海上を軽快に走る一隻のクルーザー………それには5人の男と1人の少女が乗っていた。
潮風を受けながら僕は、バサバサになってしまった髪を手櫛で整える。こういう時はショートヘアで良かったと思う。
「おいジジイ、おかしいな。方角が違ってるぞ。まっすぐ西へ…エジプトへ向かっているんじゃあないのか?」
不意に聞こえた承太郎の声で僕は立ち上がり、操縦席につけられたコンパスを見る。確かにこのクルーザーの12時の方向は北寄りだ。
「………もしかして無人島行くの?行かないと思ってた」
「……やっぱりバレとるか。驚かしたかったんじゃがのう」
少し残念そうに眉を潜めるジョセフさん……それと同時に、気になる様子で僕に視線を集める周囲の仲間達……
「……どういう事だ?」
「あーじゃあ色々あるし僕がまとめて説明するね。ジョセフさんOK?」
「構わんよ」
許可も下りたので、僕はみんなの方を向いて順を追って説明し始めた。
「まずアヴドゥルさん。僕がJ・ガイルに襲われた時、原作の被害者はアヴドゥルさんだったの……死にはしなかったけど一時離脱……その後アヴドゥルさんは別行動で大きな買い物をして、これから向かう無人島で合流するんだよ……ほら、見えるでしょ。もう直ぐ着くね」
「大きな買い物?」
「潜水艦じゃよ。DIOの刺客にバレぬよう、紅海は海中を進む予定じゃったんじゃ」
「潜水艦⁉︎」
それだけは自分で言いたかったのか、ジョセフさんが横から口を出した。それを聞いて驚くポルナレフ。それを無視して説明を僕は再開する。
「僕が無人島に寄らないと思ってたのは、アヴドゥルさんが無事だったから。だけど原作通りに無人島に行くとなると、恐らくDIOの刺客……カメオがいるね。
「何ッ⁉︎ 刺客が先回りしとるのか⁉︎何故それを早く言わなかったんじゃ‼︎」
「行かないと思ってたから、アヴドゥルさんが無事だったから」
「私のせいなのか?」
少し慌てた様子のジョセフさんと、苦笑いで自分を指差すアヴドゥルさん。そんな後に僕はジョセフさんに慌てている理由を聞いた。
「なんで慌ててるの?いつ敵が現れるかわからない状況だし、おかしくはないでしょ」
「そうじゃなくてだな‼︎ 聞く話じゃレオンもあの島を経由したらしいんじゃよ‼︎」
「なるへそ。その心配ね」
「でもレオンなら大丈夫だろ。もうすぐ島にもつくし気になるなら軽く確認を………って、ジョースターさん⁉︎ 前、前ッ‼︎」
「前?」
ポルナレフの慌てた声で皆の視線が進行方向に向けられる。
「………あれれ〜。なんで海の上に密林?」
気がつくとクルーザーは砂浜に乗り上げ、島の密林に丸々一隻突っ込んでいた。
「おいジジイ……テメェ、クルーザーの操縦をするときなんて言った?」
「………礼神の予言でも海の上での敵襲はない……それでも事故を起こしたら、それはワシでなくとも起こりうる事故だということだ」
「結果…………どうなった?」
「………ま、まぁいいじゃないか!クルーザーはここで乗り捨てる予定じゃったし、荷物も全部無事……」
「結果‼︎…どうなった?」
「………ワシの不注意でクルーザーは大破しました」
………うん。祖父の威厳無し。
レオンさんがいないので説教してるのは承太郎だけ……そのせいかジョセフさんは誤魔化すような努力をしたが、結局 承太郎の眼光に威圧され、いつも通り正座で反省の形をとった。
「うわぁ〜。底に穴空いてるぜ? こりゃもう使い物にならねぇな」
「この旅で壊した乗り物……総額いくらするんでしょうね」
「ジョースターさん……付け焼き刃ですが、私がお祓いを学びましょうか?」
砂浜で正座したジョセフさんと仁王立ちする承太郎……クルーザーを見て呑気なことを言うポルナレフと花京院。ジョセフさんの悪運に関して真面目に考え始めたアヴドゥルさん…それを眺める僕は特に何もせず、日中の日差しを避けるべくヤシの木の下にいた。
「……男性陣の皆さーん。そろそろお昼時ですよー。予言もしたいので昼食にしましょー」
少しダルさを抱えながら、両手でメガホンを作り皆に呼びかける。するとアヴドゥルさん達はクルーザーを離れ、承太郎も溜息を吐いてから僕の方へやってくる。その時ジョセフさんは、ハンドサインで「すまない」「ありがとう」てきな意味を伝えてきた。
「それで……お昼はどうするの?」
「潜水艦に食料を事前に積ませてある。艦内で食べよう」
「みんな、こっちだ」
アヴドゥルさんの先導で僕らは海沿いに歩き始めた。その道中で、承太郎が密林の方で何かを見つける。
暫くソレを見つめながら歩くが、承太郎はやがて不審な表情を浮かべる。
「どったの承太郎。何かいるの?」
「…人だと思ったんだが、目が合っても動かない……それどころか俺たちが歩くのを目で追ったりもしねぇ……人形か?」
「人形?一体どこだ?」
「草木の後ろ……そこから2時の方向だぜ」
気になったポルナレフが草木を分けて森に入り、承太郎はその場から見つけた場所を指示する。すると……
「う、うわぁぁあ⁉︎ こ、此奴は‼︎」
「どうしたんじゃポルナレフ‼︎」
驚愕の声を上げてひっくり返るポルナレフ……それを見て僕らも草木を分けて森の中へ。
するとそこには、承太郎が見つけた人形の生首があった。それだけならまだ良い……それを見た者……この人形の本物に会った事がある者は軽く萎縮し、花京院は口元を抑えて吐き気を堪えている。
「どうした?テメェら、こいつを知ってんのか?」
「承太郎………日本で一度見せたはずじゃ。写真が暗かった故に気付かなくともおかしくはないが……」
「まさか………こいつが?」
それはDIOの生首だった。その表情は生気がないどころか、作り物のような表情を浮かべている。それもそうだ……
「…言い忘れてたけど、カメオの能力は「願いを土に反映させる」事………原作ではポルナレフが……その……」
「………なるほどね。シェリーを出汁に使われたのか」
言葉を濁らせると、ポルナレフは少し不機嫌になって舌打ちをする。それを聞いて言わなければ良かったなと僕は思った。
「……で?なんでそのDIOの土人形がいるんだ?」
軽くポルナレフが蹴飛ばすと、土人形の生首は原型を崩して荒い断面を見せる。
「戦ったとすればレオンさんでしょうね。DIOを殺せとか、DIOをこの場へ連れてこいなどといったことを願ったのでしょう」
「なるへそ〜。カメオはランプの精みたいに3つの願いを聞き入れるから、あと二体の土人形がいるかもね」
「お、あっちで崩れてんのがそうか?」
いち早くポルナレフが崩れた土人形を見つける。その近くの木々は薙ぎ倒されていて、なかなか激しい戦闘を繰り広げたようだ。
ここまで来ては気になるので、僕らは早速その土人形を見に行った。その土人形は鼻から上が崩れており、鼻から分厚い胸板にかけて原型をとどめていた。
「何だ此奴?……やけに筋肉質だな。ジョースター家の血筋だとすれば、ジョースターさんや承太郎の祖先ですか?」
「俺がシェリーを出汁に使われたように、レオンも誰かを生き返らせようとした。となると愛人か家族か?でも男だな。父親?」
「ポルナレフの推測が正しいならこの方、ジョースターさんの父親ということにもなりますね。当たりですか?」
花京院、ポルナレフ、アヴドゥルさんの順で推測し、皆の視線がジョセフさんに集まる。するとその老人は腕を振って呆れ顔を浮かべる。
「ワシの父、ジョージ・ジョースターは存命している、人違いじゃ。しかしこの輪郭……何処かで見たような……」
顎に手を当てて記憶を手繰り寄せる。僕も見覚えがあるから、もしかしたら原作に出てきたキャラクターだと思うんだけど…………
その時僕は、最後の土人形を離れたところに見つけた。今度の土人形は髪の毛が結構長く、まさかの愛人を期待したが、僕はその人形を見て驚愕した。
「……ウソーン………ジョセフさん、コレで思い出せる?」
鼻から上が崩された土人形の顔の所へ戻り、その顔の額があったであろう場所に人差し指を立てて置いてみる。まるでそこにツノがあるかのように………
「………Oh My God…………ワムウ」
「わむう?何だそのヘンテコな名前は…」
「第二部を知らんものにはわからんよポルナレフ。ジョセフさん、向こうにカーズの土人形もあったよ……何で?」
「カーズまで………レオンがそいつらを生き返らせたいとは考え難い……………何故そいつらの復活を願ったのか、ワシにもわからん」
「土人形として蘇らせといて、結局は始末してるもんね」
「おい、人形の鑑賞はそろそろ止めて先へ進もうぜ」
「それもそうだね」
それを最後に僕らは潜水艦に向かって歩き始める。が、ポルナレフは土人形を不気味がり、離れる前にワムウとカーズの土人形も蹴りで崩していた。その時……
ーーーーーーグニューーーーーー
「ドワァァァア‼︎‼︎」
「今度はなんじゃ⁉︎」
また尻餅をつくポルナレフ。それでまた一同が戻ってくる。そしてポルナレフは、慌てた様子である一点を指差す。
そこには水分の抜けた人型の何か……これも土人形かと思ったが、これは違った。
「か、皮だ‼︎ 土人形かと思ったらこれは人だ‼︎ どういう訳かミイラみたいに萎れている⁉︎」
これには流石に僕もビビった。
何かしらのイレギュラーの仕業かと思ったからだ。
原作に登場しない新手の幽波紋使い‼︎
だがその不安はジョセフさんが拭ってくれた。
「落ち着けポルナレフ。礼神、カメオとかいう幽波紋使いはこいつか?」
「え?……あーー言われてみればそんな気がする」
「ならレオンは無事のようじゃな」
「どういう事だ?」
「昔ワシも見たことがある。吸血鬼に血を吸い尽くされて死ぬと、このような残骸が残るんじゃ……この島を通った吸血鬼といえば、1人しかおらんじゃろ」
そう言われてまた死体に目を向けると、首元に4.5個の穴を見つけた。多分指を突き刺した跡だろう。
「……レオンさんエグいことするなぁ〜」
あまりの有様で僕は目を逸らした。
そして僕は気がつかなかった………ミイラになったその身体のパーツが、所々足りない事に。
ー
ーー
ーーー
剥き出しの刃物、魚雷、剃刀、鉄製ワイヤー…次は何だ?
『ムギィィーーー‼︎』
「フンッ!」
奇声をあげながら背後からモリが飛んで来る。
W-Refでそれを受け止めるが、モリはスライムのように原型を崩し、スルリと私の手から零れ落ちた。
「面倒だな……面倒極まりない」
私は今、海上を歩いてエジプトを目指しながら、正体不明のスタンドの相手をしていた。
「また魚雷か……?」
私の周囲をスタンドが旋回しているのか、スクリューか何かの水飛沫の音がする。
推測だが、このスタンドの能力は
「まだ日が出ないうちで暗いが、見渡しの良い海上だ。不審な物があればすぐ気付ける」
『ブキャァァァアッ‼︎』
一度潜水し、魚雷と化したスタンドが私に突撃してくる。
「確かに水中は見えないが……」
『メゴッ⁉︎』
足元から浮上してきた魚雷に蹴りを落とす。
現在私は波紋を使っているので視力は(元々目はいい方だが)人相応のもの……波打つ海面の下は流石に見えない。
だが波紋で立っているので、反響具合で探知できる。
昔ジョジョが切り裂きジャック戦で見せた、ワインの波紋探知機と似た原理だ。
「第一スタンドなら、2m以内なら常時探知できる。不意打ちは諦めて、正々堂々かかってきたらどうだ?」
海中に沈んだ魚雷に話しかける。
触れるたびに波紋を流しているので、ダメージがゼロというわけではない。
無機物なスタンドなので通りはイマイチだが、海水で濡れているので
「……引いたか……どうする?」
一度態勢を立て直す為か、スタンドが海深くに潜った。
エジプトの大地は一応見える距離にある。遠距離型の幽波紋使いが、おそらくその海岸あたりで立っているはずだ。
「そっちを倒すべきか……スタンドを倒すべきか」
そうこう考えながらも足と呼吸は止めない。
海面に独特な波紋を広げながら歩き続ける。すると、足元からまたスタンドのエネルギー体が、波紋を掻き分けて伸びてくる。
「
波紋を込めた手刀を、スタンドが海面から顔を出すのと同時に振り下ろす。捕まえるのはもう止めた。面倒い。
「決まったか?」
バチバチと波紋特有のショートが弾ける。が………奴はそれに耐えて、私のその手刀に絡みついた。
飛び出てきたのはモリだが、尾がワイヤーと繋がっている。おそらく水中銃………そのモリの部分がまたスライムのように原型を崩し、私の腕に絡みついたのだ。
「引き摺り込むつもりか? 銃程度の質量では不可の……何?」
引き摺り込もうとする力が一段と強くなる。
だったらもう一度波紋をと思い、絡みついた腕とは反対の腕を振りかぶってW-Refを発現する。しかしいち早く察したのか、スタンドは私の喉にも絡みついてくる。
(波紋使いの弱点を熟知している⁉︎ まずい、呼吸が…乱れ…)
力無く私は海中へと引き摺り込まれた。
10m...20m...と、深くなるにつれ、水圧で肺が締め付けられる。
(まだ…潜るのか……グッ…)
苦しさを表情で表すと、スタンドが『ケケケッ』と不気味に笑う。
やがて海面から50mほど沈んだ頃だろう。波紋の呼吸を止めて数秒………私の細胞は変化し、既に水圧に耐えられる体となっていた。
(……とはいえ…どうするか……)
水中戦では波紋は使えない。夜なので人外のステータスが役立つが、海の中では動きにくく満足な攻撃はできない。
海底の岩盤が見えるところまで沈むと、スタンドは私から離れ姿を変える。
(……魚雷好きだな)
また魚雷に化けると、驚くべき速さで私の周囲を旋回し、隙を窺って突撃してくる。
(W-Ref‼︎)
衝撃を吸収してすぐさま放出。
魚雷の軌道を下にずらしつつ、運動エネルギーで岩盤に叩きつける。
(硬い……本体が近づくにつれて強くなっている)
岩盤に減り込みはしたが、すぐさま急発進して脱出…周囲をまた旋回し始めた。
いざという時に長期のクールタイムが来ては危ない…私は右手を残してW-Refを自ら解除する。
(ッ⁉︎ 来るか‼︎)
今度は正面から魚雷が突っ込んでくる。
受け止めようと手を伸ばすが、そいつは私の手の届かぬところで止まり、別の物に化けた。
それは巨大な扇風機のようなスクリュー……私に向けてその刃を回転させ、水流が私の体勢を崩し遠くまで運ぶ。
(流れが強い……テニール船の時のように吸収するか?だがあの時より深い……一度で海上に出る程のエネルギーは無いか)
『キシャァァア‼︎』
「ガボッ⁉︎」
体勢を崩していた私の背中に、また魚雷が突っ込んでくる。砲弾サイズの魚雷の先端が背中に減り込み、背骨が砕ける音がした。
『レオン・ジョースター‼︎お前は
(……話せるのかよ………)
魚雷は更に加速し、私を離さぬままアフリカ大陸の方へ突き動かす。本体が近づくにつれ更に加速し続け、正面から受ける水圧で、仰け反ったまま動けなくなる。全身に力を込めて、怪我せぬよう堪えるので精一杯だ。
ーーーーーードゴォン‼︎ーーーーーー
加速し続けるその速さで、岩盤に叩きつけられる。
顎が砕け頭骨にもヒビ……脳震盪も酷い……背骨は完全に砕け、肋骨も折れて肉から突き出してしまっている。
両手両足だけは、咄嗟に発現したW-Refが守ってくれていた。
手足を動かし減り込んだ岩盤から出ると、霞んだ視界に現れた大きな洞窟に、抵抗する間もなく吸い込まれた。
「う……グゥ………ここ……は?」
水流に流され地面に叩きつけられ、気がつくと空気のある密室で横たわっていた。
両手をついて起き上がろうとすると、肩などの関節部位が激痛を訴えるがなんとか上半身を起こす。
「……アレは……歯?」
『ナハハハハ‼︎その通り‼︎ あんたは今私のスタンド、
「口の中?…ほぉ……本体が近付き、ココまでデカくなったか」
『そうよ。私は今、そこから7m上の海岸にいるよ‼︎ しかしお前は、女教皇にすり潰されるから私の顔は拝めないけどね‼︎』
スタンドを使った会話でそう伝えてくる。
ココは口内……海水は喉の奥に排水されたか…まだ飲まれなかった事は運が良かった。もしそうなれば、腹を裂かなければならない。
「貴様…先程私をタイプだと言ったな。第一人称は
『だったらなんだってのよ‼︎』
「私は女に手をあげるのを好まない……極力無傷で気絶させたいものだ。だからここから出してくれ。女性で入れ歯は嫌だろう?」
『何を言うのかと思えば‼︎ この歯の硬度はダイヤモンドと同じ‼︎ 全身重症、複雑骨折したお前に砕ける訳ないだろ‼︎』
その声と同時に、地面が傾き私を喉の奥へと流そうとする。これは恐らくスタンドの舌だ。
「ふむ……切る位置が良ければ、気道を塞いで殺す心配もないな」
『歯と同様この舌もダイヤ‼︎ 切れる訳がないだろ⁉︎ 重症のお前に何ができる‼︎』
「
私の言葉にノイズがかかる。
まだ制御しきれていないが、思いっきり使う機会があったからか幾分マシにはなっているハズだ。カメオに感謝だな。
『やれるものならやってみろぉ‼︎』
敵の声を最後に視界が歪み、私は精神世界に落ちていく。
やがて落ちきった先の床に立つと、背後から無数の手が伸びて来た。
それを私は受け入れ、手が伸びて来る方向へ歩き始める。
すると暗闇の中で1人の女性が姿を現し、私はその女性に向けて両手を広げた。
「……身を委ねよう。私が仲間と合流する前に、制御というのを覚えないといけないからな」
『………承知した……我が主よ』
浴衣姿の1人の女性が、私の身体に溶けるように抱きついてきた。
『やれるものならやってみろ‼︎』
『………主を守るのが、我の役目だ』
私の腰から9本の尻尾が伸びる。バラバラだったそれは1つに纏まり、やがて1本の巨鎌となる。
『ギニャァーーーッ⁉︎』
鎌がスタンドの舌を縦に裂き、夥しい量の血で青黒い鎌を濡らす。
それを確認すると1本の鎌は9本の槍に分裂させ、歯茎に向けて突き刺した。
『ムギャァーーーーーーーッ⁉︎』
悲痛な叫びと共に女教皇は口を開け、隙間から海水が流れ込んでくる。
それに乗じて海へと脱出……そのままアフリカ大陸の海岸へと上陸する。不思議とこの状態だと、新たに受けたダメージ以外は痛くはない。
「あ……あ……⁉︎」
陸に上がると、そこで口内から血を流し両手で口を押さえる1人の女性を見つける。
女教皇の本体だろう。恐怖からか何も喋れずにいる。
『……主に与えたダメージ……返して貰うぞ』
彼女から溢れる血液を啜ると、両手で私の肩を掴み引き剥がそうとする。が、そんな力が彼女にあるわけない。
「ぁ……アッ……ぅ…」
ガリュ…グチュ……ジュルル……ガッ……
次に首筋に歯を立て、新たな鮮血を味わうためにまた貪るように啜る。
「ハァ……ゥン………ァ……」
「………む?戻ったか」
かなりの量を吸ったところで、身体の操作権が私に帰ってくる。既に重症だった怪我はだいぶ癒え、謎も多いが、スタンドの特徴も大体理解できた。
『主よ……まだ完治していない。続きを……』
「止めておく。これ以上は出血多量で死ぬ」
気絶した女性を寝かせ、口と首の傷だけ波紋で治す。あっても無くても問題ないと思うがな………第一失血のせいでしばらくマトモにスタンドは使えないだろう。
そう思ってから私は旅を再開させた。
「……そういえば…第二のスタンドに名前は考えるべきか?」
『受け入れてくれたのなら、与えるべきだと我は思うぞ』
「…………いたのか」
気がつくと私の隣には、黒い浴衣を身に纏った1人の女性がいた。精神世界でもないのにこうして姿を現わせるようになったのだ……制御できつつある証拠だと思いたい。
『主よ……彼奴はどうするのだ』
浮遊しながら後ろを向き、スタンドはさっきの敵を指差す。
「殺さないぞ?だが助ける気にもならん。ここに置いて行く」
歩を進めずにそう言うと、飛べるくせに駆け足で私の隣まで走ってくる。ハッキリとしたヴィジョンがこうやって出るのは初めてだ。それに敵を殺そうとする執着心も今は無い。
………だが…
「…………いつまで出ているつもりだ?」
『初めて我の姿で出れたのだ。少しくらい良いではないか。それよりも主よ……名はくれぬのか』
「…………ふむ、そうだな………」
【挿絵表示】
・アンラベル
黒い着物を着た表情の見えないスタンド。
自我を持ち「?」を使わない口調で会話する。
『主を守るのが我の役目だ』
現れる条件は「レオンの身に危険が及んだ時」「精神状態が不安定な時」。それ以外の場合でも稀に現れる…それだけなら良いのだが、彼女の行動は度が過ぎる事もある。
能力はレオンとの反比例。
レオンが弱まればアンラベルは強化され暴走する。暴走中のアンラベルは、主の最低限の願いに沿って捕食を仕掛け回復を図る。
攻撃手段は体術か9本の尾。
尾は流動体で、突・斬・打と使い分けれる。