ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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46.謎・隠し事・後悔

 陽が沈む方角は死者の都(ネクロポリス)

 かつてファラオ(王様の意)たちは墓泥棒たちからの盗掘を防ぐために、ナイル中流の奥深い険しい谷に死後の安住の地を求めた。

 これが王家の谷である。

 しかし、それでも何十とある王墓はことごとく盗掘にあった。そして、たったひとつ盗掘をまぬがれて近代まで残ったのが有名なツタンカーメン王の墓であるのだ。

 

「今もどっかの家ではコッソリ地下へ掘り進み、盗掘をしてるとかしてないとか…」

 

「へぇー、よく知ってるね葎崎さん」

 

 まぁ、うろ覚えだけど原作に書いてあったし…

 

「ところでジョースターさん達は?」

 

「トイレ。注意事項言ったし、スタンド感知できるレオンさんもいるから大丈夫なはず」

 

「コンセントと影には触らない……だったな」

 

「正解だよ承太郎。物覚えがよろしいね」

 

 シナリオ通りなら次の敵はマライア? バステト女神の幽波紋使いだ。

 能力は「磁力」…コンセント型のスタンドに触れた者は磁力を帯び、時間経過と共に強くなる。すると最終的には車サイズの金属や電気系統も引き寄せてしまい、圧死したり感電死したりする。

 

 そして面倒な事に、その幽波紋使いとは別にもう1人……影の幽波紋使いが接触してくるはずだ。

 名前は忘れたけど能力は覚えてる。

 影に触れると触れ続けるにつれて幼くなる事だ……

 

「まぁ影の方はあまり強くないかな…ショタ太郎にやられるくらいだし」

 

「となると厄介なのはコンセントか〜。よりによってコンセントか〜。ドライヤーとか使う度にレオン呼ばねぇと……」

 

「自然乾燥じゃあかんの?」

 

「乾くまでワックスが使えねぇんだよ」

 

「いっその事手入れいらずのストパーにしたら?ワックスを使わない自然体」

 

「何言ってんだ礼神! 既にオレのヘアースタイルはストレートだぜ?」

 

「いや…確かに直立(ストレート)だけど…」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 それとほぼ同時刻……私はトイレの個室の前で腕を組み、付き添いが出てくるのを待っていた。

 すると………

 

「OH MY GOD‼︎ 空気が乾燥してるからウンコがチリになって飛んでいく‼︎ ふ、風洗式トイレかァ⁉︎」

 

 ……複数あるトイレの個室の一室がヤケに騒がしい。無論それはジョセフなのだが…

 どうやらカルチャーショックが強かったようだ。

 

「し、しかもこれ…もしかして砂の(サンド)ウォシュレットォ⁉︎ 砂でェェ⁉︎」

 

「砂漠の砂は無菌なのだ。騒いでないでさっさと済ませろ」

 

「いやだってレオン⁉︎ 砂じゃぞ、砂‼︎ ポルナレフじゃないがホテルまで我慢しよう…」

 

「そうか、勝手にしろ」

 

 ようやく個室から出て来たのを確認し、私はイギーに一声掛けて歩き出す。

 

「ところでレオン…反応はどうじゃ?」

 

「何度か広範囲まで探知能力を広げたが反応は無い……随分と慎重だ」

 

「イギー、お前の鼻に反応はないのか?」

 

「………ケッ」

 

 半開きの目をジョセフから背け犬らしからぬ声を出す。その表情は「さぁな…」とでも言いたそうだ。

 

 

 

 

 

 場所は変わってルクソール。

 その街の川沿いの一角にある店で、我々は休息がてら今後の動きについて話し合う。

 その前にジョセフは「店のトイレは普通そうだ」という理由で手洗いに向かったが、その時私は電話をしていたのでイギーとポルナレフが付き添いに行った。

 

「………」

 

 そんな訳で、店の影に隠れ今電話をかけているのだが一向に繋がらない。

 相手は入院中のアヴドゥル。予定では明日か明後日に退院する計算…確認と現状報告を兼ねて携帯機器を使用しているのだが、コール音が鳴り続ける。やがてコール音が止むが、聞こえてくる声はアヴドゥルのものでは無かった。

 

『只今、通話に出る事は出来ません。「ピー」という発信音の後にお名前と、ご用件をお伝え下さい』ピ-

 

 電源が入ってないだけか、何らかの所作で壊れたか……それとも通話に出れない状況にあるのか………不安だが私にはどうする事もできない。

 そこでGPSを確認するが此方も反応が無い。やはり電源を落としている様だ……電源を落とされると、携帯機器同士での位置確認はできない。

 私は通話先を変更する。

 

『はいこちらSPW財団。レオンさんですね。どうなさいました?』

 

「私の予備と通信が取れない。GPSもだ……何らかの原因でアヴドゥルが電源を落としたままにしてる様だ。そっちで位置確認だけでもできないか?」

 

『少々お待ちください………………………』

 

「……………」

 

『……妙ですね。モハメド・アヴドゥルさんは病院を離れ移動している様です』

 

「何だと?」

 

 もう退院したのか? 予定より早いし連絡が無いのもおかしい。

 

「すぐに迎えに行ってくれ」

 

『かしこまりました。では結果は後程連絡します』

 

 通話が切れ元いた席に戻ると、「プシュ」という弾けた音を聞いて顔を上げる。

 そこにはコーラ瓶をラッパ飲みする学生が3人いた。

 

「いつの間に頼んだんだ?」

 

「さっき承太郎が頼んでくれましたよ」

 

 一本のコーラ瓶を手渡しながら花京院がそう答える。

 

「金は?」

 

「後払いだ。もちろんレオン持ちでな」

 

「ゴチになりまーす」

 

「そのくらい構わないが……」

 

 財布の中にあるこの国の通貨を数え、会計の時にすぐ出せるよう別ポケットに入れておく。すると丁度、ジョセフ達が戻って来た……やけに早い気もするが…………

 

「早かったな」

 

「砂だった」

 

「………あっそう」プシュッ

 

 要するにまた風洗式だったため、Uターンしてきたのか。

 花京院に手渡されたままだったコーラ瓶を開けて口を付ける。炭酸飲料は渇いた喉を流れ潤いを与える。

 

「お、俺らのも頼んどいてくれたのか。気がきく〜♪」

 

 テーブル上に並んだ瓶を一本手に取り、開け次第に口を付け勢い良く飲む。

 ………やけに上機嫌だな。

 

「……ポルナレフ、何かあったのか?」

 

「あ! やっぱわかっちゃう? いやー‼︎ 俺って困ってる子を放っておけないからさ♪」

 

「…会話になってないぞ」

 

「なぁに! ただの人助けよ。ひ・と・だ・す・け‼︎」

 

 ニカッという効果音が似合いそうな笑顔を浮かべるが、鼻の下が伸びていて少し残念な事になっている。

 

「…ワシがトイレが何洗式か確認しとる間に、ポルナレフ曰く素敵な出会いがあったらしい」

 

「あっそう」

 

 興味無さそうに礼神は呟き、瓶に残っていたコーラを一気に飲み干した。そして胸ポケットから何かを取り出す。

 

「一応確認するけど、ジョセフさん義手の調子は?」

 

「取り替えたばかりで、もちろん良好。オイルも差したし良く動く」

 

 そう答えるが、念には念を入れて礼神は取り出した何かをジョセフに向ける。それはジープが壊れた際に手に入れた何処かの螺子……それを糸で結び振り子のような状態になっている。

 それをジョセフの近くで数回揺らすが、螺子は質量と重力に従って規則正しく揺れる。磁力の影響を受ける様な動きは見せなかった。

 

「んー……時間が経過するごとに強くなる磁力……逆に言えば最初は弱いんだよね。だから最初は反応しないだろうと思って、店に来るまで確認しなかったけど………」

 

「今も反応しないという事は、術は無事に回避できたというわけじゃ」

 

「そもそも砂漠の公衆トイレでは私が見張っていた。術をかける余地など無い……当たり前と言えば当たり前だ」

 

「ならさっさと行こうぜ。どうせ今日はシッカリと休息を取るんだろ? 俺としては早めにホテルに向かいたいんだが……」

 

 空になった瓶を置いて立ち上がる承太郎に乗じて、花京院も「僕も早くホテルで休みたいですね」と言い立ち上がった。

 それを聞いた私はコーラの代金を払い、それを終えると一同が次の街へ歩き始めた。

 

 

 

 

 

「結構良いホテルだな〜」

 

 ロビーに入るや否や、装飾品等を眺めてポルナレフが単純な感想を漏らす。単純と言っても、ここは今まで泊まってきたホテルの中では一二を争う高級ホテルだ。ポルナレフの言っている事は的を射ている。

 

「プールこそ無いが、シンガポールで泊まったホテルといい勝負だ。警備システムもある事にはある」

 

「幽波紋使い相手に意味は?」

 

「能力によっては意味無いが、有った方が良いだろう」

 

「幾分かは攻めにくくなってるのを信じましょう」

 

 喫煙スペース近くの壁に寄りかかり、私は花京院とそんな会話を交わす。承太郎とポルナレフはそのスペースで一服していて、ジョセフは受付で泊まるための手続き。

 礼神は「ペット同室がOKか聞いて来る」と言って、イギーを抱えたままジョセフについて行った。無論礼神は言葉が話せないのでそこに居るだけで何もしていない……だが何もできないのに動こうとするその行動力は、きっと彼女の長所なのだろう。

 

「……えい」

 

「むっ?」

 

 急に隣にいた学生が私の視界を片手で覆う。

 生暖かいその手が私の目元に触れて数秒後……フリーズした脳がようやく働き出し現状から疑問を作り上げる。

 

「……………急にどうした?」

 

「目が鋭かったので……レオンさんの能力は探知に優れている…故に有効活用しようと気を張り過ぎています。確かに気の抜けない旅ですが、少し肩の力を抜いたらどうですか?」

 

 花京院の珍しいその行動を指摘すると、そんな答えが私に返ってきた。

 

「別に無理は…………」

 

 目元にある彼の手を退けて自分の視界を確保して横を見ると、無表情に見えて瞳の奥に心配そうな色を見せる花京院がいた。

 そして喫煙スペースにいた2人も視界に入ったが、承太郎もポルナレフも私の言葉に対して つまらなそうな表情を浮かべている。

 この旅で彼らには散々な姿を晒してしまっているからな……つい先日だって両足を切り落としたばかりだし……

 

「……………お言葉に甘えよう。偶にはな……」

 

「ワッ!」

 

 長めで手入れのいる髪を潰すように撫でると、いつもに比べれば幼い声が耳に入る。

 

「…子供扱いは止めてくれませんか?」

 

「フフフッ。私に比べればお前達は子供同然だ」

 

 その言葉に返答はしなかったが、花京院は私の手を振り払い少し笑みを浮かべた。そこで視線を感じた我々は顔を前に向ける。

 

「……………」

 

「…何だ、礼神」

 

「いや…なんか微笑ましくて」

 

 いつの間にか戻って来ていた礼神は、イギーを抱えたまま優しい笑みを浮かべていた。

 この顔、何処か見覚えのあるような……………あぁ、アレだ。まだ幼かった承太郎を見守るホリィと同じ表情だ。

 

「……いつまでだらしねぇツラしてやがる。葎崎、それよりどうだった?」

 

「イギーも同室OKだってさ。イギーと泊まりたい人いる?」

 

「冗談はよせよ。礼神とレオンでイギー固定だろ」

 

 またつまんなそうな表情を浮かべポルナレフが言うが、満場一致で可決した。

 それに関しては私も礼神も構わないのだが、満場一致という事実に気付き気に障ったのか、イギーはポルナレフを見て唸り声を上げる。

 

「なら早く鍵を渡せ。今日でどれだけ休めるかが肝なんだぞ」

 

「わかったわい。ほれ、ペット同伴の部屋の鍵じゃ。あとは……」

 

「俺はジジイと泊まるぜ。少し話がある」

 

 キッと視線を尖らせながら、承太郎がジョセフの手から鍵を取る。話があるという発言が一瞬気になったようだが、ジョセフは残った鍵を花京院に渡す。

 

「必然的に、僕はポルナレフとか……」

 

「おし花京院、早く部屋行こうぜ。さっさとシャワーが浴びてぇんだよ、俺は」

 

 そう急かすポルナレフに背中を押され、花京院達が真っ先に歩き出す。それに続くように我々も途中までは一緒に歩き出した。

 

「………そういえば葎崎…テメェのスタンドは、遠距離だと自動操作になるって言ってたな」

 

「ん?うん。そだよ」

 

「ならコレに見覚えは ねぇんだな?」

 

 そう言って承太郎は、学ランの内ポケットから何かを取り出し渡してくる。何かもわからず両手で皿を作り礼神が受け取ると、目を丸くしてから汚い物を触る様に渡された物を摘む。

 

「……What is this(コレは何ですか)?」

 

This is a Straw Doll(それは藁人形です)

 

 礼神が承太郎から受け取ったのは、黒く染まった藁人形だった。

 

 

 

 

 

 それぞれが部屋に着くと、礼神は荷物掛けに自身の荷物を投げ掛ける。そしてすぐさまベッドに寝転がり、承太郎から受け取った藁人形を見つめていた。

 

「気色悪………にしても驚きだね」

 

「そうだな。まさか承太郎が英語の問いに英文で返すとは………」

 

「レオンさん。僕が言ってるのはそこじゃない」

 

 ジト目でそう言われるが、親戚の私からしたら十分驚く事だぞ?

 あの承太郎がその場のノリで返事をするなんざ……あの承太郎がだぞ? グレる前ならまだしも、同じ事をジョセフや私がやっても数秒の沈黙の後に真顔で返事をするだけな気がするんだが………

 

「最近はしないけど、承太郎は結構 僕のお巫山戯にノッてくれるよ? 小学校の時とかは「おはよう承太郎どん」って言えば「やぁ、礼神どん」って返事してくれたし」

 

「何それ怖い」

 

「え、レオンさん?」

 

「……いや、何でもない」

 

 あの承太郎が? 嘘だろ。だってあの承太郎だぞ⁉︎

 

「そんな事よりレオンさんコレ……」

 

「あ、あぁ…すまない」

 

 そんな事……か………幼馴染の礼神としては、承太郎のあの対応は別に珍しく無かったのか。それはそうと…

 

 私は礼神から藁人形を受け取る。

 

 一見 呪いの代表例として使われそうな人形だが、藁は黒いし釘の代わりに血塗られた様な赤い札が貼られている。

 

「レオンさんはどう思う?」

 

「そうだな……成長途中とかか?」

 

「成長途中ねぇ……確かに使わなかった……というか、使えなかったわけだし……」

 

 情報が少なく雑な推測をすると、礼神自身もよくわかっていないようでうわ言の様に呟く。

 

 実を言うとこの藁人形……承太郎曰く、礼神のスタンドが吐き出した代物らしい。

 

 私と合流する前……ンドゥールという盲目の男と砂漠で戦い終えた際に、承太郎を乗せていた礼神のスタンドが吐き出したと言う。何故それを今まで隠し持っていたのか聞くと、ウッカリ忘れていたとのこと………

 

「何故忘れたのかを聞けばダンマリ……少し承太郎の様子もおかしく無かったか?」

 

「おかしかった……帽子を深く被り直してた」

 

「……帽子?」

 

「あ、言っちゃった……ま、いっか。本人には内緒ね? 承太郎は図星突かれたり、なんか隠し事をする時に帽子を深く被り直す癖があるんだよ」

 

「ふむ…」

 

 つくづく礼神は幼馴染なのだな と痛感する。私もジョセフも知らない事を礼神は結構知っているのだな。

 今後とも仲良くしてやって欲しい物だ。

 

「む〜…アァァーー‼︎ もうヤダ‼︎ わけわかめ‼︎ 何なんだよこの藁人形‼︎」

 

 悩みに悩んだが何もわからず、礼神は藁人形を壁に投げつける。罰当たりな行動だが、藁人形は特に変化無し……W-Refで触れると礼神のスタンドエネルギーを感じるが、今回の事例は初めてとの事。

 わけがわからず、ついに考える事を放棄し始めたようだ。

 

 自身のスタンドが吐き出した藁人形……考えれば考えるほどに、謎は深まるばかりのようだ。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「謎は深まるばかりじゃな」

 

 場所は変わってジョセフと承太郎の泊まり部屋。

 ここではベッドに腰をかけて義手の様子を見るジョセフと、荷物整理を行う承太郎の姿があった。

 

 2人はレオンと礼神同様に藁人形について話していた。

 

「本当に承太郎は何も知らんのか?」

 

「知らねぇ。ンドゥールが自らを口封じする為に自害した後、葎崎のスタンドが何の前触れも無く吐き出したんだぜ」

 

 まったく知らない様子で答えると、ジョセフは目を伏せて小さく唸り考える。

 

「……うむ…礼神自身も知らぬ事じゃった様だし、スタンドについてはアヴドゥルの意見を聞きたい。じゃが連絡は何故か繋がらんしのう……何故それを早く言わなかった?」

 

「色々あってウッカリ忘れちまってた。それに関しては悪いとも思ってるぜ」

 

「色々って……病室でそれを思い出せばアヴドゥルの意見を聞けたと言うのに……」

 

「葎崎が今すぐ能力に開花する必要はねぇ。今でも十分に戦えてる、その話は一旦後だ。ジジイ、話がある」

 

「おぉ、そうじゃったな、忘れる所じゃった。わざわざ部屋を同じにしてまでの話………一旦何じゃ?」

 

「藁人形の事をウッカリ忘れた原因と言ってもいい………」

 

 何かに期待している訳では無いが重大な話だと思い、ジョセフは座り直して腕を組むと承太郎と向き合った。承太郎も向かいのベットに座ると、指を組み深刻な表情を浮かべる。

 

 それで緊張感が伝わったのか、思わず生唾を飲み承太郎の口が開くのを待っている。すると、承太郎はようやく言葉を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「DIOに弟がいるってのは本当か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 せめて筆談とかができればなぁ……

 

「コレは君の能力?」

 

 僕の前で座るブラッドカラーの犬の骨組みは、首を上下に動かす。

 意思疎通はできるが言葉は話せないスタンド………この質問の仕方で何処まで絞れるか……

 

「この能力の発動条件は? 死んだ相手に発動するなら「おて」。声を使った相手に発動するなら「おかわり」。両方違うなら「伏せ」して」

 

 そう言うと、僕のスタンドは片手を僕の手に置き「おかわり」をする。

 つまりこの藁人形は、僕の声で発動したのか……

 

「この能力は攻撃的なもの?」

 

『……………』

 

 ケルベロスは頷きもしないし振りもしない。少し困ったかのように首を傾げている。

 

「……何とも言えないか」

 

『スタンドとは精神力の具現化……「この旅で葎崎 礼神が成長したがためにスタンドまでもが進化した」という主の推測に一票』

 

「アンちゃんもそう思う?」

 

『ウム』

 

 レオンさんの側を浮遊する「アンちゃん」ことアンラベルはそう言って、例の藁人形を掴んで弄っている。少しでも調べようとする意志があるのか、手にはW-Refが嵌められていて、それが原因なのかレオンさんは少しダルそうだ。

 

「にしてもスタンドのアンちゃんがスタンドのW-Refを嵌めれるんだね」

 

『その間 主はW-Refを使えないがな』

 

 レオンさんがダルそうなのも、スタンドが使えない というそれも反比例の特性が作用してるのかな?

 

『この札、まだ剥がしていないな………剥がしてもよいか』

 

「………ん、良いよ。何が起きるか分かんないけど」

 

 話し方が棒読みに近いからか、「?」(疑問文)のニュアンスに聞こえず、僕に質問してるのを気付くのに時間がかかる。

 それで遅れて返答すると、アンちゃんはW-Refを嵌めたまま札に手をかける。

 そして札を剥がすと…………

 

「わっ…………⁉︎」

 

『おっ……………』

 

「……………ッ?」

 

 札を剥がすと藁人形は朽ち始め、藁の隙間から黒い煙が噴き出る。視界を覆う程の量では無いが、急な事に驚き僕は手でそれを振り払う。

 その煙は数秒後には自然と晴れ、藁人形は既に朽ち果て跡形なく消え失せていた。

 

「………………何かわかった?」

 

『…何も』

 

 短く答えてから逃げる様に彼女は姿を消した。それを見てレオンさんが一言謝罪を挟む。

 

「別に良いよ。でも、能力の手掛かりも無くなっちゃったね」

 

「今すぐに知る必要はない。礼神、少し早いが夕食にしないか?」

 

 夕食を食べたら今日一日自由時間。そしたら残りの時間で考え事も休息も何でもやりたい放題!

 そう考えると早く食事を済ませたいと思うのは当然。

 

「そうしよー!」

 

 そう言って僕らは部屋を出た。

 スイートルームに泊まった人だけが入れる高級レストランだから、いつもと比べれば気を抜いて食事ができるはずだ。

 まぁ、抜けるからと言って抜くわけにはいかないんだけどね。

 

「……レオンさんは本当に必要無いと思う?」

 

「何がだ?」

 

「能力の把握……今の僕って、ちゃんと役立ってる?」

 

「勿論だ。不安ならみんなに聞いてみろ。不満を言う奴は誰もいないはずだ………自信無いのか?」

 

「うん……」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 現地基準で現在時刻 PM 19:30くらい………かな?

 とあるホテルの屋上で煙草を咥え、「1日終わりの煙草は格別なりー♪」なんて事を頭の中でボヤく。

 

「つっても暇さえありゃ吸うんだけどさー」

 

 独り言を零して左手首を捲り腕時計に視線を落とす。

 短針は7と8の間に位置し、長針は5を指していた。

 

「19:25……ニアピン………ホッ」

 

 口を開けて輪状の煙を吐き煙草を堪能する。肺から染み込む効力が全身を流れ脳の働きをサポートさせる。

 輪状に吐かれた煙は風に流され空気に溶け込み姿を消した。それを見送り煙草をまた咥え、肘掛け代わりに柵の上に腕を組んでおく。

 

「……いつも通りのある日のこーとー♪ 君は突然立ち上がり言った♪」

 

 何の歌かは忘れたが、星空が思いの外キレイだったので歌ってみる。

 

「こ↑ん→や↓……あれ? こ↑ん→や↑…………んん?」

 

 曲名どころか音程も忘れ、少し気持ち悪い感じで口を閉じる。歌う事を諦め、また煙を吐き夜空を見上げると、背後から静かなドアの開閉音が聞こえる。

 横目で盗み見てみると、屋上にやって来たのが学ラン姿の高校生だと一目でわかる。ガタイが良く接近戦だと勝てるかどうか………

 その学生は柵の数歩手前まで歩き煙草を咥える。そして自分の火種を取り出して火をつけようとする。しかし、オイルが足りないのか、ライターからは火花が散るだけで一向につかない。

 

 まぁ、公共の場はみんなの物……譲り合い精神と助け合いを心掛けないとね。

 

「………ッ⁉︎」

 

 無言で愛用のジッポーに火をつけ差し出すと、急な事で驚かせてしまったのか、彼は一瞬の硬直の後に咥えたまま顔を出して煙草に火をつける。

 

「…………悪いな」

 

「別に良いよ〜。オジさんと承太郎の仲だろー?」

 

 そう言って念の為に、薬物を一本自分にプスリ…っと。

 

「あ?…ッ⁉︎ テメェ‼︎」

 

「やっと気付いた?」

 

 オジさんが誰だか気が付いた所で距離を取り、白衣を翻しケラケラ笑ってみせる。勿論のこと彼は自身のスタンドを出すが、どれだけ強かろうと当たらなければどうてこと無いのだよ。

 

「伊月 竹刀………何故テメェが此処に………」

 

「いやー正直な話、オジさんは君じゃなくて礼神ちゃん待ってたんだけどねぇ」

 

「葎崎を?」

 

「うんうん。パキスタンの国境手前でチョット話してね。その続きがしたかったりするんだけど………」

 

「はいそうですか。と言って、敵の言われるがままに合わせるわけねぇだろ」

 

「やっぱり? でも敵意はないぜ。あったら既に君の血中には薬物が流れてるだろうし、奇襲をせず此処にいるのも変な話だろ?」

 

「…………」

 

 承太郎は答えない。

 

「ま、いっか。その表情からして考える事がいっぱいあるんだろ? せっかくの休息日に呼び出すってのも不親切な話だもんね。日を改めるよ」

 

 手を振って扉に向かおうとするが、彼から発せられる闘気のせいで通れない。今射程内に入れば殴られるだろう。

 

「……逃す気は無いと?」

 

「危険な種は放っておけないんでな。伊月…テメェはいいのか。DIOの手下だろ」

 

「ハハハッ、オジさん魂までは捧げないさ。ただ……そうだなぁ……今は敵とも言えないし……味方とも言えないし……ま、どうでもいっかーーー」

 

 ポンッと手を打ち1人で納得すると、射程外にいたはずの承太郎が目の前に現れ殴られる……否、殴り飛ばされていた。

 

「ガハッ⁉︎」

(時止め…‼︎ この距離じゃどれだけの長さかわからないが、発動自体はもうマスターしたのか⁉︎)

 

「クッ……なんだ今のは。確かな手ごたえを感じたが、人間の硬さじゃねぇ。だが鉄板とかでもねぇな……それよりも硬えだと⁉︎」

 

「その辺は企業秘密ね。ひとまず1つだけ言っておくよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…なっ…急に何を……」

 

「今は礼神ちゃんのスタンド能力について調べてんだろ? オジさんが今言った事がもしかしたら役立つかもよ?」

 

 そう言って逃げようと柵を乗り越えて飛び降りようとする。すると背後から制止の声が……殴り飛ばされたおかげで距離はあるし逃げれそうだね。

 しかし承太郎の制止の後の声に反応して、ついつい会話を伸ばしてしまう。

 

「待て‼︎ 最後にコレだけ答えろ。何が狙いだ⁉︎」

 

「別に何も? ただ礼神ちゃんを死なせる気が無くてね………あのままじゃ彼女………君らの為に自殺するぜ?」

 

「それはどういうーーー」

 

「話は終わりだよん」

 

 それを最後に屋上からオジさんは身を投げた。

 ふと後ろを見ると夜空をバックに駆け寄って来た承太郎が柵から身を乗り出している。その表情といったら形容し難いものだが、あまり良いとは言えない表情をしていた。

 

「ついでに伝言だ承太郎‼︎ 礼神ちゃんに、「いい加減に盗聴機は外したら?」と伝えといてね〜‼︎」

 

 ご近所迷惑なんてアウトオブ眼中。

 せめてホテルが防音性のいい部屋である事を祈りそう叫んだ。

 

 やがて近付いてくる地面を目視して、全身の筋肉をふんだんに使い着地&受け身。

 流石に高いこともあって多少の音をたててしまう。まぁ()()()()()()()()()()()()だけでも凄いんだろうけど……いや、生身の無傷着地も十分凄いか………

 

「まったく……気が付けばオジさんも化け物か。それに張り合うレオンも化け物だけど………」

 

 この世界に転生した事でスタンド能力なんて物も身に付けたけど……はぁ…………

 

「………転生なんざせず、さっさと死にたかったなぁ……」

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