〜承太郎side〜
葎崎がうちに来た2日後の登校時……俺は昨夜かかってきた電話の内容…葎崎の助言を思い出していた。
『いい承太郎?花京院のスタンド…
「………」
全くもっておかしな話だぜ。最近まで普通のダチ公だと思っていた奴が、予言者のように俺に助言してくる。
葎崎は外ではその話を一切しない……嘘はつけない奴だが、演技力のあるやつだ。
……にしても光るメロンってなんだ?
「承太郎」
葎崎が不意に俺の名を呼ぶ。気がつくと俺は、校内にある石階段の前まで来ていた。
俺はこれからこの階段を下りる………
『花京院はまず最初に、石階段を降りる所で気付かれないように攻撃してくる。その不意打ちを食らって階段から落ちちゃうんだけど…まぁ原作でも対処出来たから問題ないだろうけど気をつけて』
助言の事を思い出して鼻で笑う。
攻撃してくる事が分かってんなら問題ねぇ。向かってきたところをぶん殴るだけだ。
そう思った瞬間、俺の足が何かに切られる。
「承太郎‼︎」
「……チッ‼︎」
足を切られて体勢を崩し、俺は石階段から落下する。事前に知っていたため落ちる直前で枝を掴み着地できたが、奴のスタンドを見る事は出来なかった。
『それで足を切られた承太郎は、保健室で手当を受ける。しかしそこにいた女医が操られていて戦闘スタートだよ』
「……やれやれだぜ」
……どうやら、予言通りに事が運んじまったらしい。
ー
ーー
ーーー
あの後承太郎は保健室に向かった。無傷の僕は付き添う理由が無いし、無理してついて行くと取り巻きがうるさい。だから騒ぎが起こるまで教室にいる事にした。承太郎のズキューンを目の当たりにするのはチョット気まずいしね。
「……であるからして………よって答えは……」
今日も頭が輝かしい先生の授業を聞き流し、僕は窓の外に目を向ける。するとやがて廊下が騒がしくなる。
「はいはい立つな。お前らはちょっと自習してろ!」
先生が冷静に対応してるけどそれじゃ困る。僕はケロちゃんを出してパニックを引き起こす。消火器を破壊して煙を充満させたり、非常ベルを鳴らして混乱を招く。
その混乱に乗じて、僕はクラスを抜け出して保健室に向かった。
前世合唱部、現在帰宅部のインドア女子の全力ダッシュ……保健室の前に到着した頃には、スタミナをほとんど使い果たしていた。
それでも僕は荒い呼吸を整える暇も作らずに、急いで保健室の引き戸を開けた。
「なるほど……確かに光るメロンみてぇだな」
僕が入ると、丁度場面は花京院のスタンドを引き摺り出したところだった。よかった……ズキューンの後だ。
「引き摺り出したことを………後悔する事になるぞ……」
ウェーブが掛かった特殊な前髪を持つ男子高校生、花京院はそう言ってスタンドに攻撃させようとする。
「…ッ!くるか⁉︎」
花京院のスタンドは両手を合わせ、隙間から緑色の液体が溢れ出てくる。そしてその液体の中から緑宝が飛び出してきた。
「ケロちゃん‼︎」
僕が叫ぶ様に名を呼ぶと、ホラーチックな犬が
「何ッ!私のエメラルドスプラッシュが⁉︎」
僕のケロちゃんは一度交通事故にあった事がある。飲酒運転のトラックが横転して、僕は下敷きになりかけて防御せざるを得なかったのだ。しかしケロちゃんの肋骨内に隠れて身を守ると、胸部が少し揺れただけでダメージはフィードバックしてこなかった。いや、したんだろうけど全くダメージが無かったのだ。プルンッて揺れただけ。
「こちとらトラックに無防備な状態で轢かれて無傷なスタンドなんだよ。火力が足りないね!弾幕薄いよ!」
エメラルドはケロちゃんの骨に阻まれて弾かれる。そして僕が適当な事を言って挑発していると、気を取られていた花京院は承太郎の
「相手が悪かったな」
承太郎がスタプラでボディに一発……加減はしたようだが、それを受けた花京院は気絶し、ハイエロファントも姿を消した。
「よし!任務完了‼︎ 承太郎!サボるぞ……ってアレ?」
承太郎は額の右側から血を流している……エメラルドを完全に防ぐ事は出来なかったみたいだ。
まぁ骨だから隙間があるのは当たり前か……大半は防げたみたいだけど……
学校をふけた僕らは急いで帰宅する。乗り心地悪いけどケロちゃんは移動にも便利で、僕と承太郎が乗っても結構な速度で走る。でも花京院は肋骨の収納スペースに寝かせてケロちゃんの背骨に僕らが跨っている為、幽波紋使い以外から見られたらかなり異常だ。だからすぐに徒歩に切り替えたんだよね。
だって気絶した学生が横向きで空中浮遊していて、それに跨った男女が高速移動してんだよ?
「ただいまー 僕ん家じゃないけどー。ってそんな呑気な事言ってる場合じゃなかった」
一人ボケをかましてから花京院を茶室に運ぶ。そこにはホリィさん以外の3人がいて、レオンさんがすぐさま額を確認する。そこにはやはり、肉の芽があった。
肉の芽とは吸血鬼が生み出すコントローラーのようなもので、埋め込まれたものは忠誠を誓い意のままに操られてしまう。
「コレを承太郎が抜くんだったな?」
「うん。承太郎のスタプラなら精密に力強く、身じろぎひとつさせずに取り出せるはず」
「よしわかった。退いてろ葎崎」
そう言って承太郎が前に出る。
「レオン…外傷があまりねぇから目覚めるかもしれない。テメェが抑えろ。お前のスタンドならこいつのスタンドも封じ込められるだろ?」
承太郎にそう言われると、レオンさんは一度頷いて花京院を膝枕して頭を押さえる。右手にはスタンドの手袋が嵌められている。
そういえば結局聞けてないじゃん。レオンさんのスタンドは能力が強力と言っていたけど、スタンドを封じ込める能力なの?
そう考えていると肉の芽の摘出を開始する。すると肉の芽が抵抗し、承太郎の手首に触手を突き刺し侵食し始める……ウゲェ……
「…ゴメンナサイ……こういう絵面無理……」
僕はみんなの返事も待たずに部屋を出た。
数分後…無事肉の芽は摘出され、承太郎は今レオンさんに僅かな傷を波紋で癒してもらっている。
「それで…次はどうなるんじゃ?」
「えっと………これは混乱を招くだけで言うべきかわからなかったけど……決めた!言うね!だから今すぐ財団を呼んで」
僕に皆が注目する。そこで一度間を置いてから僕は真実を述べた。
「ホリィさんが明日の朝倒れます」
「何ィッ!?」
ジョセフさんの驚愕の後ろでアヴドゥルさんが苦い顔をし、承太郎とレオンさんはピクリと肩を揺らした。
「ま、まさか…危惧していた事が…!?」
「…………」
レオンさんは無言で立ち上がり、部屋を出てすぐの電話に手を伸ばした。そう言えば初めて会った日のホテルロビーでSPW財団の名前を使ってたな。
「医療班を手配した…が、これで解決するのか?」
「ううん。根本を絶つためにDIOを倒しに向かう。初めて会ったあの日にそう言ったでしょ?ジョセフさん、念写はどうでしたか?」
「あぁ、バッチリ蠅が写っとったよ」
「カイロ行きの人数分のチケットも財団に言っておく。礼神、パスポートは?」
「あ、無いです」
「ならついでに作ってもらうよう頼む」
レオンさんは再度電話をかけ始める。頼りになります。
ー
ーー
ーーー
次の日の早朝……礼神の言う通り、ホリィは台所で気を失っていた。この前の夕食時も気分が悪そうだったのでそろそろだとは思ったのだが………
「レオンさん…どうです?」
「……ダメだ。一時的にスタンドを封じても、苦しみの波の高低差を大きくするだけ……私のスタンドで一時の安らぎを得ても、次の波で一気に苦しむことになる」
「結局……レオンさんのスタンドって何ですか?」
礼神がそう言ってくるので、私はまだ教えていなかった事を思い出す。
「私のスタンド……私はこの手袋とブーツを「
「リフューザル、リフレクション……拒絶と反射?」
「そう…手袋かブーツで触れている間、そこからあらゆるエネルギーを消す…もしくは跳ね返す事ができる」
「……んん〜……よくわかんない」
……まぁ…別に良いが。実を言うと、今言った説明は正しくは無い。似たようなものだが、本当の能力とは僅かに違う。
更に私には別のスタンドが……いや、あれを戦力としてカウントするのは危ないか……
「その話はまた今度にしよう。それで……君は本当に付いてくるのか?」
いつからそこにいたのか、花京院 典明が襖を開けてそこに立っていた。頭には包帯が巻かれている。
「えぇ。同行させてもらいますよ、エジプトに…」
「危険な旅だ…それでもか?」
「それでもです」
訳は聞かないが、行く気で意思を固めている。これ以上咎めるのは野暮だ。
「ならよろしく頼むよ、花京院」
私が差し出した手を彼は握り返してくれる。君に肉の芽を埋めた張本人の弟だとも知らずに……
……やはりこれは皆に黙っておくべきか? 勘付かれて聞かれたら明かせば良い……今言ったところで何の解決にもならないし、混乱を招くだけだろう。
私の血筋を知っているのはジョセフ一人…そのジョセフにも口止めをしているし、問題はないだろう。
「ところで花京院……君は親御さんになんて言い訳をするつもりだ?」
「……………」
ー
ーー
ーーー
花京院が無言を決めると、レオンさんは花京院を連れて何処かへ出かけてしまった。その間に僕は自宅に戻り、旅の準備をしてからシスターと向き合う。
「……行ってきます」
「行ってらっしゃい」
何故か送り出す側のシスターは、何の迷いもなくそう言った。自信満々なシスターの姿を見て、僕も自信が湧いてくる……まぁただの思い込みだけどね。
僅かな荷物を詰めたリュックを背負って、僕は玄関の戸を押し開けて外へ飛び出す。
「………あ…」
空条家に戻る途中でレオンさん達を見つけたので駆け寄って声を掛ける。
「ども…何してたの?」
「礼神か…支度は済んだのか?」
「うん。それで?二人は何を?」
「波紋と肉の芽を使って、花京院の両親の記憶を上書きしてきた。大丈夫…危ないことはしてない」
サラッとレオンさんは述べるが、肉の芽を使った時点で、結構危ないことなんじゃないの?花京院の表情から不安が見て取れるけど……
「花京院の許可もちゃんと得ての行動だ。何の問題もない」
僕の心の内を見据えていたかのように、レオンさんは軽く微笑む。一つ前のセリフに問題が無ければ、普通のイケメンフェイスなんだけどな……
「それと、人数分のチケットは用意出来た。礼神のパスポートも用意させたし、空条家に着いたら皆と出発するぞ」
「了解………あ、その前に相談が……」
飛行機に乗る前に決めないといけないことがある。僕の最初のお仕事だね。
「でもこれはみんなと話した方がいいかな?」
3人揃って空条家に戻ってみると、何やら庭から騒がしい声が聞こえる。何かと思ってそちらに行くと、庭に面している部屋に寝ているホリィさんが目を覚ましていた。
どうやら帰って来た僕らを出迎えようとしたところを、承太郎とジョセフさんに止められたようだ。
「おかえりなさい」
弱々しい声だが、ホリィさんは気丈に振る舞って迎えてくれる。その姿を見てるとこっちが辛くなるよ。
そして事もあろうことか、ホリィさんは客人が多いので飲み物を用意しようとする。もちろんまた身内に止められるが、「このくらいは平気」と言って起きようとする。
するとレオンさんが靴を脱いで縁側に上がり、ホリィさんの額に指を突き立てる。するとホリィさんはピタリと動くことをやめた……まさか波紋⁉︎
「ホリィがよく泣いた子供の頃も、こうすると君はピタリと泣き止んだな………」
「あら…まだ子供扱いする気?」
「そういうわけじゃない…だが、偶には童心に帰って甘えなさい」
「……そうね」
良かった……波紋じゃなかった。
ホリィさんの背中をレオンさんが支えると、彼女は大人しくいう事を聞いて、敷布団に背中をつけた。
その上から布団を掛けると、レオンさんはあることに気づいて悲しそうな表情を浮かべる。
「……また意識を失った」
レオンさんのお陰で安心しきったホリィさんは、意識を手放して眠りについたのだ。だがすぐに彼女は苦しそうに寝言を呟いている。
「……すぐにも出発だ。礼神…報告することがあるんだろ?早めに頼む」
「え、あ、はい」
レオンさんに促され僕は予言した。
「これから僕らはエジプトのカイロに飛行機で行くわけですが、飛行機の中で僕らは敵に襲われます。そこで皆さんに相談があります。原作では無事撃破するんですが、敵は操縦士を既に殺していて飛行機は墜落……香港沖に不時着してしまいます」
「何じゃと⁉︎」
「そこから空路は危険と判断して陸路と海路を使ってエジプトに向かうんですが、飛行機を離陸する前に降りて別の飛行機に乗ればたぶんコレは回避できます。そして相談というのは、どちらの選択肢を選ぶかです」
「飛行機内で戦うか、回避するか をか?それなら後者を取るのが断然楽でいいと思うんだが…」
アヴドゥルさんがそう言うと、花京院も頷いて僕を見る。
「そうでも無いよ。離陸前に降りて、それに気付いた敵も降りたとしたらどうする?空港でもしかしたら戦う事になるかもしれない。それでトラブルが起きたら警察沙汰になって、空港が機能しなくなって足止めを食らうかもしれない。仮に回避してエジプトまで難なく進めたとして、DIOの手下は20人以上…DIOと同時に20人以上の幽波紋使いに一斉に襲われて勝利する自信はおありで?」
僕の言い分も間違いではないはず。みんなが冷や汗をかいて唸るのも無理も無い。現に前世では「DIOの手下が一斉に奇襲すれば勝てたんじゃ?」っていう話題がネットで飛び交っていたからね。
「原作通り順番に始末した方が、DIOとの最終戦で勝つ確率は格段に上がる……でも最初の敵と共に飛行機に乗れば、多くの人を巻き込んでしまう………こればかりは、僕の一存じゃ決められないんだ………ゴメン」
僕がそう言い終わると、後ろからアヴドゥルさんが僕の頭に手を置いた。
「謝るな…君は悪くない」
彼のその言葉に、僕は首を縦に振ることで返事をする。そしてそれを最後に沈黙が流れた。皆がリスクを天秤にかけて悩んでいる。
そんな静寂が10秒ほど経つと、凛とした声でレオンさんが、最初に自分の答えを出した。
「飛行機内で戦う。被害を最小限にする為に、ケリはさっさと付ける」
「……それで良いんですか?敵のスタンドは素早く、乗客全員を守れる保証はないよ?むしろ操縦士が殺されるのはほぼ確定だよ?」
「偽善者ぶるつもりはない…私は家族の為に他者の犠牲を覚悟する。その犠牲以上に空港で足止めを食らうことは避けたいからな。反対の者は今ここで名乗り出ろ…………いないな。なら出発するぞ」
そう言って一方的に話を終わらせ、レオンさんは部屋を出た。少し表情が怖かったな……アレじゃ反対したくても、すぐに意見できないよ。
そんなことを考えていると皆が準備に入り、 ジョセフさんが僕に話しかけてくる。
「勘違いしないでやってくれ。レオンはワシの知る中で一番いい奴なんじゃ」
「……はぁ………他者の犠牲を顧みないところを見ると、そうは思えませんが」
「確かにな……お主はエイジャの赤石を知っておるじゃろ?」
急にジョセフさんが話を変える。僕は思わず目を丸くしてから頷く。
「柱の男を倒す為と言い伝えられていたので破壊できなかった赤石………それをレオンはカーズに使われんよう、躊躇いもなく破壊したのだ。その結果……言い伝えを無視した為、レオンはこっぴどく怒られていたのぅ」
「えっ⁉︎ 破壊したの⁉︎」
「あぁ……罪を一人で被ってな……レオンはそういう奴なんじゃ」
ちょっと話の意図がわからない……それが今とどう関係しているのだろうか。
「そう易々と口に出来んが、ワシだってホリィの為なら他人の命ぐらい犠牲にするさ。おそらく承太郎もな………わかるか女神さん……レオンは我々より先にそれを決断し、いつも代わりに罪を被っているんじゃ」
ジョセフさんの弁解を聞いて、僕は少し胸が締め付けられた気がした。今の事実を知れば、誰かに反対させないが為にあんな表情を浮かべていたとも思えてしまう。
「…でもなんでそれを教えるの?」
「………ワシはレオンに守られてばかりなんじゃよ」