……というのが半分……もう半分は第4部の構想を練る為の時間稼ぎとなります。
それではいつも通りグダグダっとどうぞ。
番外編.1月〜3月
1988年 2月1日。
僕は意味なく周囲を見回す。
視界の隅に映るのは、机に突っ伏して寝ている大男。一見不良の様な外見(本当に不良だけど)をしているが誰も注意しない。そもそも今は休み時間で、授業は終わりもうすぐ帰りのホームルームが始まる。
やがてチャイムは鳴り、担任の先生が教壇に立ってホームルームが始まる。
いつも通り生徒の連絡事項だけ告げられ、その中に衝撃的単語が混じっていた。
「それでは明日の期末テスト、是非とも頑張ってくださいね。はい起立…礼」
「………………キマツてすと?」
「………承太郎。勉強した?」
「………なんとかなんだろ」
そう言って学帽を被り直す承太郎……ヤバイのかな?
僕もヤバイんだけどね。
テスト前は毎度、僕と承太郎で勉強会を開いていた。勉強会というのは名をしているが、実は僕は教わる側で承太郎は教える側……承太郎は「教える事でより深く理解できる」と言って気前良く教えてくれていたのだ………だが今回は………
「……友よ。僕にお慈悲を」
「無茶言うんじゃねぇ」
「貴様ッ」
「レオンの真似か?」
たわいもない会話をしてるが内心僕らは焦っていた。
帰ったら猛勉強だな。
ー
ーー
ーーー
「………と、意気込んだは良いが教科書だけでは理解できず、私は仕事で忙しかった為承太郎は私を頼れなかった。その結果が……これか」
とある休日……和室でため息をつく私の前には、ローテーブルの上に並んだ7枚のテスト用紙。そのローテーブルを挟んだ向こうには、並んで正座する学生が2人いた。
「………再試はいつだ?」
「………来週」
葎崎 礼神:赤点教科数"4"
空条 承太郎:赤点教科数"3"
「旅による遅れだな。仕方ない、責任を持って家庭教師を努めよう」
空条家の和室で、私は2人の為に勉強会を開こうとする。が……
「レオンはいますか?いますね。今すぐ支部へ向かってください」
「………橘。庭から上り込むとは何事だ」
「レオン。仕事です」
「………………………」
これだからこの女は嫌いだ。
暇を与えずに仕事を持ってくる。こちらの事情も考えずにな。
「今日は用事があって無理だ」
「一体どの様な用事が? 代役をそちらに当てましょう」
チラリと学生2人を見て次の言葉を考える。
勉強を教えている。と答えた所で、この女は本当に代役を立てるだろう。
「……2人の家庭教師ですか。成る程、今代役を手配します」
………心を読まれた? いや、テーブルの上の答案用紙から察したのだろう。
「……私は働かんぞ。すでに3徹してる」
「昨年の最高記録は16徹でしたね。レオン、今更3徹でガタガタ言わないでください」
「ふざけるガッ!」ダッ
橘の魔の手から逃げる為、和室から廊下へ飛び出そうとする。が…捨て台詞を言い切るより早く、私は顔面から何かに強くぶつかる。
一瞬硬直してから前を向くと、空中に大きな亀裂が現れていた。
「ク……一体何が」
「透明度の高い防弾ガラスです。ライフル銃でもここまで大きなヒビは入りません。凄い勢いでぶつかりましたね」ガシャン
そう言いながら、さも当然の様に手錠を掛けてくる。
「何故空条家の廊下に防弾ガラスが設置してある⁉︎」
「貴方の逃走経路を潰すのは、橘流レオン拘束術の基礎ですから。諦めてください」
掛けた手錠の反対側を自分の腕につける橘は、にこやかに私の顔を覗き込む。
「こんな手錠………これはッ‼︎」
「"対レオン拘束具シリーズ"の最新作です。内側には紫外線照射装置が組み込まれています」
「……エゲツない」
「葎崎、日常風景だぜ」
目を丸くする礼神と、承太郎の呆れた様な声が聞こえる。
「会長の座を降りた私に働く理由はないはずだ」
「正式にはまだ会長は貴方です」
「なら今辞表を渡そう」
「いつも持ち歩いてるんですか?呆れました」
「そう言いながらナチュラルに破くな」
「そういえば駅前のケーキ屋で限定タルトが…」
「何ッ‼︎ 毎日行列ができて買えないアレか⁉︎」
「賞味期限は今夜です。欲しくば…わかりますね?」
「貴様ッ‼︎」
早口で口論を続けながら、私は彼女に手を引かれて空条家を出た。そして家前のリムジンに乗せられ、すぐさま支部へと走り出した。
「…女を殴りたいと本気で思ったのは、生まれて初めてだ」
「そう。それで?」
「……………君の執着心にはホント、恐怖すら覚えるよ」
「お褒めに預かり光栄です」
ー
ーー
ーーー
「………………………」
レオンさんが財団に誘拐されると、1分もせずに財団の男性が2人やってくる。1人はレオンさんが激突した廊下のガラス板を取り外し、1人は電話で連絡を取っている。それが終わると承太郎に男性は話しかけてくる。
「承太郎君、橘秘書から伝言だ。レオンさんは多忙になる予定で、1日1教科ずつ2人に派遣するそうだ。後数分もすれば先生が2人来ると…」
「………そうか」
「すみません。どんな先生が来るんですか?」
財団のおじさんに質問すると、おじさんは快く答えてくれた。
「国語の先生と化学の先生と言っていたよ」
〜 数分後 〜
「おじさんが来たッ‼︎」
「邪魔するぜ」
「「………………」」
………人選がオカシイ…人選がオカシイって。
「……どうしたの黙って。自己紹介した方がいい?」
呆然とする僕らの前で、2人は勝手に自己紹介を始める。
「化学から薬物知識まで何でもござれ‼︎ 科学担当の伊月 竹刀と……」
「好きな
「………ホル・ホース、伊月のおじさんに毒された?」
「……それを言うな。巫女の嬢ちゃん」
「2人とも酷い。オジさん泣いちゃうぜ」
「…やれやれだぜ」
隣の承太郎は幸先が不安になったのか、額に手を当てて口癖を呟いた。
「ホル・ホースが……国語?」
「オイオイオイ、世界中の女を愛するこのホル・ホースを舐めるなよ。愛のこもった言葉なら、全各国語で聞いてきたぜ」
………僕も不安だけど、ひとまず勉強始めないと……
〜 少年少女 勉強中 〜
「いいか嬢ちゃん。この手の問題はややこしいが、文法の見分けがつけばなんて事はねぇ。これはこれ、コレはコレ……となるとこっちは………?」
「………置換方」
「飲み込み早いねー。オジさん、嬉しい」
「………………」
隣を見ると承太郎もスラスラ解いてる。赤点用紙の間違いは全て既に直し、オジさんの作った"オッチャンプリント"って言う問題解いてる。
かく言う自分もホル・ホースの出した問題を今は解いてるんだけどね。
………結論から言うと、メッチャわかりやすい。もう一通り終わった。
「他にわからない所はある?オジさん教えるぜ」
「もういい」
極力教わりたくないのか、ぶっきらぼうに承太郎は答えた。
「ところで、オジさん達は仕事の方いいの?」
「1日くらい問題ない。伊月の旦那は怪しいが……」
「今夜また支部に行くよん。新薬のプレゼンの準備しないといけなくてねー。んで新薬が正式採用したら次の新薬のプレゼンだよ」
「多忙なんだ」
「多忙だぜ。あ、他人事みたく言ってるけどホル君…プレゼンの協力者として君を申請したから、朝一で君も仕事だぜ?」
「ゲッ⁉︎」
ケラケラと笑うオジさんは楽しそうだけど、ホル・ホースはガチで迷惑そうだな。
オジさんに巻き込まれてウンザリなんだろな…そういえばホル・ホースより若いんだよねオジさん………
「………ジー」
「ん?礼神ちゃん、どったの?」
「……ここの顔引っ張ってシワを消せば……やっぱり。あとクマとか消えればオジさんイケメンじゃない?」
「礼神ちゃ〜〜ん。オジさんの顔で遊ばないで〜〜」
〜 勉強会 2日目 〜
「自己紹介は不要ね。じゃ、さっさと始めるわよ」
「あ、教科書は要らないわ。どうせ読めないし」
………もう驚かない。
次の日に来たのは
「……で、どっちを教えればいいの?」
「…僕は両方落としてます。承太郎は歴史だけ……」
「………………」
苦笑いで答える僕の横では、不機嫌な承太郎が2人を睨みつけてる。敵だった相手に教えを請うのは確かにアレだけど、助けて日本に送り届けてくれた2人だよ? もう少し笑えや。
「なら私は承太郎ね♡」
「………………」ギロッ
そういえばミドラーは原作で言ってたな。承太郎がタイプだって。
でもこの世界ではレオンさんに惚れてるらしいんだけど……承太郎をからかってるのかな?
「ほら巫女、よそ見しない。ひとまずこの問題集解いてみて」
「は、はい」
今はSPW財団で働いてるからか、2人共普通の格好をしてる。改めて見ると綺麗な人だな。2人共。
「………テメェ。文字も読めねぇのにどう教えるつもりだ?」
「Hey,承太郎。いいから範囲を教えな」
「チッ………テストに出る時代は………」
〜 少年少女 勉強中 〜
「全問正解! やればできるじゃない」
「私たちの教え方が良いのかしら?」
………メッチャわかりやすい。
承太郎は無表情だが複雑な心境が伺える。ミドラーは日本語を読めなかったけど、その時代に起きた事を大体暗記してた。
しかもトントン描写で進み1日1科目の予定だったのに、午前で1教科分の授業を終えた。
「失礼だけど、勉強できるなんて意外だね」
「貴女………私のスタンドは知ってるわよね?」
「うん?………磁力。だよね?」
「そう、"バステト女神"…この能力を発動させる時、アタシは相手に纏わせてる磁力を"距離×時間"とか、"それ×術中にハマった人数"とかで軽く予想してるのよ。そうするうちに自然に暗算は身に付いたわ。ついでに物理もある程度教えられるわよ」
「私も思えば、スタンド能力の為に培った知識ね。能力で模せる武器を調べてるうちに、それが作られた時代の背景とか………フフッ、自分でも自分の事を天邪鬼だと思ってるわ」
「………そうね」
マライアとミドラーは懐かしそうに薄く笑う。
「………どゆこと?」
「あれしろ、これ覚えろと言われた時は覚えようとしないくせに、興味を持つなと言われた事に興味を持って勉強したって事」
「………………?」
「子供の頃の私達の生活は、そこまで裕福じゃないのよ。貴方達も旅してる時何度も見て、聞いたんじゃない?パクシーシ〜、
「………あ」
「その上、私達は生まれつきの幽波紋使い……家族にも気味悪がれ、家にはすぐ帰り辛くなったわ………もちろん、学び舎に通う事もできなかった」
「………………」
そっか……そういう人は世界のどこかに普通にいて、僕らは恵まれてるんだ。その中で比較的に………
「暗い話しちゃったわね。さ、二時限目始めるわよ」
「うん。じゃあヨロシク、ミドラー先生」
「あら♪ いい響き」
「ちょっと承太郎、私の事も先生って呼んでみて」
「………やかましい」
今まで黙って話を聞いていた承太郎だが、冷たく否定す………ん? 冷たくはないね。素っ気ないけど………なんだろ。女子高生相手とは違う優しげが少しある気がする。
「ほら巫女、よそ見しない」
「はーい、ミドラー先生〜」
〜 勉強会 3日目 〜
「やっと普通の人来たー」
「2人共、早速始めるぞ」
「………葎崎…伊月達は異例で、コイツは普通なのか?」
「うん」
なんかもうラバーソウルは信用できる。
そしてラバーソウルはもちろん英語を担当してる。
これもまた教え方が上手いこと上手いこと……
ただ今日はラバーソウル1人で僕ら2人を教えるわけだから、午前で終わるような事はなかった。
ホリィさんの作った昼食を食べ終え、僕らは午後の授業を開始する。それからしばらく真面目に取り組んでいたが、一区切りついたので僕はラバーソウルに話しかける。
「………で、最近どんな感じ?」
「………俺のこと?」
話しかけられた本人は、僕が解いたプリントに向けていた視線を此方へと移す。
「急にどうした」
視線をまたプリントに戻し、淡々と丸付けをしながら短く彼は答える。そして1箇所だけあったスペルミスに赤線を引いて、ラバーソウルはプリントを僕に返却した。
「昨日、一昨日と元敵チームの方々と話してて、流れで聞くべきかなと思い」
「余計な事は考えないでよろしい」
初見の頃とは別人の口調で言われ、僕は間違えたスペルを直して再提出する。
「………で、最近どんな感じ?」
「………………………」
めげずに聞けば、返答の代わりにジト目が返ってくる。そしてその表情のま、ラバーソウルは1つの問題を僕に出す。
「俺が今何を言おうとしてるか、英文で答えよ」
「えっと……"
「不正解。そもそもそれは疑問文ではなく、"
「……答えは"
「正解だ承太郎」
横槍を刺すような承太郎の答えにラバーソウルは小さく頷き、承太郎は満足そうに鼻で笑う。
………呼び捨てで呼ぶんだ。「承太郎先輩」って呼ばないんだ……それもそっか、ラバーソウルの方が年上だし。原作では承太郎より年下の花京院に化けてたから、ふざけて先輩呼びしてたんだろうね。
「………で、最近どんな感じ?」
「女神さんよぉ…答えるまで聞くつもりか?」
「だって気になるんだもん」
「もんじゃねぇよ……はぁ。つっても言うほどの事は何もねぇぞ? 会長の推薦で一次面接は突破したが、面接とかは結局自分の力でクリアして正社員になっただけだし………」
結局答えてくれるんだね。やっさしー。
「会長………ってレオンさん?」
「そうだ。ん?そういえば1つ、変な役職を与えられたな」
「へー、どんな?」
「なんだったかなぁ〜。確か正式名称は………」
興味本位で尋ねると、ラバーソウルは首を傾げて口元を片手で隠す。そして思い出したのか指を一本立てて口を開く。
「"希少生物保護官"だったか? まだ詳しい話は聞いてないが、橘さん直々に任命されてな。橘さんが隊長らしい……この役職がないと、全体の仕事に差し支えが出るとか言ってたが……正直意味わかんねぇよ」
「………………」
"希少生物保護官"という言葉にはピンとこなかったが、それの隊長が橘さんだと聞いて仕事内容を察した。
「………橘さんってレオンさんの秘書の?」
「そうだ」
「………………………ラバーソウル。多分その希少生物ってレオンさんの事だよ」
「………え゛」
ー
ーー
ーーー
〜2月10日〜
赤点による再試験を終えた翌々日…2人は空条家の和室のローテーブルに、返却されたテストの回答用紙を並べる。
そのテーブルを挟んだ先にいるレオンは無機質な表情を浮かべている。
「………まぁ…いいんじゃないか? 複雑な気分だが…」
葎崎 礼神
・国語 84点
・数学 90点
・歴史 89点
・英語 97点
空条 承太郎
・化学 96点
・歴史 94点
・英語 100点
(私が教えた時より良い点取ってる……)
表には出さないがレオンは人知れずショックを受けた。
再試ということもあり、どれだけ点を取ろうと60点まで減点されてしまうが、教師陣もこの点数には多少驚いただろう。
「レオンさんはほら…いろんな教科を幅広く教えられるから」
「礼神……気持ちは嬉しいが、フォローは不要だ」
「そういや、今回は何の仕事で拉致られたんだ?」
1週間前の出来事を思い出した承太郎の問いに、レオンは面倒くさそうに答える。
「私とジョセフが持っている携帯……それをランクダウンさせた物を商品化させる話だった」
「ガラパゴス?」
「…この世界では最新になるが、パカパカする奴だ」
礼神とレオンの口から出る聴きなれぬ言葉に首をかしげる承太郎。
「発売日は?」
「来月あたり」
少し食いついた様子で質問する承太郎に答えると、次は礼神がレオンに質問する。
「スマホは⁉︎」
「……気が早いな。まぁ………すぐにでも作れるが携帯を出してすぐというのもなぁ………早く考えて5年後か………」
レオン
「"会長の辞表を受け取ってから安楽死する"と死神が落としたノートに書き込みたい」
橘
「その場合、私は原因不明の心臓麻痺で死にますね」
伊月
「安楽死にするあたり、レオンって優しいね〜」
証呂
「ちなみに1日家庭教師達の得意教科は、私の中での創作に基づいたものです」