ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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16.決闘のプロローグ

 ここは廃ホテルの広間……そこには瞑想をするカーズ様が佇んでおり、傍で私はいつでも命令に対応できるように備えている。

 

「…カーズ様…一つよろしいでしょうか…」

 

「なんだ」

 

 石のようにピクリとも動かなかったカーズ様が、口だけを動かして声を発する。

 

「このワムウ…ジョジョという男はローマで決闘の約束をしました。奴が来た際…ぜひ、戦いの許可を…」

 

「ならぬ……と、言いたいところだが良いだろう。私もレオンという男に興味がある。好きにせい」

 

「はっ!」

 

 そう言ってまたカーズ様は瞑想を再開する。が、何故かすぐに頬を釣り上げてしまう。

 

「…ククッ」

 

「カーズ様?」

 

「いやスマン。柄にもなく楽しみに思ってしまってな……」

 

 そう言って立ち上がり、カーズ様は玉座に腰を下ろした。

 カーズ様が瞑想すらままならぬ程に歓喜しておられる……レオン…貴様は一体?

 主人の意外な表情に驚いていると、次の瞬間…激しい爆発音と共に崩壊音が混じって聞こえてくる。

 

「何の音だ」

 

 無表情に戻ったカーズ様が疑問を投げると、すぐさま手下の吸血鬼が我々のいる部屋に入ってくる。

 

「ほ、報告します!侵入者でゴVOAAAAA!!!!」

 

 告げる事を最後まで伝えられずに、吸血鬼に頭サイズの鉄球が被弾して爆発する。

 

「フンッ……来たか」

 

「Good Morning」

 

 そこには妙なガラクタを押して入る波紋使い達がいた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 時は遡って十数分前……

 

「……アレのようだ」

 

 我々は予定通り朝に島を出て、カーズ達のいるスイスに来ていた。

 私はリサリサに双眼鏡を手渡し、閉鎖されたホテルを確認させる。

 

「板と暗幕で日光が入らないようになってるようね。さて…重要なのはここからどうするかです」

 

 そう言ってリサリサが振り返ると、シーザーが口角を僅かに上げる。

 

「当然のこと。すかさず攻撃すべし!」

 

「同感だ!昼間だからカーズは外へ出られない。我々にとって今が有利!」

 

 シーザーとメッシーナがそう意見し、ロギンスもそれに賛同する。そしてリサリサはジョセフの意見を仰ぐ。

 

「俺は…反対だぜ…」

 

 冷や汗を流してジョセフがそう答える。そして僅かな沈黙が流れ、またジョセフが口を開く。

 

「太陽が外で照ってるからこそ、逆に危ねぇと思うぜ!カーズが外からの侵入者に、何の対策もしてないとは思えない!」

 

 ジョセフが言うことも一理ある…だがシーザーはその意見に対して「怖気付いたか」と返す。そこからはいつものように、二人は口論という口喧嘩を始める。

 

「…レオン…貴方の意見は?」

 

 二人のやり取りを放置して、リサリサは私に意見を聞いてくる。

 

「ふむ……奴らが外に出れないのは確か…だが対策しているのも確かだろう……そこでこういうのはどうかな?」

 

 そう言って私は、スピードワゴン財団に秘密裏で輸送してもらった積荷を持ってくる。

 

「なんだそれは?」

 

 ロギンスが腕を組んで私に聞いてくる。私はニヤリとだけ笑い、荷物に被さっていた風呂敷を外す。

 

「こ、これは!」

 

 喧嘩を止めてジョセフが荷物に食いつく。

 

「コレはネーベルヴェルファーという多連装ロケットランチャーだ。試作段階で完成していないから一度撃てば本体も壊れて再装填ができない………装填数は六発。これがあと二つあるから計十八発……コレで外部から破壊しながら進入しようと思う」

 

 本来は毒ガス弾を使う兵器だが、その辺は私の要望で無茶な改造をしてもらった。試作機の改良型だから、完全な使い捨て品だ。ホテルを全壊させるまでにはいかないが、奴らのテリトリーを狭められるはずだ。

 

「にゃるほど〜。コレで盛大にノックしてやるってわけね!」

 

 ニタニタと笑うジョセフ以外は面食らって口を開けている。リサリサのそんな表情は少々珍しくも思えるな。

 

「だかそんなことして大丈夫なのか?少し離れれば町が…」

 

「表向きは解体作業ついでの兵器実験って事になっている。責任はシュトロハイムが喜んで負ってくれた。本当はミサイルを打ち込みたかったが、流石にソレは許されなかったそうだ」

 

 そう説明していると、ドイツ軍と財団の特別科学戦闘隊が兵器を持ってくる。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 やはり弾数が足りなかったか……もっと輸送してもらいたかったが、急な要望だったし無理があったのだろう。

 これでケリを楽につけたかった私は、装填数がゼロになったロケランを残念そうに横に投げ捨ててカーズ達と向き合う。

 リサリサ達は私の後ろに付いてきていて、万全な状態で波紋の呼吸をしている。

 

「ジョセフ…そしてシーザー。成長したらしいな、実に!」

 

「ワムウ……!」

 

 ジョセフとワムウが火花を散らす勢いで睨み合う。

 

「待っていたぞレオン」

 

「カーズ。この部屋に来るまでの間に弾は切れたが、一歩部屋を出ればそこは日の当たる外だ。どうする?この狭い空間で我々と戦うか?」

 

 奴らのパワーで暴れられたら、我々の誰か…ロギンスあたりがおそらく死ぬだろう。だが派手に暴れればホテルが崩壊する程度に破壊は進んでいる。ワムウの神砂嵐なんかを放ってしまえば、天井が崩壊して日の光をもろに浴びる事となるだろう。

 

「さぁどうする?貴方達に一斉に襲われてしまえば、我々もただでは済まない……でもこんなボロボロの欠陥ホテルが崩れて仕舞えば貴方達もただでは済まない。だから私達はカーズ…貴方に交渉しに来た」

 

「交渉…だと?」

 

 リサリサがそう言うと、ジョセフとシーザーが質問してくる。

 

「待ってください先生。我々は六人、相手は二人…その言い方は少しおかしいのでは?」

 

「そうだぜ!問答無用でここで決着をつける!違うのか⁉︎」

 

「相手が二人?…まだ修行が足りないようだな」

 

 そう言って私が天井を指さすと、そこには百人近くの吸血鬼がぶら下がっていた。

 

「我々がここに来た際に、一斉に襲いかかるつもりだったのだろう?それを踏まえて我々六人で死者を出せずに戦えると思うのか?むしろこちらが全滅する可能性もある」

 

「うぅ…」

 

 ロギンスとメッシーナがたじろいでいる。そしてジョセフとシーザーも同じリアクションをしている。

 戦闘員と紫外線照射装置も持ってこれていたらよかったのだが、装置の小型化まで手は回らなかったようだ。

 原作と違い「住処の特定」「完成していないロケランの無茶な改良」「兵器実験という表向きの隠蔽」などを頼んでしまったからな。ロケランは止めて、紫外線装置を武装したドイツ軍引き連れた方が良かったか?

 まぁ、過ぎた失敗だな……

 

「フッフッフッ、レオン。貴様は何から何までお見通しというわけか……だがその程度の細工で交渉に応じると思ったか?」

 

 長々と考え事をして軽く後悔していると、カーズが私にそう言ってきた。

 

「もちろん交渉の手札はまだ残っている。我々をここで殺したら赤石は二度と手に入らない」

 

 私の言葉にカーズは眉間に皺を寄せ、静かにしていた吸血鬼達が僅かに騒めく。

 

「敵の住処に赤石を持ってくるほど、私は馬鹿な女じゃ無いわ」

 

 リサリサが首筋を見せてネックレスがかかっていないことを示す。そして私が続けて口を開く。

 

「我々の誰かがある場所のある時刻に戻らなければ赤石は時限装置で爆破される。そして今ここで一人でも殺してみろ……そしたら逆に残された者はそこへ戻らず、赤石を爆破されるのを我々は待つつもりだ」

 

「フフッ…妙なハッタリはよせ」

 

「ハッタリだと思うか?貴様らがこの人数で待ち構えてるのを知っていて、現在の環境を作るための兵器を寄せ集めて、交渉が成り立つ範囲の戦力を連れてきたこの私が言ってる事がハッタリだと思うのか?本当に時限爆弾を用意していないと…そう思うのか?」

 

 口調がおかしくなったが、私は畳み掛けるように早口で述べる。するとカーズが呻き声を上げて考える。

 

「だからといってこのまま思い通りにはさせられん」

 

「そこで交渉よ」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに、リサリサはカーズの言葉に被せ気味で言った。

 

「ワムウとジョジョ…カーズとレオンが一対一で戦う。その勝負に赤石を賭ける」

 

「何ッ!」

 

「勝者が赤石と未来を手にする…とてもシンプルでわかりやすいだろ?どうするカーズ?」

 

 真面目な表情で私が述べると暫く沈黙が流れる。するとカーズがニヤリと笑って己の選んだ選択を口にした。

 

「良い度胸だ、いいだろう。赤石の為に受けてやる。だが自惚れるな…貴様らに明日は無い!」

 

(あ…圧倒的不利な状態から対等まで持っていった!…流石レオンとリサリサ…駆け引きが上手い!)

 

「決闘となればそれに相応しい時と場所が必要だな!ワムウ、希望を言え」

 

「今宵は満月、時はそれ。場所は…ここから南東へ十五キロメートルのピッツベルリナの骸骨の踵石と呼ばれる古代環状列石サークルストーンの場…古代の人間どもが天体の観測の為に作った巨石建造物だが後に決闘場として多くの選手達が栄光と死の運命を分け合った所だ‼︎」

 

「こらァ〜〜〜ッ!勝手に決めんなよ、てめーらに有利な条件をッ‼︎」

 

「よせジョセフ…タイマンを受けてくれただけで儲け物だ」

 

 そう言ってジョセフを宥めていると、カーズがジョセフを指差す。

 

「ジョジョ!赤石は貴様が今夜の夜中の十二時、環状列石の場まで持ってこい…時限装置とやらを外してな。レオンは人質としてここに残る」

 

 そう告げてカーズとワムウは姿を闇の中に消した。リサリサではなく私か………ちょっぴり怖いな。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「……ふむ……人質というのは暇なものだな」

 

 人質として残った私は、崩れていない部屋の奥の地下室に通された。しかもカーズが直接私が逃げぬよう監視している。

 ……正直リラックスができない。

 

「レオン…ワムウが勝てば赤石を貰う。ジョジョが勝てば解毒剤…だったな」

 

「………そうだ。ついでに言うと相手の命も……な」

 

 部屋の壁に背をつけて座り込んでいると、死んだように動かなかったカーズが話しかけてきた。

 

「ワムウが勝った時点で赤石は我々の物…ではこのカーズと貴様の決闘には何が賭けられるのだ?」

 

 まぁ当然の疑問点だな。先にワムウが勝ってしまえば、二回戦目でもちろん赤石を賭けることはできない。

 

「そうだな……皆には言っていないのだが、もし貴様と戦う際に赤石を賭けれない状態だったら、貴様には赤石を賭けてもらい、私はこの身を賭けよう」

 

 そう言って自分の心臓のある場所に右手を置く。するとカーズは閉じていた目を薄っすらと上げる。

 

「…赤石に比べれば釣り合わぬか?」

 

「いや…今はそれで良い。約束は…守れよ?」

 

 フフッ…貴様が言うな。原作ではルールを無視し、リサリサを背後から切り裂いた貴様がな……

 原作を知っている私は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「カーズ様。日が沈みました」

 

「うむ。行くぞレオン」

 

 カーズがそう言って部屋を出て、私はその後ろをついて歩く。それだけで私の背筋に悪寒が走る。

 現在のジョセフを下回る私の波紋で、私はコイツを倒せるのだろうか?

 

 …………と言っても……倒せない前提で策を練っているがな。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 しばらく吸血鬼達とジョギングで現地に向かい、私は爽やかな汗を流す……ことはできず冷や汗がただただ滴っていた。そもそも十五キロ程度で吸血鬼は汗はかかない。

 

(逃がさないためとはいえ、まさかすぐ側をピッタリ並走するとは…)

 

 冷や汗の原因はこの二人…ワムウとカーズが私を挟む形でしっかりマークしていたのだ。離れず縮まらず、一定の距離を保ちながら並走してきた。景色は流れるがこの二人は常に隣にいて、逆に酔いそうになる。

 そんなこんなで、私は決戦の場に到着した。

 そしてその数十分後にリサリサ達がやってくる。ジョセフの手には赤石とマッチ棒が握られている。

 一度赤石を掲げ、マッチに火をつけて赤石に近付ける。すると火の光を吸収して赤石は淡い光線を放つ。

 

「よし本物だ…お前が約束を守り逃げずに赤石を持って来たからには、我々も約束を守ろう。一対一の決闘を行ってやるッ!」

 

 そう言ってカーズは私を見て顎を突き出す。彼らの元に向かって良いようだ。

 

「レオン!無事か?」

 

「あぁ…だが二人に挟まれ監視され、おちおち寝ることもできなかったよ」

 

 そう言って緩んだ笑みを浮かべると、皆が一安心した表情を浮かべる。

 

「来たな!こいつが揃えばいよいよ決闘が始まる」

 

 突如として地響き聞こえ、遠くから何かが走ってくる。

 

「これは…」

 

 走ってきたのは恐竜と見間違える程の迫力を持った馬だった。その馬は車輪のついた荷台を引いていて、馬の物とは思えない二本の牙が生えていた。

 

「この馬の脳には骨針が打ち込んであり吸血馬としてある」

 

「今よりこの闘技場でワムウ対ジョジョの古式にのっとった戦車戦を実施するッ!」

 

「戦車戦!?」

 

 吸血鬼達はワムウコールを繰り返し、一人の吸血鬼が説明を始める。

 

「この戦車に乗りこの闘技場を闘いながら走り続ける!ワムウ様かジョジョ、どちらかが振り落とされ相手の戦車に踏みつぶされるか…あるいは走りの途中で叩きのめされるか…ゴールは死のみッ!古代ローマの戦車デスマッチ!」

 

「やってもらうぞジョジョ!この吸血馬は百五十頭の馬に匹敵するパワー…つまり百五十馬力!ワムウ様にとっても操るのは骨が折れる!」

 

「待ちな!戦車戦だろうがなんだろうが受けてやる。しかし吸血馬だと?テメェらの手下じゃねえか!」

 

「心配するな、手綱は波紋が通るようにできている。ワムウはパワーで馬を操るが、お前は吸血馬を波紋で操って走らせることができる!」

 

 どうやらちゃんとフェアなルールらしい…リサリサが試しに波紋を流すと、吸血馬は大人しく従っている。

 

「ではこれより!エイジャの赤石を賭けて、ジョジョ対ワムウの戦車戦を開始する。スタートの合図はあの雲の切れ目から、次に月の光が輝き出た時とする!」

 

 カーズが声を張り上げてそう言うと、ワムウとジョセフが荷台に飛び乗る。こうして二人の戦いが今始まった。

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