ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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44.鬼に金棒?金棒に鬼!

 バギーで移動する事数時間…ンドゥール戦で壊れた前輪をスペアタイヤで直したとはいえ、このバギーは凄い!

 壊れる原因など事故やエンストと幾らでもあるのに、ジョセフさんを乗せたまま長時間行動を共にしているのだ!

 

 冗談交じりで「このバギーには何かしらの加護があるのかもな」とポルナレフが口にし、つまんなそうに「そりゃよかったのぉ〜」と、ジョセフさんが頬杖をつく。

 原作ではアスワンからナイル川を船で下って行くのだが、バギーの実績に惹かれ河沿いを陸路で下る事に……

 商船に便乗して乗れば人目もあって敵に襲われる危険性は少ないが、ジョセフさんの呪いは人目があっても発動する。

 ……っとまぁ、そんな些細な理由で僕らは陸路をバギーで走っていた。

 

 しかし……

 

「結局壊れたな」

 

「いや、持った方だろう」

 

 河沿いにある町コム・オンボ手前 1km足らずの場所でバギーは力尽きた。

 

『…winner(勝者)Joseph=Joestar(ジョセフ・ジョースター)

 

「黙れアンラベル‼︎ レオン‼︎ 早くそいつを消せ‼︎」

 

「フフッ…」

 

 そう言われたレオンさんは面白そうに小さく笑い、鬱陶しい様子で怒鳴るジョセフさん。ちなみにバギーの故障原因は、エンヤ婆戦後と同じく不明………

 僕の推測だと、ジョセフさんの紫の隠者(ハーミットパープル)の誤作動で機械類を狂わせてるんだと思うんだけどな。

 実は常時発動型スタンドで、無意識に磁気を放っているとか……まぁ推測なんだけどね……

 

(バギーから取れたネジ…御守り代わりに持って行こ)

 

 ポケットに人差し指程の大きさのネジを突っ込み、僕らはオンボまでまた歩いた。

 既に敵情報と予言は纏めて伝えてある。情報量的に、頭をこんがらせる程では無いだろう。

 

「妖刀のスタンドか……」

 

「そだよ。特訓の成果を見せてよね、電柱」

 

「お、おう!任せとけ‼︎」

 

 僕の言葉に苦笑いを浮かべるが、ポルナレフは力強く答えた。すると疑問に思ったのか花京院が口を挟んでくる。

 

「特訓?何か秘策でもあるのか?」

 

「うん、シンガポールで教えた。J・ガイルの情報を先延ばしにする代わりに、芸を1つ覚えさせといたんだ」

 

「なっ!俺をペットみたく言うな‼︎」

 

 そんなこんな話しているとあっという間にコム・オンボ。

 商人が行き来する人に商品を売り付けようと声を掛けている。

 

「にしても……人が多いな………」

 

「あ、レオンさん人口密度高いの嫌なんだっけ?」

 

「あぁ、流石にここで車を調達するのは無理だろう。となると商船に便乗させてもらうしかないか………ジョセフ、交渉は任せた。どうせすぐに船は出ないだろ、私は食事ができる場所を探して来る」

 

「なぁに早速孤立しようとしてんの!敵いるって分かってる⁉︎」

 

「別にいいだろう、少しくらい。孤立を恐れるならイギーを連れて行けばいい。お前も嫌だろ?人混み…」

 

 僕の言葉にそう返すと、僕らの近くを歩いていたイギーはレオンさんの声に反応して彼の足元で腰を下ろした。

 

「……だそうだ。用ができたら連絡をくれ…そういえば承太郎、通信機器は?」

 

「アヴドゥルの所に置いて来た」

 

「そうか、ならいい」

 

 そう言ってレオンさん達は人混みの少ない方に歩いて行った。

 

「承太郎、レオンさん達についてって」

 

「…何でだ?」

 

「戦力調整。ポルナレフは僕といないと秘策が使えないし」

 

「…わかった」

 

 幼馴染としての計らいをして承太郎を見送ると、残された僕らは只々そこで待ち惚ける事になった。

 ちなみに僕の考えるアヌビス相手に有利なスタクルチームのメンバーは、承太郎、レオンさん、ポルナレフの3人である。

 

「ひとまずその3人は均等に分けたから大丈夫……かな?」

 

「有利な人材2人が向こう行ってしまった。こっちはポルナレフ1人だが、人数はコッチが多い。戦力は丁度よく五分五分なんじゃないか?」

 

 それから十数分…ようやくジョセフさんが交渉を終える。

 

「先ほどレオンが言った通り、船を出すまで大分時間がある。レオン達に合流しよう」

 

 というわけでレオンさん達が歩いて行った方向へ僕らは足を進めた。

 するとレオンさんの白髪が目立つので、割と直ぐに見つけられた。丁度いい飲食店が見つからず、路上で軽食を買ったようだ。すぐ見つけられた理由は、浴衣姿のケモ耳が空中浮遊してるからです。

 

「終わったのか」

 

「あぁ、数時間はここで足止めじゃ」

 

「そうか………で、ポルナレフはどこだ」

 

「……………え?」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「おっかしいなあ。ジョースターさん達を見失ったぞ。今までそこにいたのに……」

 

 チッ…オレとしたことが。

 移動中に少し距離ができた瞬間に人混みに流されちまった。確かにこんな歩きづらい所になんかいたくわねぇな。

 

「レオンの人混み嫌いも、わからんこともないな」

 

「チョッと見てチョッと!ねぇダンナあ 旅の記念ね…正真正銘パピルスね。お得だよ」

 

「うるせえなあ」

 

 周囲を見回してるうちにどっかの商人が紙切れを押し付けて来る

 

「パピルス?」

 

「安くしとくよン。ダンナ」

 

「正真正銘本物?」

 

「そうだよん」

 

 この紙切れがねぇ〜

 本物の繊維は丈夫だと聞くが……よっと。

 

「あっ‼︎」

 

 指先に力を込めると紙切れは最も簡単に破け、オレはそれを投げ捨てて歩き出す。

 

「偽物だよこりゃあ……本物の繊維はチッとやそっと引っ張っても破けないもんね。知ってるんだよオレ」

 

 もっとも、初めから本物でも 全然買う気しねーけどよ。

 みんなどこ行った?

 確かコッチに歩いていったはず。目立つし直ぐ見つかると思ったんだがな……

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 迷子、ポルナレフ、コム・オンボ、アヌビス神……

 

「戦闘フラグが揃いました!きっと今頃、回収してることでしょう‼︎」

 

 ビシッと敬礼してみんなに告げると各々が溜息をつく。

 

『イギーより先にジャン・P(ピエール)・ポルナレフの首輪を買う事を推奨する』

 

「そうだな。あといい加減に消えろ」

 

 そう言ってみんなが走り出すが、イギーだけその場で寝転び欠伸をしている。置いてっていいのか悪いのかわからず、咄嗟に僕は抱き抱えて走り出してしまった。

 急な浮遊感を感じ、イギーは僕の腕の中で暴れる。

 

「あぅ、ゴメンね急に…」

 

 ガムを渡してご機嫌取りをしようとも考えたが、生憎僕は持っていない。持ってる人(イギー係:レオンさん)から受け取るにも、今はみんなポルナレフを探しに走っている。

 ガムを与えられず、ひとまず見え透いた機嫌取りだがイギーを撫でてみる。すると………

 

「……あれ?効果覿面?」

 

 首の後ろをクニクニと揉むと、思いの外気持ち良いのかイギーは大人しくなる。

 

「おぉ?ここか?ココがよいのか?」

 

「何をしてる葎崎さん!早く!」

 

「あ、ごめん」

 

 撫でる事に夢中になり速度が落ちた事に気付き、僕はクニクニしながら走る速度を上げる。

 流石にこの人混みでケルベロスを使うのは無しだね。怪我人が出る。

 

「礼神、戦闘する場所はわかったりするか?」

 

「それは……わからない。でもイギーなら鼻でわかる?ポルナレフの髪 ワックス臭いし」

 

 僕の声を聞いて面倒臭そうに顔を上げるイギー。探してくれなそうだ……

 

「……ダメ?」

 

「…………」

 

 ダメそうだ。

 

「あとでガムあげるよ」

 

「…………」

 

 ダメそうだ。

 

「……倍プッシュだ!」

 

「…………アギッ」

 

 軽く呆れ顔で僕の顔を見上げると、イギーは僕の腕から飛び出して地に着地。そして2、3回鼻をひくつかせると、イギーは先頭をきって走り出した。

 

「おぉ…ガムで釣ったとはいえ、よく言う事を聞かせたな」

 

「ほう……」

 

 ジョセフさんが驚いた様子で褒め、レオンさんからも感心した様子で笑みを向けられた。

 

 しばらくイギーの案内で走ると、やがてジョセフさんが商人に交渉した場所まで戻って来る。

 

「イギーが正しいとすると……呆れたわい。歩き出してすぐ迷子になったのか」

 

 すると急にイギーが立ち止まり、再び鼻をひくつかせる。するとある一点に鼻を向け一吠えする。

 

「アギッ!」

 

「あっちか⁉︎」

 

 そう言って皆がイギーの鼻が指し示す方向へ目を向けると、それを待っていたかのように遠くで、石柱が砂埃と崩壊音を立てて崩れた。

 はいはい戦闘中戦闘中……

 

「よくやったイギー……わかったよ。礼神、頼む」

 

「ウェッ?」

 

 包み紙も取らずにガムを2枚僕に押し付けると、レオンさんはすぐさま走り出し、承太郎もそれについていった。

 そんな僕の足跡ではイギーが僕の足を前足でテシテシと突き、ガムの催促をしている(メチャクチャ可愛い)

 

「ありがとイギー」

 

 包み紙を開きガムという名の報酬を渡すと、イギーはその場で座り込み咀嚼を始める。となると、ここからしばらく動こうとしないだろう。

 

「2人は行かないの?」

 

「ここの言葉を話せるのはワシとレオンじゃ。学生2人を残して向こうに行けるか」

 

「僕は………なんとなく」

 

 ジョセフさんの意見はもっともです。

 花京院に関しては、アヌビス相手に有利に戦える3人が向こうに行ったし、自分の出る幕では無いと思ったんだろう。

 だがポルナレフの特訓の成果は、僕がいないと生憎披露できないのだ。だから2人には悪いが……

 

「じゃあ僕は行って来るね‼︎ イギー、2人をよろしく!」

 

 そう言い残し僕はレオンさん達を追いかけた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 オンボの神殿は観光スポットとして人混みが流れている。しかしそこから少し離れれば人混みは減る。その理由としてはそっちに何も無いからだろう。

 そんな何も無い広場には石柱が並んでいるのだが、その何本が倒壊して崩れ、砂埃舞う広場の中央に銀の柱は立っていた。

 

「ポルナレフ‼︎」

 

「ん?おぉ、レオンに承太郎‼︎ どこ行ってたんだよ、探したぜえ?」

 

「それはこっちのセリフだぜ」

 

 呆れ顔の承太郎を見て一言謝罪し、ポルナレフは困ったように頬を掻いた。

 そんな彼の胸には長い傷が走っていて、足元には一本の刀と青年が転がっていた。刀は抜き身になっており鞘も近くに転がっている。

 

「それがアヌビス神か?」

 

「あぁ、そっちは操られてた奴ね」

 

 自分の足元を指差すと、ポルナレフは困った様子で尋ねてくる。

 

「鞘に収まってねぇんだよコレが。触ったら操られるんだろ? だがこのまま放置はできねぇしよぉ〜」

 

「大丈夫だよ。上手く刀に触れずに鞘に収めればいい」

 

 そこへ息を切らした礼神がやってきて、それを聞いたポルナレフは「あ、そう」と言って言われた通り鞘に収めた。

 その間に私は、操られてしまった被害者の青年を波紋で治療する。気絶はしたままだ。

 

「妖刀のスタンド、アヌビス神…抜き身の刀に触れた者を操る能力の本体無しのスタンド……実際に戦ってどうだった?奥の手使っちゃった?」

 

「あぁ…多分予言通りだぜ。クソ」

 

 軽く悪態をつき、ポルナレフは妖刀を私に投げ渡してくる。

 

「……どうだ?」

 

「スタンドエネルギーを吸収し尽くす……川に沈めた方が早いな」

 

 W-Refでエネルギー吸収を試みるが、川底に捨てるのが最も早く簡単だと判断した。

 刀は私が持ち、我々4人はその場を離れようとする。川に捨てられるとわかって慌てたのか、刀から何やら声が聞こえてくる気がする。

 

 正直気味が悪い。

 

「気になるだろうけど抜かないでよ」

 

「わかっている。さっさとジョセフ達と合流して川に沈めるぞ」

 

 間違えても刀を抜かない為に鞘の部分を握り直し、我々は来た道を戻り始めた。

 すると前方から面倒くさそうな男がやって来る。

 

「おい、警察が来たぞ」

 

「レオンさんソレ隠して!」

 

 現在の服装は、黒紫のカジュアルパンツに群青色のポロシャツ。刀の長さは1m以上………背に回して隠すにも、座高以上に長いんじゃ勿論はみ出る。

 

「コォラァッ‼︎ 警察だ‼︎ 広場で喧嘩騒ぎと聞いて来てみれば、何だその刀は‼︎」

 

 咄嗟に隠す事もできず、ガタイの良い警察が私の手元を指差し距離を詰めて来る。

 波紋で気絶させる事も殺す事もできるが、万が一そんな場面を事情の知らぬ通行人に見られては面倒……

 この後便乗して船に乗るとなると問題は起こせない。

 

「コレは私の商品だが?」

 

「商品ん〜⁉︎」

 

 でまかせを言うと警官は、疑いの目で私をジロジロと眺め始める。そして刀に手を伸ばそうとした警官の手を、私は空いている方の手で払い除ける。

 

「触らないでくれ」

 

「何故だ」

 

「コレは商品と言いましたが売れる状態では無い。風化が酷くこれから腕のいい友人の所でサビを落として貰う予定だ。だというのに盗まれてしまってね……奪い返したはいいが振り回されてしまい劣化が心配なんだ」

 

「にゃるほどぉ……」

 

 嘘とそれっぽい事を次々と並べると、難しい表情で顎髭を撫で やがて納得したかの様に頷いた。

 

「うむ、理解した。ならばこの件は向こうで伸びている犯人を取り押さえて終わりだな。疑ってすまなかった!」

 

 そう言って敬礼し一件落着かと思ったが、ここで警官が妙な事を言って来る。

 

「してその刀…少し見せてはくれまいか?」

 

「……は?」

 

「いやはや吾輩…実はパトロールついでに商品を見て回る程の美術品好きでしてな……商品として売られる刀を一目見ておきたい。なぁに、触りはせん。鞘の上からで結構」

 

 面倒な人だな。だが断って話を拗らせるのもまた面倒だ。

 私は丁寧に刀を両手に持ち、両手の上で刀を横に寝かせる。破損を心配していると嘘をついているので、このくらいの小芝居はしないといけない。

 

「ほほう、これは見事な………む?ムムムッ⁉︎」

 

「………どうかしたか?」

 

「こ、ここ…コココココこの刀はまさか! 一年前にある博物館の倉庫から盗まれたという……それも500年以上前の年代物では⁉︎」

 

 顔を真っ青にして私を見上げる警官の肩はワナワナと震えている。

 この妖刀スタンドは博物館にあったのか……初耳だ。

 

「それを何処で⁉︎ これは売っていいような物では無い‼︎ これは大事件だ‼︎ 吾輩が責任をもって預かるゥ‼︎」

 

 軽く錯乱状態になった警官は、両手を伸ばし刀の持ち手と鞘を掴む。

 渡す訳にもいかず抵抗するが、日光を浴びた状態の私は非力な部類だ。戦闘力があるからといって力強い訳では無い。

 腕相撲で花京院に負ける程だ。

 

「はーなーしーなーさーいーッ‼︎」

 

「テメェが離せ‼︎」

 

 そこへ承太郎が加わり揉みくちゃ状態に…そして警官は無意識にだろうが、右手でゆっくりと刀を抜き始めてしまう。

 

「ッ⁉︎ 波紋‼︎」

星の白金(スタープラチナ)‼︎」

 

 止むを得ず波紋で気絶させ、承太郎はスタンドの腕力で刀を弾き飛ばした。すると刀は弧を描き、何も無い所に地面に落ちて金属音を奏でた。

 刃は鞘の中に収まっている。

 

「……誰かに見られたか?」

 

 まず最初に周囲を警戒する。遠くで人混みが行き来しているが、こちらに注目している者はいない。

 

「…いや…大丈夫そうだ」

 

「やれやれ…人騒がせなポリ公だぜ」

 

 4人揃って冷や汗を流し、今度こそ我々は合流しようとする。気絶させた警官は日陰のベンチに寝させておこう。もちろん記憶の上書きも忘れない。

 

「さて……行くぞ」

 

「おう‼︎……って、あぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 口をアングリと開けてポルナレフが叫ぶ、その声に驚いた礼神はギョッとした様子でポルナレフを凝視する。

 一体どうしたのかと思ったらポルナレフがある一点を指差している事に気付きそちらに目を向ける。

 

「なっ‼︎ 承太郎⁉︎ スタプラ早よ‼︎」

 

「無理だ‼︎ 射程圏外だぜ‼︎」

 

 ポルナレフが指差す数10m先にあったのは、数匹のネズミに運ばれる鞘に収まった刀だった。

 

 

 

 

 

「………つまりは…逃したと…」

 

「面目ねぇ。手の空いてる俺がちゃんと回収するべきだった」

 

 合流を終えた我々は事情を説明し、警官に絡まれた時も見てるだけだったポルナレフが最初に謝罪する。すると「それなら僕も」と礼神が続けて謝る。

 

「ふぅ……仕方ない。その刀を探して足止めを食う訳にはいかん。旅を続けよう…じゃが相手が相手じゃ、また襲ってくるのは確実。それも強くなって……今以上に警戒を怠ってはいかんぞ」

 

「はい」

 

「それじゃ出発しよう。丁度商人達が船を出す準備を終えたようじゃ」

 

 そんなジョセフの言葉を聞いて我々は乗船した。

 便乗させてもらう船は随分と簡単な作りの物で、3人もいれば船は動かせる。そしてその3人は全員商人という無駄な人員のいない船だった。

 つまりこの船には3人の商人と我々6人+1匹しかいないのだ。

 

「……レオン……だからもっとマシな治療法は………」

 

「ない。黙っていろ」

 

 電柱のテッペンから波紋を込めた水を流すと、電柱の本体が心を無にして質問してくる。胸の傷もそうだが、だいぶ転げ回ったのか擦り傷も複数ある。これが合理的なのだ。

 

 にしても、戦闘中でも崩れないこの銀電柱……一体中身はどうなっているんだ?

 

「わっ⁉︎ ちょっとレオン‼︎ 髪は止めてくれよな‼︎」

 

「す、すまない…つい…」

 

 好奇心が抑えられずに電柱に指を差し込むと、第一関節が刺さったあたりで振り払われてしまう。

 

(……電柱に穴が………何ッ⁉︎)

 

「あーもう、乱れちまったじゃねぇか」スッスッ

 

 慣れた手つきでポルナレフは、乱れた髪型を塗装した電柱のように修正する。

 

(き……気のせいか?…空いた穴から波紋入りの水が流れ出て来たぞ。それも水道の蛇口のように勢い良く!……気のせい……なのか?)

 

 まさか中身は空洞になって……いや、そんなわけはないか…

 

「…どうしたレオン」

 

「…何でもない。治療は終えた、もういいぞ」

 

 周囲に目を向けるが今の光景を誰も見ていなかったらしく、たった今見た奇妙な現象をそっと胸の奥にしまい、私は速やかにその場を立ち去った。

 

「そこの兄ちゃん。金貰っといて悪いんだが、チョイと手伝ってくれんか?」

 

 舟の後ろから前へと移動すると、そこでは柔らかい笑みを浮かべる商人が承太郎に話しかけていた。

 何かを頼まれているようだが…

 

「いいじゃないか、ワシらは乗せてもらっている身。少しくらい手伝ってやりなさい」

 

 承太郎は頼まれればやってくれる根は良い学生だ。しかしジョセフにそう言われたのが癪だったのか、不機嫌な様子で手伝いに向かう。

 

「悪いねぇ。なんか帆が上手く風を受けないんだ」

 

「別に構わねぇぜ」

 

「チョイとこの縄を持っといとくれ。上の方を結び直してくるからの……絶対に離さんでくれよ?」

 

 そう言って男はマスト…というのか? 船に帆を正常に広げる為の柱をよじ登っていく。

 

「んんー?…あれま!縄が切れてら。どうりで上手く受けないわけだ。にしても縄は新しいのに変えたばかりなんだが……それにこれ…()()()()()()()()()()()()()()

 

「……刃物?」

 

「承太郎‼︎ 後ろ‼︎」

 

 ついつい上で働く商人を見上げてしまい、承太郎は背後に回り込んでいた商人に気がついていなかった。

 私の声に反応したが時既に遅く、承太郎の脇腹に刀が振り抜かれた。離さないよう商人に釘を刺された事がチラついたのか、それで一瞬隙ができたのだろう。

 

「グハッ…⁉︎」

 

「安心しろ。峰打ちだ…」

 

「わわわっ、ゲプッ⁉︎」

 

 重い一撃だったのか承太郎は膝をつき気絶……握っていた縄を手放してしまう。それで柱が揺れ上で働いていた商人が落下し気絶…騒ぎに気付き、その場にいなかった者共がこっちへやって来た。

 

「オメーさん、そんなもん振り回して何やって…ブゲェ⁉︎」

 

 駆け寄った商人は刀を持った商人に鞘で殴られあえなく気絶。そしてやって来たポルナレフに視点を合わせると不敵に商人は笑みを浮かべた。

 

「おいコラ商人‼︎ 承太郎達に何しやがる‼︎」

 

「俺だよまぬけ。アヌビスの暗示のスタンドさ!」

 

 商人を乗っ取ったアヌビス神はそう言ってしゃがみ込んだ。

 

「不味い‼︎ 奴を止めろォオ‼︎」

 

「もう遅い…クフフフ」

 

 突如として商人は気絶……逆に気絶していた承太郎は立ち上がり、我々に殺意の目を向けて来た。

 

「アイツ…や、やりやがった‼︎」

 

「しゃがんで刀を手渡して握らせて……まったく。身体を取っ替え引っ替えして忙しい奴だな」

 

 承太郎は抜き身の刀を片手に、我々に襲いかかって来た。

 

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