオン様…実戦で使ってみてどうでした?」

 

 気がつくと私の隣には、武器開発担当の彼がいた。彼の存在に気づかないとは、私はかなり考え込んでいたらしい。

 

「素晴らしい威力だったよ。だが仕込み刃は使ってないからわからないな」

 

「段階が段階なので、リクエストがあれば今作成してる武器に反映させられますが……」

 

「そうだな……なら仕込み刃を打ち出せるようにできるか?出来ないにしろ、取り外しが出来るようにしてほしい」

 

「……用途はわかりませんがわかりました。取り外し機能ですね?でしたら替えの刃も用意しましょう」

 

 そう言って彼は嬉しそうに小走りで去っていった。作ることを生き甲斐としたような男だったな。

 ………さて…そろそろ準備ができた頃じゃないか?

 

「……これは賭けだ…成功すれば良いが…」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「なんでテメェがここにいやがんだよ!」

「五月蝿いこのスカタン!レオンさんの指示だ!」

「にゃにぃ〜〜?よりによって何でお前とルームシェアなんだァァァ!」

「五月蝿いと言っているだろ!お前のいい加減さには相変わらずうんざりする…」

 

 ここはローマのホテルの一室……の扉の前……つまり廊下。私はメキシコでやる事を終えた翌日にすぐここまで足を運んだのだが……

 

「二人共……もう少し仲良くできないのかしら?」

 

 「「こんな奴とは絶対に仲良くなんかできない(ぜ)‼︎」」

 

「そこで……息が合うのか……」

 

 扉を押し開けてエリザベスと共に中に入る。そこでは予想通り二人が喧嘩していた。

 

「……ってレオン⁉︎一体どうしたんだ!」

 

「外まで丸聞こえだったぞ……静かにしてくれ」

 

「俺の話を無視すんじゃねぇ!」

 

「ん……あぁすまない。調子が悪くて耳元がこもり聞こえないんだ……騒がしいのはよく伝わったが…」

 

 ジョセフとシーザーがギョッとした顔で私を心配してくれる。なんせ私は今かなり弱体化していて、エリザベスに背負われているのだ。

 まさかこの歳になって娘のような存在におぶられるとは……

 

「どうしたんですかレオンさん!顔色が凄く悪いですよ?」

 

「シーザーちゃんの言うとおりだぜ!元々死人みたいな綺麗な肌が、今じゃ本当に死んでるみたいだぜ?白を通り越して青!ブルーだぜ⁉︎」

 

 エリザベスの支えを借りて、私はソファーに寝転ぶ。こうしてる今も吐き気と頭痛で目が回る…凄く気分が悪い…最・低・に・ロ・ー・ってやつだ。

 

「そのうち治る……それよりエリナは?」

 

「エリナ婆ちゃんは言われた通り、スピードワゴンの爺さんに預かってもらったぜ!」

 

「ならいい……あとは奴が目覚めるまでの間…万全な状態で過ごす事……それまで自由時間だ」

 

「お、おう」

 

 こんな状態の私に言われても、内心戸惑うだけか……

 

「それでは……私はしばらく寝かせてもらう……もしかしたら財団かナチスの人間が…配達に来るかもしれないが……別に気にしないでくれ…」

 

「ほ、本当に大丈夫かよレオン…」

 

「今日は少し無茶したからかしら…レオン、私の血でよければ分けましょうか?」

 

「いやいい……」

 

 フラつく足で立ち上がり、壁に手をかけながら私は退出した。そしてすぐ隣の部屋の鍵を開けて入室……倒れこむようにソファーに寝転がった。

 部屋を分けた理由は、万が一二人の喧嘩の流れ弾が私に飛んできたら命が危険だからである。二人の波紋はまだ僅かに未熟だが、私が昇天するくらいの力はある。

 

「……ハァ…ゥ…」

 

 ……にしても本当に苦しいな。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 私の名前はケライン・エーデルガルト。ドイツ軍の女軍人だ……私は今ある任務を遂行するためにローマに来ている。

 任務というのは実に簡単な輸送任務だ……あの方へこのケースを届ける…たったそれだけの簡単な任務なのだが、渡す相手があの方だというだけで極度の緊張感が私を襲う。

 

(落ち着け…落ち着くんだエーデルガルト……いつも通り気高く振る舞えばいい……いや、それだと失礼じゃないのか?あの人と張り合うかの様に見えたらどうしよう……だとしたら恐れ多い。あぁ、一体どうすれば……)

 

「ん?なんだオメェ…その服はナチ公か?」

 

 私がそうこう悩んでいると、ガタイのいい男が話しかけてくる。たしか…名前はジョセフ・ジョースター……だったはず。

 

「あっ!わかった!お前がレオンの言ってたナチスの配達人だな?」

 

「配達人……まぁ確かに配達の様なものだが…」

 

「んで…こんなとこで何やってんだ?吸血鬼ってのが怖くて届けにくいとか?」

 

「別に怖くなどない」

 

「そう遠慮すんなって。俺が代わりに届けてやんよ」

 

 そう言って私からケースを奪おうとする。すると私はつい、相手の腕を捻り上げてしまう。

 

「イデデデデ、いきなり何しやがんだこのアマ!」

 

「私に与えられた任務だ!だから私の手でやり遂げる……ただそれだけだ!」

 

 危なかった…ケースを取られればあの方に会う機会を失ってしまう。

 

「そう怖い顔すんなって。可愛いお顔が台無しだぜ?」

 

「気安く話しかけるな。私は貴様のようなナンパ師が大嫌いだ!」

 

「ハハァーン。それでクールでイケメンなレオンに惚れちゃったとか?」

 

「なっ!」

 

「…あれ?もしかして図星?」

 

 ………図星だ。

 

「貴様ァァァア!」

 

「オワッ!テメェ、ホテル内でナイフ振り回すんじゃねぇ!…ふぅ…とんだクレイジー女だったぜ」

 

 私に背を向けて男は逃げていった。クソッ…無駄な体力を使ってしまった。ひとまず落ち着け…深呼吸だ。

 

「……ふぅ…よし」

 

 そう言ってエレベーターが降りてくるのを待ち、私はあの人の部屋を目指した。

 

「……あの方の部屋は……ここか」

 

 部屋番を確認し、私はドアをノックする。

 

「私はドイツ軍のケライン・エーデルガルト。レオン殿の部屋で間違いないか?」

 

 そう言うとしばらく静寂が流れ、やがてカチッという金属音が響き鍵が解錠されたことがわかる。

 入っていいのか?

 

「し、失礼する」

 

 扉を開けて中に入ると、すぐそこにあの方がいた。壁に手を付き覚束ない足で部屋の奥へ移動すると、力無く彼はソファーに倒れこんだ。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 今の彼は昨日の様な気高さも力強さも感じない。その代わり彼は美しかった………苦しさから漏れるその呼吸が妖艶な美しさと魅力を感じさせる。

 

(…って、いかんいかん!何を考えているんだ私は!)

 

 頭を振って煩悩を振り払う。

 

「あの……そろそろ品を渡してくれないか?」

 

「す、すみません!」

 

 扉の前で立ち尽くしていた私に彼が声を掛ける。だから私は急いで彼の前のソファーに腰を下ろし、テーブルの上にケースを置いた。

 すると彼は早速ケースを開けて、中からワインボトルのようなものを取り出す。

 鮮度を保つ仕組みになっていて、中には血液が入っている。それを彼はワイングラスに注いで喉を通す。

 

「…ふぅ………何か?」

 

「あ、いえ……」

 

 恐らく彼は何故私が帰らないのかを疑問に思っているのだろう。

 何か私がここに残る理由はないだろうか………

 

「あの……さ、昨晩は命を救っていただき感謝します。他に我々で力になれることはございませんか?」

 

 言葉遣いが怪しい気がするが、私はそう言ってその場に残る時間を稼ぐ。

 

「特にない。ところで君はいつまでいるつもりだ?」

 

 うっ……単刀直入にそう言われると帰らざるをえないな……そうだ。

 

「はい。すぐ帰ります……ですがその前に、個人的な質問をしてもよろしいですか?」

 

「質問?構わないが……」

 

 血を摂取したからか、少し顔色が良くなる。どうやら答えてくれそうだ。

 

「貴方とデビルは同一人物ですか?…この答えがYESなら、私の事を覚えているか教えてください」

 

 私はデビルに命を救われた…世間が悪魔と呼ぶ殺し屋に……もし本人なら個人的な感謝を伝えたい。

 

「YES……そして仕事中に会話をした事は一度しかない。言われるまで気がつかなかったが、おそらく私は君を知っている」

 

 覚えていてくれた……それだけで何故か喜びで身体が震える。

 

「あの時はありがとうございました…私は貴方に二度助けられました。それがどうしても伝えたくて時間を取らさせて頂きました。すいません」

 

 何故か自分で言っていることがおかしくなる。私は対人会話が苦手だったのか?

 

「誰にも言わないでくれ……私は目立っていい存在じゃないんだ」

 

「言いません、貴方のためなら……レオン殿の為なら命を捧げても構わない」

 

 うっ……また私は何を口走っているんだ?会話が苦手かと思いきやグイグイと……自分で自分にツッコミたくなる。

 

「なら……早速君の命…少しだけ貰えるかな?」

 

「…え?」

 

 私が戸惑っていると、彼は私の肩を掴み顔を近付けてくる。

 

「レ、レオン殿⁉︎」

 

「すまない……私も直接取るのは抵抗があるが、生き血の方が栄養価があるんだ」

 

 そう言って私の首筋に刃が刺さる。一瞬痛みが走ると、徐々にそれが快楽として広がる。

 

「あ……ぁ………」

 

 夢の様だ……ホテル一階で気付いたばかりの恋心だが、身も心もこのまま溶けてしまいそうだ……

 

「気をつけて帰りなさい」

 

「………え?あ、はい」

 

 気がつくと彼は、既にソファーに座っていた。私だけが余韻に浸って、立ち尽くしていたようだ……恥ずかしい。

 

「それでは……失礼します」

 

 今日は……良くも悪くも忘れられないな。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 ふむ……やはり生き血の方が良いな。栄養価といい喉越しといい…なにより緩く深い味は、支給品と比べ物にならない。

 

「私の血は拒んだのに、ナチスの血は飲むのね」

 

「君の血が嫌なわけではない……ただ君の波紋はやつらに対して最も有効な武器だ…私の賭けの為に、君の調子を悪くするわけにはいかない」

 

「そう……ちなみに、生き血を頂く基準てなんなの?」

 

 基準?そうだな……

 

「私も男だ…できることなら女性の方が良い……だが肉に歯を刺すのは抵抗があるし、許可がなければそうそう生き血は奪わない」

 

「貴方は本当に石仮面を被ったの?まったく邪悪さを感じないのだけど」

 

「……褒め言葉として受け取っておくよ………さぁ…そろそろ部屋に戻ってくれ……私は休みたいんだ」

 

 生き血を多少貰いはしたが、未だに症状は収まらない。血液を摂取したところで回復はあまり促進されない…

 少しは良くなったと信じたいな………

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