ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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67.終わる……が、始まる

 あの日、彼らの旅は終了を告げた。

 無事に彼らは、邪神とも呼べるDIOという存在をこの世から追放した………形はどうであれ、彼らは人知れず世界を救った。

 

 その後、彼らは病院へと向かい一角を貸し切る事で休息の場を確保した。

 

 こちらのメンバー全員が無傷というわけもなく、メンバーの半数以上が重症を負っていたからだ。中には長時間に及ぶスタンドの多連使用と、限界を超えた過度な使用による精神的疲労者までいる。

 

 今回の戦いで800を超えるスタンドを散らせた伊月 竹刀。戦闘中に急な変化を遂げた葎崎 礼神。限界を超え、全身の骨が悲鳴をあげた上に白い炎で焼かれたJ・P・ポルナレフ。

 

 彼ら3人は病院に着くや否や気絶するように眠り、礼神に関しては24時間を超える睡眠を取っていた。

 

 次に腕を複雑骨折していたモハメド・アヴドゥル、腹部の骨にヒビを入れた花京院 典明、最後まで戦った空条 承太郎も病室で泥のように眠った。

 

 そして軽傷で済んでいて、スタンドもそこまで使用していないジョセフとホル・ホースは、レオンと共に睡眠を取らずに館を漁っていた。

 

 人払いはウィルソン・フィリップスという男が請け負っていた為、スムーズに作業は進んだ。

 

「回収するべきものは回収し、礼神を最後に皆が目を覚ました。後は重症患者を治すだけなのだが………………」

 

 

「嫌だァァァァア‼︎ 無理無理無理!

  勘弁してくれッ‼︎

 ウオォォォォォオ‼︎‼︎」

 

 レオン・ジョースターは現在進行形で困っていた。

 もしも花京院や礼神を重症のまま帰してしまえば、それを見た親との揉め事が起きるかもしれない。

 ポルナレフにその心配は無いが、旅のメンバーの中で1番の重症患者であり、大火傷によるソレは現代の医学で完治させるのは難しかった。しかしレオンならば完治させることが出来る。

 

 自分にしか治せない怪我を負った仲間が目の前にいる。医学部首席卒業者としてもソレは見過ごすことができなかった。

 

 故に手術を行おうとしたのだが………

 

「俺はこのままでイイっつってんだろ‼︎」

 

「いいわけがないだろ! 腹部の細胞組織が壊滅してるんだぞ⁉︎ 後遺症は確実で、最悪それ以上に悪い結果が待っている……だが手の施しようが私にはある‼︎ 見過ごせるわけがなかろう‼︎ それに私には医学部を首席として卒業したプライドだってあるのだぞ‼︎」

 

 レオンの手により、ポルナレフは担架に乗せられ運ばれようとしている……が、割と元気なのか彼は腕を伸ばし、病室のドアノブを力強く握っている。

 

「手を離せ! 担架が前に進まないだろ‼︎」

 

「嫌だ‼︎ 絶対に離されねぇ‼︎」

 

 担架に乗り進行を阻止するポルナレフと、進行阻止の阻止を試みるレオン……そんな2人を残りのメンバーは病室の中から眺めていた。

 

「ポルナレフまだやってんの?諦めたら?」

 

「礼神ァ〜〜ッ! 他人事だからってーーーッ!」

 

 そこで手洗いから戻って来た礼神が、攻防を繰り広げている2人を見て呟く。

 

 そもそもポルナレフがここまで嫌がるには訳がある。

 

 全身骨折は礼神同様、寝てる間にレオンが真っ先に治療をした。

 だがアヴドゥルの魔導師の赤(マジシャンズ・レッド)の白い炎を浴び、壊滅した腹部の細胞組織はまだだった。ソレを治すにはレオンの力が必要なのだが、その方法は神経などを諸々再生させながら繋ぎ治すというもの。直に神経に触れるなんてものではない。

 

 

 つまりクソ痛いのである。

 

 

「諦めろポルナレフ!」

 

「嫌だァーーー‼︎…ハッ!そうだ、伊月‼︎ テメェの麻酔で痛覚を………」

 

「無理だよーん。麻酔で神経を麻痺させる? その神経をこれから治すわけなんだから打てるわけがない」

 

「諦めろよ、ポールポールく〜ん?」

 

 楽しそうにホル・ホースが挑発するが、それに怒りを返す余裕も無いポルナレフは礼神に視線を移す。

 

「じゃ、じゃあ礼神‼︎ お前の能力で俺を仮死状態に………」

 

「確かにできるけど……僕の努力や思いを踏みにじって死にかけた人に、僕がそんなことすると思う? 別に手術で死ぬわけじゃないんだしさ」

 

「わ、悪かった‼︎ それについては本当にすまなかったと思ってる‼︎ だが俺だってお前を死なせたくはなかった!仕方なかったんだ‼︎」

 

「………ふぅ……わかってるよ。僕の為に動いてくれたんでしょ? 結果的に生きてるし………僕はポルナレフが無事に生きててくれたから、それで十分だよ」

 

「れ、礼神………」

 

 礼神の慈愛に満ちた笑みを見て涙が出そうになったポルナレフ。

 

 しかし、その礼神の笑みが急変する……

 口角は更に釣り上がり、その言葉を待っていたかのように瞳が不敵に笑う。

 

「…な〜んて言うわけでないじゃんバァーカ‼︎」ガッ

 

 運ばれないようにドアノブを掴んでいたポルナレフの手に指をかけ、礼神はポルナレフの手をドアノブから引き剥がした。

 

「生きるという喜びを感じて来い!」

 

「礼神ァーーーーーーーーッ‼︎」

 

 彼女がガッツポーズでレオンにウィンクを飛ばすと、レオンは礼神の行動に笑いながらもウィンクを返した。そして壁から離れ、掴むものがポルナレフの手に届かないように担架を押し始めた。

 

「手ッ‼︎ 誰かせめて手を握っててくれ‼︎ 俺を1人にしないでくれッ‼︎」

 

「あいにく、女以外の手を握る趣味はねぇな」

「オジさんも〜」

「俺も嫌だぜ。花京院、テメェは?」

「僕だって嫌だ」

「私は片腕骨折しているからなぁ」

「ワシは単純に面倒い」

「アギッ♪」

「ポルナレフ バイバイ♪」

 

 「裏切り者ォーーーッ‼︎‼︎」

 

 ここが病院だというのに、大声で通路にこだまするポルナレフの声はレオンと共に遠退いていった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「………フゥー」

 

「お疲れ様ぁー。思ったより早かったね」

 

 二時間に及ぶポルナレフの手術を終え、メンバーが全員集まっている部屋に私は戻って来た。

 私が押す担架の上には、手術前よりも死人に近付いたように見えるポルナレフが横たわっている。

 

 ………念の為に宣言しておくが手術は成功している。

 

「ポルナレフ生きてる〜?」

 

「………………」

 

「そっとしといてやれ、礼神」

 

 担架の上で動かないポルナレフを抱えてベッドに移してやる。それから時計を確認して今後の予定を伝える。

 

「花京院と礼神の怪我は気絶してる内に済ませた。ポルナレフも今終わった。伊月は波紋治療と自前の鱗粉で回復済み…後はアヴドゥルの右腕の途中経過を見て終わりだな」

 

「ようやく帰れんのか…長かったな」

 

 学帽のツバを押し上げ、隠れていた目元をあらわにする承太郎。それを合図にしたように、ポルナレフを除く皆が身体を起こし荷物をまとめる。

 

「レオン……この後君たちは……」

 

「あぁ。ジョジョとディオの埋葬もしてやりたいが、まずはアルシアを帰す……来るか?」

 

「……もちろん」

 

 伊月は視線をこちらに向けることもなく尋ね、返答した。

 

「アヴドゥルにポルナレフ、君達はどうする? もう旅は終わった。ここからは付き合ってもらう必要は無いが…」

 

「最後までお付き合いしますよ」

 

 短くアヴドゥルが答えると、ポルナレフはグッタリしたまま小さく頷いた。

 

「レオン……もちろん俺も同行して構わないんだよな? ジョースター家の末裔として、線香の一本でもたてねぇと気がすまねぇ」

 

「……いや、学生組は帰国した方がいいんじゃないか? 冬休み自体、この旅で丸々潰れてるんだ。学校もあるだろ」

 

「原作よりはまだ猶予あるよ」

 

「決まりですね」

 

 礼神の言葉で承太郎と花京院は纏めた荷物を片手に出発するのを待っている。

 現在時刻は午前10時。

 承太郎はともかく、2人も付いて来る気か…

 

「………まずは財団に連絡だな。イギーを預けないと……」

 

「………アギッ」

 

 ベッドとして使っていた籠の中から飛び出し、イギーは礼神の膝の上に移動する。

 

「んお?………レオンさん、イギーも僕らと来るって」

 

 ………貴様もかイギー。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 財団の病院から空港へ数十分。そこからプライベートジェット機でヴェネチアへ一行は向かった。

 

 サプレーナ島はヴェネチアから僅かに離れた孤島である。そこへ全員で行く理由もなく、用の無い者達は観光地でもあるヴェネチアに残った。

 島に向かったのはレオン、ジョセフ、伊月の3名……彼らがアルシアの遺体と共にクルーザーで向かう。

 

 今のアルシアには遮光性の布で巻かれており、その上で棺桶に収められ極力破損のないようにされている。

 

「……………お久しぶりです。ようこそ…」

 

「………あぁ」

 

 島へ着くとツェペリ家の次男……名をエリスと言う。

 彼は無機質な表情で彼らを出迎えてくれた。

 そんな彼と短い挨拶を交わすと、レオンの後ろで大事そうにアルシアの入った棺桶を運ぶ伊月とジョセフを視認して背を向けた。

 

 そのままエリスに続くように、3人はアルシアを連れて本島へ足を踏み入れる。

 

「お父さん……姉さんが帰ってきました」

 

 修行場とは違う居住地の玄関を潜り、エントランスでエリスが言うと、古くからの知人が集まってきた。

 その中にはアルシアの夫、鈴原 海斗の姿もある。

 

「……シーザー」

 

「…老けたな、ジョジョ」

 

 事前にレオンはシーザーに連絡を入れていた。その為、ツェペリ家の面々はアルシアが永眠した事を知っていたのだ。

 

 だがそれでも……真実を知らされていても希望を抱きたくなってしまうのが人間である。

 

 アルシア・アントニオ・ツェペリ………彼女の遺体を目にして、シーザーは涙を目尻に浮かべる。

 

「……アル…シア」

 

「……姉さん」

 

 無意識にそう呟く彼らを見かねて、レオンは狭いその空間からアルシアを出す。エントランスの床には毛布が数枚敷かれ、その上にアルシアを寝かせた。

 

「アルシア……そう。本当に逝ってしまったのね」

 

 横たわるアルシアの頭上で正座をし、シーザーの妻でありアルシアの母である老女……ルイーザはアルシアの頬を撫でる。

 

「小さい頃から貴女は、こうして私達に触れられるのを嫌がっていましたからね。照れてるようでしたが、同時に何かを恐れているようでした」

 

「ッ⁉︎」

 

「……私…ちゃんと貴女の母でいられましたか?」

 

 悲しみと不安げを混ぜて流れる涙を見て、伊月 竹刀は人知れず握り拳を作る。

 

 

石仮面なら…

 

「………………」

 

 そう呟かれた言葉は、その場にいた者達 全員の視線を集めた。

 集められた視線の先にいるのは、アルシアの夫であった鈴原 海斗……僅かに血走り涙を含んだ目を細め、レオンの前で懇願を始める。

 

「お願いします‼︎ 波紋や幽波紋の事の全ては知りません。でも‼︎ 石仮面なら知っています‼︎ あれなら吸血鬼として……どうにかアルシアを呼び起こせる………まだ石仮面には不明な点がありますが、きっと上手くいく‼︎」

 

 レオンの胸倉を掴みながらこうべを垂れ、海斗は静かだが荒々しい声でそう提案した。

 

 そんな彼の腕を掴み胸倉を離させると、レオンは海斗の両手を包み込み首を振る。

 

「………無理だ。石仮面は人の脳にある未知の器官を刺激し、眠っている可能性を呼び起こす物…………人の死を覆す事は出来ない」

 

「なら……貴方が……レオンさんが彼女を起こしてください。吸血鬼には人を蘇らせる力が……」

 

「無理だ……私は厳密に言えば吸血鬼ではないからな」

 

「ならボクが石仮面を被ります‼︎ 日に出れない身体になるくらい、どうって事……」

 

「それも無理だ。アルシアは既に………ゾンビになっている………2度目は無い」

 

「そもそもゾンビは生きていない。その身体と記憶を受け継いだ別の生き物じゃ………アルシアもそれは望まんじゃろ」

 

 レオンに続くジョセフの言葉を聞き、海斗は顔を上げて充血した目を向ける。

 その目には僅かながらの殺気のような物が篭っていた。

 

「…そうだ。私のせいだ……約束をしておいて………任されといて、私は助ける事が出来なかった」

 

「………彼女は……ボクの前では滅多に笑わないんですよ……」

 

 糸が切れたように膝をつき、ついに涙を流しながら譫言のように呟き始める。

 

「彼女は強くてしっかりした女性ですが……弱味も見せずに強がってるようにも見えました………ボクが辛い時に限って笑顔を見せてくれて、ボクを支えてくれました……彼女が辛い時にボクは何も出来なかったのにッ‼︎

 

 ………プロポーズしたのはボクですが………ボクは彼女を……幸せにする事すら出来なかった‼︎」

 

 

 「それは違う‼︎」

 

 

 悲鳴が混じったような声でそう叫んだのは、今までずっと黙っていた伊月だった………

 

「………貴方は……」

 

「俺の名は……沙村(さむら) (あき)。今は偽名で伊月 竹刀と名乗ってる。彼女を……アルシアを殺した張本人だ」

 

 伊月を偽名と言い耳慣れぬ本名を述べた彼は、レオンと海斗の間に歩いて割り込む。

 

「今回の件………アルシアが捕まったのは、旅行が原因とかじゃないんだ。助けられなかったのも……レオンのせいじゃない………全ては俺のせいだ」

 

「…サムラさん……詳しく…話してもらえますか?」

 

 ルイーザがアルシアの側に座ったまま、彼の本名を呼んで尋ねる。

 

「………あんたらは知らないと思うが、俺はアルシアの………その……友人だった……もちろん恋仲ではないが、俺にとっては大切な人だった。それで………………」

 

 そこで一度口を閉ざし、生唾を飲んでから先を話した。

 

「………DIOは俺を利用する為に君達3人を拉致した。人質にされ、俺はDIOの手下として……レオン達の敵として立ち回っていた………その結果が不満だったんだろう………だからゾンビにされ、俺はそんな彼女を殺した。だから………」

 

「だから全責任が自分にある………と?」

 

「………そうだ」

 

「………………」

 

 伊月の言葉を繋ぐように、シーザーはその先を言い当てた。

 

「そうか。君が………………()()()()()

 

「ーーーッ⁉︎ 何を言って‼︎………俺はそんな言葉を受け取れるような人間じゃない‼︎」

 

「………娘は誰かを殺したのか?」

 

「………いや…」

 

「なら君は感謝に値する人間だ。君のおかげで、アルシアは罪人にならずに済んだ」

 

「………………」

 

 シーザーの言い分はわかったが……その言葉は伊月の心を人知れず傷付ける。しかしその言葉に伊月は、同時に救われた気がした。

 ()()()罪人にさせずに済んだ………と。

 

「貴方は………ボクが幸せにできなかったと言った時……否定しましたよね?…何故ですか?」

 

「………彼女は、ツェペリ家に産まれて……夫と娘に恵まれ、幸せだったと言っていた。彼女は………感謝していた」

 

「ッ⁉︎ 彼女が本当に、そう言ったのですか⁉︎」

 

「………えぇ。死に目にも立ち会ってますので」

 

 少し脚色されているが、指摘するわけにもいかずレオンは黙る。

 

 

 

 

 

 その後、葬式の日取りなどを決めてからレオン達3人はヴェネチアへ戻るべくクルーザーへ乗り込む。

 

「今度は旅の皆さんを連れてきて下さいね。歓迎します」

 

 シーザー達に見送られ、レオン達はクルーザーを出した。

 

「………まぁ………いいんじゃないか?」

 

「そう?」

 

「全ては聞こえなかったが、私も死に目には立ち会っているからな……少なくとも、貴様への謝罪文だったのは知っているぞ」

 

「でも彼女が今世に幸せを感じていたのは事実だぜ。あぁも旦那さんが不安がってたら真実伝えて幸せになってもらいたいからね」

 

「……お前さんはどうすんじゃ」

 

「この後? ん〜〜〜。死のっかな?」

 

 軽いノリだが、割と本気で考えているのがその表情からわかる。

 

「……アルシアは謝っていたな。本当はどんな内容なんだ?」

 

「………お袋を殺して親父から大切な人を奪ったのに、私は娘にまで恵まれました。幸せを奪っておいて……私だけ幸せになってごめんなさい………要約するとこんな感じ」

 

「………ならアルシアは、貴様が今死ねば後味の悪い結果を残した事になるな」

 

「そんな事は………」

 

「あの世で言い訳ができる程度には、もう少し生きたらどうだ?」

 

「………………」

 

「………薬剤知識はあったな。雇うだけの人材としての価値はあるが、スカウトに応じるかは自由だ。さぁ、決めろ 伊月 竹刀………否、本名は沙村 秋 だったか」

 

「ん〜………じゃ、ヨロシクね 社長。あと、オジさんの事は引き続き伊月 竹刀と呼んでくれ」

 

 伊月はそう言って、控えめに乾いた笑い声を上げた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 レオンさん達がサプレーナ島から戻ってからも、僕らは軽くヴェネチア を観光していた。

 その後、オジさんとホル・ホースはロンドンまでは同行せず、僕らと別れると言い出した。そこでレオンさんから直通の電話番号のメモ書きを受け取り、2人とは空港ロビーで別れた。

 

 そんな2人と別れた僕らは、レオンさんの所有するプライベートジェット機ですぐにロンドンへ発った。

 

 すぐと言っても、発った時間は夜の9時………

 ヴェネチアで観光したりもあり出発が遅れ、ロンドンに着くのは翌朝になるらしい。

 折角のヴェネチアだから少しでも観光したいし、シスターにお土産買いたかったし…うん、しかたないよね!

 

 ジェット機の中で仮眠を取っていると、急な揺れで目を覚ます。

 

 ………そして何故かジョセフさんに視線が集まる。

 

「………ワシ何もしてない」

 

「……どうやらロンドンに着いただけのようですね」

 

 アヴドゥルさんの言葉に皆が胸を撫で下ろし、各自が荷物を片手にジェット機から降りた。

 

 降りてからは馬車でまた移動……そうやってようやく着いた目的地は、木漏れ日の差し込む幻想的な場所にあった。

 

 背丈の高い木々のトンネルをくぐった先にある開けた場所…そこに建てられた豪邸の玄関には、1組の老夫婦が出迎えてくれていた。

 老夫婦の2人は見たところ70くらいかな……シスターやジョセフさんと歳は近いと思う。

 

「…は〜………僕ココ好き」

 

 無意識のうちに口から溢れた間伸びした声に続き、僕は短く好感を訴えた。そんな僕の隣では、無表情に見えて柔らかい表情を浮かべる承太郎がいる。

 

「覚えているか承太郎……ココはお前さんが産まれて1年も経たぬ頃に、一度だけ連れてきた事のある場所じゃよ」

 

「いや………覚えてはないが、どことなく懐かしいぜ」

 

 レオンさんはその豪邸に住む2人に声を掛けると、2人を連れて何処かへ歩き去った。それにジョセフさんもついて行くので、僕らもそのままついて行く。

 

「………ココは……墓地みてぇだな」

 

「そんな事は見ればわかる」

 

 次の目的地に着くとポルナレフと花京院がそんな会話を挟み、レオンさんは大事そうに持ってきた骨壷と思われる物を2つ持って中へ……

 

「………長らくお待たせしました、ジョースター卿」

 

 そう言って2つ並んだ暮石の前の穴に、骨壷を1つずつ入れて埋める。

 それが終わると老夫婦の2人が、花束をそれぞれの暮石の前に置いた。

 

 ここまでは付いてくるだけだったイギーだが、骨壷を埋める際に足を使って埋めるのを手伝ってた。

 

 イギー可愛い。マジ可愛い。

 

「……………」

 

 一歩下がったレオンさんは目を閉じ黙祷を捧げる。

 それを見習って承太郎とジョセフさんも帽子を取り、ジョースター家ではないが僕らも黙祷を捧げた。

 

「………終わったんじゃな」

 

「………………あぁ………私はもう少しココにいる。先に屋敷に戻っていてくれ」

 

「わかった」

 

 レオンさんを置いて、僕らは来た道を戻る。

 

 

 

 

 

「えぇ〜、もう行くのかよ」

 

「あぁ、ポルナレフとアヴドゥルには悪いが、学生が3人いるんでな」

 

 屋敷に戻って老夫婦のおもてなしを受けていると、暫くしてレオンさんが戻ってきた………………目尻が少し赤かったのは気のせいって事にしとく………

 

 レオンさんが戻ってからも少し雑談したが、明日の学校には間に合わせようとしてるらしく帰宅を促してきた。

 

 ポルナレフは少し残念そうだが、アヴドゥルさんは特に異論もなく「そうですね」と返した。

 

 ちなみに学生組はまだゆっくりしたいでーす!

 

 ………あ、それとココに住んでる老夫婦はリサリサさんとジョージさんだった。ジョセフさんと歳近いとか思ったけど、ジョセフさんのご両親だった。波紋使いの年齢詐欺レベルが凄い

 

 にしてもジョージさん……長生きしてリサリサさんを1人にしない為に波紋を習うなんて、凄く奥さん思いのいい人なんだね。

 習ったのは基礎だけと言ってたけど、それでも100歳近い老人にしては凄く若い。

 

「〜〜〜〜〜〜。」

 

「……あぁ、また来ます」

 

 リサリサさんの言葉に承太郎は気恥ずかしそうに答えた。無表情を装ってるけど、少し照れているのが僕にはわかる!

 

 英国の言葉が話せないので幽波紋使いの承太郎の言葉しか聞き取れなかったけど、「またおいで〜」みたいな事を言われたんだろう。

 

 そんなわけでまた馬車で空港へ向かい、来た時と同じジェット機に乗り込む。すると時間を少し開けて、ジェット機は離陸した。

 

「………あれ? レオンさんの耳………」

 

 ちなみに操縦するのはレオンさんでもジョセフさんでもなく、雇ったパイロットさんだ。

 

 その為、客席……と呼んでいいのかわからないけど、レオンさんはそこで僕らと一緒にいた。

 

 そこで僕はある事に気付いたのだ。

 

「ピアスの穴が埋まってるね。跡もない…再生が早いね」

 

「そういえば前々から気になっていたのですが……」

 

「ん?なんだ花京院」

 

「レオンさんはあまり派手な服を着ませんよね」

 

「あぁ、シンプルな服の方が好きだしな」

 

「ですがピアスは結構付けていますので……」

 

「そういうことか……実は全て貰い物や、突き返されたプレゼントなんだ。それで付けずに持っているのも勿体ないかと思い………気付けば4組手元にあったから、4組分のピアスホールを空けたわけだ」

 

「へぇー………もしかして僕が貰った奴も?」

 

「それは確か、リサリサの機嫌を取るためにプレゼントしたが突き返され、仕方なく自分で付けていたピアスだな」

 

「………リサリサさんに何したの?」

 

「ジョージとリサリサの結婚式に参加出来なかった為、代わりにそれをプレゼントしたんだ。いらないから顔を出せと怒られたな」

 

「今ついてる3つは?」

 

「上からジョジョ、ツェペリ男爵、ディオだ」

 

「………よく見たらデザインも少し違う…色は同じだけど…」

 

「好きな色を聞くから青紫と言った……そしたらこうなった」

 

 シーザーと繋がりがあるのは知ってたけど、ツェペリ男爵の代から交友関係があったんだね。

 

 にしても旅の最中と違って、今日はみんなとよく話したな。

 

 そんな事を思いながら、僕らは旅を振り返ったりして雑談に花を咲かせるのだった………

 

 

 

 

 〜第3部 完〜

 

 

to be continued→

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………そう思った時期が僕にもありました。

 

 僕らはDIO以上に厄介な敵の存在を忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として機体は傾き始め、運転席から雇ったパイロットがこちらに叫ぶ。

 

「レオンさん!バードストライク です‼︎」

 

「「「「「「「………………………」」」」」」」

 

「………ワシ何もしてない‼︎」

 

 ジョセフさんには悪いけど、僕は心の中で呆れながらも呟いた。

 

 

 

(………………うん、知ってた)

 




礼神
「知ってた」

一同
「「「「知ってた」」」」

作者
「知ってた」

伊月
「だから言ったらホル君。ヴェネチアで別れるが吉だって」

ホル・ホース
「みてぇだな」

ジョセフ
「画面の前の君……次にお前さんは「うん、俺も知ってた」と言う‼︎」
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