ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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55.訳あり

「エメラルドスプラッシュ‼︎」

 

「またか……」グッ………シュゴォォァア‼︎

 

 充満した煙から逃れる様にカフェの外へ出ると、ダービーを連れてバギーで逃げ去る伊月 竹刀とホル・ホースが見えた。

 もちろん逃すまいと私と花京院が反撃するが、難なく奴らは逃げていった。

 

「…また逃げられたか。伊月 竹刀……何を考えているのかわからん男よ」

 

 ジョセフが義手で扇ぎ煙を払いながら呟く。

 奴の能力は薬物生産。今の煙幕だって害なす物を使わなかったし、薬物を使えるのだからソレを利用した暗殺だって可能だろう。それをしないのだからジョセフの様に不信感を抱くのは当然だ。

 

「逃げられたのか?」

 

 遅れてカフェから承太郎が出てくる。

 窓枠に手錠で繋がれていたから脱出が少し遅れた様だ。それを見てから私は辺りを見渡し全員がいるか確認する。

 

 私、ジョセフ、礼神、ポルナレフ、花京院、イギー、ラバーソウル…最後に承太郎。よし全員いるな………いや、2人足りないな。

 

「………ぅ………D……IO…様………」

 

「………?……ッ‼︎ そうじゃった、煙幕のパニックで忘れておった!」

 

 まだ視界の悪い煙の中で2つの人影が立ち上がる。

 無論……それは肉の芽に操られているワルターと鈴原だった。それを視認しすぐ抑え付けようとも思ったが、それより先に中でガラスの割れる音が………そして間も無く紅く揺らめく円盤が飛んで来た。

 

「スタープラ「待て承太郎‼︎ 全員それには触れるな‼︎」ッ!」

 

 飛んできたものを各自が弾き飛ばそうとする一同だったが、私の言葉で回避行動に変更する。

 飛んできたものは恐らくシーザーが得意としていたシャボンカッター。しかし使った物が違う……恐らくワルターが飛ばして来たのだろうが、使ったのはシャボン液でなく火を付けた酒だ。

 ガードすればアルコールが付着しそのまま引火してしまう。

 W-Refなら斬撃は防げるが、飛散する火炎な防げない。

 大きなダメージは与えられない為、一瞬だけ攻めあぐねるとその瞬間にまた火を纏った円盤が飛んでくる。

 

「クッ、エメラルドスプラッシュ!」

 

 今度は密度が高く躱し切れず、花京院がエメラルドで撃ち落とす。だがお陰で辺りは火の海に変わりつつあった。

 カフェには木製の家具もあり引火しつつある。コレではワルター達も危険………

 

 その時だ……彼が飛び出したのは………

 

黄の節制(イエローテンパランス)‼︎アルコールと肉の芽のみを捕食しろォォ‼︎」

 

 煙に向かって飛び込んだ黄金色のスライムは、地面を這いずり火を飲み込み、触覚を頼りにしたのか煙の中でキッチリと2人を捕縛。そして肉の芽を取り除くと、気絶した2人を回収し地面に寝かせた。

 

「………ラバーソウル…さっきまで怯えてなかったか?」

 

「えぇまぁ、DIOさ………DIOの手下の前だとつい怖気付いてしまって………今はもう平気だ、です。テメェら怪我はありませんか?」

 

 肉の芽の影響か……精神的ダメージで人格が変わったのか………

 あまりの変わり様に唖然とするなか、礼神はそのギャップに腹を抱えて笑い始めた。

 

 

 

 

 

銀の戦車(シルバーチャリオッツ)‼︎」

 

「ケルベロス‼︎」

 

 ポルナレフは騎士のスタンドを出して身構え、礼神は骨組みを身体に纏い、尾骨を構えてポルナレフに斬りかかる。

 刃こぼれ塗れの尾骨はレイピアで防がれ、ポルナレフに軽く遊ばれるように剣を交わす。

 だが礼神の動きは()()()()()()悪くない。相手が剣のスタンドでなければ………もう少しスピードの無い敵であれば十分に戦えそうである。

 

「凄えじゃねぇか礼神。中々悪くねぇ動きだぜ?剣の達人の幽波紋使いが言うんだから間違いねぇぜ」

 

「本当?ヤッタァ!」

 

「どっちかって言うと、剣技よりブラックジャックよりだがな」

 

 礼神の剣筋は独特でアスリートで鍛えた感じだ。だが本人は別に鍛えた覚えがないと言うので不思議だ。

 そんな事を思っていると、礼神は不意打ちでポルナレフに斬りかかる。それもまた防がれてしまうがな。

 

 私とジョセフは今、肉の芽が取り除かれて目覚めたワルターと鈴原 海斗から事情を聞いている。それで私とジョセフ以外が暇になったので、礼神は暇潰しにポルナレフに手合わせを願い出たらしい。

 

 ジョセフはワルターから話を聞いているので、私は鈴原 海斗と話をしている。店員まで逃げてしまったもぬけの殻のカフェだが、もう少しこの場にいさせてもらおう。

 

「そうか……旅行中に………」

 

「はい。娘が産まれてからボクもアルシアも、幸せでしたがゆっくりはできませんでしたから。そこで義兄さんが旅行を提案してくれまして………あ、娘のヴィルナはもう4歳で同い年の友達もできまして、旅行中はその友達の家で預かってもらっています」

 

「そうか」

 

「は、はい………」

 

「…まだ自身の状況がわからず混乱しているのか?それとも………」

 

「はい……弟の事もありますし、レオンさんには顔も上げられず………何から何まで本当に申し訳ありません」

 

 そう言って頭を深々と海斗は下げて来る。

 

「顔を上げてくれ、君が謝る必要は無い」

 

 そう言うと申し訳無さそうに顔を上げる。

 

 この鈴原 海斗と言う男は頭脳明晰で真面目な男だ。

 SPW財団の上層部の人間で周囲からの信頼もあり、私の正体を知る数少ない友人でもある。

 そんな彼と私は話を続け整理する。

 

「つまり君はアルシア、ワルターと共にエジプトに旅行していた。その際にDIOに捕まった………と」

 

「はい。捕まって暗い部屋の中で何か額に……なんて言うんでしょうか…針の様な、肉の様な……そんな物を埋め込まれて、そこからは意識がありません」

 

「そこから今までか?」

 

「はい。ですからそのDIOと言う男の居場所も、ここまで来た道も分からないんです………ただ……た…だ、アルシア………が………」

 

 目尻に雫を作り強く目を瞑る。

 泣いている彼の背中を優しくさすり落ち着かせると、私がその言葉の先を知ろうとしてるのを知ってか、何も言っていないのに話を続けた。

 

「ただ……アルシアが抵抗していたのは覚えています。レオンさんも使える…波紋でしたっけ?ソレで反撃したんです。ですが気付いたらDIOは彼女の背後に回っていて、アルシアは気絶していました………彼女が今この場にいないなら………きっとまだあの館にいるでしょう」

 

「………そうか」

 

「ボクが知っているのはそれで全部です………すみません」

 

「謝るな。十分だ………」

 

 その後、ワルターから得た情報をジョセフに聞いたが似た様なものだった。

 

 その後は本格的に世間話をしたり、最近「戦力として自信が欲しい」と言っている礼神の願いで手合わせをする。

 すると私に指導熱が入り、それに感化されたワルターが私に挑みかかって来る。

 

 波紋を身に付けてからというものの、元から戦闘狂だった事もあり鍛錬や修行系の行いが趣味になりつつあるのが私だ。

 そんな私が育てた波紋戦士の1人がワルターだ。私の影響なのかワルターに限らず、サプレーナ島に住むシーザーの息子と弟子達は皆、私が遊びに行けば必ずと言っていいほど挑んで来る。

 

 そんな事を思い返していると、やがてSPW財団の迎えがカフェにやって来る。

 テンションが上がり過ぎて体力を使い果たしたワルターを財団の車に押し込み、それに続く様に海斗も乗り込む。

 

「………アルシアを頼みます」

 

「あぁ、頼まれた」

 

 彼は最後にそう言った。

 次にラバーソウルも乗り込むかと思ったら、その前に私の前で一度止まる。

 

「……敵だった俺を匿ってくれてありがとうございます。ご武運を………特に女神、あんたを奴らは狙っている。特に気をつけるんだな」ポンポン

 

 ラバーソウルは礼神の前で膝をつき目線を合わせて言うと、礼神の頭に手を数回乗せてから車に乗り込んだ。

 最後に運転手の人が我々に挨拶をしてから乗り込むと、車は間も無くして走り出した。

 

「………頭ポンポンされた」

 

 少し照れ臭そうに礼神は言って財団の車を見送った。

 

「…葎崎さんは、あぁいうのがタイプなのかい?」

 

「え?うーん、違うね。ラバーソウルは親戚か近所のおじさんっぽい………でもあの仕草、もしかして僕の事好きだったりするかな⁉︎」

 

「………それは無いと思うぞ」

 

 苦笑いを浮かべて私が答えると、礼神はおどけた様子で笑う。

 何故そんな勘違いをするのに花京院に彼女は気付かないんだ?

 ほら、隣を見てみろ。花京院が複雑な顔をしているだろ。

 

「……ん?どうしたの花京院。目に砂入った?」

 

 あ、ダメだな。

 全然気付かないぞ、この子。

 

「…さて、行くかの」

 

 ジョセフの声かけで、我々は先へ進んだ。

 

「そうだ。承太郎、今夜10分………いや、5分だけでいいから付き合ってくれないか?」

 

「………?構わねぇが、何を?」

 

「日光下の私でもそれなりに戦えたんだ。夜中の私で世界(ザ・ワールド)を相手にどれだけやれるか知りたい」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 サザエさんで例えるなら、

 シーザー→波平

 アルシアさん→サザエさん

 ワルターさん→カツオ

 鈴原海斗さん→マスオさん………でいいんだよね?

 で、チラッと聞いたヴィルナちゃん?って4歳児がタラちゃんポジションだよね?

 

 まぁそれはともかく、ラバーソウル達を見送った数時間後、僕らはカイロにある街に付いた。

 時間的には昼食も近いので、少し洒落たレストランで足を止める。

 日中は暑いが日が沈めば涼しい………それと同じで、やけに眩しい日中の日光さえ避ければ快適なものだ。

 個室に通された僕らはテーブルを囲み、オーダーを取ろうとメニューを広げる。にしても眠い………

 

 今まで歩いて来た疲労か…それとも先日は休み続きだったから身体が怠惰に目覚めたか、僕はそれとなく眠気に襲われる。

 だがこの眠気はすぐに振り払われる事になる。

 

「DIOの館も近い。何か感じるんじゃ」

 

「葎崎さんの予言だと確か………」

 

「あぁ…その予言はなかった事にして。理由は………まぁわかるよね」

 

 原作では ホル・ホースが新しいパートナーと共に襲いかかって来る頃だ。だがそのホル・ホースは先程遠目にだが確認し、パートナーは原作には現れない伊月 竹刀だった

 そしてその2人は戦意不明の妙な立ち回り方をしている。

 

 故に予言は頼りにならない。各々が警戒するしか無いのだ。

 

「………誰だ」

 

 その時だった。

 低い声でレオンさんが呟き、イギーは唸り声を上げた。

 

 それに続いてレストランの個室に誰かが入って来た。

 僕らはその顔に見覚えがあった。

 というか………先程僕らが遠目にだが見たばかりの顔だった。

 

「アッハッハ。レオンは兎も角、ワンちゃんにもバレるか………気配は消せても匂いは消せないね。薬品臭いのかな?白衣はクリーニング出そッと」

 

 噂をすれば…というやつだった。

 

 匂いを払うように白衣を翻し、ケラケラと笑いながら伊月竹刀は手を振ってきた。

 

 何度も僕らは彼に逃げられている。だからか、誰1人として言葉を発さずに、遠距離攻撃持ちが有無を言わせずに先手を打った。

 

「エメラルドスプラッシュ‼︎」

 

 迫り来る宝石は緑の光を反射させながら伊月へと迫る。しかしオッさんは相変わらずケラケラと笑い余裕の表情。

 直線上に飛んでくる数々のエメラルドは意図もたやすく、紙一重で躱されてしまう。

 

 そんな時にレオンさんは、テーブルに置いてあった自分のナイフを開いた扉の外へ投げる。

 すると壁の向こうで「ギャッ!」という声が短く聞こえる。

 一瞬見えたが、レオンさんが投げたナイフは扉の向こうの壁に被弾した。しかし壁に当たったのは()()()()()()()で刺さる事もなく跳弾……おそらくその跳ね返ったナイフがそこに居た人に当たったのだろう。

 死角にいる見えない人に投げナイフ当てるとか流石レオンさん。

 

「次は額に当てる。ホル・ホース………いるんだろ?」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ…俺たちは話をしに来ただけなんだぜ?本当さ。穏便に話をさせてくれねぇか?」

 

 左肩に刺さったナイフを抜きながら、ホル・ホースはゆっくと出てくる。まぁオッさんいるんだからいるよね。

 

「ホル・ホース‼︎やっぱりテメェまでいやがったか‼︎」

 

 ホル・ホースを視野に入れたポルナレフは銀の戦車(シルバーチャリオッツ)を1度出し入れして刀身を再装填。そして切っ先をホル・ホースに向ける。

 

「チョッ、何だよ何だよ気が立ってるな!その剣を下ろしてくれよ。本当に話をしに来ただけなんだってば!」

 

 それを突き付けられ短く唸り、両腕を上げて降伏のポーズをとり冷や汗を流す。しかしポルナレフからはまだ距離があるので、ホル・ホースは足を止めて剣先の射程外で止まる。

 

 そこでみんなも立ち上がりスタンドを出して戦闘態勢に……

 

 まさに一触即発!

 

 念の為に僕もケルベロスを纏い、尾骨を片手に立ち上がる。そして花京院はまたエメラルドスプラッシュを放ち、ポルナレフもレイピアの刀身をホル・ホースに向けて打ち出した。

 

 そんな彼らの前に、仲間と思われる新たな人影が立ちはだかった。

 

 その人の姿、容姿を確認するよりも早く、その人影は眩い光を指先から放ち、()()()()彿()()()()()()が辺り一面を包む。

 

「目が、目がァァァアッ⁉︎」

 

 その光で目が眩み、その場にいた一同の視力が一時的に皆無と化す。

 眼に映るもの全てが真っ白になり、事態が把握できなかった。

 

 やがて視力が戻り始め辺りを見渡す。

 

「うぅ……みんな平気?」

 

 僕らは相変わらずテーブルを囲んでいた。

 誰かが負傷した様子はなく、スタン状態だった各々が僕のように回りを見渡し始めた。

 

 そんな僕らは1人の男性を視界に入れて動きを止めた。そんなみんなの表情は、「何故この人がここにいる?」「何故このタイミングで?」………そんな疑問を抱いているようだった。

 現に僕はそう思った。

 

 そう思いはしたが、僕はその疑問を吐く前にその人を見上げて名前を呼んだ。

 

 

 

 

「……アヴドゥルさん?」

 

 

 

 

 褐色肌で複数に分けて束ねられた髪型、そして赤い鳥頭のスタンド。僕らの前に現れた人影……伊月 竹刀とホル・ホースを庇うように飛び出して来たのはモハメド・アヴドゥルその人だった。

 

「ア、アヴドゥル⁉︎」

 

「アヴドゥル……テメェ一体何の真似だ‼︎姿眩ましたと思ったら急に現れ…ましてや敵を今庇いやがったな⁉︎」ダンッ!

 

 まさかの登場に驚きつつも、ポルナレフがテーブルを叩き怒気を強めた。ポルナレフの言う通り、アヴドゥルさんのとった行動は伊月を庇うものだったからだ。

 そして守られた当の本人であるホル・ホースは眩しさで目を細め、伊月 竹刀は………

 

「目が…目がァァァ‼︎」

 

 ………………伊月 竹刀は目を抑え、アヴドゥルさんの足元に転がっていた。テーブルが死角で見えなかった。

 光に包まれて最初に叫んだのってオッさんだったんだね。

 

「……みんな、無事にカイロについたようですね」

 

 なんて言えばいいかもわからない表情で、ひとまずそんな事をアヴドゥルさんは言ってきた。

 

「んな事聞いてんじゃねぇよ、俺は‼︎おい、アヴドゥル‼︎」

 

「アヴドゥルさん……どういう事ですか?」

 

 アヴドゥルさんが裏切るはずがない。なら何故庇う?弱みを握られている?洗脳?そんな疑問で僕を含め何人かがパニクる。

 

 

 ーーーザクッーーー

 

 

 その音の方向に意識が向き視線を向けてみると、驚くべき光景を見て冷静さを取り戻す………というよりは、頭の中が今度は真っ白になる。

 

「……頼むから話を聞いてくれ………その為にもまず落ち着いてくれ」

 

 先程レオンさんが投げたナイフで、自らの右手首を突き刺すホル・ホースがそこには居た………いや何やってんの⁉︎あんたが落ち着け‼︎

 

「俺のスタンド、皇帝(エンペラー)はハジキだ。つまり()()()()()()()()。右利きの俺は、これでスタンドが満足に使えない。そもそもこの距離と人数差で俺らに勝算はねぇだろ?俺らをどうするかは話を聞いた後で、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 

 だから話を聞け………そう言って突き刺したナイフを抜き、床に投げ捨てた。それを見たジョセフさんが手をかざし、ポルナレフは闘気こそ消さないが大人しく引き下がった。

 

「ケッ、ズリィ奴らだぜ。今のお前を切れば、俺の騎士道に反する」

 

「目が……目がァァ………」

 

「伊月 竹刀、いつまで蹲っている。少し下がれ。それと勝手に飛び出るな」

 

「………だってバレちゃったんだもん」

 

 目をこすりながら立ち上がるオッさんに、アヴドゥルさんは軽く注意した。その会話する様子から見て、少なくとも敵では無いような関係性に見える。

 

「…会わないうちに彼らと随分親しくなったようだな、アヴドゥル」

 

 断固説明を求める。といった感じで、レオンさんがアヴドゥルさんを真っ直ぐと見つめる。

 それを察したのか、アヴドゥルさんは一歩前に出て口を開く。

 

「色々と聞きたいのはわかりますが、まずは私の話を聞いてください」

 

 居心地の悪い雰囲気………険悪なムードが漂う空間にアヴドゥルさんの声が響く。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 何故、私が彼らと共にいるのか………その話は私が入院し、みんなと別れた日まで遡ります。

 

「………()()魔導師の赤(マジシャンズ・レッド)か…」

 

 みんなを乗せたバギーが遠退き見えなくなるのを確認し、私は自分のスタンド…魔導師の赤(マジシャンズ・レッド)を出す。

 そしてスタンドに意識を集中させ、魔導師の赤(マジシャンズ・レッド)の指先に小さな火が灯る。

 

「…クッ………力が出ない。また後で試そう」

 

 私はスタンドを消し、失血を治すべく置いてあった果物を頬張った。簡素な食事を終えると満腹感と疲労によって、私は深い眠りへと落ちていった。

 

 次に目が覚めた時は夜中だった。

 

 覚めたついでに水分を取って用を済ませ、また眠ろうと思ったのだが寝付けず、私は昼に試した事を再び試してみた。

 

 私が試そうとしているのは、別れる際に礼神に熱弁された()()()の事だ。

 

 炎は赤く火力が強まれば青く変色し、更に強まれば白に変わる。

 しかしその常識がスタンドにも通じると私は思っていなかった。そう礼神に伝えると、「思い込みで強くなるならできるはずなの!OK⁉︎」と釘を刺すように言われた。

 

 彼女は私の知らない「群体型のスタンド」の知識があった。故に彼女の言う通りパワーアップもするかもしれない。

 

 炎を自在に操るから魔導師の赤(マジシャンズ・レッド)と私のスタンドは呼ばれている。丁度時間もできた。だから私は今 この時間帯にそれを試すことにしたのだ。

 結果から言うと、白い炎は確かに作れた。しかし実際の威力はわからない………何故かこの白い炎からは、不安を煽るようなエネルギーを感じる。それに………

 

「…少しまだ、クラクラするな」

 

 まだ血が足りないのか気分が悪くなる。スタンドが炎という事もあり、危険に思った私は止めようとした。

 

 その時だった。伊月 竹刀が現れたのは………

 

「こんばんは〜。アヴちゃん調子どう?」

 

「ッ⁉︎」

 

 急に話しかけられた上に、相手はDIOと同様に最危険人物と認識していた伊月だ。窓枠に腰を掛けた伊月を見るなり、私は消すつもりだった白い炎をそのまま伊月に放った。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「………………それで?放ってどうしたの?」

 

 アヴドゥルさんはそこまで説明すると、1度口を閉じる。そこに僕は先を呈するように質問する。

 しかしアヴドゥルさんは口を閉ざしたまま。代わりに、懐から1枚の紙切れを取り出し僕に渡してきた。

 

 渡された紙切れは、見たところ新聞の切り抜きのようだ。

 僕が外国のそれを読めるわけもなく、そのまま承太郎へと記事を流す。

 

「………………!」

 

 それを数秒かけて黙読した承太郎は眉間を一瞬ピクつかせ、咥えていた煙草を取って火をを消すと読み上げ始めた。

 

「……アスワンで爆発事件。ある病院の二階 角部屋が深夜に爆発……警察は現場の状況からテロリスト等の犯行と考えており、その部屋に泊まっていた()()()()()()()が現在行方不明……」

 

 読み上げられた記事を理解しアヴドゥルさんに視線を戻す。アヴドゥルさんは実に複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「礼神に教わった白い炎は、確かに強力だったようじゃな」

 

「アヴドゥル、何故そんな事件を起こして連絡をよこさなかった?」

 

 呆れた様子でジョセフさんが言うと、付け足すようにレオンさんが口を挟む。するとアヴドゥルさんは更に申し訳無さそうな表情を浮かべて懐から黒いキューブを取り出す。

 SPW財団が作った世界で数個しかない携帯電話だ。レオンさんはそれを受け取る。

 

「……何を押しても、うんともすんとも言わず………も、申し訳ありません‼︎ それについては一生かけても弁償させていただきますので‼︎」

 

 深々と頭を下げてアヴドゥルさんがレオンさんに向けて謝罪する。それに対してレオンさんはジョセフさんに何か耳打ちする。ジョセフさんはそれを聞いて「アッ」と口をあける。んでレオンさんは逆に謝罪をした。

 

「気にしないでくれアヴドゥル、これは別に壊れたわけではない。こちらの説明不足だ。むしろ不安にさせて申し訳ない」

 

 どうやらただの充電切れらしい。充電の仕方はもちろん教えておらず、承太郎もそれを知らなくて充電ケーブルを渡していなかったようだ。そもそもゴミかなんかだと思っていたらしい。

 

「まぁ、連絡できなかった理由はわかった。と言う訳で携帯の話は置いておこう。それより、病院の一角を爆破した後はどうしたんだ?」

 

「あぁ、そうでしたね。それは…」

 

「はい!そこからはオジさんから話そう!」ビシッ

 

 台詞を遮ってオジさんこと伊月 竹刀が元気に挙手する。少しでも仲良くなりたいのか、フレンドリーの塊みたいな人だな………

 

「アヴドゥルが白い炎を放った時、オジさんは咄嗟にある薬を使ったんだよね。身体能力強化系のやつ………それが功を奏して爆破に耐えられたんだよ。んでもってビックリ!放った本人のアヴドゥルが火傷負ってんだもの」

 

 そう告げるオジさんはどっちかって言うと近所のオバちゃんみたいで、「あらやだ」「ちょっと奥さん」と言わんばかりの勢いで手をプラプラと振る。

 

「あ、そうそう。先に言うけど、オジさんは君達との和解を求めてます。その為にもグループから一時離脱したアヴドゥルと話そうと病院に乗り込んだんだよね。で………何処まで話したっけ?そうそう。火傷した後だね。なんか事件に巻き込まれそうだったからアヴドゥル担いで逃げたんだよね。んでホル・ホースと合流してアヴドゥルに事情を説明したの」

 

「その事情とは?」

 

「だから和解だよ、君達との。DIOを倒す為に君達と協力したいから、話の中継役になって〜って言ったの」

 

 キョトンとした顔でさも当たり前のようにそう告げた。

 そして補足するように、アヴドゥルさんに信用してもらう為に手厚く看病した事を伝えてきた。

 

「それでようやく口説き落として今に至るわけよ。本来ならアヴドゥルが先に姿見せて和解の中継役をやってもらおうと思ったんだけど、先にレオンにバレちゃったからねぇ〜」

 

 だいぶ話が飛んだ気がするけど、そんな所らしい。

 アヴドゥルさんは優しい人だから、たとえかつての敵でも、戦意のない上に看病までしてくれた人の願いを無視できなかったのかな?

 

「………つまり今のテメェらは、俺らに危害を加える気がねぇって事でいいんだな?」

 

 立っていたのにいつも間にか腰を下ろしていた承太郎は、2人を順に見て問いかける。それに対して2人は「YES」と答えた。

 

 

 

「「「「………………………」」」」

 

 

 

 細かい詳細の無い会話だったが一段落し、この場を静寂が支配する。考え込むみんなと、緊張した面持ちで答えを待つホル・ホースとアヴドゥルさん………オッさんは(-ω-)(こんな顔)してる。

 

「………………わからんな」

 

「?」

 

 静寂を切り裂いたのはレオンさんだった。顎に手をやり考え込む仕草をしながら、レオンさんは伊月とホル・ホースに問いかけた。

 

「貴様らのメリットは?DIOを裏切りこちらに着く。DIOが我々に敗北すると思い、自分の身を危惧しての行動なら理由が付くが………伊月 竹刀………何か隠していないか?」

 

 その言葉を聞いたオッさんは相変わらず緊張感のない表情だ。口元なんか、横にした数字の3みたい。だが隣にいたホル・ホースが一瞬反応し、それに僕らは気づいた。

 つまりホル・ホースは伊月 竹刀が何かを隠している事を知っているのだろう。

 

 そんなわけでオッさんは諦め、溜息を吐いてから天井を仰ぐように顔を上げた。

 

「………そだよ。オジさんは1つ隠し事をしてる………ホル・ホースも知らない事………知りたがってたけど教えなかった事だ」

 

 オジさんは白衣をめくり、内側ポケットから1枚の写真を取り出し見せてくる。キッチンに立つ1人の女性が映った写真だ。よく見ると写真の隅に男の人もいる。

 僕はその男性には見覚えがあった………というか、この人も()()()()()()()だ。

 

「………ジョースターさん。写真の隅に写っているのは……鈴原 海斗さん………ですよね?という事はまさか、この女性が………」

 

「………アルシアだ」

 

 そう言ってレオンさんとジョセフさんは目を光らせる。

 

「伊月……何故貴様が彼女の写真を持ち歩いておる」

 

 ジョセフさんの問いに、オジさんはゆっくりと答える。

 

「オジさん……忠誠を誓ったわけでも、金で雇われたわけでもないんだよ。元々………………ただDIOは、オジさんが求める能力を持っていた。彼本人の力ではないらしいが………」

 

 オジさんが言っているのは、おそらくジョナサン・ジョースターの肉体に宿った、初代ジョジョのスタンド能力の事だろう。

 

「その写真はそれで写した念写………オジさんはその子に会わせてもらう事を条件に、DIOに雇われたんだよ」

 

「会うために?………アルシアと何の共通点が?」

 

「アルシア………そう、アルシア。オジさんの………友達?」

 

「いや、疑問形で言われても………」

 

「………関係は?」

 

 レオンさんが追求すれば、オジさんはようやく真面目な顔を始めて見せる。目元が鋭くなり、緩んでいた口元が引き締まる………それでいて少し悲しげな表情だ。

 

 そんな顔で、オジさんは短く言った。

 

「………死んでも守りたい子なんだ」




伊月 竹刀 24歳 180cm 64kg
第一人称「オジさん、オッさん、俺」口癖「オジさん◯◯〜」
武器:スタンド、暗技、注射器、毒針、ビーカー、煙草

スタンド・ミカドアゲハ
【破壊力:E / スピード:C / 射程距離:B / 持続力:A / 精密動作性:D/ 成長性:E】

ミカドアゲハに似た蝶のスタンド。
能力は薬物の鱗粉。
その鱗粉を水に溶かすなり、葉巻にするなりして使用手段は増える。それを行うにはそこそこ時間を必要とするので、戦闘中は作ることができない。
麻酔、幻覚薬物、擬似火薬、治癒促進剤、混合薬物しか作れない。
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