ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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21.二人の転生者

 SPW財団の仕事の一環で、私は日本のホテルに泊まっていた。そのホテルの部屋に珍しく承太郎から電話がかかってきた。

 承太郎というのはジョセフの一人娘のホリィの息子…要するにジョセフの孫にあたる者だ。日本の血が混じったが、彼も正真正銘…星の一族の血を引く男……第二の孫である。

 今更だがトンペティの奴…玄孫(やしゃご)(孫の孫)と言う意味を持つ言葉は知らなかったのか?

 

「私だ。どうした?」

 

『ちょっと用があってな。今日本にいると知って電話させてもらった……レオン、今暇か?』

 

「あぁ、丁度風呂を上がったところだ」

 

 頭をタオルでワシャワシャと掻き乱して水分を取りはらう。すると受話器の向こうから承太郎のため息が聞こえてくる。

 

『風呂入ったばかりで悪いが、一つ頼まれてくれねぇか?』

 

 謝罪を文の頭につけて承太郎がそう言ってきた。仕事も終えた後…そして彼の頼みというのも珍しく、私は二つ返事で承諾した。

 

『頭のおかしな奴がいるんだが一度会ってみてくれ』

 

「?……それは誰だ?」

 

『葎崎 礼神…テメェも知ってるはずだぜ』

 

 確かに知っている名前だ。孤児院全焼時の唯一の生き残り…名字こそそのままだが、エーデルガルドの娘だ。

 

「何故?」

 

『詳しくはそいつに聞いてくれ』

 

 そして一方的に通話を切られ、私は彼女の住まいに足を運んだ。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「そんな訳で私は君の元に来て話を聞いた」

 

「それで……僕が言ってる事を信じてくれるんですか?」

 

「転生者ということをか?信じたいと思っている」

 

 私自身も忘れかけていたことだが、この私も転生者(この呼称は礼神が呼んでいるのから使わせてもらう)だ。もし私と同じ境遇の者なら親近感が湧くし、私の知らないこの先のシナリオを知っているなら放ってはおけない。

 

「まず転生者だという証明として、過去について述べてくれ。ジョセフ・ジョースターが若かった頃からの話だ」

 

 もし本当に転生者なら、これで原作通りに述べるはず。逆にすでに変わった運命を述べるのなら、何かしらの手段で裏を取った偽物だ。

 

「良いですけど……わかるんですか?」

 

「あぁ、私はSPW財団の一員でそれなりに過去の事を古株の先輩から聞いている」

 

 私が人外だと知らない彼女に適当な嘘をつくと、彼女は迷いながらも述べてくれた。

 

「ストレイツォが育てたリサリサは、夫であるジョージ・ジョースターを、ディオによってゾンビにされた上司に殺されて復讐し指名手配される」

 

「わかった。もう十分だ」

 

「え?もう?」

 

 最初に告げられたこの文で私は十中八九信用した。既にこの時点で、この世界は原作からかけ離れている。ジョージは死んでいないし、リサリサは指名手配されていないからだ。

 

「君が転生者だと言うことを信じる」

 

「あの……僕まだ序盤中の序盤しか…」

 

「あぁ…気にしないでくれ。今ので十分君の存在を証明できた」

 

 私の言葉に首を傾げる礼神…彼女が転生者ならば私も本当のことを話して構わないだろう。

 

「見えるか?ここを見てくれ」

 

 彼女に背を向けて、私は男にしては長めの髪を持ち上げて首筋を見せる。

 

「星型の……痣……」

 

「私はレオン・ジョースター。君と同じ、死後この世界に飛び込んだイレギュラーだ」

 

 彼女は迷いながらも自分の事を…原作を明かすという行動を起こしてくれた。もし私が敵だったら取り返しのつかないことになったかもしれないのに………だから私も、この世界での自分の立場を話した。

 

 

 

 

 

「……ヨガッダ…グスッ…僕一人じゃなぐで…」

 

 礼神は涙声で安堵を漏らす。

 この世界では両親に捨てられ、第二の家族の大半を火事で失ったのだ……主人公と友達になれたとはいえ、さぞかし心細かっただろう。

 ちなみにディオの実の弟だということは伝えていない。私は第2部からこの世界にいると伝えてある。

 

「教えてくれ礼神…第3部の大まかなシナリオを…」

 

「グズン…ッエ?…じらないんですが?」

 

「私が知っているのは第2部まで…正確にはコミックスの12巻までだ」

 

 そう言うと、礼神は深呼吸を何度か繰り返してから口を開く。

 

「ディオが復活してスタンド能力を手に入れる。その時ジョナサンの肉体が子孫に電波のようなものを発し、ジョースター家も幽波紋使いになる。でもホリィさんだけスタンドを使う力が無くて、スタンドの存在が逆に害になる。そんなホリィさんを助ける為に主人公チームはディオを倒しに行く…大雑把ですが、これが第3部の原作です」

 

「やはりディオか……」

 

 生きている事は知っていた。何を隠そう、海底に沈んだ奴を引き上げたのはSPW財団だ。私の命令に基づいて引き上げ、私が直接始末するつもりだった………しかし逃してしまった。

 貨物船が見つかった時点で「私が現地に着くまで待て」と指示したのだが、新人の自分勝手な奴が棺を引き上げてしまったのだ。紫外線照射装置もまだ運搬を終えておらず、波紋使いもその場にはいない……結果…もちろんDIOは世に解き放たれてしまったのだ。

 こんな事になるなら引き上げず、世に解き放たずに餓死するのを待った方が良かったか?

 

「間違いに気付く時は……いつだって遅いものだな」

 

「それで…あの……レオンさんはスタンドを知っているの?」

 

 彼女の言葉に反応するかのように、礼神の背後に赤い狼のような生物が現れる。よく見てみると腹部と足が骨になりかけている。

 それが礼神のスタンドなんだろうな…

 

「スタンド…知っているよ。私も一応発現しているからね…だが詳しくは知らないんだ……教えてくれないか?」

 

 私は礼神からスタンドについてを教えてもらう。

 

「…と言った感じです。原作では、【破壊力:B / スピード:B / 射程距離:B / 持続力:B / 精密動作性:D/ 成長性:?】って感じで表記されてます……ちなみにこれはケロちゃんのステータスです。成長性は成長したことないんでわからないです。レオンさんのスタンドは何?」

 

「私のスタンドか?」

 

「うん。能力とか…ちなみに僕のケロちゃんは結構いろいろできるよ。肋骨の中が収納スペースになってたり、尻尾が取れたり」

 

「そうか。私のスタンドはこれだ」

 

 結構親しく接してくれる彼女に好感を覚えつつも、私は私のスタンドを出した。

 

「これは……装着型のスタンドかな?」

 

 私のスタンドは、両手両足に嵌められた手袋とブーツだ。デザインは黒と群青色のシンプル極まりない物で、センスなんてない。ただ精神の具現化と言われた時はなんとなく「それでか」と納得した。

 余談だが、私の好きな色は白と暗めの色……一言で言うと地味な色だ。

 

「能力は?」

 

「触れる」

 

「………え?」

 

「装着型だから素手でスタンドを殴る、蹴るが可能」

 

「………それだけ?」

 

「そんなわけないだろ」

 

「だよね⁉︎ びっくりしたぁー‼︎」

 

 礼神が派手なリアクションをとって安堵の息を吐く。

 

「私のスタンドは能力が強力でね……代わりにステータスに関しては最低ランクなんだ」

 

「そうなの?」

 

【破壊力:E / スピード:E / 射程距離:E / 持続力:E / 精密動作性:E / 成長性:E】

 

「………マジで?」

 

「あぁ。というか、パワーもスピードも精密動作も…全て本人の手先、筋力に=(イコール)しているだけだ」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 翌日の早朝、AM:5:28……僕は高級クラスの部屋のベッドで目を覚ます。隣のベッドではイケメンなレオンさんが寝息を立てている。

 

「……今更だけど、僕男の人と外泊なんて初めてだよ………そう思うと恥ずかしいな」

 

 寝ているベッドは別だが、同じ空間だと考えてしまうと恥ずかしい。顔に赤みがかかっているのがわかる。

 それを感じて頬を両手で押さえていると、置いてあった目覚ましがベルを鳴らす。

 

「…ん………んっ「パシッ」……スー……Zzz」

 

 目覚ましに目も向けず、レオンさんは片手で目覚ましを止める。しかしこの目覚ましは電源を落とすまで鳴り続けるものらしく、30秒ほど経つとまた鳴り始める。それを3回繰り返し、いい加減僕が起こそうとしたその時……

 

「……ん‼︎「ガシャン‼︎」………ん?」

 

「……………」

 

 昨夜は同じ転生者だという喜びからスルーしたけど、この人吸血鬼だったんだよね………しつこく鳴り響く目覚まし時計が粉々になり、壊した本人は寝惚けた表情を浮かべたまま停止している。

 

「……私が壊したのかな?」

 

「うん」

 

「………朝は苦手なんです」

 

 そう言ってガラクタと化した時計を片付ける。その慣れた手つきから、これは珍しい事ではないことがわかる………ってレオンさん⁉︎ベランダ出たら昇天するよ⁉︎

 

「ん?…あぁ、大丈夫ですよ」

 

 必死に止めようとする僕の頭を撫でてから、ほぼ真横から伸びる日の光を浴びて欠伸をする。あれ?吸血鬼……あれ?

 

「昨日は吸血鬼になって不老不死になったことを説明しただけで教えていなかったね。実は私は、もう1ランク上の生物なんだよ」

 

 僕はレオンさんが柱の男の細胞を吸収し、不完全だか日光を克服したことを知った。ついでに波紋も覚えたらしい。

 

「……って事は吸血鬼と柱の男のハーフの究極生物の波紋&幽波紋使い?完全にチートじゃないですか⁉︎」

 

「聞く分にはね…実力はイマイチなのだよ…」

 

 そう言って眠そうなレオンさんは顔を洗いに洗面台へ向かう。そして戻ってくると鋭い目つきで僕を見つめ、口を開いて告げることを告げた。

 

「君の目的は私と同じ…原作で出てくる死者を無くすこと…そしてそれを実行するために旅に同行することだな?」

 

「は、はい!」

 

 少し低くなった凛々しい声のせいで、無意識に背筋が伸びる。レオンさんは、寝起きは言葉が柔らかくなるタイプの人なんだね。

 

「危険な旅だ。まず君はエーデルガルドに許可を貰いなさい。話はそれからだ」

 

「わっかりましたぁー」

 

 

 

 

 

「わかりました。気を付けなさい」

 

「え?良いの?」

 

 自宅に帰ってシスターに事情を話すと、溜息を一度だけ吐いて旅に出ることを承諾してくれる。

 ちなみにレオンさんは、僕を家前まで送って帰って行った。

 

「なんで?僕の事心配じゃないの?」

 

「行きたいのか行きたくないのかどっちかにしなさい」

 

「ごもっともですシスター…でもどうして?」

 

「危険な旅です…だからもちろん心配です。でも、私は昔 生きる為にドイツ軍人になって戦う事になった。貴女は誰かの為に戦おうと自ら望んでいる。戦いから逃げた私が、貴女を止める権利はありません。それに…レオン殿なら信頼できるし、助けにもなりたいのでしょう?」

 

 レオンさん…貴方は中々の信頼されてるんですね………

 

「それよりレイカ…もうそろそろ準備をしないと遅刻しますよ?」

 

「うわっ‼︎ヤッベ⁉︎」

 

 そう言って急いで着替え、僕は食パンを口に咥えて家を飛び出す。すると玄関を開けてすぐのところで大男と出喰わす。

 

「よお。迎えに来たぜ」

 

 ……承太郎の迎えとか贅沢過ぎる…ファンの方々に妬まれないか怖いな……

 

「ほれじゃ……ゴクン……行ってきます!」

 

「はい行ってらっしゃい」

 

 咀嚼して口に含んでた分を飲み込み、僕はハッキリそう言って玄関の戸を閉めた。

 

「………レオンは頭の切れる奴だ。あいつが信じるなら俺も信じる」

 

 高さの違う肩を並べて通学路を歩いていると、ずっと無言だった承太郎が話しかけてくる。

 

「レオンさんから何か聞いたの?」

 

「今朝うちに来て、テメェの事を聞かされた」

 

 下から承太郎を見上げて聞くと、承太郎はこっちを見ずに答える。

 

「昨夜のうちに連絡を取ったらしく、今日の昼…ジイさんがこっちに来る。テメェも放課後うちに来い。わかったな?」

 

「……へい」

 

 今更になって原作に関わり始める自分が怖くなってきた。スタンドの扱いには慣れてるけど、実践して戦った事なんか勿論ない……前世では格闘技なんかも習っておらず、前世所属した部活は合唱部だ。

 

「……お腹痛くなってきた」

 

「急いで飯食うからだろ」

 

「そういう意味じゃないんだな……」

 

 この後僕は承太郎と共に登校して、承太郎への黄色い悲鳴を隣で浴びた。その次は教室に入り…授業を受け…授業を終え…昼ご飯を食べて…昼に承太郎を見に来るファン達と話して…また黄色い悲鳴を浴びて…下校して………とにかく僕は放課後までいつも通りの日常を送った。

 …しかし………まだ平和なはずの日常がとても落ち着かない。高校受験の面接時の待ち時間に似ているがそれより酷い。

 何をしても落ち着かない…これが恐怖なのか不安なのかもわからない。ただただ黙々と時間が過ぎるのを感じて、なぜか焦りを覚えているだけだ。

 

「……レオンさんも、最初はこんな気持ちだったのかな?」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 礼神を家に送り届けた後……私はチェックインしたままのホテルに戻ろうとした。しかしその道中で厄介な人に捕まる。

 

「レオンさん!見ーつけた!」

 

 40過ぎたにも関わらず、無邪気な女子高生の様な言葉遣いで彼女は背後から話しかけてくる。恐る恐る振り向くと、そこには買い物袋を持ったホリィがいた。これから買い物に行くのだろう。

 

「もぉ!こっち来てるなら言ってくれれば良いのに」

 

「………ホリィ……」

 

「なんでそんな嫌そうな顔するのよ!それからコッチでは聖子さんって呼んで」

 

 頬を膨らまして距離を詰めてくる。豊麗線さえ無けければ、大学生と言ってもおかしくない顔立ち…しかもこの接し方のせいで、本当に若返ったのかと幻覚を見ることもあるから困る。

 

「あら聖子さ……ん⁉︎…えっ‼︎ 浮気⁉︎」

 

 近所のご婦人が我々を見てそんな事を言ってくる。

 ……またか…ホリィと外で話すとこういう事が多々あるから面倒だというのに………

 

「姉がお世話になってます。ところで、私はまだ17歳なんですがそんな老けて見えますか?」

 

「あら‼︎弟さんがいたなんて初耳‼︎」

 

 私の外見はホリィの息子としても通る若さだ。だから私は決まって「年の差のあるホリィの弟」という設定を使う。

 

「それではこの辺で……レオン、荷物持ちお願いね?」

 

 私に買い物袋を押し付けてホリィが微笑む。この状況下では付いて行かざるを得ないので困る。

 結果は私はホリィの買い物に付き合い、空条家にお邪魔することになった。

 

「私の伯父だったレオンさんに、姉扱いされるなんて新鮮ね」

 

「仕方ないだろう。寿命が違うのだから」

 

 昔 私は、スピードのお陰でジョースター家のファミリーネームで戸籍を偽造した。しかし私は吸血鬼……この外見で何時までもジョセフの兄として生きる事は出来ない。だから戸籍上はジョセフの息子という形で、偽造再発行する事になる。空条夫妻に引き取られた養子という設定の方が、外見年齢的には違和感はないが、ジョースターの名を使えなくなるのは嫌なのでジョセフの息子になった。

 要するに昔は孫のように接していたジョセフを、世間の前では「父さん」と呼ばないといけないのだ。

 そうこう考えているうちに空条家の客間に通された私は、飲み物を片手に雑談をしていた。日本茶は苦くてあまり好きではないのを覚えていてくれたのか、グラスコップの中身は紅茶が注がれている。

 

「ねぇ、今日は泊まっていくんでしょ?」

 

「そんなこと言っていない」

 

「お願いよ。可愛い姪っ子のお願い!」

 

「姉になるのか姪でいるのかどっちかにしなさい」

 

 私がそう言うとホリィは姪でいることを選んだ。世間の前ではどの道 姉呼ばわりしないといけないというのに……

 

 そしてその後もホリィがしつこいので、結局空条家で今日は過ごす事になった。

 




葎崎 礼神 18歳 163cm 59kg
第一人称「僕」
武器:スタンド

基本不器用だが物を奪い取る事に関しては何故か上手い

スタンド名:ケロベロス
骨ゾンビ犬の様な姿をした遠距離防御型スタンド。
圧倒的防御力を誇り、一部の骨の操作が可能。
自我を持つスタンドなので命令する事で自動操縦もできる。
肋骨の内側は空洞のシェルターのようになっていて、人1人入れるくらいのスペースがある。
しかし肋骨も骨なので隙間はある。隠れたところで 炎などの流動する攻撃や細かい攻撃は防げない。

ケルベロスが正しい呼称だがまだ気付いていない。
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