ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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25.侵入詮索

 ホテルに移動してから1,2時間が経った。僕はその間寝ていたので、正確にはよくわからない。

 僕を睡眠から覚ましたのは、部屋に気持ちよく響いたチャイムだった。僕の側で本を読み時間を潰すレオンさんが、扉前まで移動して鍵を開ける。すると細身の身体の脇から、ガタイのいい男性が二人見えた。ジョセフさんとアヴドゥルさんだ。

 ついでに言うと、その二人の後ろに銀色の柱が立っているのが見える。

 

「今戻ったよ。礼神の具合はどうだ?」

 

 戻ってすぐにジョセフさんが僕の心配をしてくれる。逆に僕は心配させまいと起き上がり、グッドのハンドサインを使ってから早速質問をする。

 

「どうだった?ポルナレフは仲間になった?」

 

 そう言うとアヴドゥルさんとジョセフさんは溜息をつき、二人の後ろからフランス人が男達の間から出てくる。

 2人は「知ってたなら言ってくれ」と言った感じで、フランス人は「驚きながらも冷静です」って感じでキメ顔を作っている。

 

「俺の事を知っているのか……本当に予言者なの……か?」

 

 僕の姿を見た途端、ポルナレフは口を止めてみんなの方に振り返る。

 

「なんだこの子供は‼︎あんたら、こんなションベン臭いガキを連れてんのか⁉︎」

 

 おい貴様、いきなり失礼じゃないか………

 僕を見ての感想なんだろうな…ポルナレフの言葉は理解できないが、やはり「幽波紋使い同士の会話」を無意識に使っているようで理解できる。

 

「初めましてだなポルナレフ。私はレオン・ジョースター…そして後ろで君を威圧してるのが礼神だ」

 

 ケロちゃんを出して威圧してる僕を見かねてレオンさんが自己紹介をする。そしてポルナレフはまたこっちを向くと、上から見下し唸るケロちゃんを見て尻餅をつく。

 

「やーい。ビビってやんの」

 

「こんの餓鬼ァァァア‼︎」

 

 軽く挑発しただけなのだが、僕は ポルナレフを怒らせてしまったらしい。そして僕の長年の勘だが、彼は僕の事を勘違いしてる気がする。

 

「先に失礼な対応したのはそっちじゃん」

 

「舐めた真似を……シルバー!」

 

「やめんかポルナレフ!レディに向かって失礼だぞ‼︎」

 

 スタンドを出しかけたポルナレフを見て、ジョセフさんが止めに入ってくれる。そしてポルナレフは目を丸くして僕を見つめる。

 

「……レディ?…そういえば確かに胸も…………ゴッ⁉︎」

 

 マジマジと僕を観察するポルナレフの顔面に、僕の右ストレートが突き刺さった。

 自ら望んでボーイッシュになってるわけじゃないんだからな⁉︎

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「悪かったって。ホラホラ、そんな表情浮かべたら可愛い顔が台無しだぜ?」

 

「男と勘違いしといてよく言うよ。この礼儀知らず」

 

 後ろで繰り広げている聞くに堪えぬやり取りを耳に、私達は次の移動手段である船に向かっていた。

 子供扱い(高校生だからまだ子供かもしれんが)され、男だと勘違いされたのだから礼神は今機嫌が悪い。そして仲間になったばかりのこの男…肉の芽を埋め込まれていた被害者側の人間、J(ジャン)=P(ピエール)・ポルナレフは礼神の機嫌取りに必死だ。おそらく彼はフェミニストなのだろう。

 ……にしても

 

「並べた小人ポルナレフか…」ボソッ

 

「レオンさん…その話はもうよしてください」

 

「ヒヒッ…」

 

 私の呟きが聞こえたのか、前を歩くアヴドゥルが顔だけ振り返り呆れ、その隣を歩くジョセフは思い出し笑いをしているな。もうすでにこのネタで弄られた後なのだろう。

 ポルナレフの髪型は垂直に伸びた銀色の電柱のような髪型で、それを黒に染めて小さくして並べるとアヴドゥルの髪型になるのだ。言葉では伝えづらいが、写真か何かを見て貰えばわかると思う。

 

「おい、見えてきたぜ」

 

 しばらく歩くと、我々がチャーターした船が見えてくる。SPW財団のツテでチャーターした船……我々と乗組員以外は誰も乗っていない。乗組員も身元を確認したベテラン達だ。

 

「確かに身元を確認した……が、そのうちの一人、テニール船長が偽物で幽波紋使い…だったな?」

 

「うん」

 

 原作を知る彼女が言うのだ…可能性は高い。にしても、財団の厳重なチェックをよくすり抜けたものだ……

 

「それでレオン……その偽物をどうするつもりなんだ?」

 

「倒した所で仕掛けられていた爆弾か何かで爆破されるらしい。だから出航する前に花京院のスタンドで船内や底を徹底的に調べ、見つけ次第処理する…奴を倒すのはその後だ。ところでポルナレフ、これは花京院にも言ったが……危険な旅だ。付いてくるのか?」

 

 私がそう言うと、ポルナレフは騎士に似たスタンドを出してレイピアを力強く構える。

 ポルナレフのスタンドは銀の戦車(シルバーチャリオッツ)。能力はダメージをフィードバックしない鎧と剣捌き。甲冑を脱ぎ捨てるとスピードがさらに増すらしい。

 

「俺の妹は昔、ある幽波紋使いに殺された。その仇がDIOの手下だという可能性が強い。私情を挟んでの同行だが頼む…足手纏いにはならない」

 

 さっきまで礼神の機嫌をとっていたのが嘘のようだ。彼の青い瞳の底には強い意志があり、彼が仲間だと思うと心強くも思う。

 

「わかった。こちらこそ頼むよ、ポルナレフ」

 

「ところでレオンさん。僕のハイエロファントで見つけるのは構いませんが、どうやって処理するんですか?」

 

 当然の疑問を花京院が質問してくる。実を言うとSPW財団の力で爆弾処理を頼みたかったのだが、急な話なので無理だった。

 

「少し荒っぽいが私が処理する。だから搭乗したら私と花京院ですぐ船内へ向かう。皆は適当に出航時間を引き伸ばしてくれ」

 

「あ、なら僕が今から買い物行ってきてもいいかな?買いたいものがあるし、僕の事を待ってる事にすれば出航時間の引き伸ばしができるよね?」

 

 礼神がそう提案すると皆がそれを許可するので、小遣いをジョセフから受け取り去って行った。だが何か重大なことを思い出したのか、承太郎が小走りで礼神を追いかける。それを見てポルナレフも「買い物の方が面白そうだ」などと言って承太郎を追いかけて行った。

 買い物か……何か必要な物でもあるのか?そこらで買える物の中に……まぁ深く考えるのは止めよう。

 

「レオンさん。船外ですが既にハイエロファントの射程範囲内です」

 

「そうか…なら先に船内を調べてくれ。船長には見つかるなよ?」

 

 

 

 

 

「……レオンさん、見つけました。次の曲がり角を右……そして左手の手前から2つ目の扉です」

 

 背後を歩く花京院の指示に従い扉を開ける。するとそこは暗く、様々な資材が積まれている。そして隅に積まれた木箱の一つからは、ハイエロファントの触手がはみ出ていた。

 

「あの中です」

 

「わかった。他にはないか周囲を調べてくれ」

 

「わかりました」

 

 花京院のハイエロファントが木箱から這い出てくると、そのまま扉をすり抜けて何処かへ行ってしまった。

 

「さてと……一仕事するか」

 

 ここは船内であるため日光が差さない。このくらいの木箱ならこじ開けるどころか、音も立てずに穴を開けられる。

 早速私は爪を立てて慎重に木箱の側面に突き刺す。やがて木箱には正方形の小窓ができ、私は中身を確認した。

 

「ふむ…この程度なら……」

 

 中には確かに爆発物らしきものが入っていた。ひとまず私はそれを取り出して床に置く。

 

「手軽に付けられ高威力の遠隔爆弾…少し荒っぽくてもこれなら大丈夫だろう……確かまず……そして……」

 

 まさかドイツ軍のもとで入院した時の雑談が役に立つとは…

 こっちが動けないことをいいことに新作の爆弾や兵器の設計図を見せびらかしやがって……思い出すと僅かながらに腹が立つな。あの時はストレスも溜まったし……私が死んだらシュトロハイムに文句の一つでも言ってやろう。

 

「………ん?」

 

「……どうしましたレオンさん?」

 

「いや何でもない……ただこの後どうするのか忘れただけだ」

 

 私がそう言うと、花京院が冷や汗を滝のように流す。そこまで怯えなくともいいじゃないか。

 

「仕方ない……穴を開けるか…」

 

「え?なんて今言いました?聞き間違いですよね?お願いです。聞き間違えだと言ってください」

 

「大丈夫だ。爆弾というのは金属の容器の中で点火して圧力を高めている。外壁がそれに耐えれなくなることで一気に外へ解放された圧力が爆発だ。要するに、荒っぽいが穴を開けて圧力を逃しながら点火すればそこまで大きな爆破は起きない。だから穴を開けた衝撃で万が一誤爆しても大丈夫だ」

 

 爆薬の詰まった部分持ち出し花京院に見せてやると、花京院の顔色が更に真っ青になる。

 

「大丈夫だ…安心しなさい」

 

「本当ですね?」

 

「吸血鬼なら死にはしない……人間は知らん」

 

 そう言って私は爪で外壁に穴を開けた。

 

「…………発火しなかったようだな。後は火薬を濡らしでもすれば安全だろう」

 

「…はぁ………ッ⁉︎レオンさん‼︎この部屋に誰か来ます‼︎」

 

 安堵の表情を浮かべていた花京院が、声を潜めてそう言った。扉の下の隙間からは彼のハイエロファントが戻ってくる……やがて足音が次第に大きくなって、隙間から伸びた光が扉の向こうにいる者の影を作る。

 

 そして扉が開かれた。

 

「………可笑しいな……この辺りで物音がしたんだが………」

 

  (クッ……体勢がきつい……動くなよ、花京院)

 

 扉が開く直前に、私は花京院を背負って天井にしがみついている。指先を天井に減り込ませて指の力だけで二人分の体重を支えている……いくら吸血鬼でも最近血を摂取してないし、この体勢だと流石にキツイ。

 かくいう花京院も、私の背中にしがみ付き天井とサンドイッチになって身動きが取れなくなっている。互いに辛い体勢だな………

 

「ふむ……ネズミかな?」

 

 真下にいる船員はそんな推測をしていて、すぐには出て行かない……ん?…この男………

 私は肉の芽の触針を花京院の脳に刺し、声を出さずに脳内に直接質問する。

 

『船内に他の爆発物はあったか?Yesなら1回、NOなら2回背中を叩け』

 

(この人…直接脳内に⁉︎)

 

 脳内に直接話しかけると、花京院が私の背中を二回突く。それを確認した私は天井に減り込ませていた指を外す。その音に気付いてか、男が天井を見上げてくる。

 

「何だ⁉︎」

 

「W-Ref‼︎」

 

 私はW-Refを嵌めた右足で男を蹴り飛ばす。それを食らった男は船室の奥に吹っ飛ばされ、木箱などの残骸に埋もれる。

 

「花京院、例の偽物だ」

 

「まったく……ジョースター御一行の頭数が足りないと思ったらこんな所にいたのか……」

 

 口を切ったのか偽船長は、口から血を流しながら不敵に笑ってくる。蹴る瞬間にスタンドが前面に浮かび上がっていた気もするし、おそらくガードする気だったのだろう。それが間に合わずスタンドの顔面で攻撃を食らう羽目になった。その結果…吸血鬼の蹴りに耐えれたわけだが……

 

「ハイエロファントグリーン‼︎」

 

「ウォッ⁉︎」

 

 怯んだ隙に花京院がスタンドで拘束する。ハイエロファントの触手に巻かれた偽船長は身動きができない。が、奴のそばに魚人のような生物が現れる。

 

「それが暗青の月(ダークブルームーン)か…陸で戦えるのか?」

 

「おぉっと…バレてんのかい。ならこの能力もわかるのか?」

 

「ぐっ……」

 

 突如として花京院が苦しみ始める。しかも彼の両手から血が滲み出てきた。

 

「花京院‼︎…あれは……フジツボ⁉︎」

 

 ハイエロファントの触手にはフジツボのような貝がビッシリ付いていた。

 我々は礼神から奴のスタンドは海の中で本領を発揮する事しか知らされていない。陸で片付けて終いだと話を終わらせてしまったからだ……

 

「だが、その程度の事で私は動じない」

 

 W-Refでハイエロファントについたフジツボを引き剥がす。フジツボが剥がれたことに驚いているのか、すぐさまスタンドで攻撃してくる。

 

「W-Ref‼︎」

 

 スタンドの攻撃を掌で受ける。おそらく引っ掻いて攻撃してきたのだろう。私は奴のスタンドの腹部に拳を押し当てた。

 

「reflection」

 

「ゴフッ⁉︎」

 

 奴の腹部に大きな切り傷が出現する。奴が引っ掻くことで生み出したエネルギーを吸収し、そのまま返してやっただけだがな。

 

「つ、強い……だが貴様は俺のスタンドに触れた‼︎自分の手のスタンドを見てみな‼︎」

 

 言われて手に目を向けると、私のW-Refにはさっきと同じフジツボが付いていた。

 

「その手に付いたフジツボはスタンドからエネルギーを吸収し増殖する。力がどんどんなくなるのが実感できるだろ?」

 

「説明をわざわざありがとう。貴様のスタンドが雑魚だとよく分かったよ」

 

 W-Refの能力は吸収と放出だ……奴のフジツボも吸収が能力のようだが、それがメインか?

 

「海中での戦いが貴様本来の実力だろ?吸収が専門分野の私が、貴様より衰えているはずがない」

 

 ボロボロとフジツボが両手から剥がれ落ちて消滅する。それと同時に私のW-Refも消えた。

 時間切れか……持続力もEのW-Refは両手足に発動させると、20秒に一回のクールタイムを必要とする。クールタイムは使用時間の1/4…つまり5秒……戦闘中だと結構デカイ隙でもある。

 

「渋いねぇ…全く渋いぜ、お兄ちゃん……にしても何故俺が敵だとわかった?」

 

「今更それを聞くか?」

 

 相手がバカでよかった…雑談してくれるならクールタイムの時間が稼げる。

 

「それもそうだな…それより仲間を呼ばれては面倒だ。彼を引き摺り込んで海に逃げるとしよう」

 

「ウグッ⁉︎」

 

 背後で漏れた呻き声に顔を向けると、壁とハイエロファントの腕がくっ付いていた。よく見ると壁とハイエロファントを接合させているのがフジツボだとわかる。

 時間稼ぎをしたかったのは、奴も同じだったようだ。

 

「花京院⁉︎」

 

 やがて壁と接合していたフジツボは、全て花京院のハイエロファントに移り付く。花京院は見えない何かに引っ張られるように、船室の奥へ…奴の近くまで引き摺られていく。フジツボが原因か?だとすればまた剥がせば…

 

「助けたいならついてきな。海水たらふく飲んで死ぬ勇気があるならな‼︎」

 

 その時…偽船長は船室の壁を壊し海へ飛び込む。花京院も海に引き込まれていく。

 やばいな……せめてフジツボだけでも………

 

「W-Ref‼︎」

 

 ハイエロファントに飛び付いて、私はフジツボをなんとか剥がす。すると誰かが私の足を掴んだ。

 

「俺のダークブルームーンは、水中だとどんな魚より華麗に泳げるんだぜ?」

 

 ……飛び込んだんじゃねぇのかよ…

 私の足を掴んだのは、船腹にしがみついていた魚人スタンドだった。

 

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