ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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新年、あけましておめでとうございます。

私は新年早々に、この「ジョースター家と吸血鬼」を誤って削除するという地獄を見ました。

前書きと後書きも……後々復元しないとダメかな………

せめてキャラ紹介とスタンド解説だけでも………はぁ

………それでは68話、グダグダっとどうぞ…


68.神の微笑みは時に冷たい

「ワシは‼︎ 何も‼︎ し・て・な・い・‼︎‼︎」

 

「わかってるよジョセフさん。だから落ち着いて」

 

 私の私有物でもあるジェット機で日本へと向かっている最中、我々の乗る機体はバードストライクにあい海上に不時着した。

 

 その後、ジェット機に収納しておいた救命ゴムボートで海上を彷徨っていた。

 ボートの他に今手持ちにある物は、大まかにいえば携帯食料と水、蒸留機、救急箱、ホイッスル、ポケットナイフくらいだ。

 

 救急箱の中身や皆の個人の手持ちを上げればまだあるが、人数と比べればコレは少し心許ない手持ちだ。

 

「大体‼︎ 旅の最中はワシのせいワシのせいと囃し立てるが、その事故全てに承太郎と花京院は立ち会っておるんじゃぞ‼︎ 本当に乗り物運が悪いのはお前さん達じゃないのか⁉︎」

 

「心外ですねジョースターさん。生まれてこのかた…僕はこの旅を始めるまで事故に見舞われた事はありません」

 

「それに紅海を渡ったクルーザーに関しては、完全にジジイの不注意だぜ」

 

「ついでに言うとジョセフ……お前はその乗り物運を受け入れ活かし、アヌビス神を倒したじゃないか」

 

「グヌヌ………」

 

 花京院、承太郎、私による立て続けの言葉に反論出来ず、ジョセフは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて黙りこくる。

 

 そんな中…ジョセフに小言を言いながらも双眼鏡で周囲を見回していた承太郎は、ボートの上で座っていた私の膝を叩き話しかけてくる。

 

「レオン、なんか見えるぜ」

 

「………何も見えな……いや、確かに薄っすらと影が見えるな」

 

 星の白金(スタープラチナ)と双眼鏡で見つけたソレは、私の観察眼を持ってしても辛うじて視認できる程遠かった。

 

 

 

 

 

「ジョースターさん……コレは…まさか………」

 

「……………ウム、そのまさかじゃ」

 

 遠くに見えた物は島だった。

 遠くから見た時点で薄々理解していたが、我々はこの状況を今再確認した。

 

「……やれやれだぜ」

 

 上陸した砂浜に生えていたヤシの木から葉を1枚ちぎり、その上に砂でジョセフに島全体を念写させた。

 

 するとどうだろう……現れた島の地図は見事に葉の中に収まり、ココが絶海の孤島だと教えてくれる。

 

「色々と終わった後でよかったな」

 

「……花京院、周囲の様子はどう?」

 

「上から見渡す限り、僕らのいる孤島以外に大陸は見えないな」

 

 法皇の緑(ハイエロファントグリーン)で上空から島を見渡す花京院は、礼神にそう答えた。

 そう答えられた礼神はとういうと、面倒臭そうに溜息をつく。

 

「……はぁ……携帯では連絡ができない。救難信号を試すか」

 

「となると……サバイバルか?」

 

「そうなるな……救助が来るまでだが」

 

 ポルナレフの言葉にアヴドゥルがそう返す。

 

 すると礼神は軽く項垂れた。

 

「うわぁ〜……旅は過酷で野宿もしたけど、それでも食料とか水は有ったのに………今回はそれが無い………」

 

「まぁなんとかなんだろ」

 

「なんとかなるって……ポルナレフのその自信はどっから来んの?」

 

「逆に聞くけど礼神……お前はこのメンツみて不安なのか?」

 

 ポルナレフに言われ周囲を見回し、礼神はメンバーを確認する。

 

「………大丈夫そうだね」

 

「だろ?」

 

 火に関してはアヴドゥルがいるから問題ない。体力仕事はこれだけ男手があるし、地図は念写がある。食料に関しては知識がある。この孤島で何が採れるかはまだわからないが、少なくとも海があるから魚は獲れるだろう。

 

「そうと決まれば善は急げだな! アヴドゥル、狼煙と水の蒸留頼むぜ。俺は木材を取ってくる」

 

 何故か張り切るポルナレフは続けて、我々全員に役割を割り振り始めた。

 

「何故ポルナレフが仕切るんだ……」

 

「んな事は別にいいだろ花京院。まずアヴドゥルと俺はここに残るからよ、承太郎、ジョースターさん、レオン、イギーは島の中……花京院と礼神は海で魚捕って来てくれ」

 

「…ッ‼︎」

 

「花京院……頼んだぜ!」

 

 指示を聞き終えて花京院が目を丸くし、そんな彼にポルナレフは親指を立てて軽くウィンクを飛ばした。

 

 これを狙ってたから妙に張り切ってたのか………まぁ男子高校生の青春を邪魔するわけにはいかない。ここは乗ってやるか。

 

「では早速島内に入るとしよう。あぁそれと、君は彼らとここに残り救難信号を試してくれ。イギー、先頭を頼めるか?」

 

「アギッ!」

 

 パイロットを担っていた者とイギーにそう指示すると、「フフンッ!」と誇らしげな様子で 悠々と歩き出す。

 

「え、ちょ、待ってよ。僕泳げないんだって」

 

「泳がなくて大丈夫だろう。気絶した魚を花京院の法皇の緑(ハイエロファント)で引き上げればいい。水中だと音は良く聞こえるぞ」

 

 ………むしろ聞こえすぎて辺り一帯に魚が浮くかもしれないな。

 

「皆ホイッスルを持っておけ。ポケットナイフは花京院に渡しておく。毒針のある魚が取れたら、危ないからその部位を切り落とすように………万が一刺された時の為にポイズンリムーバーも渡しておこう」

 

「………毒持ちだとわかっていて、その魚を引き上げようとはしませんよ」

 

「………そうか」

 

 種類によっては毒抜けば美味いんだがな……フグとか。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「クンクン、フンフン………アギッ」

 

「よし、アレだな」

 

 イギーの見つけた果実に狙いを定め、承太郎は星の白金(スタープラチナ)の脚力で跳躍してむしり取る。

 

「そういえば承太郎。空は飛べるんだよな……どこまで飛べる?」

 

 ディオと空中で殴り合っていた事を思い出し、不意にレオンが承太郎に尋ねてみる。

 すると承太郎は、手にした果物に虫喰いがないかを見ながらぶっきらぼうに答えた。

 

「さぁな。あの時は極度の集中状態だった。100%……120%……それ以上の力が発揮できていた気がする……アレを極限状態というのか火事場の馬鹿力というのかはわからんが、少なくとも今同じことをしろと言われてできるとは思えねぇな」

 

「そうか………ん?ジョセフ。何をソワソワしている………………まさかと思うが、余計な事はするなよ?」

 

「ギクッ⁉︎ い、いや 少しくらい………」

 

「ダメだ」

 

 花京院達がいるであろう浜辺の方を見て、ジョセフはその場でウロウロしていた。それに気付いたレオンはそっと釘を打つ。

 

「別にいいじゃないか。お前さんだって気になるじゃろ?」

 

「いや全然? 報告されれば興味を持って耳を傾けるが、話そうとしないなら追求しない。お前だって若い頃は深く追求されるのを嫌がっていただろ」

 

「だがワシがここで覗いておけば後からダメな点を指摘できるやもしれんじゃろ?」

 

「いや何様だ貴様は。スージーQとのデートプランを私とシーザーに2時間ばかり相談しに来た奴が何を言っている」

 

「孫の前でそれを言うんじゃない‼︎」

 

「アギッ」

 

「この穴の中だな。おいジジイ、いい加減コッチを手伝ってくれねぇか?」

 

 レオンとジョセフが口論を広げてる間も、承太郎とイギーは食料調達を続けていたらしく地面に果物が錯乱している。

 

 そして今承太郎は、しゃがみこんで木の根元付近の穴に星の白金(スタープラチナ)の腕を突っ込ませていた。

 

(なんでワシだけ怒られた?)

 

「悪い承太郎………で、今獲ろうとしてるのは?」

 

「果物ばかりは味気ねえからな。この旅でポルナレフと出会った時の店で出されたのを思い出した」

 

「じ、承太郎………それってまさか………」

 

 だいぶ奥にいたのか星の白金(スタープラチナ)の二の腕まで突っ込んでいた穴から、承太郎はゆっくりとスタンドの腕を戻させる。

 

「カエルだぜ」

 

「Oh My God‼︎ 食うのか⁉︎」

 

「食うぜ」

 

「Oh My God‼︎」

 

 「やかましィッ‼︎ 」

 

 花京院達が気になり手伝わず騒がしい口論を始める。それが終わったと思えば手伝わずに喚くばかり………

 

 それが原因で放たれた承太郎の一喝で、付近にいた鳥は一斉に飛びだった。

 

「………カエルもいいが鳥肉も取るか」

 

「あぁ、頼むぜ」

 

「ワシも手伝おう」

 

 飛びだった鳥を眺めながらレオンが呟くと、ジョセフがそう言って歩き出す。しかしその肩をレオンが掴み止める。

 

「何処へ行く。そっちに飛んだ鳥はいないぞ」

 

「……バレた?」

 

「ハァーーー。だから余計な事をするなと言ってるだろ。アドバイスどうこう言える立場じゃないんだからな。それともなんだ? 意外と経験豊富なのか?」

 

「そりゃもちろん………」

 

「………………モチロン?」

 

「…あ…………」

 

 一瞬の沈黙。

 

 承太郎は然程興味が無いのか黙々と作業をしていたが、レオンとジョセフは硬直している………と、言うよりは蛇に睨まれた蛙状態にジョセフはなっていた。

 

 

 

 

 

…………モチロン………何だ?

 

 

 

 

「ーーーッ⁉︎」

 

 黙々と作業を続けていた承太郎だが、背後から低く響いた底冷えするような声でによって作業を中断する。

 

 振り向けば承太郎に背を向けるジョセフと、逆光でもないのに表情を陰で隠したレオンが佇んでいた。

 

「イヤ、若い頃じゃよ⁉︎ スージーQと出会う前どころか、波紋の修行にも手をつける前の事じゃ‼︎」

 

「ほう………不倫などという、低俗な行為はしてないと………ナライイガ」

 

 影DIOならぬ影LEON状態で、軽くジョセフの肩に片手を置いてからすぐ横を通り抜ける。

 

 軽く置かれただけだったのだが、ジョセフはその肩から冷や汗を滲ませた。

 

 ジョセフの後ろにいた承太郎の隣も、レオンは必然的に通り過ぎる。その時承太郎が見たレオンの暗い笑顔はこの世の何より恐ろしく感じた。

 

(なんで目をしやがる……まるで養豚場の豚を見る目だ。可愛そうだが明日には豚肉として並ぶんだなっつぅ冷酷な目だ‼︎)

 

「………どうしたイギー。何を怯えている?」

 

 本能でレオンの殺気を敏感に感じ取ったイギーは、地面に伏せて前足で頭を抱えている。

 今まで澄まし顔で作業をしていたと言うのに、今はガタガタと震え動けずにいたのだ。

 

「さぁ、作業を続けよう。人数分取らなければいけない………狙える所まで鳥に近づければ良いが………」

 

(レオン………本当にDIOの野郎に負けたのか?)

 

 精神的に弱っていたとは言え、レオンを倒したDIOに自分が勝った事実を、承太郎は自分で疑問に思った。

 

「ジジイ………テメェ死ぬのか?」

 

「………ワシ死ぬの?」

 

「フフッ…何を言っているんだ? 無実の人間()裁かれない………だろう?」

 

 その日、ジョセフは思い出した。レオンに支配された恐怖を……真偽を見極め裁く事が確定した時の絶望を。

 

(あ………ワシ死んだ)

 

 幼少期のジョセフの世話をした者のうちの1人はレオンだ。ジョセフのつく嘘の癖を何となくレオンは感じていた。

 

 後は証拠を掴むだけ。

 

 それさえ掴めば、レオンは行動を起こすだろう。

 

「ジジイ……詳しい内容はよく聞いてなかったが………したのか?」

 

「………………………」

 

 承太郎の耳打ちに対しジョセフは黙り込む。それはつまり肯定と受け取っていいだろう。

 そしてレオンには承太郎の声は届いていないようだ。

 

「このままだと殺される勢いだぜ」

 

「………承太郎。ワシが死んだら、皆にヨロシク言っといてくれ」

 

「諦めんじゃねぇ」

 

 そこで問題だ!

 すでに殺気を張り詰めさせたレオンを相手に、ジョセフはどうやってこの修羅場を潜る?

 

 3択-ひとつだけ選びなさい

 

 ①.素直に謝罪し許しをこう

 ②.このまま嘘を貫き欺く

 ③.裁かれる(死ぬ)。現実は非情である

 

(③は論外。①も実行して土下座しようものなら、そのまま頭を踏み潰されそうじゃ………かといって選択肢②は………

 

 ①=死ぬ

 ②=失敗すれば死ぬ

 ③=モチロン死ぬ

 

「……葎崎はこの事を知ってるのか?」

 

「ッ‼︎ そうじゃ…礼神の証言は信憑性が高い………」

 

「つまりレオンが葎崎に確認をとったらゲームオーバーか……ジジイ、テメェは間違いなく裁かれる。だが死ぬか否かは変えられるかもしれねぇ」

 

「なん……じゃと………?」

 

 承太郎の言葉に希望の光を見たのか。ジョセフは藁にもすがる思いで承太郎に尋ねる。

 

「人の目があれば、そう簡単に事は起こせねぇだろう。だがここは無人島だ………せめてここを脱出し帰国する。そうなれば殺害までは流石にできねぇだろ」

 

 それを聴き終え、「たしかに…」と静かに頷く。

 

「レオンは嘘だとわかっていても、今回に限っては本当であってほしいと願っているはずだ。決定的な証拠を掴まない限りは安心だ……だがこの島には葎崎がいる………」

 

「まずは…礼神に口止めをしなければ………」

 

「2人とも! 何をコソコソしている?」

 

「……なんでもねぇ」

 

 少し遠くからレオンの声が響き、2人は怪しまれない為にも足を進める。

 ちなみにレオンの表情には未だに影がある。

 

「……ところで承太郎……お前さんはワシの肩を持つのか?」

 

「んなわけねぇだろ。だが………今はそれどころじゃねぇぜ」

 

 血の繋がった実の祖父が不倫している……その事実に対して思う事はモチロン承太郎にもあった。失望、怒り、悲しみ………

 だが彼はレオンの殺気を目の当たりにし、それらの感情を全て棚上げした。

 

 

まずは身内(ジョセフ)の命を

 邪神(レオン)から守らねばッ‼︎

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 ……アレからどれくらい歩いただろう。

 

 ポルナレフに言われるがまま、僕は葎崎さんとペアを組んで魚獲り向かっていた。

 

「ねぇ花京院」

 

 小さくはないがそこまで大きくもない孤島だ。

 

「……花京院?」

 

 法皇の緑(ハイエロファントグリーン)で空から島を確認した時見つけた岩礁……そこでなら魚が獲りやすいと思って向かっているが、緊張のせいかすごく長い時間に感じる。

 

「カキョーイーン!」

 

 目的地まではそこまで遠いはずはないんだけどな…

 

「………テイ」ツンッ

 

「ッ‼︎」ビクッ⁉︎

 

 不意に葎崎さんに脇腹を突かれ、緊張も相まって過剰な反応を示す。その反応が面白かったのか、葎崎さんは目を細めて笑みを浮かべていた。

 

「僕の声聞こえなかった?考え事?」

 

「い、いや。別になんでもないよ。それで、何か用かな?」

 

 平然を装ってそう返答するが胸の動機が止まらない……自分でも顔が赤くなっているのがわかる。

 

「魚の獲れそうな岩礁ってどの辺?」

 

「もう少し先……あの岩陰の向こうだ」

 

 そんな僕の様子に気づきもせず、葎崎さんは質問をし、僕はそれに返答する。

 

 彼女は承太郎の幼馴染という事もあり、承太郎に好意を寄せる女子達から煙たがれているらしい。

 それを面倒に思った葎崎さんは、学校の制服も改造して男っぽい服を着ているという。

 そんな彼女だから男子に好意を寄せられてるとは思わず、きっと僕の気持ちにも全然気付いていないんだろう。

 

「………はぁ」

 

「ん?どったの、溜め息ついて…相談乗る?」

 

「いや、大丈夫」

 

 何を隠そう、僕の溜め息の原因は君だからね。

 

 DIOを足止めする為にトラックから飛び降りる直前の告白………かなりの勇気を振り絞ったものだったのだが聞こえなかったなんて………

 

 病室でそれをジョースターさん達から聞いた時は、流石に心が折れそうだった。

 

「ついたー。おぉ、確かに魚獲れそうだね………で、どうやって獲ろう」

 

 目的地についた彼女はそう言って、ひとまず自身のスタンドを出す。

 

「ん? 葎崎さん。そういえばスタンド……」

 

「あぁコレ? 気付いたら本物になってたんだよ。思い当たる節はあるんだけど ビックリしたよ」

 

 彼女の言う「本物」とは見た目の事だろう。

 以前は1つだった頭が3つに増え、 三頭猟戌(ケルベロス)の名に沿った風貌を今はしている。

 

「レオンさんに相談したら「エネルギーの本質が変化してる」とか言ってて、能力にもなんらかの変化があるかもしれないってさ」

 

「そっか。ひょっとして、葎崎さんがこの旅で1番進化した幽波紋使いなんじゃないかな?」

 

「そうかな? それはそうとどうする?気絶させると……おそらく海一面に無駄な被害が………ん、この岩礁の浅瀬の形……もしかして引き潮になれば、ここと海が隔離されたりしないかな」

 

 彼女の言う通り、水面が下がれば天然の大きな生け簀になりそうな窪みがそこにはあった。

 

「たしかに……少し待とうか」

 

「うん。隔離すれば声使っても、海に被害は出ないでしょ………たぶん」

 

 苦笑いを浮かべた彼女は出したばかりのスタンドを消し、ちょうど腰がかけられそうな岩の上に座る。

 

「……? 何立ってるの? 花京院も座ったら?」

 

「そうだね。失礼するよ」

 

「………………」

 

「………………」

 

 ……ダメだ。話してる時は自然体でいられたが、黙ると途端にまた過緊張してしまう。

 

 何か話す事は無いだろうか………

 

 ………いや、今こそ思いを告げるべき………か?

 

 ポルナレフにここまでされて進展が無かったら何を言われるか………ジョセフさんがチャチャ入れに来る気もするが、レオンさんがそれは止めてくれるだろう。

 

『ここで決めなきゃ男が廃るぜ?』

 

 クッ……ポルナレフの幻聴が………

 

「カキョーイーンッ‼︎」

 

「ワワッ‼︎ な、何だ⁉︎」

 

「またボーッとしてたよ。具合でも悪いの?」

 

「大丈夫だ」

 

「本当に?」

 

「本当に。話を聞いてなかったのは悪かったよ」

 

 軽く謝罪を挟み、僕は深呼吸を何度か繰り返す。

 

 ………よし。

 

「どんな魚が獲れるんだろうね」

 

「葎崎さん‼︎」

 

 意を決して、僕は彼女と向き合う。

 名前を呼ばれこちらを向くと同時に、藍色の短い髪が首の動きに遅れて揺れる。

 沈みかけの夕日に照らされた瞳は橙色に色付き、潤いのある唇が僅かに動く。

 

「何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は…「やかましィッ‼︎ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー バサバサ ーーー

 

「………今の承太郎の声だね。どうしたんだろ」

 

 承太郎の怒気の混じった声が轟き、それを恐れるように鳥達が一斉に飛び立った。

 

「…それで、なんだっけ?」

 

「………」

 

「………」

 

「………僕は蟹も獲れるんじゃないかと思う」

 

「カニかー。食べれるカニかなぁ」

 

 違う……違うんだ………

 

「……どうした花京院。本当に変だよ?」

 

「………大丈夫だよ。それより、そろそろ水面も下がってきた頃じやないか?」

 

 重い腰を上げ、法皇の緑(ハイエロファントグリーン)を使った漁業を始めようとする僕……それに続いて立ち上がる葎崎さんは、首を傾げ僕を見つめていた。

 

 

 

 

 

「大量………とまではいかないけど、人数分は確保できたね」

 

「……そうだね」

 

(花京院、やっぱり変……だなぁ)

 

 漁業を終えると、法皇の緑(ハイエロファントグリーン)の触手でできた網の中には数匹の魚や蟹、海老が入っていた。

 

(やっぱり無茶してるのかな。漁業手伝おうとしたら「別に大丈夫」って言って手伝わせてくれないし………心配だから早く戻ろう)

「それじゃ、みんなの所に戻ろ」

 

「あぁ……」

 

 ………結局、伝えられないままか。

 

 このまま戻って、皆になんて言われるか………ポルナレフとジョセフさんには、間違いなく揶揄(からか)われるだろうな。

 

 このまま戻るか………それとも今ここで言ってしまおうか………

 

「……………よし」

 

「………花京院‼︎」

 

「痛ッ!」

 

 不意にまた葎崎さんの攻撃に会う。

 今度は指先で突くといった優しいものではなく、腕を引っ張られその場で押し倒されるというものだった。

 

「………………ゴメン花京院」

 

「………えっ?」

 

 何事かと状況を把握するよりも早く、岩陰に押し倒された僕の上で、彼女は身体を重ねるように密着してきた。

 突然の出来事で、僕はもちろん脳内がショートする。

 

「へ………」

 

「……ハァ……ハゥ………」

 

 身体の全体重を僕に預け、耳元で葎崎さんは息遣いを荒くさせる。そして豊満な双丘は彼女の体重で、僕の胸の上で潰れかけていた。

 

「……ぽい………りむ………」

 

「ななな何をッ⁉︎」

 

 弱々しい手付きで僕の懐を探り始める。そして目当ての物を見つけたのか、彼女はそれを取り出そうとするが何やら手間取っている。

 

「葎崎さん………まさかッ‼︎」

 

 彼女が取り出そうとしている物を察して、葎崎さんの手を払ってからポケットの中身を取り出す。

 それはレオンさんから預けられたポイズンリムーバー…蜂などの毒針に刺された際に使う、毒を吸い出す道具だ。

 

 これを取り出そうとしていたという事は、必要としていたという事………

 右手はコレを取り出すのも手間取るほどに弱っていたが、彼女は左手を地面につけて立ち上がろうとしていた。

 

「失礼します」

 

 彼女のブレザーを脱がすと、ワイシャツの右腕部分に赤いシミが出来ていた。その中央にリムーバーを押し当て血液ごと毒を抜き出す。

 

 もう痺れが出る事から中々強い毒みたいだが、命に別状は無いだろう。もしそうなら彼女は()()()事ができ、回避できたはずだ。

 

「逃げましょう。葎崎さん」

 

 彼女を背負い、僕はアヴドゥルさんの上げる狼煙を目印に走り出した。

 どうやらこの島には僕たち以外にも誰かがいるらしい……彼女はそいつに吹き矢の様な物で狙われたのだ。

 

 ………………にしても…

 

(何故こうも邪魔が入るんだ)

 

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