レオンさん達の許可を得て、僕は自分の求めている店を探す。するとしばらくして承太郎が追いかけてくる。
「おろ?どうしたの」
「どうしたじゃねぇ…テメェ一人で買い物できんのか?」
「あ…」
「しかもテメェ、方向音痴じゃねぇか」
「おぉぅ…」
承太郎が来てくれて本当に良かった。危うく迷子になるところだった。しかも会話できないし絶対ろくなことが起きないね。
「ごめんよ承太郎。ありがと」
「で?何買うんだ?」
「あ、ポルナレフも付いてきてたんだ」
ニコニコと電柱野郎が微笑んでくる。
フッ…レオンさんのウインクに比べれば足元にも及ばないな。
「チョット服買いたいんだよね……出来る限り可愛くて女子っぽい奴」
「……やっぱり根に持ってらっしゃる?」
「根に持ってるけどそういう意味じゃないよ。海路を進む途中で必要なの」
そう言って僕は服屋を探す。ポルナレフは頭に「?」を浮かべ、承太郎は面倒臭そうに呆れている。
「お、アレなんていいんじゃねぇの?」
ポルナレフが僕の肩を掴んで人混みの一点を指差す。そこにはマネキンが店内に並べられ、それぞれが華やかな服を纏っている。
「うん…あれにしよっk 「やかましい‼︎うっとおしいぞ‼︎」
思わぬ怒号にギョッとして振り向く。そこには承太郎を取り囲む香港の女性がいた。目を離して数秒でこの人だかり……囲まれるの早すぎんだろ。
「ヤバい‼︎トラブルは起こしたくない‼︎ポルナレフ、あの中で適当に買ってきて‼︎僕は承太郎を何とかしてくる‼︎」
「ウェッ⁉︎お、おう…」
ジョセフさんから貰った小遣いをポルナレフに押し付け、僕は承太郎が何かしでかす前に仲裁に入りに行った。
買い物を終えた僕達は港に戻ってきた。すると僕らが乗る船の近くに人集りができているのが分かる。
「なんかあったみたいだぜ」
「見ろよあれ‼︎港のすぐ近くだってのにデカイ渦が…⁉︎」
間違いない…きっと誰かが偽物の船長と戦っている!でも誰が⁉︎
ひとまず僕らはみんなを探す。するとガタイのいい老人を見つける。こういう時みんなは目立つからいいね。
「ジョースターさん!これは一体⁉︎」
「おぉ、戻ったか……」
ポルナレフが声を掛けるとジョセフさんが振り向く。焦りからか額から汗を垂らしている。
「礼神…君の言う通り船長が偽物だった。爆弾は処理したが、船長に見つかりレオンさんが海に引き摺り込まれてしまった。教えてくれ…奴の能力は⁉︎」
僕の肩を掴んで花京院が激しく揺する。
「ス、ストップ花京院さん⁉︎頭が…脳みそが…」
「す、すまない」
僕から手を離し花京院が一歩下がる。
「ダークブルームーンの能力は海中で本領発揮するものばかりだよ。鱗をカッターみたいに飛ばしたり、あんな感じで大渦作ったり、フジツボ虫つけてエネルギーを奪ったりできるよ。陸でケリつけるんじゃ無かったの?」
「それができなかったからこうなっているんだろ‼︎」
花京院の怒気が強くなる。その表情は自分の失態に悔やんでる感じだ…たぶん花京院庇ってレオンさん落ちたんだろな。
「そう焦るな花京院。レオンなら大丈夫じゃ」
「何故そんなことがわかるんです「バシャ-ン」……か?」
その時……海の方で何かが打ち上げられる。
「……えぇー……イルカショーでもそこまで飛ばないよ?」
………レオンさんだった。攻撃を受けたのか、首が変な方向に曲がっている。
ー
ーー
ーーー
〜数分前のレオンside〜
さて……どうしたものか。
私はかれこれ2分くらい渦に流され回っている。渦の中心にいる偽船長をどうにかして倒したいが、私は相手の能力の全てを知らない。波紋は呼吸ができないから練れないし、海底にも日光が届いていて吸血鬼の能力も使えない……が、W-Refさえ使えれば一応倒せる。ただ私も無事で済むかわからないから、今は流されながら奴を観察し別の案を考えている。
「いい加減苦しくなってきたんじゃねぇのか?」
「余裕余裕」
波紋の修行法に「10分かけて息を吸って10分かけて息を吐く」というかなり厳しい修行法がある。私はそれを成し遂げているので肺活量に問題はない。奴が「俺の自己ベストは6分12秒」ってドヤ顔で言ってきた時は失笑しかできなかった。
ただ奴の鱗が私に切り傷を作っているのがうざったいな。
(どうしたものか…ひとまずW-Refは使えるし、やはりアレをやるしか…………ウッ…)
その時……私は軽い頭痛に襲われる。
(………またか………………)
頭痛の痛みが一層深まる。まるで頭の中で生物が荒ぶっているかのように痛い。
『現に……
(………そうだな…黙っていろ)
『…………』
「ずいぶん苦しそうじゃないか。ん?船内で言ったみたいに渋い事をもういっぺん言ってみろよ」
…………頭痛に耐えていると、偽船長がそんな挑発をしてくる。仕方ない……アイツがおとなしいうちに無茶するか…
「W-Ref‼︎」
W-Refを発動すると、私は流れに逆らって泳ぎ始める。これだけ大きな渦だ……もちろん人の力では奴の元までは届かない。そもそも水流のエネルギーを吸収して泳ぐと、水を掻いて発生するエネルギーも吸収されるので進む訳がない。
「どうした兄ちゃん?全然距離が縮まらねぇぞ?」
「これでいい…これがいい……魚の脳では、私の行動の意味など気付けんだろうさ……」
「なんだと?」
疑問に思っているようだが、未だに余裕の表情を浮かべて私を見下している。腹立つ表情だな……
「15…16…17…」
W-Refが使えなくなるギリギリまでタイミングを計る。
「18…19、reflection‼︎」
コレをやりたくなかった理由……それは私の首が捥げる可能性があるからだ。
手足でもがいて吸収した運動エネルギー……手足からその全てを下に向けて放つ。すると渦の流れから脱出して勢い良く私は浮上する。ただあまりの速さで水圧がやはり凄い…耐えれず私の首の骨が嫌な音色を奏でる。人間の体は脆い物だな。
「プハッ‼︎…クッソ…首が折れた……」
W-Refは手足へのダメージは吸収できるが、それ以外の部位へのダメージは吸収出来ないのだ。かといってアレだけ吸収したエネルギーでないと、あの渦は抜け出せない。一度失敗したら相手にも悟られてしまうしな……ちなみに吸収したエネルギーは、スタンドを消しても1時間程度なら保管できる。
さてと………ひとまず苦痛を棚上げして波紋の呼吸をし、水上高くに飛び上がった私は足を振り上げる。
「
独特な呼吸法で波紋を練り、踵下ろしの要領で水面に右足を振り下ろす。私の落下地点は渦の中心……奴の頭上だ。
「
波紋は水の中を縦横無尽に駆け巡る。W-Refを使って波紋を放てばスタンドにもダメージは通るが、生憎現在クールタイムだ。
「それでも十分過ぎる威力だが…」
2年間エア・サプレーナ島で修行し、SPW財団の代表取締役になった後も基礎的な修行を怠った事はない。
今の私の波紋は全盛期のリサリサと同じくらい……吸血鬼と波紋使いを両立する者として、私は波紋の呼吸を度々止める必要があるのだ。その為これ以上波紋が成長することはないだろう。
「花京院、引き上げてくれ」
水中で気絶した奴を片手に声を掛けると、ハイエロファントが私を引き上げてくれた。
偽者の後片付けをアヴドゥル達に任せるとして、首を支える私はジョセフに預けていた荷物を受け取り日陰に移動した。
「すみませんレオンさん。僕を庇ったばかりに…」
「気にするな。仲間なら当然の事だし、私は人と比べてタフだからな」
仲間と言ったのが嬉しかったのか、花京院は口元を緩める。するとそこへ礼神とポルナレフもやって来る。
「む…おかえり」
「おかえり…じゃねぇよ‼︎ なんだその首⁉︎」
心配してくれているのか、ポルナレフが私の前であたふたする。礼神も同様で、その手には包帯とノートが握られていた。治療してくれるつもりだったらしく、ノートは恐らく添え木の代わりだろう。
「大丈夫だ……そろそろ日陰に入って5秒経っただろう」
そう言って私のケースから妙な機械が付いたペットボトルのような水筒を取り出す。中身は赤黒い液体でいっぱいだ。
「うっ…」
「…あぁ、礼神はこういうのダメだったな」
「いや…血塗れの人よりはだいぶマシ」
中身は勿論 無菌の血液。SPW財団の医療班が持たせてくれた。それを私は3口程飲むと、首の骨がまた音色を奏でる。
「……ふむ…問題は無いな…」
そう言って首を回したり、手で揉んでみたりするが、首はちゃんと完治している。
最近は血を摂取してないからな……吸血鬼としての能力や回復力を取り戻すには、日陰で血を摂らないとダメなのだ。
しかも波紋や紫外線は身体に僅かだが残留する…色々試したが、呼吸を止めて5秒……日光から離れて5秒…それが吸血鬼に戻るのに必要とする時間だ。
「…なんだよ…それ……」
「これか?これはSPW財団に作らせた血液ボトルだ。人肌の温度と鮮度を保てる私の必需品…」
「そっちじゃねぇ‼︎テメェの能力の話だ‼︎どんなスタンド能力してんだよ‼︎」
……そういえば吸血鬼の話をしていなかったな…毎度毎度面倒くさいんだが………
………それより今は……アイツが暴れないかが不安だな。