ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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6信頼を得る為

「見えるか?この腹の傷が……レオンにやられた傷だ。コレさえ癒えれば、あの火事で負った怪我は全て完治する。ジョジョ…貴様の血でな!」

 

 ジョジョ達を見下しながら、ディオは自分の服をたくし上げて傷を見せてくる。

 

「貴様…その傷を癒す為にどれだけの生命を吸い取った?」

 

「お前は…今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」

 

 ツェペリの問いに挑発で返すディオ…その答えに思わず顔を歪め、ツェペリは波紋を帯びた攻撃を繰り出す。

 

「山吹色の波紋疾走!」

 

「それがゾンビの言っていた波紋とやらか」

 

 彼の拳をディオは直接受け止めた。ツェペリの波紋は拳から放たれ、ディオの掌に衝突する。しかし波紋がディオに流れる事は無かった。

 

「こ、これは!凍っている‼︎」

 

「それがレオンの言っていた気化冷凍法か!」

 

 その声とともにディオが背後を向く。彼の背後には、既にジョジョが岩を駆け上っていたのだ。

 

「コォォォォオ‼︎」

 

 波紋の呼吸を行うジョジョの拳がディオの顔面へ伸びる。

 

「その程度で攻略できると思うなよ。ジョジョォ‼︎」

 

 気化冷凍法によって凍り付いたディオの足が、ジョジョの拳を打ち払う。そしてバランスを崩し空いた胴体に、ディオの蹴りが命中する。

 

「ガフッ!」

 

「ダメだ…二人が前後から攻撃しても、予期して止められちまう!」

 

「まずは……貴様からだ。名も知らぬ男爵よ!」

 

「グオッ⁉︎」

 

 気化冷凍法の力で、ツェペリは腕だけでなく全身が凍り始める。

 

「精々哀れな悲鳴を聞かせてみろ!」

 

 中途半端に凍らせると、ディオはツェペリを地面に投げ落とした。

 

(わざと全身を凍らせなかったな⁉︎くそっ!このワシが遊ばれるとは…)

「せめて波紋でダメージを和らげねば!」

 

 波紋は特殊な呼吸法により血管を通してエネルギーを生む技……血管の大半が凍ったツェペリは満足に波紋が練れない。このまま叩きつけられ粉砕されるのがオチだろう。

 

「む…無念……」

 

「ツェペリのおっさん‼︎」

 

「ガァァァァァアアア‼︎」

 

 次の瞬間…辺りに男性の悲鳴が響いた。しかしソレはツェペリの声ではなかった。

 

「ほう………今のは貴様の悲鳴だったか……」

 

「な……貴様は……」

 

 ツェペリが自分を助けた者を見て驚愕する。

 

 「「レオン⁉︎」」

 

「グゥ……布越しの弱った波紋とはいえ……なるほど…これは効く…」

 

 両腕が燃えるように痛い…というか現に肌が焼け爛れる。流石はジョジョの師匠……波紋使い恐るべしだな。

 

「君は……何故⁉︎」

 

 凍った体にヒビが入らぬよう、私はゆっくりと彼を下す。触れてる間も微量だが波紋が流れるが、早々に手放したい気持ちをぐっと堪える。

 

「大丈夫かよレオン‼︎」

 

「まあまあだ…」

 

 彼を受け止めクッションの働きをした為、背中は岩に叩きつけられ背中に背負っていたハルバードで背骨を痛めてしまった。まぁこれはすぐに治るが、問題は腕と前半身だな……ツェペリを下ろしたが現在進行形で目に見えながら溶けていく。ひとまず気化冷凍法で進行を止めるか…波紋は血管の血液を流れるのだ。凍らせれば途中で止められる。

 

「フッフッフッ、やはり甘いな貴様は!そんな奴、見捨てておけばよかったものを!」

 

「奴の言う通りだ…何故助けた?」

 

「敵の敵は味方、仲間の仲間も味方だ…助ける理由はそれだけで十分だ。例え相手に敵対されてもな」

 

 自身の身体を凍らせてみると、予想通り波紋の進行は止まる。

 

「すまない…私は君の見方を間違っていた……本当に…」

 

「五月蝿い。謝りたい気持ちは見ればわかる。ひとまず君の身体を解凍する…波紋を止めてくれ」

 

 私が振動熱で溶かそうとすると、誰かが大剣を振り下ろしてくる。

 素早く彼を動かすわけにもいかず、私はハルバートでそれを受け止める。

 

「タルカス、黒騎士ブラフォード!もはや俺の出るまでもない。こいつらにファンファーレと言う悲鳴を吹かせてみろ!」

 

 「「ハッ!」」

 

 巨大な男と長髪な男が返事をする。うろ覚えだが、確か大男はただの馬鹿力が売りな戦士だったはず。ならば…

 

「ジョジョ。向こうの長髪の相手を頼む。スピードはツェペリを見ていてくれ」

 

 タルカスの大剣を支えながら二人に指示すると、スピードはツェペリを抱えて下がる。

 

「これで心置きなく戦えるな」

 

 私の言葉に嬉しそうな表情を浮かべたタルカスは。一度大剣を振り上げて今度は横から振り下ろす。

 

「MUOOOOO!」

 

「遅い…そして単純だ」

 

 私の目と反射神経は吸血鬼になり更に鋭くなっている。止まって見えるといった夢のような洞察力ではないが、足場として利用するくらいはできる。

 

「波紋は使えずとも、貴様を殺すくらいの事は出来るさ」

 

 奴の大剣の側面に足をかけて跳躍……後はハルバートを振り下ろすだけ。

 

「無駄だレオンよ。その男はかつて処刑の際…筋肉の硬さのあまり、何本もの斧を折った戦士だ」

 

「それを早く言って欲しかったな…弾かれる前に」

 

 私のハルバートはタルカスの筋肉に弾かれ、私は慣性の法則にしたがって回転……そのままタルカスに背中を見せることとなった。

 

「絶望と悲鳴を発せ!」

 

 振り切った大剣はすぐには戻せない…それが唯一の救いだろう。奴は拳で私を背後から攻撃してきた。

 

「おっと…救いはもう一つあったか」

 

 それは私が宙にいたこと。吸血鬼の屈強な身体を巨大な拳で殴っても、空中ではダメージのほとんどは拡散され無傷だ。壁と拳にでも挟まれれば話は別だが……

 

「想像してみるとゾッとするな」

 

 体勢を立て直してタルカスと向き直る。するとこのタイミングでディオがその場を離れた。見届ける価値も無いとでも言いたいのだろう。

 

「ひとまず武器は頼りにならないか……邪魔になるだけだし、置いておくか…」

 

 足元にハルバートを転がす。そんな些細な動作をしてる間も、タルカスは私に襲いかかってくる。

 

「このワシに…殺戮のエリートを目指したワシに素手で挑むかァ!」

 

「そんな事、一言も言ってないだろ」

 

 空いた両手に瓶を1本ずつ持ち、足元に転がしたばかりのハルバートを蹴り上げる。ソレはもちろん頭上高くに舞い上り、私はタルカスの顔面に瓶を投げ付ける。

 

「何のつもりだ!」

 

 そう言ってまた大剣を縦に振り下ろす。この軌道なら半歩ずれるだけで避けれるな。

 

「酒の匂い…レオンが投げ付けたのは酒だ!」

 

 岩陰に隠れるスピードが代わって実況してくれる。そう…さっきのは酒瓶…つまりアルコールだ。

 

「昔からゾンビの弱点は炎と決まっているのだよ。酒は良く燃えるぞ?」

 

 空中に跳び上がりハルバートを掴む。そして奴の兜を掠めるように振り下ろした。

 

「馬鹿め!よくねら…え…UBOAAAAAA‼︎‼︎」

 

 兜とハルバートの接触で発生した火花が引火し、炎がタルカスの顔面を包む。どれだけ防御力が高かろうと、物体である以上熱を持つ。

 

「後は熱が脳の奥まで通るように穴を開けるだけだ」

 

 どれだけ修行しようと人間である以上、耳と目は鍛えられない…それはゾンビも同じだ。私はその四カ所に釘を深く差し込んだ。

 

「……で、誰が素手で戦うって?」

 

 かろうじてまだ生きているが、物事を考える脳細胞が傷付いたのか返事は無い。じきに動かなくなるな。

 

「波紋なしで…アレだけの巨体を…」

 

 私の背後で燃える肉片を見てツェペリが驚いてる。さて…いい加減解凍してあげないとな。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「波紋は正常に流れているか?」

 

「うむ。いたって正常だよ……えぇと」

 

「レオンと呼んでくれ…姓は捨てた」

 

 敵対心が解けようやく自己紹介をする。その時また謝罪をされたが今はどうでもいい…私はケジメをつけなければならないのだ。

 

「あれ……タルカスは?」

 

「ジョースターさん!無事だったか!」

 

 鞘に収まった剣を片手に、ジョジョが悠然と戻ってくる。川にでも飛び込んだのか、何故かびしょ濡れだ。

 

「何故剣を片手にびしょ濡れで帰ってきたか不明だが、ひとまず先へ進もう」

 

「もう村に被害が出てる可能性もある。早く根本を断たねば!」

 

 拳を握りしめてジョジョが力強く賛同する。私とジョジョを先頭に、一同はディオのいる根城に向かった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 四人でディオの元へ急いでいると、途中で町の近くの道を通る。なんだかんだで私が三度通った道だ。その道中で一人の青年とすれ違う。

 最低限の礼儀として言葉も交わさずに会釈をして通り過ぎる。

 

「…………」

 

 なんとなくだが、皆が今の男に違和感を感じたようだ。次の瞬間背後からソレに襲われたが、誰も驚くことなくジョジョに始末される。

 

「この様子だと町も……」

 

「その通り」

 

 ジョジョの呟きに、背後から現れた三人の男性陣の一人が答える。

 

「貴方方は?」

 

「此方は我が師 トンペティ。そして私は弟子のダイアー」

 

「同じくストレイツォ」

 

「来てくれましたか」

 

 現れた三人の男達の中で最も老いている男性…トンペティにツェペリが歩み寄る。彼が寄越した援軍らしい。

 するとトンペティはおもむろに手をツェペリに差し伸べた。何故か少しツェペリは緊張している……握手とは何か違う意味があるのか?

 

「あの人は一体何を?」

 

「生命の波長をああして読めるのだ。簡単に言えば……その者の運命を見ているとでも言おうか」

 

 ストレイツォが目を瞑ったままジョジョの問いに答えている。今私は蚊帳の外にいた方が良さそうだ。

 

「……これは…」

 

 トンペティはツェペリの手を離し、今度はジョジョの手を握る。すると間も開けずに首を振り私に手を差し出してくる。私の生命の波長を読んでくれるのか?だとしたら運命を知り、何故この世界に来たのかまで知れるかも知れないな。

 そう思い私は老師の手を握る…が、迸る痛みに耐え切れず、私は手を振り払う。

 

「なんとっ!」

 

「い、一体何をした…今のは波紋だな?」

 

 運命を見るなんて言っていたが老師は波紋使いでもある。生命の波長もきっと波紋を使った何かなのだろう。

 クソッ…また手が焼け爛れた。

 

「お主……名は?」

 

「…レオン……姓は捨てた」

 

「主…吸血鬼じゃな?」

 

 老師がそう言うと、ダイアーとストレイツォが身構える。無理も無いか。

 

「待って下さい。彼は僕らの仲間です!害ある存在ではありません!」

 

「わかっているよ。すまないな、波紋を流してしまって…お詫びと言ってはなんだが、血でも分けようか?」

 

「結構です」

 

 キツイ冗談を言う人だな。弟子の二人はまだ私を警戒してるから、「何言ってんだこの人」みたいな目で老師を見ている。

 

「それで老師……どうかしたのですか?」

 

「また後に話そう……我々が死ぬ運命は見えぬ」

 

 ……一体何がしたかったのだろう。

 まぁ戦力が増えたのだ。心強い。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 戦力が四人から七人へ…これならほぼ確実に勝てると思ってしまう。しかしディオは別格だ……ジョジョ達波紋使いで敵うかどうか。

 

「どうしたんだい、レオン」

 

「なんでもない」

 

「本当は……辛いんだね」

 

 古城に到着して中を歩いて進んでいると、ジョジョが急に話しかけてくる。人間関係には鋭いな……

 

「辛くない訳ではない……ただ野放しにするのがソレ以上に辛いだけだ」

 

 腐っても共に育った兄だ。原作どうこうで考える事もあるが、今はココが現実……私の世界はここにあるのだ。む?

 

「待ってくださいダイアー」

 

「…………」

 

 次の部屋に続く扉の前で、扉を押し開けようとしたダイアーを呼び止める。当の本人は無言で振り向く。

 

「私が先に行きます」

 

 それだけ言うと、ダイアーはツェペリの方を向く。ダイアーと目を合わせたツェペリが頷くと、ダイアーは大人しく道を開けてくれる。

 

「悪いな」

 

 ここまでの来る道中にも腐臭は漂っていたが、扉の向こうからは新鮮な腐臭…と言っては変だが、死人とは別の腐臭がする。ゾンビと死人の匂いは若干違うのだ…人にはわからないだろうし、私も注意しなければ気付かないが……

 

 「「「「「キシャァァァア!」」」」」

 

 予想通り…扉を開けると同時に、部屋の中からゾンビ達が飛び出してくる。

 

「アッタカイ血ぃスワセロォ!」

 

「嫌だ」

 

「アギャァア!」

 

 一番近くにいたゾンビが最初に飛びかかってきたので、私はハルバートで顔面を断裂する。さて…さっさと此奴らを片付けよう。

 私はあの時のように罠を張る。すると無鉄砲に突っ込んでくるゾンビが細切れになる。

 

「前よりは上手くなったな」

 

 意外、それは髪の毛……ブラフォードの技を思い出して参考にした技だ。

 注意しないと気付かない程の細い髪の毛…それを私の周囲に張り巡らせ、糸ノコギリのように動かしていたのだ。

 

「む…警戒して突っ込まなくなったか」

 

 まぁいい。そしたら私が突っ込めば良いのだから。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「なんという戦闘力……敵だと想像するとゾッとするわい」

 

「待たせた」

 

「何が待たせただ!まだ一分前後しかたってねぇよ!」

 

 そうだったのか…無我夢中でわからなかった。思いの外早かったな。

 

「流石は我が弟だ…良い参考になったよ」

 

 拍手と共に奴の声が聞こえる。

 

「ディオ⁉︎何処だ!」

 

「あ、あそこだ!」

 

 いつの間に開けたのか、奥に通ずる扉が開放されていて、ディオはその奥の玉座に座っていた。

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