ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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15.終戦を始めよう

 私が皆の元に戻ったのは更に一週間後。この時点でジョセフに埋め込まれた指輪溶解まで、後六日……

 

「リサリサ…いるか?」

 

 エア・サプレーナ島に戻った私は、ひとまず彼女に顔を出すことにした。

 

「レオン!」

 

 リサリサの部屋の扉を叩くと、勢い良く扉は開かれてリサリサが飛び出してくる。

 

「心配かけたな」

 

「もう大丈夫なの?」

 

「あぁ、動きに支障はない」

 

 火傷はまだ完治はしていないが、一度切り離された足も正常に動く。

 

「……まさか泣いているのか?」

 

「五月蝿いわね。二人も心配してたわ…早く顔を出してあげて」

 

 赤く腫れた目を隠しながら、リサリサは私を軽く突き飛ばして部屋の中に戻ってしまった。

 彼女にも心配させてしまったな……申し訳ない。

 

「さてと………ん?」

 

 外から聞こえてくるスパークに似た音。波紋同士が衝突した時の音だ。

 その音につられて外を見ると、そこにはジョセフとシーザーが師範代二人を相手に戦っていた。

 

「はぁ…はぁ……も、もう今日の修行は十分だ!」

 

「まだだ!俺たちはもっと強くならなければいけない!」

 

「立ちなロギンス師範代!メッシーナ師範代!俺だって家族を失うのはゴメンだ!」

 

 努力が大っ嫌いなジョセフがあそこまで必死になるとは……死にかけた甲斐があったな。

 

「止めろ!見ろ俺の腕を……今の波紋のスパークで産毛が全部焼けちまった!」

 

「だからなんだってんだ!つるっ禿げになるまで付き合ってもらうぞ!」

 

「やれやれ……師範代が教え子にやられっぱなしだな」

 

 窓から飛び降りて二組の間に降り立つ。すると皆は安堵の表情を浮かべ、私への心配を口にしてくれる。しかしジョセフだけはすぐにムッとなり、私に殴りかかってくる。

 

「ズームパンチ!」

 

「ッ!……ったいな…太陽克服したからといって、退院上がりの患者を殴るなよ」

 

 拳を受け止めてジョセフを睨む。しかしジョセフは私以上に怒っているようだ。

 

「ルッセェーこのタコ!心配ばっかりかけやがって!なんでエシディシが来た時誰も呼ばなかった!」

 

「呼びに行く暇がなかった。その間に赤石の元に行かせるわけにはいかない。だから途中で天に向けて体液を射出した…そうすれば誰か気付くと思って……」

 

 本当は攻撃しただけなのだが、アレがSOSの代わりのサインだって事にしておこう。

 

「だったら次からレオンは一人行動禁止!常に俺の側にいろ!」

 

「なんだ…寂しいのか?」

 

「んなっ⁉︎違ぇよ!不老不死でもボケんのか?」

 

「ジョセフをからかうのは楽しいな」

 

 いつもはからかい専門のジョセフをからかえるのは私くらいだろう。シーザーはそんな私達二人のやり取りを見て、口元を押さえて楽しそうに笑っている。師範代は……フッ、これ以上修行に巻き込まれんとばかりに逃げたか。

 

「さてジョセフ……今回ばかりは聞かせてもらおうか」

 

「あん?何を?」

 

「お前がどうしたいのかを…だ」

 

 一瞬ジョセフは黙り込むと、一度深呼吸を挟んで口を開く。

 

「俺は戦うぜ。あんたと共に!だから強くなると決めた!」

 

「……うん。わかった…逃げるなら止めはしないが、お前の向上心も止める気はない」

 

「ケッ。なんせ俺が強くなんねぇと、どっかの誰かさんが無茶するからよ?」

 

「んー?それは一体誰だ(棒読み)?しょうがない…その人の為にも私がお前の向上心に拍車をかけてやろう」

 

 わざとらしく棒読みを決めると、私はジョセフの胸倉を掴んで海に投げ捨てた。

 だらしない悲鳴を上げながら、ジョセフは綺麗な弧を描いて着水する。そして弾く波紋で水面に立ち上がって抗議してくる。

 

「フッフッフッ。まだまだ元気そうだな。よし、そのまま水上で何戦か相手してくれ」

 

 そう言って水面に私が降りると、ジョセフはゲッ!っと嫌そうな顔をする。

 なんだ?折角私が胸を貸してやるというのに。波紋も貴様の方が上だし有利なのはジョセフだろ?

 

「強くなるんだろ?私がタップリしごいてあげよう」

 

「オー!ノーッ!お願いだシーザー!代わってくれ!」

 

「今はいい、俺は後で相手してもらう」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「イテテッ!スージーQ、もっと優しく頼む」

 

「ワガママ言わない」

 

 彼女はここの使用人のスージーQ。今はジョセフの怪我の簡単な手当てをしてくれている。記憶が正しければ、彼女がジョセフの妻となる女性だ。

 怪我を負った原因?もちろん私だが?合気道で何度か水面に叩きつけただけなのだがな……

 

「水は速ければ速いほど接触する瞬間に硬くなる。レオンの技で投げられたとすれば普通の地べたと変わらないんじゃないかしら?」

 

「合気道というんだ。私の十八番さ」

 

 夕食を終えた我々は、そんな雑談をしていた。もしジョセフの首に指輪が無ければ、落ち着いて話せるのだがな。

 その時……私がふと、窓から夜空を見上げる。エア・サプレーナ島の中で最も高い塔の先端…夜目の利く私の目が、そこにある人影を捉える。

 

「………カーズ」

 

「…なんですって?」

 

「真っ直ぐこっちを見ている」

 

 私が目を向ける窓から身を乗り出し、皆がカーズを見つけようとする。しかし皆はよく見えないようだ。

 その時…カーズが腕の刃を構え、独特な光を発生させる。その場にいた全員は目が闇に慣れてしまい、急に発された眩い光に目を閉じる。

 

「窓から離れろ!」

 

 私はそう言いながら複数の髪の毛を伸ばし、髪の触覚を頼りに窓に一番近い二人の腕を掴む。そして力任せには引っ張ると、窓から盛大な切断音が聞こえた。

 やがて目が慣れると、私は何が起きたか瞬時に理解した。天井から床にかけて、壁ごと大きく断裂されている…完全に我々を殺しにきているな。

 

「全員無事か?」

 

「な…なんとか」

 

「一体何が起こった…」

 

 状況が理解できていない者が何人かいるな……その時…私に腕を掴まれているリサリサが、何故か小刻みに震えているのが目に止まる。まさか攻撃を受けたのか?

 

「リサリサ、大丈夫か?」

 

「…エイジャが……」

 

「ん?」

 

「エイジャの赤石が無い!」

 

 リサリサが首から下げていた高価なネックレス……それこそが奴らの狙うエイジャの赤石だったのだ。そしてそのネックレスは今、リサリサの胸元に収まっていない。

 

「盗られたのか!」

 

 ロギンスがそう叫ぶと、リサリサは蒼白な表情で頷く。

 不味い……今すぐ取り返さないと…

 

「その必要はないぜレオン!」

 

 そう言ってわざとらしく咳き込むと、ジョセフは悪戯をする子供のような笑みを浮かべる。

 

「まさか……」

 

「そのまさかよん!」

 

 ポケットからジョセフが赤石を取り出す。ペンダントには嵌っておらず、紅色の輝きを放っている。

 

「一点の曇りもない……本物か。ならカーズが持って行ったのは?」

 

 私がそう質問すると同時に、背後に殺気と執念が渦巻く気配を感じ取る。振り向くと、空のペンダントを握り潰すカーズがそこにいた。

 

「ジョジョォォ!」

 

「シャボンカッター!」

 

 現れたカーズにシーザーがすかさず攻撃を放つ。しかしカーズはまた眩い光を放って消えた。

 

「今度は渡さねぇぜ!」

 

 懐深く赤石をしまうと、カーズがジョセフをターゲッティングする。

 目には見えないが、既に髪を広げている。髪で止めることはできないが、カーズの居場所を探知することはできた。

 

「そこだ」

 

「髪の結界か。だが甘い!」

 

 私が攻撃するより早く、カーズの蹴りが私の腹部を捉える。しかもカーズの攻撃はまだ終わらない…踵あたりから腕と同じ刃が伸びて、私の肩に突き刺さる。

 

「グッ…」

 

 刃と私の肩が一体化する。そしてそこから何かを吸われる感覚がある…まさか細胞消化で私の体を吸収しているのか?

 

「ならば…」

 

 波紋の呼吸に切り替えて、私は肩に刺さった刃に波紋を送り込もうとする。

 

「ヌッ!これは…」

 

「波紋だ」

 

 直接波紋を流そうとしたが、奴は刃を切り離して私から距離をとる。

 

「レオン……貴様……まさか!」

 

 流石IQ400。私がどんな手術を終えたのか理解したようだな。すると驚愕の表情を秒速で引っ込め、奴は不気味に大声で笑い始めた。

 

「フハハハハハ‼︎面白い…面白いぞ貴様‼︎ますます貴様が欲しくなったぞ‼︎」

 

 おぉっと…奴の頭脳を持ってすれば、私がエシディシを死に追いやった事くらい知っているはず………それをプラスしても好印象か。

 それと「仲間として」とか、そういうセリフを挟んでくれ。今のじゃただの告白だ。そして私はBLが嫌いだ。前も言ったが大事な事なので二回言います。

 

「そう思ってくれるのは嬉しいが……カーズ…お前は自ら私の敵になろうとしている。どうなろうと交わえぬ仲だ、諦めろ」

 

 私が腹部に受けたダメージを耐えながらそう言うと、カーズは笑みを止めて壊れた窓に立つ。

 

「エイジャの赤石はまだ貴様らに預かっていてもらおう。近い内にまた会うだろうしなぁ〜」

 

 ジョセフに目を向けて不敵に笑うと、ジョセフは胸にそっと手を当てて苦笑いする。それを見てカーズは闇夜に身を投げ、闇そのものになったかの様に姿を消した。

 

「結局何しに来たのだ?」

 

「エイジャの赤石を盗りに来た…が、まだ泳がせたくなったようだな」

 

「レオンがいなければ何人かは最初の一撃で死んでいた。そしてジョジョの抜け目のない行動が無ければ赤石は盗まれていた」

 

「もっと褒めても良いのよん♪」

 

 機嫌良くジョセフがニヤニヤと笑う。しかしその笑顔から僅かに、心臓に引っ掛けられた毒入り指輪に恐怖してることがわかる。

 

「ひとまず……今のやり取りで我々は何も失っていない。修行も十分積んだ…これから我々は奴らの根城を突き止めて乗り込む。そろそろ攻めないと、奴ら以前に時間に負けるぞ」

 

 私がそう言うと、一同は鋭い目付きで私を見つめ返してくる。意を決した力強い目だ。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 その日の翌日の夜……シュトロハイムからカーズ達の根城を突き止めたとの一報が届く。それを聞いた私は夕食を終えると同時にそれを皆に伝えた。

 

「ナチス軍が成果を上げてくれた。柱の男の根城はスイスにあるサンモリッツ…別名 太陽の谷。その周辺にある閉鎖されたホテルだ」

 

「太陽の谷ィー?太陽と無縁な奴らがそこに居るのか…いやそれより、随分と発見が早いんじゃないの?」

 

「何……私の推測が当たっただけだ」

 

 種明かしをすると原作知識だ……うろ覚えで正確な場所はわからなかったが、スイスの廃ホテルだったのは覚えていた。あとはそのキーワードで探してもらうだけだ。

 

「出発は明日の早朝…ロギンスとメッシーナには既に伝えてある。三人ともそれまで英気を養うように」

 

 静かに私が淡々と述べると、皆が飲み物で満たされたワイングラスを掲げる。そして皆が私に視線を向ける。

 何処かの映画でやってそうな儀式だが、僅かにでも士気が上がるなら行おう。

 私も血で満たされたワイングラスを持って掲げてみせる。

 するとジョセフがワイングラスを更に掲げる。

 

「己の命…そしてジョースター家の血統の為…」

 

 シーザーが…

 

「呪われし運命に終止符を打つため…」

 

 リサリサが…

 

「代々伝わる使命を全うするため…」

 

 最後に私が…

 

「五十年前の友との約束の為…討ちとるぞ…我々の力で」

 

 私が口を閉じると同時に、私を含めた四人はワイングラスを傾けて一気に飲み干す。

 

「…ふぅ……では私は先に寝かせてもらう」

 

「私もそうするわ…」

 

「俺もそうします」

 

「俺も」

 

 我々はバラバラに別れ、それぞれが自分の寝室に向かった。

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