ジョースター家と吸血鬼   作:黝 証呂

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第二部
9.未来の為に…


 あれから長い年月が再び流れた。

 エリザベスとジョージは結婚し、ジョセフ・ジョースターを出産した。

 だが私は彼らの結婚式にも出産にも立ち会っていない。それが原因で今…私は非常に困っていた。

 

「レオン!昨日の立食パーティー、何故来てくれなかったの!」

 

「そうだよ。式の時だって招待状送ったのに来てくれなかったよね?」

 

 私が自宅のソファーに腰を下ろして新聞を広げていると、ノックもせずに彼らが来た。エリザベスとジョージだ。

 

「手紙に止まらず、ついに家まで来たか」

 

「話を逸らさないで!」

 

 エリザベスは結構怒っているな。ジョージは呆れているようだ。

 

「はぁ……二人共…私の今の立場は知っているだろう?」

 

 私はある日を境に周りと疎遠になりつつあった。スピードとは仕事の事で何度か話す必要はあったが、直接会わずに手紙でやり取りをしていたのだ。

 

「私の職はなんだ?」

 

 私の今の職業……望んでなったわけではないが、コレが疎遠になった理由だ。

 

「殺し屋でしょ?それが何?」

 

 殺し屋……それが私の仕事。

 こうなったのには訳がある…始まりはまだジョナサンが生きていた数十年前の事だ……一度幕を閉じたあの物語の中で生き永らえたゾンビがいたのだ。

 それが世にはびこり、裏の世界で増殖しつつあるのだ。

 

「そのゾンビの中には、中々の地位を築いた者もいる。ジョージが働くイギリス空軍の司令官……とかね」

 

「やっぱりアレはレオンの仕業か…」

 

 そして私は殺し屋という肩書きを提げ、ゾンビの殲滅に動いている。

 あくまでも殺すのはゾンビだけだが、世間体がそれで良くなるわけではない。そもそも世間はゾンビの存在を知らない。

 

「そんなの知らないわ。私達とレオンは家族だし、エリナさんも会いたがってるわ」

 

「必要な時は力を貸しに現れるさ…仕事を全て処理したら、用もなく遊びに行くさ」

 

「また同じ事を言って…呆れるわ」

 

 呆れて結構…エリザベスやジョセフは、いずれ柱の男と戦う運命にある。それまでの間に面倒な敵を作らせるわけにはいかないのだ。

 

「ほら…今日は帰りなさい。リリー達も待っているだろう」

 

 半ば強引に家から追い出すと、二人は渋々と帰って行った。何故ここまで私に付きまとうのかがわからないな。

 疎遠になってからもう大分経つぞ?

 

「…さて……相変わらず気配を消すのが上手いな」

 

「なんだ…気付いていたのか…」

 

 屋根の上からストレイツォが降りてくる。波紋使いの彼も老いを感じる時期か…昔と比べるとシワと白髪が目立ってきたな。

 

「自分の娘のストーカーでもしてたのか?」

 

「ふざけるな。スピードワゴンから手紙を頼まれただけだ」

 

「…そうか。ありがとう」

 

「まったく……少しはエリザベスの頼みも聞いてやってくれ。噂に聞く限り…デビルと貴様の繋がりは全くない。多少世間にプライベートを晒しても、問題はないと思うのだが…」

 

 デビル…人離れした技の数々で命を摘み取る悪魔……シンプルかつ分かりやすいソレが、殺し屋としての私の呼称だ。

 

「お前への手がかりは毎回ゼロ。僅かな目撃証言も、「仮面を被っていた」以上の有力な情報は出ていない」

 

 私の犯行手口は真夜中に自宅を出発する…理由なく人が近寄るはずもない森へ行く…仮面を被る…現場に向かい犯行を行う…誰かに見られても、豹並みの脚力で山奥に逃走…仮面を外して帰宅。

 車ならまだしも、人間が私に追いつく事は出来ない。しかも足場の悪い森や山奥に逃げれば、ほぼ確実だ。

 

「そうだな……今溜まってる仕事が終わればな」

 

 そう言って受け取った手紙を掲げて見せると、ストレイツォは不満そうに帰って行った。

 

「………さて」

 

 私は今夜も生ゴミを処分する。人の形をしたただの腐肉だが、私以外に片付けられる者はいないのだから。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 あぁ約束しといて、私がジョセフと初顔合わせをはたしたのはそれから半年後の事だった。

 現時点でジョジョの面影があるジョセフを私は抱き抱えてみる。すると驚く事に私の皮膚が溶け始め、私は慌ててベビーベッドにジョセフを戻す。

 生まれ持っての波紋の才能があったのだ。そしたらエリザベスに「私達を放っておいた天罰ね」と笑われた。少し根に持ちすぎだ…仮にも君の叔父が、君の息子に腕を溶かされたんだぞ?

 まぁそんな事もあったが、今では良い思い出だ。

 更にそれから十数年後……私が暗殺という仕事を終えて帰る時…仮面を外すためにまず人気の無い場所へと走っていた。

 

「……む…あれは…」

 

 道中に知った顔がいた気がしたが、止まるわけにはいかず通りすぎる。そして人がいない事を確認して、私は仮面を取りさっきの場所まで戻った。

 

「やはり君か…君も老いたな」

 

「今回の仕事場からなら、帰宅時にここを通ると思ったよ」

 

 杖をついて仁王立ちする老人…シワと白髪も増えだいぶ老いたが、あの時の眼ざしだけは変わらない。

 

「石油王となった今じゃ、気軽にスピードなんて呼べないな」

 

「私はその省略された呼称も好きだがね。ところで話があるんだ。乗りたまえ」

 

 傍に停めてあった車に二人して乗り込み、スピードの部下と思われる者が車を出した。

 

「これからエリザベスの元へ行く」

 

「エリザベス?彼女の身に何かあったのか?」

 

「話せば長い…彼女はストレイツォからエイジャの赤石を受け継いだ。そして……」

 

「使命も受け継いだ。エイジャと柱の男の事だろう?」

 

「……知っていたのか?」

 

 原作知識でな……この世界では何の情報も得られてないし、仕事もあって派手に動けていないだけで、私は奴らに対抗できる策を講じていた。

 

「いずれ使う事になると頼んで特注で作らせた武器があるだろ?アレは私が柱の男と戦うために作らせた武器だ」

 

「そうか……だが無理はするな。吸血鬼であるお前は波紋使いより勝算が低い……これからは暗殺を止め、エリザベスとともに柱の男の調査を始めて欲しいのだ」

 

「それが話の本筋か……もちろん引き受けよう」

 

 私はスピードに従って暗殺稼業を二の次に…柱の男の調査を優先した。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「どうだマリオ」

 

「やはり無機物状態のこいつらにはいかなる攻撃も通じない。波紋どころか、爆薬を持ってしても傷すらつかない」

 

 時はまた流れ、ここはローマのコロッセオ。そして彼の名はマリオ…ツェペリ家の人間だ。

 彼は彼で柱の男達を倒す方法を研究している。

 

「エイジャの赤石で、波紋でも照射してみるか?」

 

「無駄だ。恐らくな…」

 

 ダメ元で案を提示するが、即却下される。

 

「コレが目覚める前に破壊出来たらどれだけ楽か…」

 

 私は触れないように壁を見上げる。その壁は奇妙な事に三人の人が減り込んでいる。この三人が柱の男…この三人より弱いのが別の場所に一人いるが、それはまだ見つかっていないし、私は発見場所を覚えていない。なんせ原作を最後に読んだのは、体感時間で50年以上前の前世…大雑把かつ、印象的なところは覚えているが全てを暗記してるわけじゃない。

 

「やはり、目覚めてからでないとダメか……ん?」

 

 その時…私の耳に誰かの足音が飛び込む。ここはコロッセオの地下だ……そしてマリオは私の隣にいる…侵入者のようだな。

 

「マリオ……誰か来た」

 

「何?」

 

 短くそれだけ伝えると、私は闇に隠れながら足音を追う。

 誰かが頭の上を音なく移動するなど予想するわけもなく、侵入者は私に気づいていない。

 

「ん…子供じゃないか…」

 

 地下に入ってきたのは、癖のある薄い金髪をした少年だった。私はその子供の背後に音なく飛び降りる。

 

「君…こんなところで何をしているんだい?」

 

「なっ!テメェいつの間に!」

 

 その少年は振り向きざまにペンチを振り抜いてきた。いきなりこんな子供が攻撃してくるとは思わなかった私は、それを防御する事こそできたが、力量を誤ってペンチを握力で変形させてしまう。

 

「あ……」

 

「な、何もんだ!」

 

 そう質問してくるが、彼は答えを待たずに私に殴りかかってくる。今度は冷静に対処しようと思ったが、私の直感が危険だと告げてくる。

 

「いっ!」

 

「あ……」

 

 無意識に気化冷凍で己の手を凍らし、それで彼の拳を防御してしまう。

 氷の塊を素手で殴ったのだ。勿論少年は疼くまって悶絶する。

 

「すまない。大丈夫か?」

 

「ウルセェ!触るな!」

 

 膝をついたまま痛めた拳を振り回し、めいいっぱいの威嚇をする……仕方ない。アレを試してみるか。

 

「落ち着きなさい。私は敵ではない……この手の事は謝らせてもらうが……」

 

「ぅ……ぁ……」

 

 笑みを浮かべて彼の目を見て語りかける。すると彼は自ら発していたプレッシャーを弱めていく。

 吸血鬼は目を合わせ集中する事で、簡単な催眠をかけることが出来るのだ。実際ディオはこの力で昼間動ける手下を増やしていたらしいし………会ったことないが、原作ではポコという少年が催眠にかけられていたな。

 

「大丈夫か?骨を痛めてないか?」

 

 私も座り込んで目線を合わせ、彼の拳を両手で包む。

 

「君…名前は?」

 

「……シーザー……」

 

 それを聞いて、遠い昔の記憶が蘇る。そうか……今日はあの日か…

 

「そうか…君がシーザー・アントニオ・ツェペリか」

 

「何故俺の名を…それも捨てた姓まで」

 

「君の父親と知り合いだからね。来なさい、会わせてあげよう……彼を探しに来たのだろう?」

 

 私が立ち上がり手を差し伸べると、少し迷いながらもその手を掴んで立ち上がった。

 

「マリオ。客人だ」

 

「客人?」

 

 こちらからは見えない所にいるのか、疑問を持った声だけが返ってくる。

 やがてマリオは此方に小走りでやって来た。

 

「一体誰が……な…お前!シーザーか?」

 

 シーザーの姿を見るなりマリオは驚愕し、シーザーは内側から憎しみや怒りを溢れさせている。

 

「あぁそうだ。俺はお前が捨てた息子のシーザーだよ!」

 

「待ってくれシーザー。少し話を聞いてやってくれ」

 

 私がストップをかけると、眉間に皺を寄せていたシーザーはゆっくりと冷静さを取り戻す。一旦目を瞑り深呼吸すると、彼は怒りを目に残しつつも頭を冷やす。

 

「マリオ。先ほどシーザーに殴られかけたが、その時わかった…彼には波紋の才能がある。此処まで付いてきたのだから、もう真実を伝えてもいいんじゃないのか?」

 

 真実という言葉に反応してシーザーが此方を見上げる。そしてマリオも腹を括り真実を話し始めた。

 ツェペリ家の宿命と柱の男達の事…そして家族を巻き込みたくなかったがために、家族を捨てたことを……

 そして私は付け足すように、昔の悲劇を語った。だが彼は信じられないという顔をしている。

 

「信じられないか…無理もない。来なさいシーザー……」

 

 そう言ってマリオが背を向けて歩き出す。シーザーは怪訝な表情を浮かべるが、私が頭に手を乗せると大人しくなる……私が持っているのはカリスマというよりは、安心させる包容力だな。

 マリオについていくと、シーザーはそこで異様な光景を目にしる。今話に出た眠っている柱の男達である。

 

「これが柱の男だ」

 

「これを見ろ」

 

 そう言って私は二人を下がらせて、私は壁に触れる。すると瞬く間に骨針が飛び出し、私を捉えようとする。

 

「寝てる間は人間の好奇心を利用し、こうして奴らは捕食する。だから秘密にする必要があった」

 

 だが予期していれば私なら躱せる。それを見たシーザーは冷や汗をかいて此方を見つめている。

 

「つまり……父さんは俺達を守る為に……姿を消したっていうのか?」

 

 ワナワナと肩が震える。

 

「そうだ。だがそれを言い訳にするつもりは無い……お前達を悲しませた事は事実だ。その事については深く謝罪する………本当にすまない」

 

 マリオが深々と頭をさげる。それを見て私はその場を離れる。

 二人だけの空間にすれば、互いに本音を言いやすくなると思ったからだ。

 

 そして翌日…私は彼らが無事に和解したことをエリザベスから聞いた。

 マリオは望んでいなかったが、シーザーは自らの意思でツェペリ家の宿命を受け継ぎ、今は彼女の元で波紋の修行を行っているらしい。

 一つ問題があるとすれば、共に修行しているジョセフと気が合わず時折喧嘩しているようだ。それが刺激になって今の二人は成長しているのだがな。

 

「さて……運命はどう変わる?」

 

 原作と違い、ジョセフには物心がついた時から波紋を教えている。彼自身努力が嫌いで伸び代はイマイチだったが、シーザーのお陰でそれもなくなった。

 

「…………ジョジョ…私はお前の子孫を守れるか?」

 

 肌身離さずに持っていたロケットを握り、私は天を仰いだ。

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