ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

56 / 85
56.九人と一匹

「………ッ⁉︎ 水晶に写っているのは………まさか‼︎」

 

現想像(ビジョン)だ…私のではない…君…自身の心の中が私の「能力」を通じて念写させているのだ。

 

 どうだねひとつ…私と友達にならないか? 私は君のような「能力」を持つ者を探し、研究している……「スタンド」と名付けたのだがね…

 

 君は悩みを(かか)えている…苦しみを(いだ)いている…私と付き合えばきっと心の中から取り除けると思うんだ。

 

 今の水晶の像が君の「苦しみ」なんだね?

 

 力を貸そうじゃないか…私にも苦しみがあって日光の下に出れない体なのだ。だから私にも力を貸してくれ。この小娘を探し出してやるよ」

 

「……わかった。彼女に会わせてくれるなら、()()()()()()()()()()オジさんが手足になってあげるよ。でも条件を1つ追加………報酬は全てが終わってからでいい。それまで手を出さないでくれ」

 

彼女への危害は許さない

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「そう会話を交わしたのが1年半くらい前かな。アルシアと会う目的は………まぁ昔酷いことをしちゃってね………謝りたいんだ。詳細に関しては黙秘権を酷使しますw」

 

「………………」

 

「ってなわけで仲間に入れてちょ。オジさんみんなと仲良くなりたいなぁ〜。あ、そうだ。オジさんの若い時の写真見る?」

 

「そんな事はどうでもいい」

 

 冷たく突き飛ばすと伊月は拗ねたような表情を浮かべる。そこで今まで黙っていたホル・ホースが口を挟む。

 

「それで………ジョースター御一行は話を聞いた上で、俺達をどうしてくれるんだ?」

 

「………どうするレオン」

 

 ジョセフを含めた全員が私に視線を向ける。この議題の決定権は私に一任するようだ。

 

「ならコレでどうだ?貴様ら2人の身柄はSPW財団で厳重に預からせてもらう。()()()()D()I()O()()()()()()()()。敵戦力が減るだけで此方にはメリットがあるからな」

 

「意義あーり。オジさんはソレ反対でーす」

 

 挙手はしたが、許可もなく伊月が反対する。口をすぼめて頬を膨らすその姿は巫山戯ているのか………?

 

「何故だ?アルシアが向こうにいるからか?それなら救出後に会わせてやるから「()()()()()()()()()

 

 ………台詞を遮った発言が耳に入り、私は1度口を閉じる。そして数秒置いて問い掛ける。

 

「………何故わかる?」

 

「オジさんがDIOの配下に下る条件はアルシアに会わせる事。それは報酬であるが同時に人質であるという意味を持つ。だから報酬は全てが終わってからって約束したのに………しかもオジさん、実は肉の芽を除去できるんだよね。だから肉の芽でアルシアを捕縛しても、オジさんはアルシア連れて逃げられる。それはDIOも知ってる…だったら別の方法で捕縛するのが普通じゃない?」

 

「………………」

 

「………現にオジさん、結構身勝手してるのに肉の芽付いてないでしょ?効かないからなんだよ………………まぁ、あくまで推測なんだけどね」

 

(日光下に2度と出す事はできないが、確かにゾンビにしてしまえば完全な配下にできる。だが………クソッ)

 

 別の手段をDIOは取っているんじゃないか?

 そう()()()()()頭を働かせるがダメだ……()()()()()()。DIOならそうする……私だってそうする………

 地下牢にでも拘束しようと、伊月なら逃す事ができてしまうだろう。それでは意味がない。

 

「オジさんどうやって肉の芽防いだの?」

 

「ミカドアゲハが1匹脳内に居るんだよ。その子の鱗粉で麻痺なり混乱なりさせて無力化して………後は勝手にズルズルっと抜いた。無力化すると肉の芽ってゼリーみたいになるんだね」

 

「最後の情報はいらなかったなぁ」

 

 頭が弱点というのはそういうことか……脳内にスタンドが入っている。だからスタンドで叩けば衝撃で出てしまうのだろう。それを日頃から注意しているから、頭部への攻撃に敏感なのか………

 礼神の質問に答えてから、伊月はまた此方に視線を向け口を開く。

 

「………君らが殺す前に、オジさんは会わないといけない。それに殺すなら………………彼女を殺さなければならないなら俺がやる」ギロッ

 

「ッ⁉︎」

 

「www」

 

 伊月の眼光が一瞬鋭く光るが、すぐさま笑みに戻ってしまった。直接見た私でさえ、見間違いかと自分を疑いたくなる程の短さだ。

 

 そして思わず冷や汗を滲ませる程の気迫………

 

「………で、同行の許可はくれる?能力を使えばDIOの根城も探せる。サポートは勿論、自分で言うのもアレだけど戦力もトップレベル」

 

 ジッと私を見据え、不敵に笑みを零しながら伊月が尋ねる。隣のホル・ホースは真面目な眼差しで同様に私を見据える。

 

 そんな彼らに私は近付き、おもむろに肉の芽の触手を伸ばす。

 ホル・ホースはそれを見て警戒する。

 

「洗脳はしない。これで脳波を読み取り嘘かどうか調べる。共に行動するには不安が残るからな……………信じて欲しいなら、私を信じてみせろ」

 

 そう言うとホル・ホースは帽子を取って目を閉じ、伊月も真似るように目を閉じると、頭から半透明のミカドアゲハが出てくる。そして私は肉の芽を脳に突き刺す。

 その光景が嫌なのか、ジョセフと礼神は目を背ける。

 

「質問に答えてくれ。先程の話には嘘偽りは無く、我々に危害を加える気もない。力になる事を約束するのだな?」

 

「うんw」

「あぁ!」

 

 そう返事する2人の言葉は本当だった。

 

 にしてもホル・ホース……

 敵だったにも関わらず覚悟を決め信用した瞬間、汗1つ流さず呼吸も乱れなかった。代わりに強い意志を感じる。

 伊月も妙な男だが、今は私に命を預け平然としている。

 

 2人共強い精神力だ………

 

「………はぁ……伊月 竹刀。館の捜索は任せて良いんだな?」

 

「お、おいレオン‼︎ こいつらを本当に信じるのか⁉︎」

 

 溜息をついて肉の芽を抜き早速命令を下すと、席を立ったポルナレフが口を挟んでくる。

 

「こいつらが信じられないのか?」

 

「あぁ、正直に言うとな!」

 

「なら私は?」

 

「………レオンの事は…信用してる………けどよ」

 

「まぁ仲良くしようぜ、ポルナレフ君♪」

 

 言葉が次第に弱くなった所で伊月がそう言うと、ポルナレフは早足で伊月に近付き、一発ボディを入れる。

 

「………シンガポールの借り。仲直りの握手の代わりだ」

 

「えぇー………それを言うならオジさん、レオンのスタンド越しだけど君の斬撃食らってんだけど………」

 

「知るか!」

 

「ハハッ、わかったよ。コレでチャラだぜ?」

 

(おぉぅ……ポルナレフからその言葉を聞くとは)

 

 最後に礼神が何故かニヤついていたが……別に大した事じゃないだろ。

 

 

 

 

 

 その後、昼食を急いで終えると早速行動に移す。

 伊月は大量のミカドアゲハを町中に飛ばし、その間に作戦会議を始める。場所は宿泊ホテルの一室……もしも伊月が今日中に見つけられなかった場合に、私と礼神、イギーが泊まる部屋だ。

 

 そして作戦会議と言っても、礼神の知識を頼りに各々が有利に戦える相手を確認するだけだ。

 礼神が脳内で自分の意見が纏まるのを待ってから、我々は彼女から意見を聞き出す。

 

「オジさんとホル・ホースが削れた今、大きな敵戦力は主に4つだと思う。番鳥のペットショップ、執事のゲーマー、側近のヴァニラ・アイス、ラスボスのDIO。細かい戦力を入れるなら空間を操作する幻術系幽波紋使いのモブキャラが1人と、雑魚幽波紋使いのヌケサク1人、そしてゾンビがもしかしたら複数人…数は不明……… アルシアさんもそこに入るかな」

 

「ペットショップは氷の幽波紋使い。ヴァニラ・アイスは空間ごと削りとり、DIOは時止め………で、その名前を忘れた執事がダービーの弟で似た能力だったな」

 

「え、そうなの?オジさん知らないんだけど。って事はアルシアの魂を人質にしてる可能性は………」

 

「あるかもね」

 

 その後少し話し合い、相手をするのにベストな振り分けとなったのは以下の通りになった。

 

ペットショップ

vs

アヴドゥル/花京院/ポルナレフ

ダービー弟

vs

礼神

ヴァニラ・アイス

vs

イギー/ホル・ホース/伊月

ゾンビ軍

vs

ジョセフ/レオン

DIO

vs

承太郎

 

「アヴドゥルさん、貴方の炎ならペットショップの氷なんて容易く蒸発させられるはずです。ただ敵が鳥で素早いだけに苦戦するかも………そこは花京院がフォローしてね。飛行機でクワガタ虫を相手した時みたいに罠をフル活用して。ポルナレフは攻撃には転じないで2人を守って。アヴドゥルさんが大体溶かせると思うけど、念の為………氷くらい切断できるでしょ?

 で、終わり次第ヴァニラ戦のフォローをお願い。

 

 執事ゲーマーの相手は僕がやるよ。正面勝負には弱いから、相手のペースに飲まれなければゲームするまでもなく力技で勝てる。原作では承太郎とジョセフさんの策略で倒したけど、2人の出番なく僕が倒してみせるよ!

 それと万が一アルシアさんの魂を持っていても、凄く自信のあるゲームがあるから取り返せるはず。

 

 オジさん達にも勿論戦ってもらうからね。

 2人はイギーと一緒にヴァニラ・アイス……一撃でも喰らえば死ぬと思ってね。イギーが砂を巻き上げれば、削れる亜空間は目視できるはずだから要注意ね。その時は攻撃しても無意味だから離れて。

 様子を確認する時は必ず顔を出すから、すかさずその時に攻撃してね。ゾンビになっている可能性もあるから、脳を撃ち抜いても油断はしないように。

 

 レオンさんとジョセフさんの波紋使いコンビは、言わずもがないるかいないか不明のゾンビ達の相手………いなかったり余裕ができれば積極的に他の人のフォローに回ってください。

 優先順位を付けるなら、レオンさんはヴァニラ・アイスの方へお願いします。ジョセフさんは余裕ができたら僕と合流してください。その他の行動はお任せします。

 経験豊富で頭の回るお二人なら戦況を読む事も容易いですよね。

 

 承太郎の相手は勿論DIOだよ。

 僕らの中で対抗できるのは君だけ……体力を使わずDIOの元に向かい、顔面にスタプラを叩き込んで。

 ………君なら他のフォローとかしちゃいそうだけど、極力それは避けて。体力は温存!」

 

 グループ分けされた各々に、礼神が淡々と指示を出した。

 

「ハハー、そんな風に指示出されてたんだ。そりゃオジさんの元パートナー達が無残に散るわけだ」

 

「いや、前はもっと頼りなかったぜ。葎崎も成長はするという事だぜ」

 

「ムッ………そりゃ僕だって成長するさ。それに旅もクライマックス、気合いだってはいるさ!」

 

「そういえば礼神ちゃん……大きくなったね。そこもこの旅で成長したの?」

 

「いや、サラシの予備が無くなっただけ………ってかセクハラだよ⁉︎」

 

「……伊月 竹刀。僕は別に……君をまだ信用してるわけでは無いんだ。そういう発言は控えてくれないか?」

 

「アララ?典明君。チョッ、首!首絞まってるから!」

(え?この子ってば、こんなに怖いの⁉︎)

 

 花京院の法皇の緑(ハイエロファントグリーン)の触手が伊月の首を締め上げる。

 彼の気持ちは礼神以外の皆が十分理解しているが、伊月は現在 館の捜索中なので今は勘弁してもらいたい。

 

「そういえば伊月。貴様の能力は薬物生成と聞いたが、より詳しくは聞いていなかったな。紅海を渡る前に見せたあの力は何だ?」

 

 ふとあの時の戦いを思い出し伊月に尋ねる。

 万全の私が腕を切断されたあの時……アンラベルの暴走がなければ死んでいたあの時だ。

 

「私は伊月 竹刀に、変化系のスタンド能力が別にあると推測したのだが………」

 

「ん?2つ目?無いよそんなの。あの時はスタンドで作ったこの薬品を使ったの」

 

 そう言って懐から出した注射器は、黒い液体で満たされていた。黒一色というわけではなく、反射具合で赤、青、黄の光が見え隠れしている。

 

「薬品名は"黒戦(ゴクセン)"オジさんのスタンド能力の集大成だぜ。麻酔効果で痛覚遮断&筋肉及び血管等を硬質化しつつ熱を持たせて防御力と柔軟性を与える。治癒促進効果でその状態での活動を可能とすべく、全身が皮膚呼吸を活発に始める。機動力、戦闘力が吸血鬼の様に向上するが、効力は5分程、そういう代物。テラフォのGをイメージした………って言ってもわかんないか」

 

「誰にでも使えんのか?」

 

 興味ありげにポルナレフが尋ねると伊月は首を振る。

 

「皮膚呼吸を活性化しても、脳に回る酸素は足りなくなる。脳内に蝶を入れて継続的に幻覚鱗粉を散布させて思考力を誤魔化さないとショック死すると思うよ。それにこの通り………副作用もあるからね」

 

 そう言って伊月はクルリとその場で一回転する。

 

 ………?

 

「この通り」と言うのだから、見てわかる副作用だと思ったが………さっぱりわからないな。肌の色は特に問題ないし、目立った痣があるわけでは無い。

 

「副作用?なんだそれは」

 

 ポルナレフもそう思ったらしく質問すると、伊月は勿体振りながらも答えた。

 

「………オジさん実はね、24歳なんだw」

 

「………は、ハアァァァァァァア⁉︎」

 

 流石にその発言には驚いた。豊麗線といい深いクマといい、50は越えていると予想していたのだから。

 ポルナレフは尻餅を付き、皆も目を丸めギョッとしている。ホル・ホースも、それを聞いて咥えてた煙草を落とした……パートナーなのに知らなかったのか。

 

 そしてうわ言のようにポルナレフとホル・ホースは呟く。

 

「俺と……タメ………だと?」

 

「旦那……年下だったか………」

 

「アハハハ、コレ言うとみんな驚くんだよね。でも本当だぜ?………おっと、」ブシュ………

 

 突如として首の後ろ……うなじ辺りから血を噴きださせる伊月。礼神が一瞬驚き血を浴びないように数歩離れ、傷付いた当の本人は「巨人だったら即死だったw」とか意味のわからない事を言っている。よくわからないが、脊髄に達して入れば人間でも即死じゃないか?

 そんな伊月の首を掴んで波紋を流すと、窓から大量の蝶が舞い戻って来る。

 

「館を見つけたら門番の鳥にヤラレタでござるwwwどうする?」

 

「行くに決まっている。もう根城のすぐそこまで我々は来ている。翌日まで待つなんてすれば、日が沈み向こうも………最悪DIOが直々に来るかもな。ならこちらから奇襲するべきだ」

 

 ………と、私は言ったのだが、伊月と承太郎以外はちゃんと聞いてたか? 他は皆、伊月の容姿を眺めながら唖然としていた。

 

「伊月、先導を頼む」

 

「オッケーw」

 

 そう言って歩き出した伊月の背を追うと、私の隣を承太郎が歩く。そして我に返った皆が、その後ろをゾロゾロと付いてきた。

 

「………スゥ………ハァー……これから最終決戦なんだよね、レオンさん」

 

「そうだな………怖いか?」

 

「というより、気分が乗んないというか………だってダービーと戦ったカフェでレオンさん言ってたじゃん。承太郎に今夜5分付き合えって…組手か何かするんじゃなかったの?」

 

「あぁ、今日中に館が見つからなかったら相手してもらう予定だったが、伊月の協力で見つけてしまったからな。見つけたからには待つ理由もない………さっきも言ったが、向こうからの奇襲の確率が高いからな」

 

「ちょっと急過ぎて気分乗んない。せめて最終決戦は明日だと思ってたから……明日やろうは馬鹿野郎って自分に向けて言いたいよ」

 

 ホテルを出て大通りへ……ヘラヘラと笑顔を浮かべる伊月だが、瞳は黒い火でも燃えているのかと疑うくらいに力強く、同時に悲しくも見え歩く速度が若干上がる。

 

 隣を歩く承太郎は学帽を被り直すが、いつもの様に深くは被らずに眼光を真っ直ぐ飛ばしている。

 

 後ろからついてくる皆もそうだ……

 ジョセフは義手を軽く回して問題ないかを確認、花京院とポルナレフは肩を回したりして身体をほぐしながら歩く。

 礼神は既にスタンドを纏い、イギーはその足下を鼻をひくつかせながら歩いている。

 ホル・ホースは拳銃型のスタンドを取り出して手の上で回す様なアクションを決めてからしまい、アヴドゥルも指先に小さな火を出してスグに鎮火させる。

 

 各々が自分なりのルーティーンを行なっていると、視界に旅のゴールが映り込み、それがだんだんと大きくなる。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 一点の光も無い暗室。

 

 そこで1人の男が目を覚ます。

 

「……来たか………レオンよ」

 

 男が寝室として使っていた暗闇の中には生きている人間は誰もいない。居るのは吸血鬼と女性の屍が1つだけ………

 

 その死体は死後間もないのか未だ美しい。

 

 血色は良く、まるで人形のように椅子に座っていた。

 

 無論、彼女が生きていない事に間違いはないが、()()()()()()()()()()()

 

 魂を抜き取られているが……戻り次第、彼女はまだ動ける。

 

「君も楽しみかい?聞けば、レオンに波紋を習っていたそうじゃないか………まさかレオンが波紋を学ぶとは………………」

 

 そう言って女性の髪を撫でていたが不意に手を止める。

 

「それとも………彼に会う方が楽しみかな。伊月 竹刀………彼は君に謝りたがっていたが……逆に君は彼を憎んでいたりするのかな?」

 

 魂を抜かれたアルシアにそう囁き、DIOは部屋を後にした。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 9人と1匹……頭数が丁度「10」になった旅人達と裏切り者の集団。

 旅を始めた当初は、ここまで仲間が増えるとは転生者の葎崎 礼神も想像しなかっただろう。

 

 此方と敵の戦力を天秤にかけるなら、僅かに此方に傾くだろう。

 だがそれは確定した戦力で秤にかけた場合………不特定多数のゾンビ、手中に堕ちた人質、ましてや戦場は敵の根城。

 

 10という頭数も少なくは無いが、個々の実力で言うならトップは承太郎とDIO、それに続く上位はヴァニラ・アイス、ペットショップ、レオン、伊月……そこから下は団子状態だろう。

 

 レオンと伊月は経験があっての実力者………

 

 それに対してヴァニラ・アイスは防御無意味の攻撃時無敵状態というチート能力。

 

 ペットショップも高火力の遠距離持ちで、この中では()()のスピードに関してはトップに君臨しているだろう。飛行状態のハヤブサには、流石の吸血鬼も追いつけやしない。時を止める時間が有限である限り、承太郎でも近付く事すら叶わないだろう。炎と氷という相性が無ければアヴドゥルにも勝機はない………むしろ相性があってようやく勝ち筋が見えるほどの強敵である。

 

 幽波紋使いとして産まれたその瞬間から、強者として君臨できる者達だ。

 

 それを認識している礼神は不安に駆られる……

 

「おい何だ…急に冷汗が出てきたぞ………この精神に食い込むような圧迫感は………」

 

「何だポルナレフ、もうビビってんのか。DIOと同じ空間にいる時は、今の比にならないぜ?」

 

 そう発言するホル・ホースだが、彼の表情からも冷汗が目に見える程に流れている。

 

「私はもう…わかった…この雰囲気、このドス黒い感覚ッ」

 

「正直ワシも伊月の言葉は半信半疑じゃったが、いる……この感覚は間違いなくヤツだッ!やつは今この館の中にいるッ!」

 

「………………」

 

「我々の旅は…」

 

「………………」

 

「ついに終点を迎えたわけだ」

 

「………………」

 

 レオン、ジョセフ、アヴドゥル、ポルナレフの順にそう言う中、学生3人は黙りこくり辺りを警戒している。

 

 その館の前で固く閉められた門の扉……先頭を歩いていた伊月はそれ押すが開かない。内側から鍵をかけているようだ。

 すると「開けてくるよ」と短く伝え、彼は軽々と門を飛び越える。

 飛び越え敷地に入った伊月はもちろん、飛び越える事を合図としたように皆が警戒を強める。

 アヴドゥル、花京院、ポルナレフに関しては既にスタンドを出していた。

 

 しかしそんな警戒を嘲笑うように、門の方から物音が聞こえて固く閉ざされていた扉は呆気なく開いた。

 

「………おい」

 

「わかってるぜ、警戒を怠ったりはしねぇよ」

 

 銀の戦車(シルバーチャリオッツ)を構えたまま、時に後ろ歩きをして周囲を警戒しながら敷地内に足を踏み入れる。

 

 敷地に入ったのだから、番犬ならぬ番鳥…ペットショップが襲いかかってくると思ったが、敵は未だに姿を現さない。

 伊月が門を飛び越えた時点で現れてもおかしくないというのに、ペットショップは飛ぶ影すら見せなかった。

 

「葎崎さん。門鳥が室内にいる可能性は?」

 

「室内どころか、水の中まで追ってくるハヤブサだからね……外でも室内でも十分に戦えるんだろうさ。可能性は………五分五分」

 

 礼神の答えを聞いた花京院は、アヴドゥルとポルナレフにアイコンタクト交わす。

 

 いるかもわからない外で待つというのも間抜けな話…番鳥を相手にする予定の3人も室内へ進む事にした。

 

「私やジョセフにヤツの存在がわかるように、ヤツの方も私達の到着に気がついている。門番の役割をしているはずのハヤブサも定位置にいない事から、向こうも何らかの策を講じているようだ」

 

「うっかりこの館に入るのは敵の胃袋に飲み込まれるようなもの。さて………どうしたものか」

 

 ジョセフが入り口に睨みを効かせると、それを待っていたかのように館の扉が開いた。

 

「ッ‼︎ 扉が空いたぞッ!気を付けろッ‼︎」

 

ーーー ギ ギ ギ ッ ーーー

 

 錆びた音を立てながら、時間を掛けて扉が開ききる。そこで一人分の気配が消える。

 いち早く気付いたレオンが目を向けると、そこには気配を殺した伊月 竹刀が最小限の動きで歩いていた。そしてゆっくりと身を乗り出して中を確認すると、何もいない事を周囲に伝える。

 

「原作では執事が出迎えてくれんだけどね」

 

「先頭は私が………伊月、最後尾で警戒してくれ」

 

「OK」

 

 先頭を代わったレオンは、警戒しながら目を閉じて目尻を抑える。次に瞼を持ち上げた時、館の中は異常に暗かったが既に目が慣れていた。それでも廊下の突き当たりが見えない。それ程に長かった。

 

「おい見ろよこの廊下…終わりが見えねーぜ。本物じゃあねーよな…」

 

「そだよ、言ったでしょ。幻術系幽波紋使い……落とし穴には気を付けて」

 

 礼神の忠告を聞いて注意を払うが落とし穴らしきものは無い……そもそも瞬時に落とし穴を発生できる可能性もある。

 幻術系の空間操作………いったいどこまでが幻なのかが不明なので、表情こそ崩さないがレオンは少し悩む。

 

(私ならその「瞬時」に気付けるが、紫の隠者(ハーミットパープル)法皇の緑(ハイエロファントグリーン)のように引き上げる物が無いからな。精々鞭を垂らす程度だ………)

 

 立ち止まっていたレオンだが、目も慣れ忠告も聞いたので足を踏み出す。

 

「いつまでも入り口で突っ立ってる訳にはいかない」

 

 そう言って先頭を歩く。

 

「コレは罠だ‼︎全員出ろ‼︎」

 

 10人(9人と1匹)のうちの半分が入り口を通った辺りで、珍しくも伊月が声を張って叫んだ。

 

 屋上の死角にでも居たのだろう。

 目を疑う速さでハヤブサが上空から急降下してくる。

 

 無論……それは氷のスタンド………

 

 ホルスの暗示を持つ幽波紋使い、ペットショップ。

 

『ケッ!世話がやけるゼッ‼︎』ズズッ!!

 

 ペットショップは巨大な氷柱を入り口へ落とし、そこには外に出るか中に逃げるかで一瞬迷ったポルナレフと礼神が立っている。

 そこでイギーが咄嗟に砂のスタンド、愚者(ザ・フール)を入り口に出現させた。それで氷柱を防ぐ事はできずスタンドは潰れてしまうが、それで崩れた砂の波に押され2人は無傷のまま中に流された。

 

「葎崎さん、大丈夫か⁉︎」

 

「だ、大丈夫。ありがとイギー」

 

『犬好きは見殺しにできねー』

 

 感謝を伝えられたイギーは照れ臭そうにプイッと顔を背ける。

 

「しかし………」

 

「そうだなジョセフ。してやられた」

 

 振り返って見てみると、そこには崩れた瓦礫とその中に突き刺さった巨大な氷柱が出入り口を塞いでいた。

 しかも最後尾にいた伊月 竹刀とホル・ホースは外だ。

 

「………私の炎で溶かしましょうか」

 

「やめておけ、柱が完全に崩れている。無理に穴を開けようとすれば更に崩壊し生き埋めになるぞ」

 

「あの鳥公やりやがるぜ。殺さずに分断を目的として動きやがった。しかも柱を完全に破壊したが、着弾した氷柱から氷が這って広がり天井を支えてやがる。仮に俺の星の白金(スタープラチナ)で繊細に穴を開けれたとしても、氷が溶ければどの道崩れる。スグにここを離れるぜ………ムッ⁉︎」

 

 そこで奥から何かがやってくる。それに皆が気付いたが口に出したのはポルナレフだ。

 

「何だッ⁉︎ 何か来るぞ‼︎」

 

 終わりの見えない程長い廊下の奥………そんな遠くから数秒でそれはやって来た。少しばかり宙に浮き腕を組んだ態勢で突っ込んでくるかと思えば、フィギュアスケートの選手のように足の裏を此方に若干傾けて急ブレーキする。

 

「先手必勝‼︎」

 

 現れた男が何か言うかよりも早く、ジョセフが男の首に紫の隠者(ハーミットパープル)の荊を巻き付ける。

 現れた男は腕を組んだまま動じず、代わりに彼の横に現れたスタンドがその荊を掴んだ。

 

 その時………

 

 

 ………ォ………ン

 

 

「な、何の音じゃ?」

 

「ッ‼︎ジョセフさん‼︎早く絞め落として‼︎」

 

 僅かで奇妙な小さな男……小さかったが、それは確かに聞こえた。

 一同が音の正体を疑問に思う中、礼神だけが正体を知って居た。礼神はその音を……()()()()()()()()()()()

 遠くから迫るその音を聞いて礼神が焦る。

 

「私を殺してしまって良いのですかジョセフ・ジョースター。私はアルシア・アントニオ・ツェペリ………鈴原 アルシアの魂を既に持っています」

 

「何ッ⁉︎」

 

「ジョセフさん早く‼︎」

 

 ………オン………ッ

 

「人間の魂というのは実に不思議だ。「敗北」する時、認めた時なんかは、その瞬間魂のエネルギーが限りなく0に近付く。その一瞬を狙って相手の魂を引き出すッ!それが私や死んだ兄のスタンドの原理!」

 

「気にするなジョセフ‼︎1度気絶させろ‼︎死ななければ問題ない‼︎」

 

「う、うむ!」

 

 ……ガォ………ガオン………

 

「ヌゥッ……このスタンド…なんてパワーじゃ‼︎」

 

「私のスタンド能力は今述べた通りでパワーファイターではない。ですが、人の腕力と比べれば話は別です」

 

「マズイ、間に合わない‼︎ ジョースターさん、何かが来る前に一度下がるんだ‼︎」

 

「ジョセフッ‼︎」ズバッ

 

 

ガオンッ‼︎

 

 

「そして………生物としての敗北は()を意味する。つまり()()

 

「………レオン?右腕が………」

 

「大丈夫。軽傷だこの程度…「ヴァンッ‼︎」

 

 遠くから迫って来たのは亜空間。

 空間ごと飲み込み粉微塵に粉砕するガード無視のスタンドだった。

「ガオン」という音が自分に迫っている事は気付いていたが、荊を巻き付けていたジョセフは回避に遅れた。

 

 そこに飛び出したのはレオンだった。

 W-Refを嵌めた手刀で紫の隠者(ハーミットパープル)を断ち切り、安置を見極めて花京院の方へ突き飛ばす。

 

 それによってジョセフは助かったが、代償としてレオンの右手は亜空間に飲み込まれ消失した。

 手首から先を失った。レオンを見てジョセフは呟き、レオンはそれに対して軽口で答える………

 

 しかし運の悪い事にレオンは、荊を断つ為にスタンドをその手に嵌めていた。四肢に纏うスタンドの1つをレオンは削り取られたのだ。

 

「グゥッ…なる……ほど………空間ごと消すんだ。触れられない……吸収のしようがない………かッ………」

 

 スタンドが傷付けば本体も傷付く。

 4つに別れたスタンドの1つが削られ、四肢の内の1つが消滅………時間差でレオンは右肩から先を「ヴァン」という音と共に失った。

 

「レオンさんッ‼︎」

 

「ジョセフ・ジョースター………()()()()()()()()()?」

 

「ハッ⁉︎」

 

 先程まで紫の隠者(ハーミットパープル)を敵の首に巻き付けていたジョセフだが、逆に今は敵スタンドによって首を絞めつけられている。

 

「貴方を庇い負傷してしまいましたね。元を辿れば囮役となった私の所為ですが………お詫びにとっておきの世界へお連れしましょう」

 

 まだ名乗りもしていた無い男……テレンス・T・ダービーがそう言うと、彼の足元に穴が開く。削り取られた亜空間とは違い、ブラックホールのように黒い渦を巻いている。

 

「ジジイッ‼︎」ガシッ

 

「ちょっと承太郎」

 

 思わず手を出しジョセフを掴んでしまった承太郎。「極力温存」と指示を出した礼神はその行動を咎めるが、表情は「仕方ないか」とでも言いたそうだ。

 

法皇の緑(ハイエロファントグリーン)‼︎」

 

 一瞬遅れ花京院も自身のスタンド、法皇の緑(ハイエロファントグリーン)の触手をジョセフに巻き付け引きあげようとする。

 

「しょうがない…あなた方もお入りください」

 

「ワリぃ…葎崎………」

 

 黒渦の中からテレンスが顔を出し、引きあげようとした承太郎と花京院がついでにと言わんばかりに引きずり込まれた。

 

「お前の相手は僕だよッ!」

 

 当初の予定では礼神が相手取るはずのテレンス・T・ダービー…その為、礼神は渦が閉じる前に黒渦に飛び込んだ。

 

 やがて黒渦は閉じ元の床に戻る。

 

 しかし………………

 

 

 

「貴女はダメです」ポイッ…

 

「………………………?」

 

 

 

 再び渦が開き、礼神だけ返却された。

 

「………解せぬ」

 

「………………」

 

「ポルナレフ………何で?(´・ω・`)」

 

「俺に聞くな。んでこっち見んな」

 




礼神
「……20代だったんだ」

伊月
「薬物使用前の写真あるよ」


【挿絵表示】


「ッ⁉︎」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。