ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

62 / 85
62,存在とは誰が決めるのか

「こいつは酷いな………」

 

 私はポルナレフの服を捲ろうと裾を掴むが、火傷の深刻さを理解し脱がす事を断念する。

 

「痛みは?」

 

『……いや……もうねぇな。波紋の力か?』

 

 口を動かすのも億劫なのか、幽波紋使い特有のテレパシーで受け答えする。

 

「"3度熱傷"だな。皮膚全ての層に損傷が及び、感覚が失われている。水ぶくれもできず肌の表面が壊滅しているようだ」

 

『……俺はどうなんだ?』

 

「死にはしない、私がいて良かったな。アンラベル!」

 

『ムゥ……我は反対だ』

 

「私が完治した今、貴様が消えるのも時間の問題だろ。DIOの元へ着く前に消えるのがオチだ。なら今のうちに利用させてくれないか?」

 

『………承知した』

 

 私が瀕死になり力を得たアンラベルは、私が完治した事で力を失いつつある。なら消える前にそのエネルギーを使わせてもらおう。

 

 アンラベルに触れ、W-Refでスタンドエネルギーを取り上げる。そしてそれを自らに使い、私は自身の治癒能力をオーバーヒートさせる。

 

 その後に自分の手首に切れ込みを入れて、溢れ出る血液をポルナレフの服の上から染み込ませる。

 

「レオンさん……そんなに血を使って大丈夫なのですか?」

 

「問題ない。治癒能力を過剰に活動させ、増血している。それで溢れた分を使っているだけで、私の血圧は常に正常………増血に使っているエネルギーはアンラベルのもので体力消費も無い。ポルナレフ、我慢して口に含みなさい。まだ飲み込むなよ」

 

 ポルナレフの火傷を覆うだけの血液を流したところで、ポルナレフの口に私の生き血を注ぐ。テレパシーでギャーギャー言ってるがそれは無視する。

 その後に波紋を流してから、私はポルナレフに口に含んだ分を飲み込むように指示する。

 

「ゲホッ、ゴホッ……鉄クセェ………」

 

「もう話せるのか。さて、次は君だアヴドゥル」

 

 波紋で痛覚を麻痺させ、折れた骨を正常な位置に戻す。その後に添え木になる物を当てて、私の髪で結び付けて固定した。

 

「コレは、安全なんですか?」

 

「当たり前だ」

 

「レオンさんの髪で直接皮膚に縫い付けられてますが」

 

「ちゃんとシャンプーしてる。清潔だ」

 

「俺は? 言われるがまま血を飲んだが、大丈夫なのか?」

 

「鉄分と糖分が豊富な鮮血だがゾンビにはならん。ところで礼神とイギーはどこだ?逸れたか」

 

 不安そうに私を見つめる2人を無視して質問する。するとアヴドゥルが今までの経緯を話してくれる。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

『◯◯…風邪をひいたのか? そうか。なら父さん、今日は早く帰ってこよう。くれぐれも無茶はするなよ?』

 

 この程度の微熱なら大丈夫だよ。それより学校行かないと……授業についていけなくなるし。

 

『ダメだ、授業なら私が帰って来てから教えてやる。だから大人しくしてるんだぞ?』

 

 でも……テスト近いし、申し訳ないよ。姉さんの家庭学習の時間が………

 

『気にするな。それじゃ、行ってきます』

 

 ………………

 

『兄さんは休みだから、俺が看病してあげよう』

 

 別にいいよ。過保護すぎ。

 

『そんな事は無い』

 

 そんな事は有るよ。 僕と下の姉が産まれる前……父さんと兄さんは上の姉さんを、今の僕みたいに過保護対象として接してたんだよね。

 

『過保護って……単に心配だっただけだぞ?』

 

 それが原因で上の姉さんは家出したんじゃん。僕も家出するぞ?

 

『ハハハッ、冗談はやめてくれ。お前は今が幸せじゃないのか?』

 

 不幸では………ないけど………

 

『だろ?幸せだろう? 父さんのお陰で生活に不自由は無い。お前のできない事は兄姉である俺達がやる。なにも心配しなくていい…お前は俺たちが幸せにしてやる。将来は安泰だ。何もしなくて良いんだぞ?』

 

 ………じゃあ僕は何の為に産まれたの? 母さんの命奪ってまで産まれたから、その分幸せになれってのはわかるよ………

 

 でも僕って誰にも必要とされてないじゃん。

 

 僕って何? 僕って誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対的信頼を託せる瞬間が稀にある」

「テメェ、やる時はやる奴だったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……承……太郎………?」

 

 昔の………それもかなり古い夢を見た。

 

 その夢から僕を呼び覚ましたのは承太郎の声だった。でも周囲に承太郎はいない。承太郎の今の言葉も夢だったのかな。

 

「………あれ?」

 

 ここはどこだろう……凄く暗い………僕の部屋じゃない? ベッドにしては硬いし…壁に掛けて干しといたブレザーも見えな………アレ? もうブレザー着てるじゃん。パジャマじゃない。

 

「何を……してたんだっけ?」

 

 頭の中身が全部ひっくり返された気分だ。

 記憶が絡み合って時系列に沿って並んでいない。それでも僕は、少しの時間を要する事で全てを思い出す。

 

「………そうだった」

 

 ここは敵地のど真ん中。早く行かないと……でもココドコ?

 僕は廊下で意識を失ったはず………まず僕の身に何が起きたのかもわからない。

 

「まずは現状把握……僕は……今寝てる…膝を少し曲げて。横になっている。暗い。埃っぽい。狭い………」

 

 上半身を起こそうとすると、首を浮かせただけでオデコが何かに打つかる。

 狭いし高さもない……何かの箱の中?

 

 身をよじって、狭い空間の天井に手を当てて押してみる。すると何か乗っているのか重い……それでも力を込めれば、なんとかフタをズラす事が出来た。

 

 すると………

 

「ワップッ⁉︎」

 

 隙間から大量の砂が雪崩れ込んでくる。

 ちょ、生き埋めになる!

 

「ペハッ!…ペッ………」

 

 なんとか箱から出て砂の中から這い出ると、そこは僕が気絶した廊下の近くの部屋だった。

 何故それがわかるかというと、僕が壊したままの壁と動かないゾンビが証拠だ。

 

「アギッ!………ケッ」

『礼神!………ケッ、世話の焼ける小娘だぜ』

 

 砂から這い出ると、イギーが僕の前まで走ってくる。

 どうやら彼が僕を木箱に詰め、砂で覆って隠してくれていたらしい。

 

 僕の顔を見るなり一瞬「パァァ…」といった感じで笑みを浮かべるが、イギーはその後 スグにソッポを向く。

 ソッポを向きはするが、短い尻尾をイギーはブンブン振っている。

 

 あぁーもう、可愛いなぁ♪

 

「……っと、それどころじゃないね。早く行かないと………」

 

「……グルルル」

 

「大丈夫だよイギー……わかってる。僕が行ったところで足手纏いになるのは………でもそれは相性、戦闘力の話であって、彼らを抱えて逃げるくらいはできる。他にもできる事はあるかもしれないし………それに………」

 

 どれだけの時間気絶していたのか僕にはわからない。ポルナレフ達の死闘がもう終わっているかもしれない………

 

「それに………終わってたなら、結果を知らないと動き辛いでしょ?」

 

 はたして僕は守れたのか……守るだけの影響を与えられたのか………甘過ぎると言われ必要とされなかった僕だけど、それでも僕は彼らを生かしたかった。

 彼らに死の覚悟があったとしても……僕は………

 

「………行こう。イギー」

 

「アギッ………」

 

 上へと登る階段を探し、イギーを連れて仲間を探す。

 道中は何事も無く、ゾンビとの遭遇も無い。

 

「アヴドゥルさん……ポルナレフ………?」

 

 小声で呼びかけるが返事は無い。

 やがて激しい戦闘でもあったのか、原型をとどめていない焼けた部屋に辿り着く。

 炎といえばアヴドゥルさんだ……その近くを少し探索すると、2部屋離れた空間で夥しい量の血液が床を濡らしていた。

 そして人為的に出来たであろう、渦巻き状の溝………

 

「………ハァ…」

 

『礼神ッ⁉︎』

 

 僕がふらつき倒れると、イギーが愚者(ザ・フール)で支えてくれる。

 

「……進もう……イギー」

 

 亜空間による痕跡は渦巻きを最後に途絶えている。ここでヴァニラは力尽きたのだろう。だけど2人の生存率はわからない……なんせ2人とも重症だった。

 

 まだ2人が死んだわけでは無い……相打ちの可能性も有るけど、僕が今する事は嘆く事じゃな……………

 

「……………………」

 

 空気が凍てつく。

 

 脊髄が氷雪とすり替えられたかの様な錯覚に陥り、僕の身体はピクリとも動かない…動かせない。

 

「………………」

 

 

ー カツン…カツン…… ー

 

 硬い床に靴底が打ち付けられる音が、風通しの良くなった部屋に透き通る。

 

 

 

 

 

 僕は確信する………()()()()()

 ()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「フンッ……随分と派手にやった様だな。しかし………そうか、敗北したのだな。ヴァニラ・アイスよ………」

 

  声の発生源がゆっくり近付いてくる。

 

愚者(ザ・フール)ッ‼︎』

「ケルベロスッ‼︎」

 

 イギーが吠えると同時に砂の集合体が突っ込んで行き、僕が振り返りながら叫べば薄い肉を纏った骨組みが大口開けて噛み付こうとする。

 

「ホゥ……獣風情どもがこのDIOに刃向かうか。世界(ザ・ワールド)!時よ止まれィッ‼︎」

 

 

 

 

 

「………これが世界(ザ・ワールド)だ。君も良く知っているはずだ。日本の巫女よ」

 

 気が付けば、DIOは僕の目の前で仁王立ちしていた。

 まるで瞬間移動……僕は思わず一歩引くが、DIOの顔を見上げる事は出来なかった。

 

 そして襲いかかった僕らのスタンドは時が止まってる間にしこたま殴られたのだろう。

 愚者(ザ・フール)は原型も留めずに拳圧で霧散しており、僕のケルベロスは後方まで吹き飛んでいた。

 

「いきなり噛み付かなくてもいいじゃあないか。安心しろ…安心しろよ。葎崎………友達になろう…君のその知識を、このDIOの為に使ってくれないか?」

 

「………………」

 

 これが邪神のカリスマ…悪の救世主………思わず頷きたくなる安心感が、ここまで逆に恐ろしいとは思わなかった。

 呼吸するのも忘れていると、DIOが僕の顎に手を添えて優しく持ち上げる。そうされる事で僕は、見たくなかったDIOの表情を初めて視認した。

 

 ただならぬ危険なオーラと、それを包まんとする安心感が危険な甘さを醸し出している。

 

 そのラスボスの仲間になれと?

 

「そんなの………ッ⁉︎」

 

 断ろうとした時には、既に世界がスローモーションに見えていた。

 つまり走馬灯が発生している……その先の言葉を吐けば死んでいた。良くて致命傷………

 

 ………言葉を吐かずに口を閉ざして暫く待てば、世界は何事も無かったかのように正常に戻った。

 

「………巫女よ。その先は慎重に答える事を勧めよう」

 

 つまらなそうな顔をし、見下す様に僕を冷たく見る……否、観ていた。

 心の奥底の恐怖心とそれを抱いて尚、僕が断る事を既に知っているようだった。

 

「僕は………」

 

 また走馬灯が発生する。

 だが今度は、最後まで言い切って見せた。()()()()()()()()()()

 

「あんたの仲間になんかならない‼︎」

 

「ムッ!」ガクッ

 

 一瞬眉間に皺を寄せてから視点がグラつき、DIOは体勢を僅かに崩す。しかし倒れるまでにはいかずに踏みとどまる。

 

「ケルベロス‼︎」

 

 アレッシー戦で見せた突きを放つが、紙一重で避けられて頬を僅かに掠める。

 そこで攻撃の手を止め、DIOが躱した方とは逆へ飛び、イギーを抱えて距離を取る。

 

(やっぱり僕の声じゃ気絶させる事すらできないか……)

 

 虚をつけただけで、意識を取り戻す速度は僕と同等。

 また声で意識を一瞬削いでも、その後に僕が先手を取れる確証は無い。

 

「……チッ」

 

 頬に滲んだ血を確かめる様に触れ、DIOは小さく舌打ちをする。そこでまた時が減速する。

 スローモーションの世界でゆっくりと此方へ視線を戻すDIOに対し、僕は直感で防御態勢を取った。

 

「……ケルベロス」

 

「………!」

 

 時の速度が元に戻ると、DIOは少し驚いた様子で僕を見つめていた。

 走馬灯が切れたという事は死や致死ダメージは回避できた様だけど……

 

 イギーを抱えた僕はケルベロスを出し、肋骨のシェルターに包まれて身を守っていた。

 

(成る程………止まった時が認識できなくとも、止めるタイミングを察する事はできるのか。だとすれば最初の噛み付きはお粗末だったが………)

「フンッ、まぁいい」

 

 少し考える素ぶりを見せてから腕を組むDIO。

 その背後に僅かなハートをあしらった黄色の大男……世界(ザ・ワールド)が現れる。振りかぶったそのコンクリートの様な拳は、僕らの身を守っているケルベロスに振り下ろされる。

 

「グッ……」

 

「硬度は中々……面白い。貴様が砕けるのが先か、このDIOの腕が上がらなくなるのが先か…根比べといこうじゃないか!」

 

 DIOが含み笑いを浮かべると、世界(ザ・ワールド)は両手を後ろへ引いて力を溜め始める。そして………

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄‼︎」

 

 その全てを解き放つ様に撃ち込まれる拳のラッシュが僕のケルベロスに向けられる。

 振動が伝わり肺の空気が口の隙間から溢れ出る。

 

 そして………

 

「無駄ァッ‼︎」

 

「ガッ⁉︎………………?」

 

 ラッシュの一区切りとなる最後の大振りをケルベロスでガードすると、一際大きな振動が体内に響き嗚咽が漏れる。

 

 そして僕の立つ床の前に何か赤いものが吐き出された。

 

「………え?」

 

 血だった。

 

 視線を上げれば、ケルベロスの骨の一本にヒビが入っている。

 僕は生まれて初めてスタンド越しに……それも単純なパワーでダメージを受けた。

 

「僕の防御力が………下回った………?」

 

 入ったヒビと僕の顔を見てニヤリと笑い、DIOはまた世界(ザ・ワールド)にラッシュを仕掛けさせてくる。

 

世界(ザ・ワールド)ッ!」

 

「ケルベロスッ‼︎」

(ダメだ!気持ちで負けるな‼︎ それが幽波紋使いの弱点だろ!)

 

 自分に言い聞かせて身を強張らせるが、入ったヒビを原点に線が伸び始める。それにつれ、僕の肋骨も連動して折れ始めているのを感じた。

 

 

ー バキッ ー

 

「ーーーーーーーーーッ‼︎‼︎」

 

 歯にもヒビが入るほどに食いしばり、胸を押さえて蹲る。

 折れた………完全に一本折れた。カランという虚しい音を立てて、ケルベロスから骨が一本床に落ちる。

 

「………フッ。その精神力だけは認めてやろう、日本の巫女よ」

 

「……………」

 

 ケルベロスだけは消してなるものか………スタンドの長時間使用も相まって、僕の声でイギーは未だに気絶中。

 今スタンドを消せば僕はもちろんイギーまで死ぬ。

 

「………わからんな。何故そうまでして諦めん」

 

「……………にたいよ…」

 

「………ん?」

 

 

 

 「僕だって諦めたいし死にたいよ‼︎」

 

 

 

 気付けば僕は叫んでいた。

 

「一度しかない人生だから人は頑張れる。けど僕みたいな奴が二度目を最後まで挫けず頑張れるわけないだろ‼︎

 

 不安要素はあるし、レオンさん本来いないし、ジョセフさんは乗り物運悪いし、アヴドゥルさんもポルナレフも生きるの諦めるし、原作知識通用しないし‼︎ 序盤で僕は投げ出したかったよ‼︎

 

 僕にとってこの世界は嘘の塊。思い通りにいかずに罪の意識だけ膨れる糞みたいな偽りの世界‼︎ 逆にその世界の外から来た僕はこの世界にとっての虚像! 僕こそが嘘の塊なんだよ‼︎」

 

 ………だけどアイツは………アイツだけは………

 

 

『最後まで聞いてやるから全て話せ』

 

「だけど承太郎は………そんな僕を真実だと信用してくれた。友人と呼んで存在意義をくれた………だから」

 

 僕のスタンドがまた姿を変貌させる。

 

 「だから足掻く‼︎」

 

 両肩から新たに一頭ずつ頭骨が生成される。

 元からある頭と同等の大きさで、バランスを取るためか身体も次第に大きく成長する。

 

「格好よくなくても、強くなくても、正しくなくても、美しくなくとも、可愛げがなくとも、綺麗じゃなくとも、嫌われ者でも!憎まれっ子でも!やられ役でも!出来損ないでも!足手纏いでも!

 

 死ぬまで僕は足掻き続ける‼︎」

 

 そしてその名の通り…僕のスタンドは本物の三頭猟戌(ケルベロス)となった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「ハアァァァァアアア‼︎‼︎」

 

 頭数の増えたケルベロスがDIOに噛み付く。

 

 世界(ザ・ワールド)は真ん中の頭を押さえてガードすると、残りの2つが世界(ザ・ワールド)の両肩に噛み付いた。

 

「ぐぬぬ……世界(ザ・ワールド)‼︎ 止まれぃ、時よォ‼︎」

 

 DIOがそう叫ぶと、世界から色は抜け落ち彼以外の全てが動きを止める。

 その世界でDIOは世界(ザ・ワールド)を消してケルベロスの犬歯から逃れ距離を取る。

 

「そして時は動き出す」

 

 今まで捉えていた者が消えた事で、ケルベロスの八重歯が打ち付けられて鈍く派手な音を立てた。

 

「ケルベロスゥゥゥーーー‼︎」

 

 礼神が叫べばスタンドも叫ぶ。

 

 今回は左右に生えた新たな頭部2つが遠吠えを上げる。

 

「ムゥッ⁉︎ コレは……‼︎」

 

 叫び声の余波なのか、礼神を中心に突風が吹き始める。

 DIOは両手を前で交差させて踏みとどまるが、それ以外に何の異変もない。

 気絶もしなければ、意識が遠のく感覚もない。

 

「限界に達し能力も使役できなくなったか!死ねぃ‼︎」

 

 好機と見たDIOはその場で自身のスタンド、世界(ザ・ワールド)を出して攻撃を指示………

 浮遊する世界(ザ・ワールド)は突風をものともせずに礼神の元へ……

 

 しかし、手の届く距離へ達する前にケルベロスが礼神を包みその拳を阻む。そこでケルベロスも叫ぶのを止めた。

 

「…小賢しい。その自慢の防御力は通用しないとまだわからんのか………ムッ?」

 

 DIOの言葉に対し、礼神は何のリアクションも起こさない………

 

「……コイツ………立ったまま………」

 

 ………礼神はイギー抱いたまま気絶していた。

 

「やはり限界には達していた様だな。それでなお立ち続けるとは……チョイとだけ褒めてやろう………」

 

 そう言って近付くと、半自立型スタンドのケルベロスが未だに礼神を守り威嚇する。

 

 

 

 

『………退け』

 

 

 

 

 何の変化が原因かは不明だが、今まで話さなかったケルベロスは短くそう吐いた。

 

「このDIOに命令するか、三頭猟戌のスタンドよ」

 

『……()()()()を増やしたいか?』

 

 低くエコーの軽く利いた声でケルベロスが脅すように言った。

 

 そしてDIOは、軽傷だが世界(ザ・ワールド)が噛み付かれた時の傷が癒えていない事に気付く。身体が馴染みきっておらず、左半身の治癒が遅い事は知っていた。

 しかし今回の傷は両腕とも再生の色を見せていない。

 

『我々は身体を…スタンドを傷付けたのではない。魂そのものを傷付けた。吸血鬼とはいえ、魂が覚えていない形容に再生させる事は出来ん』

 

 そう言うと、ケルベロスの骨が毛を逆立てたかのように棘状に変化する。殴ればその拳も傷付くだろう。

 

「フンッ、その程度で怖気付くとでも思ったか!時よ止まれッ‼︎」

 

 止まった時の中でDIOは、ナイフを数本取り出して世界(ザ・ワールド)に持たせる。

 

 そして骨の隙間を狙って投げようとしたが、構えたところで異変に気付きその場を離れる。

 

 そして時は動き出す。

 

 ー ザクザクッ ー

 

 先程までDIOがいた場所に別のナイフが降り注ぐ。

 ナイフの投擲に時間を掛ければ刺さっていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ついにココまで来たか。レオン、承太郎‼︎」

 

「待たせたな葎崎……テメェは休んでな」

 

 学帽の鍔を押し上げてDIOを見る承太郎……

 その後ろにはレオンと花京院が睨みを利かせていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。