ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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18.使命を終えた者達のその後

 生前ジョジョに見せてもらったことがある。ジョースター家の一族は皆、首筋に星型の痣を持って産まれてくると………ジョジョの言う通り、ジョージもジョセフも首筋に星型の痣を持っていた。

 そして現在……私の首筋にはソレと同じものがあった。

 

『君は間違いなく誇り高きジョースター家の人間だ…だから僕はこれを贈る』

 

「確かにそう聞こえたんだ……もしかしたら都合のいい夢かもしれないがな」

 

 ニューヨークに戻る飛行機の中で私はスピードとそんな会話をしている。

 

「夢なんかじゃないさ。ジョースターさんには姓を捨てた理由と苦しみを見透かされていたようだな」

 

「おっと…そういうスピードも勘付いていたのか?」

 

 姓を捨てた理由……ブランドーを使わない理由は、ジョースター家を滅ぼしかけたディオと、母を殺したダリオと同じ悪名を名乗りたくなかったからだ。

 そしてジョースターを名乗らなかった理由は、否が応でもブランドーと同じ血を引いてしまっている私にソレを名乗る権利がないと思ったからだ……今となっては被害妄想だが、レオン・ジョースターと名乗ってしまえば、誰かに何処かで否定されるような気がしていたのだ。

 

「実を言うと……私はレオンがいつでもジョースターと名乗れるよう、ジョセフの兄という形で戸籍の準備をしていたのだよ。もちろん長生きな為、時が過ぎれば毎度偽造で発行しないといけないがな」

 

 そう言って一つの書類を渡してくる。それは偽造で作られた戸籍の書類の類だった。そしてファミリーネームは確かにジョースターになっている。

 

「ありがとう…スピードワゴン…」

 

「スピードと呼んでくれ。親しみを込めて友人に接するようにな」

 

 老いてなおスピードは、昔のように歯を剥いて笑ってきた。その笑顔が私の心を煽り、ジョジョと再開した夢の中と同じように涙を浮かべる。

 

「最高のプレゼントだ……ジョジョにも言った言葉だが、二度目の使用では嘘っぽく聞こえるかな?」

 

「そんなことはない。それよりそろそろニューヨークに着く頃だぞ」

 

 そう言われて私は座席の下に置いておいた荷物を取り出した。

 そういえば私のロケット……ジョセフに預かってもらっているままだな。

 

 空港に無事着陸した飛行機を降り、私は久々のニューヨークに足をつけた。するとSPW財団の迎えの人がやってくる。

 

「……おかしいな」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

 杖をつき歩くスピードは、辺りをキョロキョロと見回している。

 

「今日ニューヨークに戻る事を電報で知らせたはずなのだが……」

 

「……?電報を送った。だからここに迎えがいるんだろう?」

 

「いやそれはそうなのだが……ジョジョ達には言っていないのか?」

 

 スピードが迎えに来た男に尋ねる。

 

 「伝えたのですが、「用事があって迎えに行けない」と言われました」

 

 男も首を傾げてよくわかっていない様子だ。

 

「用事?何かあったのか?」

 

「よくわかりませんが、今日は誰かの葬式を上げているそうです」

 

 ………葬式?……あぁ、なんとなくわかった気がする。

 

「なら葬式会場へ急ごう。恐らく彼らは勘違いをしている」

 

 そう言って迎えの車に乗り込み、我々は葬式会場に向かった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「天にまします我らの父よ。御名をあがめさせたまえ」

 

 ココはシトシトと雨の降る墓地。

 そこではある男の葬式が挙げられていた。

 

「御国を来たらせたまえ。御心が天にあるように…地にもなさせたまえ」

 

 それはレオンの葬式だった。

 吸血鬼故に戸籍も怪しいからか、墓石には名前だけが彫られていた。

 

「エリナさん。冷えるといけません。そろそろ……」

 

「エリザベス…もう少しここにいさせてちょうだい」

 

 その場にいる皆が喪服を身に纏い、暗い表情を浮かべている。

 

「レオンさん…うぅ……俺が未熟なばかりに!」

 

「レオン……約束はどうしたんだよ。ひとまず………これは返すぜ」

 

 傘もささずにシーザーが俯いて涙を流している。ジョセフは墓石の前で膝をつき、レオンが大切にしていた六角形のロケットを墓石の前に置く。

 

「おいジョセフ。そんな所に置かないでくれ、ロケットが錆びてしまう」

 

「…………えっ……」

 

 一同が墓石に背を向けると、そこには一台の車が止められている。そしてその車の窓から誰かが彼らを見つめていた。

 

「………私の葬式は何処まで進んでしまった?」

 

 「「「「「「レオン‼︎‼︎⁇」」」」」」

 

 葬式に似合わぬ大声で、皆がレオンの名を呼んだ。

 

「スージー…ちょっと来てくれ」

 

「え、あ、はい。え?なんで生きてるんですか?」

 

「SPW財団の人から聞いた電報の内容を覚えているか?」

 

 混乱しながらもレオンの元に走ってきたスージーにレオンが質問する。

 

「確か……レオンさんはもう目覚めない…と……」

 

「…こんなことだと思ったよ。運転手の君…君が確か伝えたんだよね?なんて伝えたんだ?」

 

「はい。私は「レオンさんはまだ目覚めない」と伝えました」

 

 運転席の窓を開けて運転手の男がそう述べた。するとスージーは冷や汗をかきながら後ろを振り返る。

 そこにはジョジョ達が冷たく無表情で彼女を見ている。

 

「……ご……ごめんなさーーい‼︎」

 

「オウ ノォォー‼︎信じらんネェェ!このアマ‼︎」

 

 スタコラサッサとスージーが逃げ出し、ジョセフは一度頭を抱えて唸るとスージーを追いかけ始めた。

 迎えに来なかったのはこれが原因か……私達の帰宅を知らせた時は「スピードワゴンさん達が帰ってくる」と伝言したせいか、おそらくスピードと財団の人間数名のことだと思っていたのだろう。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 結局私の墓石は撤去されることになり、私は皆と再会を果たした。嬉しいような呆れたような表情を浮かべる皆との再会は実に気まずかったな。

 

「…ハハハ……なんと言えばいいか」

 

 全てスージーQのせいだ。原作では彼女が原因でジョセフの葬式が行われたが、今回の被害者は私のようだ。

 ひとまず私は撤去中の墓石の前に置かれたロケットを拾い、自分の首に下げて服の下にしまった。雨に晒されていたので結構冷たい。

 

「レオン…本当に貴方なのですね?」

 

 最初に口を開いたのはエリナだった。彼女は私の元に歩み寄ると、さしていた傘を畳んで一発だけソレで私を叩いてきた。

 

「この大馬鹿者が‼︎」

 

「痛っ⁉︎エリナ…何も叩かなくても良いじゃないか」

 

「どれだけ皆が心配したと思っているんですか!」

 

「それはスージーの聞き間違いのせいだろう。そしてジョセフとスージーはいつまで鬼ごっこをしているんだ?」

 

 そう呟いてから私は手を口に持って行き、彼ら二人にも聞こえるように叫んだ。

 

「ジョセフーー!そろそろ許してやれ!お前の愛しき妻だろ?」

 

 そう叫ぶと一同がギョッとした表情を浮かべて私を見た。そしてジョセフは私の言葉に動揺したのか、それとも雨でぬかるんだ地面を踏んだのか盛大に転ける。

 

「……まさかまだ言ってなかったのか?」

 

「誰にも言ってねぇよ‼︎それをなんでテメェが知ってんだよ‼︎」

 

 原作知識だ…

 遠くから怒気混じりに叫んでくるジョセフを見て、私は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ良いじゃないか。ひとまず帰ろう。いつまでも雨の中で立ち話をする気はない」

 

 私がそう言うと、皆がヤレヤレと首を振りながら帰路につき始めた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 その後私がホテルにチェックインすると、皆が部屋に押し寄せてきて質問攻めにあった。

 なぜ生きている? 今まで何をしていた? 何故結婚の話を知っている? 具合はどうだ? などなどなど…

 

「死にかけただけだ!私は生きている!今までドイツ軍の施設で入院していただけだ‼︎結婚については勘だ!」

 

 しらみ潰しに質問に応答する。ちなみに現時点のジョセフは、プロポーズを済ませただけで式はまだ上げていないし、指輪の用意もまだらしい。

 そして次の質問が来る前に、今度は私から質問する。

 

「カーズは無事死んだのか?私が意識を失った後どうなった?」

 

 その質問に答えたのはリサリサだった。

 

「カーズは自ら波紋を練って自爆しました。肉片一つ残さずに気化しましたよ。その後貴方はドイツ軍とSPW財団の医師たちに運ばれました」

 

「マジで危なかったんだぜ⁉︎レオンの溶けた肉が石柱にくっ付いて、引き剥がすたびに流血すんだからよぉ‼︎」

 

「その為レオンさんをすぐに施設に移すことができませんでした。肉と石柱の切断と、流した分の輸血を繰り返して数時間かけてようやくヘリに積まれたんです」

 

 リサリサの後に続くようにジョセフとシーザーが熱弁してくれる。後で知ったことだが、何度か脈と呼吸が止まったらしい。

 

「そこまで重体だったのか……三途の川にまで行けるわけだ」

 

「三途の川?随分と物騒な夢を見てたんだな」

 

「本当にただの夢だったのかはわからない。だがこれを見てくれ」

 

 メッシーナが呆れたように腕を組み、私はそう言って服を脱いで皆に首筋を見せる。

 

「星型の……痣…⁉︎」

 

「ん?それがどうかしたのか?」

 

 ジョースター家の特徴を知らないロギンスが首をひねる。

 

「エリナ…その夢の中にはジョジョがいて、その時ジョジョが何かを私にくれたんだ。そして目が覚めたらこの痣があった……君はこれを夢だと思うか?」

 

 目を丸くして驚いたエリナは軽く微笑み、優しくソレを現実だと肯定してくれた。

 

「ジョナサンに会えたのね。それならきっと、見た夢は現実……それはまさしくジョナサンの贈り物ね。それで随分と貴方も救われたんじゃない?レオン?」

 

 この様子だとエリナも気付いていたようだな。私の被害妄想に……

 

「オイオイオイ‼︎二人で話し進めんなよ‼︎まずレオン!約束通りあんたの過去から話してくれ‼︎」

 

「それもそうだな…」

 

 その日私は夜明けまで話す勢いで昔話をした。ジョジョとの出会いや吸血鬼になったきっかけを…更には若い頃のエリナの話もしようとしたが、告白の話を持ち出したあたりで真っ赤になった本人に止められてしまった。

 それなりに騒いで楽しい一時だったが、その後ホテルから苦情が来て解散する事になった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 《リサリサ(エリザベス・ジョースター)》

 その数年後…現役で波紋の達人と言われていた彼女だが、その座をシーザーに譲り、ジョセフとともにアメリカに移住。

 そしてその一週間後にスージーQがジョースター家に加わる。

 

 《エリナ・ジョースター》

 ジョセフ達にアメリカに共に移住しないかと持ちかけられたが断り小学校の英語教師を続ける。

 そして1950年に81歳の生涯に幕を閉じる。

 死ぬ間際に「もしこの世界を飛びたった先に川があったら、渡る前に川岸を散歩してみてくれ。彼が手前側にいるかもしれない」と伝えた。

 エリナは無事にジョジョに会えただろうか?

 

 《ロバート・E・O・スピードワゴン》

 石油王、財団設立者として経済界や医学界を発展させたが1952年に心臓発作で89歳の生涯を終わらせた。

 最後まで彼は結局独身だったらしい。

 そして彼は、死後もジョースター家を影から支援するつもりだったらしく、死ぬ間際の遺言で「財団はジョースター家が危険に陥った際には全面的に協力する」と命じ、さらに別の遺言で財団の最大権力を私に擦りつけてきた。抗議したくもこれは遺言…黙ったままスピードはこの世を去り、私は半強制的に財団の最大権力者にされてしまう。

 遺言を使うとは……スピードも考えたものだな。

 

 《ルドル・フォン・シュトロハイム》

 スイスでの表向き兵器実験が原因なのか、階級を下げられた。しかしスターリングラード戦線で、原作通りの誇り高きドイツ軍人として名誉の戦死を遂げる。

 

 《ケライン・エーデルガルト》

 レオンが目覚めた数日後に、かつて実験施設から脱出したサンタナを前にして逃亡した事を自ら告発。敵前逃亡は軍人としては大きな罪で、彼女は不名誉除隊を命じられた。しかしそれは彼女の望んでいたことで、軍を抜けた彼女は孤児院で働くようになる。

 のちに聞いたが「力が無いのに両親を殺された復讐心で戦うのが馬鹿馬鹿しくなった」との事……子供が好きで夢は教師だったらしいが、今からそれになるのは難しいので孤児院で働く事にしたらしい。

 

 《シーザー・アントニオ・ツェペリ》

 波紋の達人としての責任をリサリサから譲り受け、エア・サプレーナ島に移り住む。

 そして数年後に新しくやって来た使用人と恋に落ちて結婚。3人の子供に恵まれ、ロギンスとメッシーナの力を借りて父親と波紋の師匠の立場を上手く両立している。

 

 《ロギンスとメッシーナ》

 エア・サプレーナ島でシーザーと共に波紋使い育成に力を入れる。が、シーザーが結婚して第二子が出産した頃には、シーザーの子守を手伝うようになる。

 子供達から見れば二人は「近所のおじさん」程度の認識だろう。

 

 《ジョージ・ジョースター》

 ジョセフとリサリサがアメリカに移住した後も空軍として誇れる実績を積み上げていく。事故などの不安にさらされることはなく、歳のせいで辞任した後はリサリサと二人で残りの短い人生を謳歌する。辞任した頃、ジョセフは既にスージーと新居に移っていた。

 

 《ジョセフ・ジョースター》

 アメリカに移住後、旅行で乗った飛行機が墜落…不慮の事故に遭い左手を切断し、結局原作通り義手を利用する羽目になる。

 夢はパイロットだったがやがて不動産王となり、スージーとの間にホリィと言う名の娘に恵まれる。

 

 《レオン・ジョースター》

 ジョースター家のアメリカ移住にはついて行かずに、エリナの元で存命の間は生活を共にする。エリナが死去するとエア・サプレーナ島へ向かい、二年間波紋の修行に熱中。

 やがてSPW財団から遺言の件を聞き、SPW財団代表取締役会長の座を強制的に得ることになる。そして財団を更に大きくした後に会長の座を信頼できる者に譲り、ジョセフとスージーの新居付近に移住した。すでに二人の血を継いだ娘「ホリィ」が産まれていて、ジョセフに育児を任される。

 会長の座を降りた今でも財団内では「SPW財団代表取締役会長(裏)」と呼ばれていて、会長と同様の仕事を度々することとなる。

 

 そして数十年の間……実に平凡で平和な時間が私達の世界には流れ、私以外の世代が交代していく。

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