ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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20.転生者同士の接触

 木の葉がまだ落ちきってない肌寒い道を僕は歩いている。歩を進める先は留置所だ。

 やがて目的地に着き中に入る。そして最初に目に入った警官と思われるオジさんに「僕は承太郎を連れて帰るために面会に来た」と伝える。

 

「友達思いの良い子だね。でも変わった友達だね…釈放といっても檻から出ない…彼のお母さんも説得できなかったんだ」

 

「大丈夫です。僕が連れて行きます」

 

 そう言って僕は承太郎のいる監房に向かう。長い通路を歩き進むと、やがて承太郎らしき人物が入った檻が見える。すると急に前を歩くオジさんが足を止めて振り返った。

 

「これより先に進むのは危険だ。ここから説得してくれ」

 

「危険?」

 

「彼には悪霊がとりついている…頭がおかしい思われるかもしれないが、これは本当なんだ」

 

「いいから退いて、僕に任せてください」

 

 小柄な僕はオジさんの腕を掻い潜り、承太郎のいる監房の前に立つ。オジさんは止めようとするが、承太郎の悪霊を恐れて入ってこない。

 

「承太郎。寝てるの?」

 

 承太郎は薄汚いベットで横になり背を向けている。どうやら本当に寝ているようだ。

 

「スゥ……承太郎‼︎」

 

 「「ヒィッ⁉︎」」

 

 少し声を張って彼を呼ぶと、別の監房に入っていた囚人達が短く悲鳴をあげる。そして僕を見つめる彼らは「承太郎を刺激しないでくれ」と目で訴えかけてくる。

 

「なんだテメェか。フンッ、帰りな。わざわざ面会に来てもらって悪いが、俺はしばらくココを出ない」

 

「ま…また物が増えている…」

 

 情けない声でオジさんが呟く。

 

「檻の中にあるもの…全部悪霊が持ってきてくれたの?」

 

「なんだ…知ってるなら話が早い。そう…これは全部悪霊が持ってきてくれた」

 

「ヒッ⁉︎…少年誌が勝手に……」

 

 スタンドを持たない警官の目には、少年誌が勝手に中を浮いて承太郎の手に収まったように映る。

 しかし幽波紋使いの僕の目には、彼のスタンド…星の白金(スタープラチナ)が少年誌を取ってくれたところを目撃した。

 

「見えたか?これが悪霊だ。今は大人しいが四人相手にケンカして全員病院送りにするほど危険だ……だから帰りな。友達を傷つけるほど、俺は腐っちゃいねぇ」

 

 そう言ってスタンドにラジカセの電源を入れさせて少年誌を読み始める。そしてさりげなく友達認定された…今僕は歓喜している!

 ……なんて感情はひとまず置いておこう……僕は自分のスタンド……仮に「スケルトンケロベロス(ケロちゃん)」と呼んでいるこの子を檻の中に入らせる。

 ネーミングセンスは気にしないでほしい。

 

「いいから出て来なよ。檻の中で研究なんかしなくても、僕が知ってること全部教えてあげるからさ」

 

 そう僕が言うと、ケロちゃんがラジカセを前足で踏み潰し破壊する。少年誌に目を向けていた承太郎は、ケロちゃんを見て絶句している。

 

「…なんだ……こいつは……⁉︎」

 

「宿主の意のままに動く分身のような存在…これは後に幽波紋(スタンド)と呼ばれるようになる。悪霊の正体だよ」

 

「……葎崎……テメェ…」

 

「君が言う悪霊を僕も持っている。ここから出てきてくれるなら聞きたいこと全部教えてあげるよ…スリーサイズ以外ならね?」

 

 最後にボケをかますが、承太郎は僕を睨むだけで絶句している。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「ここだ、入れ」

 

「おっ邪魔っしまーす。空条家に入るの久しぶりだなー」

 

 無事釈放させた僕は今、空条家の畳張りの部屋に上がり込んでいる。帰宅した承太郎を見て承太郎の母…ホリィ・ジョースター(旧姓)さんが大歓喜して承太郎を出迎え、僕が説得したことを知ると、抱き付いて感謝の意思表示をした後に上げてくれたのだ。フレンドリーなのは良いけど、少し度がすぎるね。

 

「適当に座れ」

 

 そう言って畳張りの床に座布団を投げて、承太郎は「ドカッ」と座る。それに対して僕は、ローテーブルを挟んだ向かいに座布団を敷いて座る。うん……フカフカする。

 

「今から幾つか質問する。最後まで聞いてやるから全て話せ」

 

「OK」

 

 即答して僕は背筋を伸ばす。

 

「そのスタンドってのを、テメェはいつから使える?」

 

「物心がついた頃には側にいた。最初は今の承太郎と同じで危険視していた。そのせいで上手くコントロールはできなかったな」

 

「なら俺がコイツを受け入れれば簡単に操れる…そういう事か?」

 

 正直その辺はわからないな…

 

「推測だけどね……スタンドにも種類があって第三の手や六本目の指みたいに操作できるのもあれば、自我を持っていて命令する形で操作するのもある。別の視点で言えば、種類はさらにあるよ」

 

「俺とテメェはどっちだ?」

 

「承太郎は前者。僕は……中間かな?」

 

「中間?」

 

「僕のケロちゃんは僕の意思通りに動いてくれる。でも僕の意識が別のものに集中していると、勝手に行動することがある。それこそ犬みたいに地面の匂いを嗅いだり、後ろ足で首筋を掻いたり………だから中間」

 

「なるほどな。なら次の質問だ。大雑把で悪いが……スタンドってのは何だ?知ってる事を全て言ってみろ」

 

「少し長くなるよ」

 

 そう前置きを挟んでから、僕はケロちゃんを呼び出す。そして僕はケロちゃんの上に座布団を敷いてその上に座る。

 

「スタンドってのは目に見える超能力みたいなもの…かな?超能力で有名なサイコキネシスを例とすると、念じるだけでスプーンが曲がったり物が浮くんじゃなくて、スタンドが出てきてスプーンを指で曲げたり、物を持ち上げてる感じ………今この状況も幽波紋使い以外には、僕が空中浮遊してるように見える。ここまではわかる?」

 

「あぁ」

 

「それでスタンドにはそれぞれ能力があって、他人を攻撃したり持ち主を守ったりする守護霊のような存在なんだよ。悪霊とは逆…自分に向けて銃を発砲しても、自分の意思とは関係せず無意識に守ってくれたでしょ?」

 

「ちょっと待て。何でテメェがそこまで知ってる?」

 

「えっ?いや、スタンド歴長いから…」

 

「そっちもそうだがそっちじゃねぇ。銃を発砲した方だ」

 

 あ……そっか。原作で知っているだけで実際に見てはなかったな。

 

「承太郎が悪霊と呼んでいたことも事前に知っていたでしょ?警官のオジさんに拳銃の件も聞いたんだよ」

 

 適当に嘘をつくと「そうか」と承太郎は短く言って、僕に説明の続きを頼む。承太郎は注意深いからな……下手に口が滑らないか不安だ。

 

「説明の続きだけど…スタンドは持ち主の分身。スタンドが傷付けば宿主も傷つくから気を付けてね。その逆もしかり……幽波紋使いがダメージを受けると精神力みたいなのが弱まってスタンドも力を落とすよ…僕が知ってるのはこのくらいかな。別の質問はない?」

 

 そう答えると承太郎は胡座を組み直し質問してくる。

 

「さっき別視点が如何の斯うの言ってたな。どういう事だ?」

 

「先程言ったのはスタンドの自我の話…それとは別でスタンドの力にはルールがあるんだ」

 

「ルール?」

 

 首を僅かに傾げる承太郎を見て僕はケロちゃんから降りる。

 

「承太郎の星の白金(スタープラチナ)みたいに近距離パワー型のスタンドもいれば、力は弱いけど遠距離まで操作できる遠距離操作型もいる。他にも分裂するタイプや、幽波紋使いにダメージがフィードバックしない奴もいるよ。一人一体までだと考えてる人もいるけど、軍隊型のスタンドもいる。さらに言えば、自分がスタンドになる一体化型、鎧のように身に纏う装着型、武器として扱う道具型もあるよ。推測だけど、結果的に長所と短所があるのがルールかな?僕のも少し例外だし」

 

「テメェのスタンド?」

 

「遠距離操作型のパワースタンド。ケロちゃんは遠距離操作型とは思えないほどに力がある。そして防御力が異常。その代わり、僕のスタンドは地面の上でしか活動できないし不器用なんだ」

 

「次の質問だ」

 

 まだあるのか………もうほとんど話したと思うんだけどな。

 

「何でテメェがそこまで知ってる?」

 

 ……あれ?デジャブ?

 そう思って口を開こうとしたが、承太郎の次の一言で僕は硬直する。

 

「スタンドについてじゃねぇぜ。俺のスタンド……テメェは星の白金(スタープラチナ)と言ったな」

 

「……………」

 

 …やっちゃった?僕は口がちょっと軽いんだよね。注意しようときた矢先にコレだ…どうしよう。

 

「俺はこいつに名前をつけた覚えはない。もう一度問う…なんでテメェがそこまで知ってる?」

 

「………す…」

 

「す?」

 

「すいませんでしたァァァ‼︎」

 

 僕は土下座をかまし、秘密を貫く事を諦めた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 あの後…小一時間かけて僕には前世の記憶があることと、ジョジョの原作云々の話をした。

 

「……それを信じろってのか?」

 

「うん知ってた、信じてもらえないのは。だからずっと黙ってた。言ったら精神病院に送られて終わりだもん」

 

 承太郎は呆れた顔……というか僕が言ったことを全く信じてないかも。時間をかけて説明したスタンドの話も真偽が怪しいと思っているかもしれない。

 

「ひ…ひとまず今日は帰るね……」

 

 居心地が悪いあまり、僕はそっと立ち上がって帰ろうとする。

 

「……しろ……」

 

「えっ?」

 

 背後から承太郎が何かを呟いた。あまりに呟きが小さ過ぎるので、僕は振り向いて聞き直す。

 

「予言しろ……と言ったんだ。仮にお前が未来のパラレルワールドから来たってんならできるだろ?」

 

 そうだ…予言!その手があったか……これから起こりうる事を予言すれば……

 だがそこで一つの問題に差し掛かる。

 ジョセフさん達が来るのは、ホリィさんが檻から出ない承太郎を説得して欲しいとお願いするからだ。すでに僕が牢屋から連れ出してしまった………この場合はどうなるんだろう。

 ひとまず今できる予言は………

 

「……ごめん…承太郎を牢屋から連れだしたことで、今予言できる未来が原作からずれちゃってる」

 

「なら過去はどうだ?俺の祖父の祖父の代から物語を知ってんだろ?」

 

 ……承太郎が頭切れる子で助かります。

 

「それだ!……でもなんでそこまで助言してくれるの?」

 

「最後まで話を聞くと言ったからな」

 

 優しい………これが本来の承太郎の優しさか?

 

「じゃあジョセフさんに……話できるの?不動産王と…」

 

「その気になればな…電話にはスージー婆ちゃんかレオンが出るかも知れねぇが」

 

 そこで聞きなれぬ名前が出てくる。レオン……?

 

「レオンって誰?スージーさんとジョセフさんは原作を知ってるからわかるけど……」

 

「……レオンは知らねえのか?」

 

 そこで承太郎にレオンさんのことを教えて貰おうとしたが、何故か教えてはくれなかった。

 

「んー……やっぱり今日は帰るね……それとスタンド云々以外の話は忘れて………あ、そういえば…原作ではジョセフさんがスタンドをすでに身に付けてたはずだよ」

 

 そう言って僕は帰宅した。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 うぅーどうしよう……承太郎は今はまだ半信半疑で信用してくれている。でもそれは友人としてなんだろうなぁ…

 ジョセフさんにスタンドが発現してるかどうか裏取ってくれれば、少しは信用度が上がるかな?

 

「レイカ、晩飯ができたぞ」

 

「はーい」

 

 自室で悩み悩んでどうしようか考えていると、シスターの柔らかく凛とした声が現実に戻す。

 戸を開けてリビングに入ると香ばしい匂いが鼻を擽る。

 

「美味しそうないい匂い!今日はハンバーグだね」

 

「あぁ。テーブルに持っていくのを手伝ってくれ」

 

 そう言われて台所に回りこみ、僕は晩飯を乗せた食器を手に取る。そこで僕は不自然な点に気付く。

 用意された食事が一人分多いのだ。3人分のハンバーグ、白米が盛られた3つのお椀、そしていつもは誰も座らない場所に椅子が置かれている。

 

「今日誰か来るの?」

 

「急な事にな」

 

「急なの?非常識な人だね」

 

「そう言うな。我々が世話になっている方だぞ」

 

 世話になってる人?それって生活を援助してもらってるあのイケメンさんかな?

 

「何の用で来るの?」

 

「それはよくわからない「ピンポーン」…噂をすれば」

 

 僕は玄関に向かうシスターの後をつける。シスターが鍵を開け、扉がゆっくりと開かれた。

 

「エーデルガルト、急にすまないな」

 

「……………」

 

「私は構いませんよ。どうぞ中へ」

 

 僕の記憶が正しければ、その人は昔と同じ若さを保っていた。え?何?波紋使いなの?

 

「君も久しぶりだ葎崎 礼神。大きくなったな」

 

  「ど、どうも」

 

「それで……今日はどのようなご用件で?」

 

 リビングに通されたお兄さんは、椅子の背もたれにコートを掛け僕の方に手を向ける。

 

「彼女に話があってな」

 

「………え?」

 

 なにそれ知らない。

 

「その様子じゃ承太郎は何も言わなかったのか…」

 

 なんでこのタイミングで承太郎の名前が出てきた?そう思ったが口には出さず、彼が自己紹介をするのを待った。

 

「私はレオン。承太郎の親戚だ」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 レオンと名乗ったイケメンさんは事情を説明してくれた。どうも承太郎から「頭のおかしな奴がいるんだが一度会って、話を聞いてやってくれ」と言われてきたらしい。

 なんだよ頭のおかしな奴って!確かに承太郎からしたらその通りだけどさ‼︎

 

「ご馳走様…」

 

「お粗末様です」

 

 会話もせずに夕食を終え、レオンさんが本題を切り出す。

 

「それで……私は何を聞けばいいんだ?」

 

 そう言われてもなぁ……僕は原作を知っている、だから運命に抗ってハッピーエンドに持っていきたい……第3部で出てくる死人……そして僕が大好きなイギー。死なせたくない。

 かといってなんて言えばいいんだ?僕のスタンド能力は未来が見えます?ダメだ…原作からズレてしまったら予言できない。ならどうする?承太郎の時見たく「僕はパラレルワールドから来て皆さんの運命を漫画として見ていました」とでも言うのか⁉︎

 

「……大丈夫か?」

 

 頭を抱えて視線を右往左往させる私を見かねて、レオンさんが僕に声をかける。

 

「信じる信じないは一度置いておいて、言いたいことを言ってみなさい」

 

 そう言われて僕はその通り話す…承太郎に言った台詞と同じ台詞をな……きっと信じてもらえないが……

 

「僕は前世の記憶があります……死んで転生しました…たぶんパラレルワールドから来たんだと思います」

 

「……それで…?」

 

「前世で読んでいた漫画……書物に、この世界の…ジョースター家の物語を記したものがありました。要約すると僕はこの先の未来を知っています」

 

 言ってしまった……弱々しい声で俯きながら僕は、信じてもらえないと思うことを口先で並べ終えたのだ。

 

「レイカ…何を言っているんだ?レオン殿、気にしないでください」

 

 シスターが我が娘の言動を恥じるかのように言う。軽くショックだな。そしてゆっくり僕は顔を上げてレオンさんを見る。すると……

 

()()()()()()()()()()

 

「………へ?」

 

「エーデルガルド、すまないがこの子と長話がしたい。1日借りてもいいか?」

 

 え?この人何言ってんの?一人の少女を大胆に誘拐しようとしてんの?

 

「どうしてかはわかりませんが……わかりました」

 

「え゛⁉︎」

 

 シスター?良いの?貴女の娘みたいなものだよ?無用心に男の人に預けていいの?僕はこの人を良く知らないんだよ?

 

「礼神、急ですまないが一緒に来てくれ」

 

「え?え?え?」

 

 頭の回転も追いつかず、僕はレオンさんに連れられ外へ出た。道中でタクシーを捕まえて乗り込み、口早に運転手に目的地を告げたレオンさんの隣に座る。オマケに「急いでくれ」と付け足すとタクシーは出発した。

 やがてタクシーがソコソコ高級なホテルの前で止まる。

 

「礼神、来なさい」

 

「へ?は、はい」

 

 何故か逆らうこともできず、僕はレオンさんに手を引かれて中に入った。

 

「SPW財団のレオンだ」

 

「え?」

 

 何度目かの驚きと疑問を短く吐く。その間にレオンさんは鍵を受け取り、急ぎ足でエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターガールに最上階と言う、ようやく心の整理と現状を理解しレオンさんに問う。

 

「あの〜…何故このような所に?」

 

「私と君以外に会話の内容をきかせないためだ」

 

 僕が転生者だということを信じているの?だとしてもシスターの前で言ったって僕は構わないんだけどな…承太郎にも言ってあるし……

 

「自分は構わないって顔だな」

 

 僕の心を汲み取ったかのようにレオンさんがそう言った。

 

「続きは部屋に入ってから話そう」

 

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