「クソッ……コレだけ無理して失敗か……」
あの後…私とディオはある程度戦いを繰り広げ、火の力が十分になってから彼を原作通りに慈愛の女神像に突き刺して来た。なんせ私が負ける要素は何も無かったからな…ディオは能力を把握しきっていない。それに対して私は油断せずに、原作知識と合気道で迎え撃ったのだからな。まぁ結局逃げられてしまったようだが……
翌日…私は森奥にあった空き家で昼を過ごしていた。ここは私の隠れ家とも言える場所で、三年前から私が気に入って利用している。
話を戻そう…何故ディオが逃げた事を私が知ってるかというと、それはリリーのお陰だ。リリーがジョースター邸で亡骸が見つからなかったことを今朝教えてくれたのだ。
「お腹は空いてませんか?」
そしてリリーは今、私の目の前にいる。なんせココを利用するのは、私と彼女だけだ。ココで待てばいずれ来ると思ったが、まさか翌日真っ先に来るとは………
「それより石仮面は?」
「言われた通り持って来ました」
リリーはバッグから石仮面を取り出す。ワンチェンが譲って欲しいとせがんだらしいが、リリーはちゃんと死守してくれたようだ。
もうコレに用はない…今後吸血鬼が増えぬように私は破壊する事にした。軽く力を込めると、もともとヒビが入っていた石仮面は更に大きなヒビが入り壊れる。先の話だが、これでジョジョ…ジョナサン・ジョースターの息子が殺される事も無「グゥ〜…」……リリー…腹が減ったのは、君のようだね。
「コレで悩みの種は一つ消えた…少し空腹を感じるな。何か食べようか」
私が気を利かせてる事に気付いたのか、リリーは顔を赤く染める。
それは置いといて……確か棚にアレがあったな。
「あ、レオン様。料理でしたら私が…」
「もう君はメイドじゃない。遠慮しなくていいし、様もいらない」
それだけ言って私は、棚から干し肉を取ってくる。この隠れ家は簡素な料理台が置いてあり、ナイフと研ぎ石もある。しばらくはココで暮らせるな。
「これ……もしかしてレオン様が?」
「昨夜獲った兎肉だ。塩漬けもして干しておいたので食べごろかと…あとレオンで良い」
皿の上に並べられたスライスされた干し肉を並べると、独特な香りが食欲を誘う。
「口には合うかな?」
「美味しいです レオン様」
「レオンで良い。それと、食べ終えたらジョジョとスピードワゴンを呼んできてくれないか?」
そう頼むとリリーは、干し肉を二切れ持って隠れ家を出て行った。食べ終えてからでいいと言ったのだが……
私はまた一切れ口に放り込み、彼女の帰りを待つことにした。
そういえばこの干し肉…思ってたより美味いな……別に美味しく作れたとかそういう意味ではない。私の今の味覚で味わえる事が驚きだ。
昨日ディオと戦う前にリリーの血を少量頂いたが、あの時味わった血の味を占めて人間の食生活などもう出来ないと思っていたところだ。
自論だが、人としての食生活は生きる為のもの…吸血鬼として血を吸うのは戦う為の所作だと私は思う。要するに吸血が無くとも生きていけるようだ。できることなら極力血を吸いたくはないな。
ー
ーー
ーーー
「レオン‼︎」
「むっ⁉︎ ジョジョか……今の私は世間に出れる存在では無いんだ。静かにしてくれ…」
自分の能力の可能性を試していると、ジョジョが荒々しく扉を開けてくる。腕には包帯が巻かれていて、おそらく突き落とした時に負ったのだろう。
「う…ご、ゴメンよ。でも君が生きていてくれて本当に良かった…」
「ひとまず扉を閉めてくれ……日光が入ってくる」
私がそう言うとジョジョが中に入る。続けてスピードとリリーも入室する。
「さて…リリーから聞いたよ。ディオの遺体が見つかっていないようだな」
私の言葉に、一同は言葉を詰まらせる。
「やはりレオンも生きてると思うかい?」
「現に私が生きているんだ。おそらく……ね…私の勘は悪い意味で良く当たるんだ」
「だがよう…あんな化物相手にどうやって戦えってんだよ‼︎俺らまで化物になれとでも言うのか⁉︎」
「あれを使った者は高確率で敵を作る。君達に使わせる気はない……もっとも、既に壊してしまったがね」
やれやれと両手を広げて肩をすくめる。するとスピードが腕を組んで唸り声を上げる。頭をひねるが案が出ないのだろう…その様子を見れば見て分かる。
「ならどうすれば……世に放たれたディオをどうすれば…」
「そこで一つ、ジョジョに頼みがあるんだ。スピードにはそんなジョジョを支えて欲しい」
そう言って私は一枚の手紙を取り出す。私がある男に向けて書いた手紙だ。
「レオン…頼みというのは?」
「その前に……Mr.ツェペリ、話があるので入って来てくれますか?」
扉の向こうに話し掛けると、帽子を被った男爵が入ってくる。
「ワシの気配によく気付いたのう…」
「だ、誰だテメェ‼︎」
「私はツェペリ男爵だ……そこの吸血鬼……何故ワシを知っていたという疑問を含めて聞かせてもらおう。貴様…何者だ?」
奇妙な構えを取ってツェペリが質問してくる。悪いな男爵…前世云々は言わないでおくよ…面倒だからね。
「昨日吸血鬼になった善人だ」
「善人だと?ふざけおって…石仮面は人の邪悪性を高める力がある。信じられるものか……」
予想はしていたが、波紋使いには敵対されるか……チラリと外を見てみると、運良く天候は霧雨だ。
「テメェ‼︎何するつもりだ‼︎」
「恨みは無いが、君達は黙っていなさい」
「ウッ⁉︎」
スパーク音と共に男二人が硬直する。あれが波紋か……
「ツェペリ男爵、少し話をしませんか?」
「断る」
少しくらい話してもいいじゃないか……まぁ話せないことを考慮してこれがあるんだがな。
私は彼に直接触れる事なく、彼の胸ポケットに手紙を入れる。
「な、なんと精錬された滑らかな動き‼︎敵ながら天晴れと言わざるをえない…」
お褒めに預かり光栄だ。だが私はこのままトンズラさせてもらおう。
「ジョジョ‼︎再会したばかりだがお別れだ。また会おう」
ー
ーー
ーーー
さて…勝手なことをし続けてるわけだが、いい加減私のやれる事も少なくなってきたな。
ツェペリ男爵に押し付けた手紙はディオの情報と居場所、ウィンドナイツロットへの行き方…そしてジョジョに波紋を教えて欲しいと願いを一文添えたものだ。
「俺はもちろん波紋を習得出来ない。吸血鬼が吸血鬼を殺す方法…脳を跡形無く消せば殺せるだろうが、それを行う攻撃手段がな……」
霧雨が止まぬうちに、私は食屍鬼街へ向かった。犯罪が多く暗い路地裏の多い無法地帯だ。ここなら多少荒っぽいことを起こしても問題にはならないし、生き血も確保できる。
一つ贅沢を言うとしたら男の血は勘弁したい……人の血を吸う行為にも違和感を感じるのに、犯罪者の血は単純に嫌だ。私が嫌悪する存在だし、どうせ不潔感の漂うむさい男ばかりだろう。時と場合によっては吐く自信がある。
「馬車で数時間の場所だが……うむ、霧雨が止んだ頃には日も暮れているだろう」
ひとまず私は、その街で力をつけることにしよう。
………にしても吸血鬼というのは凄いな。人の目に付かぬように走っての移動だが、息切れも無ければ汗も掻かない。しかも馬車より早いんじゃないか?
ー
ーー
ーーー
恐らく夕暮れ時……分厚い雲のせいで太陽の位置はわからないが、私は明るいうちに目的地へ到着した。
「相変わらずここは暗いな」
時折腐臭のする街を歩きながら、私は独り言を呟く。逆に明るかったら困るのだがな。
まずは武器屋に行くか。無法地帯だからこそ、相性の良い掘り出し物を見つけるかもしれない。
「お?中々身なりの良い兄ちゃんじゃねぇか‼︎」
店を目指そうとした矢先、世紀末ヒャッハーのようなチンピラが現れる。手にはナイフが握られていて、私を襲う気のようだ。
「丁度いい…一つ試したい技があるんだ」
私は全身を振動させて振動熱を生み始める。すると体温はあっという間に百度を超え、霧雨の雨粒が蒸発して霧を発生させる。私の血液は人間のソレと違い、沸点はもっと高いようだな……さもなくば、私は内側から破裂するだろう。
「ふむ………これが限界か…」
百度を超えたはいいが、それ以上には上がらない。霧の密度は道一つを隠すくらいのものだな。
試したい技も試したので、私は先を急ぐとしよう。
「なんだこの霧の量………あ‼︎俺のナイフと銭入れがねぇ⁉︎」
悪いな。今の私は一文無し…そして私の座右の銘は「自己中な正義」なのだ。勝手な話だが、相手が悪人…かつ必要な場合…私は盗みを働くぞ。
ー
ーー
ーーー
あの後二人に襲われたが、返り討ちにして逆に巻き上げてやった。ついでに武器屋を聞くことで、ようやく目的地に到着する。
「失礼する」
扉を開けると、備え付けの錆びたベルがガラガラと音を立てる。それに気付いた店員は、私に睨みを利かせて身体をこちらに向ける。
「武器が欲しい……少し見て回って構わないか?」
店員は身体中に古傷の跡がある大男だった。見るからに屈強な男だ…これくらいの力が無いと、無法地帯で武器など売れないのだろう。
私がそう言うと、店員は無愛想な対応で壁を指差す。
「ふむ……ナイフに短刀、長刀…銃は相性が悪いな……ふむ…む?」
特徴的な武器が目に入る。ソレは刃はもちろん、持ち手まで鉄で作られた斧だった。先端は槍のようになっていて突きと斬撃と使い分けれる良い武器だな。
「コレはいくらだ?これで足りるか?」
チンピラ三人分の銭を全て提示してみせる。すると店員は銭を指で並べ数えて頷く。
「十分だ。が、お前じゃハルバートを持ち上げるので精一杯だと思うぞ?」
「ハハハ。ご親切にどうも」
ハルバードと呼ばれた武器を軽々と持ち上げて見せ、私はそう言い残して店を出た。
ー
ーー
ーーー
食屍鬼街に来てから二週間後……既にその街に、私はいなかった。今私はハルバードを背中に提げてトンネル内を駆けている。
トンネルの先は風の騎士たちの町…ウインドナイツロットだ。
「ここにディオが……」
トンネルを潜り終えた私は町の風貌を眺める。岩山に囲まれた自然の中に佇む町…ここの町付近の崖の上…そこが今のディオの根城だ。
「おそらく私の単純な力はディオより下……今まで通り技術特化で貴様を倒す」
トンネル出口から館を見上げ、私は独り言をまた呟く。
すると私の背後…トンネルの中から誰かが走ってくる。足音からして馬車だろう。悠長に立ち止まり過ぎたか…
「こんな夜更けに立ち止まっては不審に思われるな」
私がその場を離れようとすると、トンネル内で騒音が響く。馬車の車輪でも外れたか?
最初はそう思ったが、私の耳に聞き覚えのある声が飛び込んだ。
「……ジョジョか…」
ー
ーー
ーーー
同じ日にここへ来るとは……波紋の修行はちゃんと進んでいたのか?ジョジョは波紋を身に付けているのか?正直な話、原作ではどれだけ修行を積んでいたのかわからない。なんせ最後に読んだのは20年以上も前だ…しかもこっちの世界で覚えないといけないことも多い。記憶が抜けて当然だ。
ひとまず様子を見よう……トンネルの出口の上に潜み、私は現れるであろう人影を待った。
「…遅いな……ディオの手下にでも襲われているのか?」
我々吸血鬼は自分の血を与える事で、ゾンビという従順な僕に出来るのだ。原作知識だけで私は試したことないが、ディオならきっと既に軍を作っているだろう。
「ココがレオンの言っていたウインドナイツロット……」
「奴の手紙は半信半疑だったが、途中でゾンビの襲撃を受けた…間違いなくディオはここにいる!」
ようやくトンネルからジョジョ達が出てきた。どれ……挨拶くらいしようか。
「数週間ぶりだなジョジョ」
「この声は…レオン‼︎」
壁に指を差し込んで上で静止したまま声をかける。またツェペリに攻撃されるかもしれないからな。
「レオン‼︎お前もやっぱり来てたのか‼︎」
当たり前だ。この世界に兄弟として生まれた以上、私は必ず「波紋カッター‼︎」ウオッ⁉︎
「ツェペリさん‼︎いったい何を⁉︎」
「ワシらを誘き出す策かもしれん…悪いが私は奴を知らん。信用できんのだ」
歯の隙間から押し出したワインは、波紋を帯びて刃物のように飛んでくる。間一髪躱せたが、もし被弾すれば手足一本持ってかれそうだな……
「いくつか質問したいだけなんだ。少しでいい……落ち着いてくれ」
「……ツェペリさん…」
「ジョジョ、お前達は石仮面の恐ろしさを知らぬのだ。どれだけ善良な人間も、悪の化身と変えてしまうのが石仮面なのだ!」
そう言って構える彼に嫌気が差す…コレでは話が進まないじゃないか。
その時…周囲に新たな殺気が現れる………まったく…コレで三つ巴の完成だな、実に面倒くさい。
「これが吸血鬼だ二人とも」
「誤解しないでくれ…まるで私が呼び寄せたような言い方だ」
「貴様の仕業だろう!それ以外に何が考えられる⁉︎」
頑なに私を信用してくれないな…どうしたものか……
「口喧嘩してる場合じゃねぇぞ二人とも‼︎」
「それもそうだな」
やれやれ…スピードに注意されるとは…だがツェペリもその注意でゾンビ達を…………
「何故未だに私に構えている」
「君達は周りのゾンビを相手しろ…」
「まさか……私とやる気か?」
………冗談だろ?だがヤル気のようだな……仕方ない。
「恨むなら私でなく、己の用心深さを恨んでくれ」
地面を思い切り蹴ると、私の身体はゾンビ達の頭上を越える。
「すまないジョジョ…波紋使いから逃げながら戦うのはリスクが高い……加勢できないが大丈夫か?」
「あぁ、君は先に進んでくれ。必ず追い掛ける!」
ここで合流したかったのだが……残念だ。
ー
ーー
ーーー
ジョジョ達を置いて先へ進むと、やがて墓地に着く。
…嫌な予感…というよりはほぼ確信だな。土の下から腐臭がする。高確率でゾンビが身を潜めている。
「おやおや……ゾンビ共が吸血鬼を見かけたというから来てみれば…愛しの我が弟、レオンではないか」
闇夜に邪気の混じった声が響く。鼓膜が揺らされ、私は声のする方へ顔を向ける。
「高いところが好きなのか?ディオ」
墓地に佇む枯れ木の上にディオはいた。私がそんなディオを軽く嘲笑うと、彼は気に食わんとばかりに鼻で笑う。
「フンッ…貴様とは言葉を交わすこの行為すらも不快に感じる」
「お互い様だ。私はお前を許さない…ジョースター家を守り、ブランドー家の落とし前を付ける。それが私の…今の使命だ」
「何処までも邪魔をするつもりのようだな…レオン‼︎」
ディオが右手を上げると、それを合図としたゾンビ達が這い出てくる。
「どれ……ジョジョ達の方も見てくるか」
この程度のゾンビでは私は倒せない。どうやら捨て駒の様だな。
「可能ならばもう会いたくも無いが……」
「これだと足止め関の山だ。good-bye ディオ。また後で会おう」
背中に担いだハルバードに手を伸ばし取り出す。持ち手の部分を組み立てると、私の背丈より長くなる。この間僅か一秒前後……まだ私に飛び掛かる者はいない。
「二度目の死を味わいたい奴は誰だ?」
ゾンビとはいえ姿は人に似ている。だが殺すことにためらいは無かった…今思えばディオを女神像に突き刺した時、ちゃんとした殺意を私は抱いていた。
「ツェペリの言う通り…少なからず私は化物に染まったかもしれないな」
鋼色のハルバートがゾンビの脳を断裂させる。嗅覚を擽る血の香りが、私の気持ちを高ぶらせる。
「その程度か?」
あっという間に動かなくなるゾンビ共に、物足りなさまで感じる程だ。
「………ふぅ…」
気が付けばゾンビの奇襲は止まっていた。まだいる事にはいるが、私単体との戦力差に怖じ気付いたようだ。
「化物が化物にビビってどうする。私は目的の為なら非道な事だってするぞ?」
私がそういって煽ると、ゾンビ達は死ぬ気で襲いかかってくる。
と言っても、今の私は罠を張っている。無鉄砲に突っ込めば肉片になるだけなのだがな。
「……時すでに遅し…簡単な作業だったな」
私の足元に肉片が転がる。中には頭部を丸々残した奴もいるな…一対多で使う時は、もう少し練習を積んでからだな。
「一体……ナニヲ?」
「企業秘密だ」
最後の頭部を踏み潰して絶命させると、私はディオを追うべく来た道を戻り始めた。
ー
ーー
ーーー
レオンと別れた後、ジョジョ達はゾンビを殲滅させて後を追った。波紋使いが2人もいればゾンビなど大した脅威ではなかったのだ。
スピードワゴンに波紋の才能はないが、食屍鬼街で養った戦闘スタイルはゾンビ相手に遅れは取らない。
「俺は足手纏いになる為についてきたわけじゃねぇ……だが…俺じゃ奴には敵わねぇ‼︎」
スピードワゴンは積み上げられた岩の上を見上げている。そこにいたのはディオだ。傍らには長髪のゾンビと巨大な体を持つゾンビもいた。