「ん?今承太郎にボコられてるの?あ、もう気絶したの……了解、すぐ向かう」
長方形の黒い液晶盤に指を走らせ、液晶に映った赤いテレフォンマークに触れる。
「…っにしても凄いなぁ〜‼︎ 流石レオンさん‼︎」
「転生者の特権という奴だ」
ジョセフが礼神の手から液晶のソレを取り上げる。
「もう少し見せてよー」
「ダメじゃ。世界に数個しかない貴重な物じゃからのう」
「ケチー」
これは試作ついでに作った世界に数個しか無い私物だ。それにこの時代で使い回ると、変な噂が立ったり盗まれる可能性も高い。
「向かう前にジョセフ、砂は消しておけよ」
「わかっとる」
足で土を蹴り地べたを慣らし証拠を隠滅し、我々は花京院の連絡を受けた場所に向かう。その道中でジョセフはアヴドゥルにも連絡を入れる。
「アヴドゥルか?承太郎が仕留めた。GPSで花京院の方に向かってくれ。見方はこの前教えたよな?」
『えぇわかりまし…む、コラ!ポルナレフ‼︎』
『もしもし?ジョースターさん?これスゲェな‼︎ 今度俺にもくれよ』
「ハッハッハッ、現在価格は1000億前後じゃぞ?」
『ウゲッ⁉︎』
「ひとまず花京院の方へ向かってくれ」
そう言って液晶盤を二つ折りにし、それは正方形の黒い水晶体に変わる。ジョセフはそれを懐深くしまい、我々は集合場所に歩き出した。
「にしてもレオンさんも無茶するよね」
「これが最適な策だった。私は人外…別に良いだろう」
集合場所の橋に向かうと、そこには既にアヴドゥルとポルナレフもいた。アヴドゥルは呆れ顔で立ち尽くしているが、残りの3人は物珍しそうに黒い正方形を手に取り眺めていた。
「壊さないでくれよ」
「お、来たか。遅いぞ!」
「どうせそれを手にしてテンションが上がり走って来たんだろ?」
「うっ…」
「ポルナレフらしい……」
そう言って私は、ポルナレフ達から黒い水晶体を取り上げるようジョセフに伝える。
「そんな物も作ってるんですね。いつ販売予定ですか?」
「そんな予定はない。これは私のポケットマネーで作らせた私物だ。それより
そう言うと承太郎は学ランに隠し持っていた私の腕を…ポルナレフは自分の荷物に入れていた腕を返してくれる。
「日陰に行かないとくっ付かないな……移動しよう」
「こいつはどうする?」
気絶した幽波紋使い…ダンを顎でさし、横目で承太郎が聞いてくる。私は試しに気絶したダンに蹴りを入れる。
「……うん。スタンド能力は解除されている。承太郎、悪いが両手足の骨を折っておいてくれ」
「アイアイサー」
低くそう呟く承太郎は
「にしてもレオンも無茶するなぁ〜」
「礼神にも言われた」
ここで今回の種明かしをしよう。
ひとまず頭の片隅に、私は常時半径2mでスタンドエネルギーを感じ取れるという事を置いておいてほしい。
そしてまず最初に「私、礼神、ジョセフ」「アヴドゥル、ポルナレフ」「承太郎、花京院」の3組に分かれ、次に敵の粗方の位置をジョセフの
もちろん変装などでわからない可能性もある。そこで私の能力だ………私は
ジョセフは念写を続けるので動けない。私も日陰から動けない……そんなわけでその場に留まり、礼神に連絡で指示させて見つけてもらったのだ。
「ふぅ……両腕も無事戻ったし、先へ進もうか」
「その前に、それについて教えてくれませんか?」
花京院が目を輝かせて黒い水晶体を指差す。
やはり年頃の少年はこういうのに興味を持つのだな。
この黒い水晶体……最初に言ったがコレは転生者の特権の産物……平たく言えばGPS機能付き通話用携帯だ。
万が一人の目についても、通話機器だと分からないようにインテリア(?)としても飾れる黒い水晶体にしたのだが……デザインがバイオ◯ザード6のエ◯ダが持っていた物に類似したな。
「本当に販売しないんですか?」
「あぁ…この時代には早すぎる」
何を隠そう…この時代の携帯はまだ、肩からかける程に大きな物だ。ルービックキューブ程度の大きさの物が世に出てみろ。経済バランスが崩れるぞ。
やがて我々は、カラチから船でペルシャ湾を渡り始める。礼神の予言……もとい原作では、無事にアラブ首都国連邦のアブダビへ行けるはずなのだが、もはや全員で気を抜ける状況では無い。
今回は皆が交代交代で見張りをする事になっている。
だが予言通り敵襲は無く、無事にアブダビまで海路を進んでいた。
そんなこんなで、潮風を浴びる事数時間。
夜目の利く私は甲板で見張りをしていた。
「…………」カチャ
甲板で首元に収まっていたロケットを取り出し、私は蓋を開き中身を見つめた。
そこには色褪せずに残り続ける写真があるが、それはジョジョとディオ、父さんと撮った物ではない。これはジョセフ達とサプレーナで撮った写真だ。
記念にと撮った写真。それを私は六角形のロケットに嵌めていたのだ。もちろんジョジョ達と撮ったものもあるが、それはこの写真の裏側に隠してある。万が一ジョセフ以外に……ましてや転生者の礼神に見られては一大事だからな。
中身を二重底にするくらいなら置いてくればいいとも思ったのだが、コレだけは手放したくないのだから仕方がない。
「レオンさんやーい。どこだー」
背後から声が聞こえたので振り返ると、それと同時に気付いたのか礼神が小走りで向かって来た。
「どうした?まだ交代の時刻ではないだろう?」
「うん。 ただ調子はどうかなって」
彼女の言う調子は恐らく、第2のスタンドの事だろう。
「今の所は良好だ」
「そっか…ん?それは……あ、若きジョセフさん!」
開いたまま持っていたロケットを見られ、礼神が無邪気に覗き込む。ロケットにしては大きいのだが、当時の関係者全員との集合写真だから一人一人の顔は小さい。良く見えたな。
「みんないる…カーズ倒した後の写真?」
「あぁ…全員わかるか?」
「うん。あ、シュトロハイムもいる…リサリサさん綺麗だなぁ〜…ジョージ・ジョースターも本当に生きてるね」
「リサリサは今年白寿(99歳)を迎えた。ジョージもリサリサも、今は私の別荘で暮らしている」
右から順に名前を口に出していく。それを聞くたびに個々との思い出が脳内によぎるのは歳のせいだろうか?なんだかんだで私も120歳だからな…前世を含めるなら+17歳……だよな?
「ご両親の事名前で呼ぶんだ」
「あぁ、私は両親を名前で呼ぶ事が多かった。前世の影響だろう…そういう家庭だったんだ」
もちろん嘘である。だが甥と姪を両親呼びするのには抵抗があるのでな……
「このイケメンはシーザー?」
「そうだ。彼はリサリサの後を継いで、今もサプレーナにいる」
「あの女たらしさんが?」
「ついでに言うと結婚してる」
「え‼︎本当⁉︎」
「あぁ。というか彼の子供も1人、すでに結婚している」
「会ってみたいなー」
「機会があればな」
そのノリで軽く昔話をしていると、アブダビの港に到着する。やがて我々は上陸するが、夜遅い事もあり港町で宿を取る事にした。
翌日…朝食の場に集まった我々は、今後のルートと礼神の予言を耳に通す。
まずルートの話だが、我々はこれから砂漠をラクダで横断し、ヤプリーンという村を目指す。その村は岩山などに囲まれていて、主な移動手段としてセスナを利用している。我々はそれを買い取り更に先へ向かう手筈だ。
そして予言の話だが、まずラクダで進んでいる時に襲われ、セスナでの移動中にも襲われるらしい。その時にセスナは墜落するとの事だ。
「「「「「……………」」」」」
「止めろ‼︎哀れんだ目でワシを見るんじゃない‼︎」
礼神を除いた全員がジョセフに目を向けると、本人はいち早くそれに気づいて怒気を強める。
それでアヴドゥルは素直に目を逸らしたが、彼以外は不服そうにジョセフを視界に収め続けた。そんな空気に耐え切れなかったのか、ジョセフは勘定を済ませて店を出るよう急かし始める。
「……やれやれだぜ」
ー
ーー
ーーー
朝食の場として利用したレストランを離れ、僕らは財団の名で買い取った高級車でとある村へ向かった。
ちなみに高級車なのには理由がある。僕ら向かった村で砂漠を横断するためのラクダと交換する為である。
少し勿体無い気もするが、お金とかで買い取るよりは物々交換の方がわかりやすく安全なんだそうだ。
「ジョースターさん!!ど、どうやって乗るんだ?高さが3メートルもあるぞ!」
「あのじゃなぁ。ラクダっていうのはまず、座らせてから乗るのじゃ」
交換を終えると、ポルナレフが早速興味を持ったのかラクダに近づく。そして鼻息を食らって匂いに悶絶…
涙目を軽く浮かべて尋ねると、ジョセフさんは自信満々とレクチャーを始める………が…
「ン……まず…座らせてから………乗るんだよ」
手綱を握り体重を掛けて地へと引っ張る。しかしラクダは抵抗して、頑なに顔を空へと向ける。
「……アヴドゥルさん。ジョセフさんじゃ無理そうだよ?」
「最初は私もそう思い、私がレクチャーをしようとしたのだが……ジョースターさんが大丈夫と言い張るのでな……」
「ちょ、ちょっと待っておれ!すぐ座らせるからな!」
「ジョセフ……その辺にしておけ」
見てられずにレオンさんがジョセフから手綱を奪い取り、ラクダの側面を毛並みに沿って撫でる。心なしかラクダは気持ち良さそうだ。
「ジョセフに代わって私がレクチャーしよう」
「最初からそうしろ」
ラクダを撫でながらそう告げると、承太郎が少しキツいコメントを述べる……あらら、ジョセフさん拗ねて別のラクダの手綱を握って座らせようとしてるよ。
「あのラクダが頑固だったんじゃ!」なんて言ってるけど、きっとそれは違う。
「ところで皆は、犬を見たことがあるか?」
「急になんだ?当たり前だろ?」
「犬は伏せる時に後ろ足を折って座り、次に前足を畳む……だがラクダは逆なんだ。座る時は前足から折る。だから頭に繋がった手綱を引っ張ればラクダはバランスを崩すので、抵抗するのは当たり前だ…だから」
「ブルバババ‼︎」
「…………ジョセフのように決してやらないように。ラクダを嫌がらせると、あのようになるからな」
「…日焼け止めに」
「ならない」
呆れた様子でヨダレまみれのジョセフさんを見るレオンさんがそう言うと、ジョセフさんがミスを誤魔化そうとするがバッサリ切り捨てられる。
「ならどうやって座らせるんですか?」
「首の根元辺りだ…それで無理なら警戒しているんだろう。リンゴでも使って座らせてくれ。心を開いてくれれば、手綱を握るだけで座ってくれるんだが……」スッ
そう言ってレオンさんがラクダの首元に手を置くと、ラクダは大人しく前足を折ってから後ろ足を畳んで座った。
そんなこんなで僕らも騎乗する。と言っても僕はみんな程大きくない低身長だから少し怖い……結構揺れるし高い。ジョセフさんよりは扱いが上手いので問題は無いけど。
「よし…それでは行こうか」
その後村を出た僕らはヤプリーンを目指した。
村を出て砂漠を横断する事 早数時間…
「こいつが
頭にコブを作り気絶した男を、僕らは汗を拭いながら囲むように立つ。
何が起きたかというと原作通りです。はい。
「礼神の存在がバレても、原作通りに動く奴はいるのじゃな」
「僕はこれ以外にマシな仕掛け方が無かったんだと思います」
「花京院もそう思う?」
承太郎達が水やら食料を奪ってる間に、ジョセフさんと花京院と僕で、そんな会話をする。
ちなみにジョセフさんだけラクダの上で待機…それ以外は地に降りている。
理由は一度降りると、ジョセフさんだけもう一度乗るのに時間がかかるからだ。
「で………どうするんだ?」
「どうするも何も……先へ進むぞ」
「なーんか腑に落ちねぇな」
ポルナレフがそう言うと、奪う物を奪って戻ってくる承太郎達。
陽のせいで力がそこまで出ないのか、レオンさんは軽く仰け反っていて、承太郎の方が軽々と荷物を運んでいた。
あまりのハイスペックで忘れてたけど、レオンさんは日の下だと人相応の力しか出せないんだよね。
「………なんだ?ジロジロと」
「なんでもないです」
首を傾げながらレオンさんはラクダに荷物を積み、僕らは再出発した。
ちなみに太陽の幽波紋使いは最低限の水だけ残してある。早い段階で倒したから、さっきの村に戻るくらいはできるだろう。
太陽は傾きやがて地平線の向こうへ沈む。アレだけ暑かった砂漠地帯は一気に冷え込む。流石は乾燥地帯の代名詞「砂漠」。
日が沈みきって暗闇に包まれると、比較的に砂の少ない剥き出しの岩の上でジョセフさんが一声……それを合図に皆がラクダから降りて一夜を越える準備を始める。
明かりがないのでアヴドゥルさんが火を出すまで準備に手間取ったが、レオンさんだけは色々と準備を始めていた。人外は見える世界が違うんだろうな。
「アヴドゥル、焚き火の準備ができた。火をくれ」
「わかりました」
スタンド像を出さずにアヴドゥルさんが指を鳴らすと、只の薪木に火が灯る。こういうアクションってかっこいいよね。
「ふぅ〜、寒い寒い」
「砂漠の夜は冷えるね〜」
ポルナレフが真っ先に火にあたるので、僕も釣られて焚き火に駆け寄ってしゃがむ。
「ポルナレフ!お前は準備を手伝わんか‼︎」
「なんだよ!礼神はいいのか⁉︎」
「か弱い少女に、わざわざ重労働をさせる気か?」
ジョセフさんと花京院に言われてポルナレフが渋々立ち上がり、荷物から取り出したのかアヴドゥルさんが僕に布切れを肩にかけてくれる。
それに続いて承太郎が、蓋の空いた小さな木箱を2つ持ってくる。1つの箱の中は調理器具…もう1つの中身は携帯食に向いた食材だ。
「テメェーは先に夜食を作ってな」
「あらほらさっさー♪」
力仕事を男性陣に任せ、僕は焚き火を使って木箱の中にあった調理用の水を鍋に流す。次に味の素になるのを入れて食材入れて〜
「えぇ〜、だいぶ寒いぜ?こんなんで寝れんのか?」
「持って来れる物にも制限はある。人数分あるんだから仕方ないし、荷物の大半は飲料水だ。文句を言うなポルナレフ」
鼻歌交じりに鍋を回していると、花京院がまたポルナレフの小言に注意気味に応答する。
花京院ってポルナレフに対して冷たいけど、嫌いじゃないんだよね?やっぱポルナレフの弄られ属性のせいかな?
「よし、寝る支度は完了じゃ。礼神、飯はできたか?」
「もうちょっとー」
エアマットに空気を入れ終えたジョセフさんも焚き火に辺りに来て、やがてみんなが火の周りに集まる。
「誰かお皿とって」
「ホイホイっと」
軽いフットワークでポルナレフが荷物からプラスチック容器を人数分用意。僕はそれを次々と取り分けていく。
特に話す事もなく寝袋に各自入って就寝。
満天の星空を天井にして寝るのは悪くないね…砂漠だから雨の心配もない。
「それじゃ…おやすみ」
その言葉を最後に皆は眠りについた。
ー
ーー
ーーー
「フーフーン…フフーン♪」
煙草を加えて鼻歌を歌い、窓から外の様子を眺めていた。
彼らがいる場所はエジプトのとある町の宿………ホル・ホースはこの通り、すっかり回復していた。
「……う、……待て……めろ………」
「ん?伊月の旦那?」
古い無人の空き家で夜を過ごしていたのだが、ホル・ホースは室内に視線を戻してベットの上で横になる現パートナーに声をかける。
だが伊月は目覚めず、魘されながら寝言を呟く。
「うぁ……止めなさい……待ってくれ……
「おいしっかりしろ‼︎ 旦那⁉︎……ハッ!」
何か思い出したかのようにホル・ホースは、ハンガーにかけてあった伊月の白衣のポケットから注射器を取り出す。その中身の色を確認してから、ホル・ホースは伊月にそれを打った。
「……ぅ………Zzz……」
薬品を打たれた伊月は、落ち着きを取り戻して寝息をつく。
それを見て一息つき、ホル・ホースは椅子に座って背凭れに寄り掛かる。
「はぁ〜…俺は介護士かっての…」
「Zzz………輝……楽……」
「…………………………」
「………Zzz……」
「………だから"かぐら"って誰だよ…」
何度も寝言で聞いた日本の女性と思われる名前……もちろんホル・ホースは、それが誰の名前なのかも知らない。
起きた時に伊月に聞いた事もあるが「身に覚えがない」とシラを切られる………そしてその時、なんとなくホル・ホースは寝言で、第一人称が「俺」になっていた事も伝えた。
すると伊月はシラを切る代わりに、一瞬だけ悲しそうに顔を歪めるのだった。
それ以降は聞くに聞けなくなり、ホル・ホースは何も言わなくなった。
ただ「魘されるのはなんとかならないか」と聞いたら、先程の薬を打つよう頼まれたのだった。
「……ジョースター御一行様はそろそろアブダビに着くだろうな…もう着いて、砂漠って可能性もあるな…」
そんな推測交じりにまた窓の外へ視線を泳がし、煙を吹かしながら時間の流れを待った。
「………転生者……ねぇ…」