ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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レオン
「1日に2話連続で?」

礼神
「明日は雷雨だ!」

伊月
「最近台風多い原因はそれか」

証呂
「酷い………」

74話グダグダっとどうぞ!


74.新章突入:後半

「ココが最後だな………」スッ

 

 SPW財団の薬を覚醒剤に変えて売り捌く犯罪組織。そのアジトは4階建で、最上階にあった少しオシャレな扉にレオンは両手で触れる。

 

「左右の壁に照明器具が2つずつ。天井に1つ。奥の壁には窓が2つ……その手前にデスクがあり、そこにに座った体勢の女が1人……我々から見て、その右隣に小柄な女、反対に大柄な男が1人……右から129cm、161cm、181cm……小柄な女は恐らく子供だな。男の方はハゲてる」ボソボソッ

 

(うちのボスがどんどん化け物になっていく………あと最後の情報いる?)

 

「……子供? オジさんちょっと、諸事情で子供には手出せないんだけど………」

 

「場合によっては保護。それでいいな? 開けるぞ」ガチャ

 

 意を決してドアを開ける。

 レオンと伊月は敢えて自然体で………ホル・ホースは拳銃のスタンドを握りしめていつでも撃てるように構えている。

 

 それに対して中にいた3人は………

 

「おめでとう!」

 

 ヌールと思われる女性は両手を広げ、こちらを歓迎するように話しかけた。

 

「ここまで来れた人は過去も何人か居たけど、貴方達は格段に強いわね。そんな貴方達は私の飼い犬にしてあげるわ!」

 

「エンペラー」スッ

 

「あいよ」ドォン‼︎

 

 レオンが右手を上げると、それを合図にホル・ホースのスタンドが火を吹いた。

 皇帝(エンペラー)から飛び出した弾はヌールの右肩に着弾するかに見えたが、それよりも半メートル手前で弾ける。

 

「何ッ!」

 

「………躾のなってない駄犬は嫌いよ。何? 私の命令が聞けないの?」

 

 青い半透明の四角い立方体……ヌールを守るように現れた半透明の箱の中で、彼女は見下すようにレオン達を睨みつけた。

 

「2人共、アイツらは全員スタンド使いのようだ。そしてこれはシールドか………貴様の仕業だな?」

 

「………!」

 

 突如現れた青い膜からスタンドエネルギーを感じ、レオンはW-Refの探知範囲を少し広げてみる。すると、ヌールの隣に立っていたハゲの男から同じエネルギーを感じた。

 尋ねるように聞けば図星らしく、男は少し驚いた表情を浮かべている。

 

「スタンド?………あぁ、超能力の事ね。貴方達はそう呼んでいるのね」

 

「1つだけ貴様らに言っておく事がある。こちらの要求に従うなら、命までは奪わない事を約束する」

 

「ねぇ、ちょっと………」

 

 上から物を言われるのが嫌なのか、ヌールは苛立った様子で睨んでいた目つきを更に鋭く尖らせる。

 

「貴方は何様? 立場がわかっていないようね」

 

「それは貴様らの方だろう」

 

「……随分と舐められたものね。私達こう見えて…貴方達のような駄犬の相手は初めてではないの」

 

「素人感タップリで情報ダダ漏れ。それでもここまで持ったのは、返り討ちにする力があるから……そゆことね〜」

 

 緊張感の無い口調で伊月がそう言う。仮面の下は、いつもの様にケラケラ笑ってるんだろう。

 

「その通りよ。貴方達もその有象無象の様に消しても良いけど、()()()()から飼い犬にして()()()。と、言ってるのよ。言ってる事わかるかしら?」

 

「わからんな。何故私が貴様の様な雑魚の下につかなければならない」

 

「口で言ってもわからないようね」

 

「それも貴様らの方だ。2人共、ヌールは生け捕りにする前に……まず2人を片付けるぞ」

 

「仕方ないわね。飢者(ウエモノ)! 駄犬達を調教してあげなさい」

 

「………はい」

 

「ウィーッス。ようやくオレェの出番だな」

 

 少女の方は無機質に短く…男の方は待ちわびたように少し笑っている。

 

 少女の方は貧相な身体付きをしていて、スタンドエネルギーからしてパワーファイターではない。

 

(なら優先するのは………)

 

「オッ?」

 

「波紋疾走ッ‼︎」

 

 一瞬で間合いを詰めて男のハゲ頭に掌を重ねる。そこから使い慣れている波紋を流し込めば、男は立ったまま小刻みに痙攣する。

 

 そして………

 

「んほぉぉぉぉお♡」

 

「ッ⁉︎」

 

 ハゲ男は嬌声を上げて仰け反ると、呆気に取られたレオンの腕を握りしめてきた。

 やがて痙攣が収まり、恍惚の笑みをレオンに向ける。

 

「今の何?よくわからないけど………良いね♡」

 

「キモ。オジさんドン引きだぜ」プツッ

 

「………?」

 

 いつのまにか背後に回った伊月が、男の首に刺さっていた注射器を抜き取る。

 相変わらずの早業。既に注入を終え、気付いた時には抜いていたようだ。

 

「いっちょあがリッ⁉︎」ゴッ

「ウグッ‼︎」パリィン…

 

 伊月が注入したのは十中八九、自家製の痺れ薬。それを一本丸々打たれているにも関わらず、ハゲの男はレオンを振り回して伊月に叩きつけた。

 

 そのまま、2人は部屋の窓を突き破り外へ放り出された。

 

「必殺〜ウッケッミッ!……オジさんバージョン」スタッ

 

 柔道の受け身の様に着地をすると、レオンは飛び出した階を見上げる。

 

「……フンッ。私を鈍器扱いするとは………」

 

「オジさん4階から落ちたよね? 案外平気なもんなんだね〜」

 

 伊月が呑気な事を言っていると、彼らが飛び出した窓から男が飛び降りてくる。

 奴は先程の青いシールドに守られながら降ってきて、着地した地面には四角いクレーターができる。

 

「んんんん! さっきの薬ピリピリするね♡」

 

「オイオイオイ、ワニの顎の筋力を無力化するような痺れ薬だぜ?」

 

 流石の伊月も、自慢の品が効かずに動揺している。しかし平常心を保ち、彼はレオンに向けてハンドサインを送ってくる。

 

「……あぁ。そのハゲは任せた」

 

「えぇ〜。まぁ、いっか。オレェ、ケーキの苺は最後に食べるタイプだしンッ‼︎」ゴッ

 

 言い切るとほぼ同時に、伊月の蹴りが腹部を捉えた。

 蹴りは着弾しても勢いを衰えさせず、そのまま伊月は()()()()()

 技量、戦闘力はあるがパワーは人並みの伊月が、180を超える大男を蹴り飛ばす。

 

(伊月の奴………黒戦(ゴクセン)を使ったな)

 

 黒戦を一言で言うなら「身を犠牲にして力を得る薬」である。

 エジプトを目指した旅以降…寿命を削る行為である黒戦の使用は控えさせたのだが「今回ばかりは仕方ないか…」と、レオンは溜め息をつく。

 

「さて……ヌールと少女のスタンドは、恐らく戦闘向きではない。だが一応、ホル・ホースの方へ向かうか」

 

「必要………無い………」

 

 また4階まで上がろうとすると、アジトの入り口に飢者(ウエモノ)という呼び名で括られていた少女が出て来る。

 

(伊月同様………子供には手を上げたく無いが………)

「…君は、ここで何をしているんだい?」

 

「………関係ない」

 

 少女は自分の服の胸の所をギュッと握り、反対の手でハンドガンを構えた。

 

 

 

 

 

「ベェッ………ブゥッ………」

 

 伊月に蹴り飛ばされた男は、バウンドしながら山の斜面を下っていた。受け身も取らずに抵抗せず、物理法則に従うがままに転がっていた。

 

 やがて撫でらかにな山中で一本の木にぶつかって止まる。

 一切抵抗しなかったせいか、身体中に小さいが傷ができていた。

 

「………い…」

 

 余韻に浸ってからゆっくり立ち上がり、両腕を広げて大きく仰け反った。

 

「イヤッホーーーーーッ♡♡」

 

 甲高い男の声で嬌声を上げ、まるで大空を抱きしめるかのように広げた両腕で自分の身体を強く抱く。

 

「見た?見た見た⁉︎ あの仮面から覗く冷め切った目付きッ!………んもう惚れそう………♡」

 

「さっきも言ったけど………ドン引きだぜ?」

 

「ンフゥ…」ドッ…コプッ

 

 男を追ってきた伊月が、先程蹴った部位に寸分の狂いなく拳を打ち込む。だが男はガードせず、むしろ腹を拳に押し付けるように踏ん張っていた。

 内臓をやったのか口から血が少量流れるが、狂おしそうな表情で伊月を見つめていた。

 

「………………」

 

 ここまでくると悪寒と恐怖を感じる。

 鳥肌を立てながら距離を取り、伊月は仮面の下に手を差し込んで汗を拭う。

 

「……何? 飢者(ウエモノ)って痛みに飢えてるって事? オジさん理解できないな〜………ドマゾって奴でしょ?」

 

「よく言うだろ、"痛いのは生きてる証だ"って。苦痛を通してオレェは、生きてる事に喜びを感じてるだけなんだよ。喜びを与えてくれる………それってもう一瞬の愛でしょ⁉︎ そこに飢えてるのは否定しないけど………それを変態呼ばわりするのは酷くなぁい?」

 

 恍惚な表情のまま少し俯いて上目遣いのように伊月を見つめ続け、言い終えると同時に舌なめずりをする。

 

「………あまり相手したくないねぇ。さっさと終わらせる」

 

(あ♡ 雰囲気変わった………)

 

 無防備だが反撃をしないとも限らない。

 伊月はフェイントを混ぜて背後に回り、腰当たりに肘鉄を食らわせる。

 肘から伝わるのは、背骨が砕ける確かな手応え。

 

「ンホォ♡……じ、じゃあ…オレェの番ね♡」ググッ

 

「カッ⁉︎」

 

 攻撃を食らった後から身体を反転させ、伊月の首を片手で掴み持ち上げる。

 

「様子見の攻撃を背後から仕掛けるのは癖? それと攻撃が()()()()後に僅かに隙ができるよねぇ♡」

 

 伊月の戦闘スタイルは急所を突くか薬物による一撃必殺。決まれば勝利を確信できる戦い方だ。

 レオンを相手にしたように攻撃を捌かれれば警戒心を維持できるが、確かな手応えを感じた瞬間に………それもタイマンでカウンターが飛んでくる事は人生初だった。

 

「オレェだけ愛されるのは不公平だもん、ねッ‼︎」

 

 大きく振りかぶってぶん投げる。投げられた伊月は木々をへし折って地面をバウンドする。しかし先程の男のように余韻に浸る隙もなく、男はバウンドする伊月に追撃を加えてくる。

 

「まだ終わんないよね⁉︎ 終わんないよねぇ⁉︎」

 

 上から振り下ろされた拳が伊月を捉える。それによって地面に叩きつけられ、また大きくバウンドする。そこへトドメと言わんばかりの飛び膝蹴りが鳩尾を捉えた。

 追撃の拳は辛うじて両腕でガードするが、蹴りは防げなかった。首を掴まれてから呼吸を落ち着かせる隙もなく、今の追撃で嗚咽する空気も残ってない。

 

 追撃の衝撃のせいか、ヘッドホンから酷いノイズが流れる。

 

「アハァ…そろそろデザートの時間じゃない? ねぇもう良いよね? 終わらせても良いよね⁉︎」

 

『ーーー‼︎ ーーーーー⁉︎』

 

 伊月の腰当たりに腕を回し、抱きしめた体勢で持ち上げる。両腕は自由だが、顔は伊月の腹部に押し付けている為、目潰しは狙えない。

 

「最初の鳩尾への蹴りとパンチは返したでしょ? お薬の代わりは首絞めだとして……じゃあ後は背骨を折れば、全部返せるよね⁉︎ オレェの貰った愛は全部、返せるよねェェェエ⁉︎」

 

 竜骨折りの体勢で発狂気味に尋ねるが、すでに腰に回した両腕には力が入っている。

 

「ガッ………ア…ウ……うん、派手に……お願い……グゥッ⁉︎」

 

 男の両腕に更に力が入る。

 それから逃れようと、ハゲ頭に手を付き引き剥がそうとする。

 

 黒戦の効果で防御面も一時的に向上しているが、そもそも黒戦の効果が発揮されるのは数分間。切れ始め、背骨が上げる悲鳴が大きくなりつつあった。

 

「良いなァ良いなァ、羨まし……え?」ガクッ

 

 突如として男の両足から力が抜け、自然と膝をつく体勢になる。見て見れば両足に銃弾の跡のような物が出来ていた。しかし弾は見当たらない。

 

「や………やっと効いてきた……」

 

 それに気を取られた瞬間に、伊月は男の首筋に注射器を突き刺した。男の両腕は痺れ始め、やがてそれが全身に広がる。

 それによって脱出し距離を取ると、木々の生い茂る山中では聞かないエンジン音が聞こえる。

 

 その音のする方を見れば、アクセル全開で突っ込んでくる車体が眼に映る。

 

「ヒャホハハハーーーッ‼︎」

 

「ナッ⁉︎ 山の中に車ァァァァアン♡」

 

 その車は今回の案内人であるズィーズィーのスタンド。それに撥ねられた男は喘ぎながら、またも吹き飛ばされる。

 

「ちょっと‼︎ いずッ……ミカド‼︎ 大丈夫なのそれ⁉︎」

 

「ヘルメットが無ければ即死………なんて言ってる場合じゃないか。ハイプリエステスちゃん、ナイフ……最硬度で」

 

「えぇ⁉︎ い、良いけど……」

 

 ナイフを模した女教皇(ハイプリエステス)をミドラーから受け取り、伊月は吹き飛んだ男を追いかけた。

 

 追いかけると言ってもそう遠くなく、そこに男は立っていた。

 ただ立っているだけで、身体は上手く動かないようだ。

 

「………アレ?……この薬……オレェには効かないんじゃ…」

 

「あの薬はワニに効くレベル。それはその20倍……普通死ぬぜ?」

 

「へ…ぇ………何で…すぐ………」

 

「何ですぐ使わなかったのか? すぐ使ったぜ? 効いてからダメ押ししたけど………」

(ってか本当は、アンラベルちゃんが暴走した時用なんだけどね)

 

「い………つ………」

 

「いつでもできた、どうでも良いだろ。アハハ、オジさん………君の事、生理的に無理だ。だからもう殺すね、仕事だし」

 

 ミドラーから受け取ったナイフ(女教皇)を、男の心臓に突き刺す。するとまた男は恍惚の笑みを浮かべたが、今度は静かに………そしてそのまま動かなくなった。

 

「………ちょっと油断したなぁ」

 

「な・に・が、油断したよッ‼︎ ボロッボロじゃない‼︎」

 

「バステトちゃんゴメンねー。あのタイミングで無線くれて本当ありがと。ズィーズィーも派手に轢いてくれたねぇ。オジさんまじ(マンジ)

 

「にしてもこのハゲ、タフな男ね。死体処理は私の仕事よね。埋めておくわ」

 

 伊月が持っていたナイフは変形し、一頭身の化け物の様に変化……そのまま肥大化して、女教皇(ハイプリエステス)は男を口に含んで地中深くに潜った。

 

 10秒もすると地上に戻ってきたが、口の中に男の姿は無かった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「………ねぇ………」

 

「なんだ?」

 

「死んで」

 

「断る」

 

 少女は私に向けてハンドガンを発砲する。その射線から外れると、何故か避けた先の地面が爆発………地面だった瓦礫片が下から襲いかかってくる。

 

 それも避けると、今度は少女がナイフを片手に突っ込んでくる。

 私は、この攻撃だけは避けなかった。

 

「………………ん」

 

 ナイフを持った手の手首を掴んで流し、頭に触れて弱めの波紋を流す。すると少女は脱力して意識を手放す。

 

「………離して」

 

 まただ。

 

「クッ⁉︎」

 

 足場がまた爆発し、私()に襲いかかる。

 

 この流れはさっきもやった。

 

 波紋で意識を奪ってもすぐに起き上がり、自分諸共、瓦礫片で攻撃してくる。スタンド使いだが相手は子供……それも話を聞けば利用されているだけのようだ。当の本人は気付いていない………否、気付いてないフリをしているが………

 

「ウグッ!」

 

「苦しい?………なら死んで」

 

「断る!」

 

 瓦礫片が止むと同時に少女から距離を取る。私が接近している限り、彼女は自分諸共攻撃してくる………そんな少女を私は庇っている。それを彼女は理解している。実にやり辛い。

 

 先程から今の流れを何度か繰り返してるだけだ。少女は白いボロボロのワンピースを着ていて、そのスカートの下に武器を隠し持っていた。

 一度拳銃を奪ったが、新しい物を取り出された。しかも奪った拳銃は私の手の上で爆発したのだ。しかもここは屋外………お陰で右手は負傷状態のままだ。

 

「………お願いだ。こんな事はやめてくれないか?」

 

「ヤダ………殺さないと………ヌールに怒られる」

 

 虐待か何かかと思ったが、恐らく少女はヌールに恐怖してるわけではない。

 

「ゾルより早く………殺さないと………負けちゃう」

 

 ゾルとはもう1人のハゲの事だろう。負ける? 競争感覚なのか?

 

「……負けたらダメなのか?」

 

「ダメ!絶対!………負けたら愛してくれない」

 

 察するに、少女はヌールに恐怖してるんじゃない。依存している。

 飢者(ウエモノ)と呼ばれていたが、恐らくその名の通り飢えているんだろう。この歳で言うと臭いが、愛に飢えている。

 

「君がしてる事は、とても悪い事だ」

 

「知らない………ヌールが喜ぶなら………良い」

 

 少女の中ではヌールが全てなのだろうな。

 なら自分がヌール以上の存在になれば良いわけだが………日光下でやると、流石に痛いから嫌なんだが………我儘は言ってられないな。

 

「君、名前は?」

 

「………無い」

 

「そうか。何故ヌールは名前をくれなかったんだ? 愛してるなら、くれるのが当然だと思うが………」

 

「…うるさい………ヌールが喜ぶなら………どうでもいい」

 

 そう言ってまた銃を撃ってくるが、それは躱す。

 

「なぜヌールにこだわる?そんなに大事か?本当の両親は?」

 

「ヌールが親………私にとって………愛してくれる………役立てば………守らないと」

 

「それは間違いだな。親であるなら君を守るはずだ。親なら子を無条件に愛するはずだ」

 

「うるさい………うるさいうるさい………うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい‼︎」

 

 ナイフを構えて突進を仕掛けてくる。

 これは躱さない。私は正面から抱き止める。

 

「グゥッ‼︎………」

 

 小柄な少女の突進とは思えない威力………彼女のスタンド能力は未だ分からないが、能力の1つに身体能力を高める力があるようだ。

 それもその身に受けるには強力な力で、攻撃が空振りした時、彼女の血管が破裂するのを見た。

 

 無駄だとわかっていながらナイフの攻撃を避けずに捌いたのは、彼女の負担を軽くするためだ。

 

「………!」

 

 躱す素ぶりを一切見せなかったのが以外だったのか、少し少女は驚いていた。

 

『手段は問題ではないッ! キスをしたという結果があればいい! これでジョジョとこの女の仲も終わりになる!ジョジョに会ってもーーーーーー』

 

 ………まさかディオのゲスのようなセリフが参考になるとはな………

 

 手段は問題じゃない。結果があればいいんだ。

 

「………ルナ……うん。良い名前じゃないかな?」

 

「………………?……誰の………」

 

「君の名前だ。ルナ………私の子にならないか?」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「エンペラー!」

 

「お? 片付いたのかい、旦那」

 

 アジトの4階の奥の部屋。

 そこには自身の拳銃型スタンド、皇帝(エンペラー)を構えるホル・ホースと、部屋の奥で肩を震わせるヌールの姿があった。

 

「ミカドはまだか?」

 

「さっきミカドの旦那から通信来てたぜ?聞いてねぇのか」

 

「あぁ。まだ取り込んでてな。なんと言っていた?」

 

「怪我した、車で待ってる。だとよ」

 

「………わかった。それで、シールドも消えて丸腰になった貴様だが、何か言い残すことは?」

 

「ヒッ⁉︎」

 

 虎の威を借る狐といったところか、ヌールは縮こまり怯えていた。最初は「飢者が負けるはずない‼︎」と動転していたという。

 レオンの髪が伸び、先端には肉の芽が付いている。それを見たことで怯える様子が酷くなる。

 

「ボス。もう聞くことは聞いたぜ。覚醒剤はこの組織の中だけで完結してた。情報通りここで作られコイツらが売ってた。どっかの組織とは繋がってねぇ」

 

「生産方法が流出した可能性は?」

 

「スタンド能力で加工したんだと。だから流出の心配はない。コイツが消えれば、薬物も消えるぜ」

 

「そうか………」

 

「ま、待って‼︎ 売り上げの半分を上げる‼︎ だから許して!お願いよ!」

 

 レオンは無言でヌールに歩み寄る。そして額に肉の芽を差し込んで行く。

 

「わかったわ‼︎ 貴方達の下で働く。雑用でも何でもいい‼︎ ね?それならいいでしょ⁉︎」

 

「………」

 

「…お……お願いよ………なんでもするから………」

 

 歯をガチガチ鳴らしながら命乞いをする様は、初対面の時と比べれば別人のようだった。

 

「……もう二度と、薬物の生産に関わらないと誓うか?」

 

「ちちち誓います‼︎ 絶対に‼︎‼︎」

 

「………………はぁー」

(………嘘か)

 

 溜め息をついてから肉の芽を引っ込め、レオンは背を向ける。

 

「お、おい。良いのか?」

 

「あぁ。行くぞ」

 

 2人が部屋を出ると、壁に寄りかかって座り込むルナと名付けられた少女がいた。

 

「………終わった?」

 

「あぁ」

 

「………殺した?」

 

「いいや?」

 

 それを聴くと立ち上がり、懐からハンドガンを取り出す。

 レオンは頭を掻きながら「まだ持ってたか」と言って取り上げる。

 

「………殺せないなら………ルナがかわりに」

 

「ダーメ。そんな事はしなくていい」

 

「………役に立たないと」

 

「立たなくても大丈夫だ」

 

「何で?」

 

「………それはここを出てからだ」

 

 ルナの手を取りレオンが歩き出す。引っ張られたルナは驚いた様子だが、少しだけ握り返す力が強くなったのをレオンは感じた。

 

「旦那も物好きだねぇ、手がかかりそうな嬢ちゃんだ」

 

「ハイプリエステス。もういいぞ、あとは頼む」

 

 3人がアジトの敷地内から一歩出ると、レオンがそうマイク越しに伝える。

 すると彼らの背後の地面が盛り上がり、鉱石でできた歯が生えてくる。その歯は有刺鉄線のある塀ごとアジトを囲っていた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 イタリア北部に位置する私有地の山。

 その山を男は1人で登っていた。無論、山の所有者ではない。

 ある情報を頼りに目的があって登っていた。

 

 彼はとあるマフィアの人間で、彼らのシマで薬物を流す若い組織がいるらしい。それは最初噂だけだったが、ここ最近では無視できない規模になっていた。

 

「覚醒剤か………」

 

 何か思う事があるのか、男は神妙な顔付きをしている。

 そんな彼が目指す先には………

 

「……何ッ⁉︎ アレは何だ‼︎」

 

 先程までは無かったはずの巨大なドーム…いや。

 

「巨大な………顔か?」

 

 彼のいる位置からじゃあよく見えないが、それは巨大な顔のようだった。真上から見ればハッキリするだろうが、横顔しか見えない。

 

「何だ…今度は沈むのか⁉︎」

 

 巨大な顔のようなドームは地鳴りと共に沈んでいった。

 彼は急いで山頂を目指したが、たどり着いた時にはクレーターしか残っていなかった。

 

「………何もない。一体何が………さっきの顔面に、丸呑みにされた?………この音はッ‼︎」

 

 クレーターから離れた所で車のエンジン音が聞こえた。こんな山中ではオカシイと思い足を向けると、ちょうど向こうからその車が走ってくる。

 

「ッ‼︎」

 

「………………」

 

 車は止まることもなく、マフィアの男の隣を走り去った。

 ガラスは曇っていて暗い車内はよく見えなかったが、1人の男と目が合った。

 その男は白髪で赤目だった為、曇りガラス越しでも認識ができたのだ。

 

「待て………クソッ‼︎………ん?」プルルル

 

 そこで彼のケータイが振動する。

 それを開き耳に当てて会話を始める。

 

「俺だ」

 

『ブチャラティか? 例の組織について追加の情報が……』

 

「それはもういい。その組織はもう消えた」

 

『………はぁ⁉︎ どういう事だよソレ!』

 

「詳しくは戻ってから話す」

 

 通話を切ると、ブチャラティと呼ばれた男はその場を後にした。

 




レオン
「少女には手を出さないって、やはり………」

伊月
「………アハハ……輝楽と重なるんだよね」

礼神
「僕に甘かったのもそういうことか………」

レオン
「そういえば……アルシアの娘には会わないのか?」

伊月
「オジさんは別にいいよ………なんか会っちゃいけない気がしてね。遠巻きに見て幸せそうならOKかな」

礼神
「YES ロリータ NO タッチ。だね!」

伊月
「ちょ、言い方!」

レオン
「なんだ、ロリコンか」

伊月
「言い方ッ‼︎」
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