ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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7.その血の定め

 我々はディオと再び対峙する。さっきと違い波紋使いが三人増えているが、ディオは大した問題ではないと言って余裕の笑みを浮かべる。

 

「良くここまで来たものだ。だが招かれざる者も何人かいるな……」

 

 その言い方だと何人か招いたということになる。比喩だとしても望んで通したということか?

 

「私は話をしに来たんじゃない。ディオ…貴様を葬るために来た」

 

「そうか…だがそれは、ここまでこれたらの話だろう?」

 

 ディオが言い終えると同時に天井に引っ付いていたのか、大量のゾンビ共が降りてくる。

 

「ジョジョ、レオン。ここは俺らに任せな」

 

「悪いな…ジョジョ」

 

「あぁ!」

 

 ハルバートを盾のように構えて突進すると、ジョジョは私の背後をピッタリついてくる。

 私の前に立ちはだかるゾンビは、ダンプカーにでも撥ねられたかのように吹き飛ばされる。

 

「レオン……その様子では血を摂取していないのか?」

 

「食屍鬼街で頂いたのが最後だ。が…貴様より力が劣っているのはいつもの事だろう?」

 

「フンッ…その余裕がいつまで続くかな!」

 

 ディオはそう言って攻撃してくる。新鮮な血を摂取していない私と違い、ディオは私の倍近く速い。

 

「このディオの速さについてこれるか!」

 

「石仮面を被る前から、お前の方が速いし強いよ。私は強くなる術を持っているのではない…強者に勝つ力を持っているのだ」

 

 持ち前の合気道で攻撃を流す。気化冷凍法を使っているようで、触れた面が僅かに凍る。

 

「貴様…何らかの手段で熱を持っているな?」

 

「それでも僅かに凍るか…」

 

 私とディオの接触で生じた僅かな硬直…ジョジョはその一瞬に、剣でディオに切り掛かる。

 

「鈍いぞ、ジョジョ!所詮貴様は、進化し損ねたモンキーなんだよ‼︎」

 

 ジョジョを蹴り飛ばし、ディオは私に視線を戻す。私を先に始末したいようだ。

 

「WRYYYYYY‼︎」

 

 気化冷凍法を使用しながらの手刀によるラッシュ…攻撃を流す事は簡単だが、少しずつ体温を奪われ凍りつつある。しかし私が凍りつくより早く、ディオは悪手を放ってきた…いや、決して悪手ではないが、カウンターの取りやすい攻撃だ。

 

「シッ‼︎」

 

 ディオの顔面を右拳が捉えるが、少し退け反らせるだけで大きなダメージが見られない。

 

「む…口を切ったか」

 

「フッ!」

 

 それでも僅かにディオは硬直する。その隙にハルバートを思い切り振り払う。

 

「んっん〜。軽すぎないかレオン…なるほど、血を吸わない吸血鬼はここまで弱いのか」

 

「………」

 

 押しても引いても、ハルバートはビクともしない。ディオはハルバートを受け止めると同時に、指を側面に減り込ませていた。やがて刃は砕かれ、ハルバートは鉄屑に変わる……クソッ、気に入ってたのに…

 

「さぁ…次はどんな技を見せてくれるんだ?」

 

 こいつ…私の技を見て盗むつもりか…だとすれば出し惜しみしたいが……してられないな。

 

「そんなに見たいならよく見るといい」

 

 距離をとってから筋肉をポンプのように動かす。すると血液はより早く流れ、多くの酸素を全身に運ぶ。

 

「ハァァァ……」

 

 振動熱もこの間に生み出して体温を上げる。これでまた気化冷凍法に少しは耐えれるだろう。

 そして私はチラリとジョジョを見る。既に立ち上がっている……どうか俺の策に気付いてくれないだろうか。

 

「……その目は…」

 

 ディオの口元から笑みが消える。私は脱力し、目を空にしながら歩み寄る。ディオが私に何か言っているが良く聞こえない。全神経を反射に使っているからだろう。

 

「…………」

 

 まだ何かを言っているな。いや…後ろのゾンビに話し掛けていたのか。私の背後から襲わせるが、 今の私は気配を強く感じ取れるのだ。

 

「邪魔だ」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「うぐっ…こ、呼吸を…」

 

 ディオに蹴り飛ばされて背骨を痛めたか、僕は呼吸の乱しを直し立ち上がる。

 レオンは既にディオと、二転三転した戦いを繰り広げている。

 

「落ち着け、今の僕に出来ることを…」

 

 そう僕が考えていると、レオンがこちらを見た。それも二度三度……何かを伝えようとしている?

 そしてその時、ディオの指示で彼の背後からゾンビが二体襲ってくる。レオンはそれをものともせずに地面に叩きつけ頭を踏み潰した。

 

「地面に叩きつけた……彼なら振り向きざまにカウンターを入れて、葬ることができたんじゃ?」

 

 二体目がレオンに飛び掛かると、今度は両腕を手刀で切り落とす。そしてやはり地面に叩きつけて、彼は頭を踏み潰した。

 間違いない……アレは何らかのメッセージだ!

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 さて…二体のゾンビをわざわざ地面に叩きつけたが、ジョジョは私の意図に気付いたか?

 

「どうしたレオン…来ないのか?」

 

 ゾンビを葬った後、私は立ち止まっていたらしい。そしてディオの声が聞こえたということは、集中力が切れたようだ。元々コレはカウンター用のスキルで、自らの反撃には適さないんだよな。削ぐことで集中力が増す…要するに、無心になれば成る程深く集中できる。攻撃するということは手段を考えないといけないし、今さっきまでジョジョに作戦が伝わったかを考えていたからな。

 

「どうやらその術は長続きしないカウンター用のようだな?」

 

「ばれたか…正解だ」

 

 私が覚えた合気道は、相手のリズムを利用する技が大半だ。護身用で覚えた格闘技なのだから、攻める技はあまり覚えていないのだよ。

 

「攻撃用もないわけではないが……」

 

 ディオに通じるか?この技を狙うくらいなら、通常攻撃の連撃の方が効率がいい気がする。

 

「来ないならこちらから行くぞ!」

 

 床を蹴ってディオが突進してくる。手刀を受け止めると、私から体温が僅かに奪われる。

 

「む…なるほど、そういう事か。フッフッフッ」

 

 不敵に笑ってからディオが距離を取る。すると吸血鬼だというのにディオの肌に赤みが増す。

 

「どうだレオン…上手く出来ているか?フッフッフッ」

 

「仮に超酸素運動と呼んでいる…ジョースター邸で貴様も使っていただろ?」

 

 私が行っていた血流の加速をディオが真似る。コレで奴のスピード…反射神経は更に増す。

 

「感謝するぞレオン…貴様の知識は俺の力として役立ったぞ!」

 

 瞬く間にまた距離を詰め、私は思い切り蹴り上げられてしまう。速さのギャップから一瞬反応が遅れ、合気を使い損ねてしまったのだ。

 

「レオン!」

 

 天井に減り込んで落ちて来ない私をジョジョが心配してくる。それより私のメッセージは伝わったのか?

 あ…普通にディオに構えて戦おうとしてる。これはダメだな…何の為にゾンビ二体の相手をしたと思ってるんだ?何の為に超酸素運動をわざと真似させたと思ってる?

 私が右手を天井から出して地面を指差す。今のディオのスピードについていく自信はない。これが最後のチャンスのようなものなのだ。

 

「……レオン?」

 

 ダメだこいつ、まるで分かってない。仕方ない…私が無茶するか。

 

「床に波紋を流せジョジョ!」

 

「床に……?ハッ!」

 

 ようやく気付いたか…だがディオも気付いてしまったようだ…波紋と気化冷凍法、どちらが早い?

 

「レオン貴様!このディオに触れずに波紋を流すため、わざと地面にゾンビの血液を撒き散らしたな!」

 

「震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!刻むぞ…血液のビート‼︎」

 

 右拳に最大出力の波紋が込められる。

 

「無駄だ。気化冷凍法で、血液越しに凍らしてくれ……ぬぅ」

 

 超酸素運動の欠点は、筋肉をポンプのように動かして血流を加速させて熱を持つこと。それを冷まして気化冷凍法を使うにはコンマ一秒の遅れが発生する。

 

「山吹色の波紋疾走‼︎」

 

「ぬん!」

 

 血液を伝わる波紋をディオは跳躍して避ける。気化冷凍法は間に合わなかったが避ける事は出来るよな。

 ディオに避けられ、床に撒かれたゾンビの血液だけ蒸発する。

 

「無様だなジョジョ!貴様は自分の低脳な頭脳のせいで、レオンの策を無駄にしたのだァ!」

 

「クッ…!」

 

「言っただろディオ…可能性の低い策を武器と私は呼ばないんだ。武器と呼ぶからには、それも考慮しているさ」

 

 未だに天井を減り込んでいた私は、天井を蹴ってディオに迫る。いくら速くとも、空中での回避行動は無理に等しい。

 

「多少は焦ったのか?貴様のリズムが見えるぞ」

 

 数少ない合気の攻撃技…今なら打てると確信する。

 

 ディオの呼吸に注意を払う…

 

 奴が宙で振り向き此方を向く…

 

 そして奴は……息を吐いた。

 

「今だ!」

 

 両手による心臓打ちと顎への掌底。

 

 空気を吐いたばかりの肺は酸素を求めて膨張するが、それに合わせて打った心臓打ちがソレを許さない。

 そして顎を捉えた掌底は脳を揺らし、思考力を無理矢理削ぎ落とさせる。

 

「ジョジョ…今度こそ決めてくれよ?」

 

 嗚咽するディオをジョジョに向けて蹴り飛ばす。するとジョジョはすぐさま攻撃態勢に入った。

 

「震えるぞハート」

 

「こ、こ……」

 

「燃え尽きるほどヒート!」

 

「こ、んな…や、つ」

 

「刻むぞ…血液のビート!」

 

「奴ら、に……このディオがァァー‼︎」

 

「山吹色の波紋疾走‼︎‼︎」

 

 スパーク音と共に、ジョジョの拳がディオの胴体に突き刺さった。

 

「ルゥォォオオオ!」

 

 ジョジョがディオを殴り抜き、ディオの身体が私の横を通り抜けて飛んでいく。

 その刹那…私はディオの腹部から焼き爛れていくのが見えた。

 

「すまないディオ…私は血の繋がった兄弟として…貴様を助けられなかった」

 

 テラスの手すりを越えてディオが落下していく。その時…ディオは最後の足掻きとして、眼から体液を圧縮して飛ばしてくる。

 それを私はハルバートの破片で体液の側面を撫で上げて上へ流す。

 

 レ…オン……貴様…どこまで……

 

 最後にそう聞こえた気がしたが、既にディオは下へ落下して確認することは出来ない。

 

「……終わったのか?レオン」

 

「………あぁ」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 こうして私達の戦いは幕を閉じた。町の方はトンペティ老師の弟子達がゾンビを殲滅していてくれて、後は皆で帰るだけだった。

 

「レオン…本当に僕は君に助けられてばかりだった」

 

「気にしなくていい。君がいなければディオを倒す事は出来なかったし、ジョジョのお陰で私は弱者のまま奴を葬ることに成功した」

 

 帰りの馬車の中…そこで私達は終えた事柄と、勝ち取った勝利を噛み締めていた。

 私達の乗っている馬車は六人掛けの大きめの物で、私とジョジョの他にスピード、ツェペリ、トンペティが乗っている。ダイアーとストレイツォは別の馬車だ。

 

「レオン…僕は君に恩返しがしたい。だからせめて僕の血で、その傷を癒してくれないか?」

 

「嫌だよ気持ち悪い」

 

「キモっ⁉︎」

 

 何ショック受けているんだ君は…私はBLものが嫌いなんだよ。

 

「本当に不思議な吸血鬼じゃのう。改めてワシを助けてくれたことに感謝しよう」

 

 ツェペリが帽子を取って頭を下げてくる。

 

「やめてくれ堅苦しい。恩を売りたいというなら、私に間違えても波紋を流さないでくれよ。トンペティさんの様にな」

 

「ホッホッホ…すまなかったな。ところでツェペリ……お前は今日死ぬ」

 

「…は?」

 

 空気が一気に凍り付き、私達は絶句する。しかしそれは漫才のように崩れ落ちた。

 

「…はずだった」

 

「な、何だよ不謹慎だな!変な事言うなよ爺さん!」

 

 スピードが思わず立ち上がる。まぁ無理も無い。

 

「かつてワシはツェペリの生命の波長を読んで運命を教えた。ディオと戦う前……ワシはツェペリの生命の波長を再度読んだ」

 

「それが…どうかしたのですか?」

 

 ツェペリがトンペティに問う。すると驚きの事を告げられた。

 

「運命が変わっていたのだ。絶対とも言えるツェペリの運命は変化し、今は家族に囲まれ見送られる幸せな物が見える」

 

「なんと!」

 

「人の死期をそう簡単に教えていいのか?」

 

 私のツッコミを無視して、トンペティは私を指差す。

 

「レオン……ツェペリの運命を変えたのは君だ。君の身には多くの試練が今後降り注ぐ……」

 

「そうか…興味深いな。是非詳しく教えてくれないか?」

 

 私は手を差し出す。すると周りがそれを止めようとする。

 

「右肘だけ凍らせる。それでもその先は波紋で溶けるかもしれないが、それだけの価値はある……頼む」

 

「……それだけの覚悟があるなら…君のためにも教えよう……ここで言って良いのか?」

 

「構わない。どうせ遠い未来だ」

 

 そしてトンペティは私の手を掴む。焼け爛れるがそんなの無視して、私はトンペティの答えを待つ。

 

「ふむ…流石吸血鬼…長生きゆえに長いな」

 

 …第二の兄弟、星の血族…その孫と第二の孫…その者二人の命を主は紡ぐ。やがて現れし闇と星の血を引く者…その者の王の才を解き放ち、主は意図して黄金の鏃に貫かれ、使命を全うし息絶えるであろう。

 

「……星の血族……どうやら私は、ジョジョの孫の孫まで面倒かけられるようだ」

 

「何笑ってんだレオン!腕焼けてんの忘れてねぇか?」

 

 おっと…すっかり忘れてた。

 

「孫か…その時のワシは力になれるだろうか……私はレオンに命を救われた身だ。ワシの血族が力になるよう語り継がせよう」

 

「そんな…いいよツェペリ。君の子孫に悪い」

 

「レオン……今のが本当なら、また迷惑をかけてしまうね。やはり何か恩返しをさせてくれないか?」

 

「君もシツコイな!……そうだ。なら一つ頼まれてくれないか?」

 

「なんだい?何でもするよ!」

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