ストライク・ザ・ブラッド --------ハゲの監視 作:ワンパンチマン
----------第四真祖
存在してはならないはずの世界の理から外れた怪物。
わたしは彼を監視する。
ファミレス
茜色に輝く空の中彼はいた。
「あー...熱い。溶ける....焦げる、灰になる。浅葱ぃ今何時だ?」
高校生の制服を着ている。白いパーカー姿なのを抜きにすれば別段普通の人と変わったところはない。それなりの造りの良い顔には、暑さからか気怠げな表情を浮かべて眠たげに細められた瞳のせいで不貞腐れたようになっている。
「古城....あんたさっきからそれしか聞いてないわよ?あと3分22秒で4時よ」
「今日一睡もしなければ、あと17時間3分もあるぜ」
古城は二人の友人の言葉に、項垂れながら答える。
「那月ちゃんもこの範囲の量はないだろ....」
「古城が悪いんでしょ。あんたが那月ちゃん那月ちゃんって呼ぶから」
自業自得だと言い切ったのは髪を金に染めた華やかな少女、藍羽浅葱だ。
今どきの女子高生らしく、化粧と着崩しで自らを飾る浅葱は、しかし元が良いのかけばけばしい印象はない。むしろとても魅力的ですらある。浅葱の至極真っ当な指摘に古城はぐっと言葉を詰まらせる。
「や、でもさぁ。あの見た目で教師ってのはちょっと……むしろ中等部の制服着てても違和感ないだろ」
「まあ確かに、古城の言い分も分からなくはねえけどな。それを本人に言おうとはぜってー思わないぜ」
古城の意見にやや肯定的な立場を取ったのは矢瀬基樹。茶色の短髪をワックスで逆立て、首にヘッドホンをかけた軽薄そうな少年だ。
今日、このファミレスに集まった理由は明日と明後日に控えるそれぞれの追試と課題を終わらせるためだ。主に教えるのは浅葱で、教わるのは男子陣というか古城である。
「まじか...てか追試の試験範囲広すぎるだろ!」
そんな会話の中で無言で食べ続けている少年が一人いた。
「あ、このハンバーグチキンライスセットとお茶もらえる?」
「つーかさっきから人の金でどんだけ食うんだよ!サイタマ!!」
サイタマの横に積まれている食器の数を途中から数えるのも憂鬱になるくらいの量の皿が積まれている。同じく藍羽浅葱の横にも複数の皿とパフェを主体とした、デザートの皿が積まれている。サイタマとは2年ほど前から仲が良く古城の秘密も知っている数少ない人間だ。だがサイタマも浅葱も太っていない。むしろ痩せているという部類に入るだろう。あの細い体の何処に数々の料理が入っていっているのか勉強を見てくれるのを頼むときに二人が大食いだと言うことを忘れていたのが今更だが悔やまれる。
「え?いやだって奢ってくれるって電話がきたから」
「限度があるだろうが!!」
そもそも古城が提案してこの場にサイタマを呼んだのだ。サイタマも追試のメンバーであることから一人でこのような思いは受けなくなるだろうと儚くも希望的観測で呼んでみれば、古城達の担任教師である南宮 那月の手伝いをしたら追試は免除になったと聞かされたのだ。
「その金だって俺が貸してやってるんだからな!?ちゃんと返せよ古城」
「分かってるよ...たくっ薄情な奴等だな」
「薄情とは何よ。態々あたしに教わっておいて。まあサイタマが追試しなくて良いのは驚いたけどね」
「あ、ピザセット追加で」
「だよな...つーかサイタマは、まだ食う気かよ!」
古城の悲痛の叫び声を聞きながらもサイタマは食べ続ける。
「ああ、食費ヤバイからな。食べられる時に食べておかないとな」
「もういいだろ!」
「はぁ、古城言いにくいんだけどさ。そろそろ俺の貸せる金にも限界があるからな?」
苦笑いを浮かべながら古城に言う古城の親友である矢瀬。別に彼の貸すお金の限度額が低いからではない。四人の高校生が凡そファミレスで使うであろう金額を超えているのだ。普通にまるが一つ多いくらいにはおかしい。
「ああもうっ!浅葱とサイタマはもう食べるな!はぁ...俺の今の体質じゃ朝イチのテストは辛いって分かっててやってるんだもんなあの人は」
「朝弱いって、体質の問題?吸血鬼じゃあるまいし」
「はは、だよな」
「それに出席日数足りてない古城がいけないんでしょ?本来なら留年よ?それを好意で補習でチャラなんて感謝しなきゃだめよ?」
「そうだぜ古城。まっサイタマももう少し勉強した方が良いと思うけどな」
「ん?ああ」(スーパーの特売で何買おうかな)
「あ、ごめん。あたしそろそろ行かなきゃ」
「ん?何か用事でもあったのか?」
「あたし今日バイトなのよ」
浅葱は荷物を纏めて立ち上がる。それにつられるように矢瀬も立ち上がる。
「人工島管理公社の?」
「そっ!保守部コンピューターのメンテナンスをね」
「人工島管理校舎の仕事とかほんと浅葱はすげーよな」
「別に対したこと無いわよ。仕事って言ってもただのバイトだから。じゃあね三人とも」
「それじゃ俺も帰るわ。浅葱がいねーんじゃいる意味ないしな。古城頑張れよ。サイタマも、また明日学校でな」
「はあ...やる気なくすぜ」
浅葱と矢瀬が帰ってすぐに今日は解散になった。サイタマは古城とファミレスの前で別れて今日特売日のスーパーに向かう。この島は魔族特区で、吸血鬼や獣人等も暮らしている。一般的な人間の身体能力では、決して勝つことの出来ない力の関係にあった。だがそんな人間の中にも特別な力を用いて暴れている吸血鬼や獣人にも対抗できる攻魔師という存在があった。
糸神市 ----アイランド・ウエスト----
サイタマはファミレスから移動して現在糸神市にある、アイランド・ウエストのスーパーに来ていた。特売日ということで主婦らしき人達が行列を30分も前だというのに作っている。サイタマはスーパーの中に一度入りかごを持ってからもう一度外に出る。
かごを持ち改めて外に出ると中学生の制服を着た少女と目が合いバックステップで飛び退き何故か背負っていたギターケースを前に出して「第四真祖!」と叫んできた。第四真祖と聞いて周りに古城がいるのかと思ったが何処にもいない。
「なあ、誰かと勘違いしてないか?」
古城が第四真祖という事実を知っているのは、古城やサイタマの教師であり魔術攻魔管でもある南宮那月とサイタマ、そしてサイタマは知らないが古城とサイタマの友人でもある矢瀬もその一人だ。
「勘違い?へ?」
サイタマの思いもしなかった返事に一瞬たじろぐが頭を見て間違っていないと確信した。
「貴方はサイタマですよね?」
「そうだけど。誰?」
少女は、生真面目そうな瞳でサイタマを見返し、少し大人びた硬い声で答えた。
「わたしは獅子王機関の剣姫です。第四真祖である貴方の監視の任を受け派遣されてきました」
「あ、俺は第四真祖じゃないから」
「ま、待ってください!サイタマ先輩!」
「先輩?」
「はい。わたしは先輩の通う高校の中等部に入学するんです」
「へー。まっ俺には関係ないな」
サイタマからの返答に一瞬雪菜は戸惑った。いや見た目から、そして先程からの態度からも戸惑ってはいるのだが。そもそも真祖という存在は自らを偽ったりはしない。それは第一真祖から第三真祖までがそうであるように、自らを偽らない。それは強者であるからだ。人間世界に馴染む吸血鬼、確かに昔とは違うのかもしれない。
だが決して彼等は、自分が真祖かどうか聞かれれば間違いなく、そうだ。と答えるだろう。それだけではすまないが。
「ま、待ってください!本当は人違いなんかじゃないですよね?」
「はぁ...あのさ今からバーゲンだから並びながらでも良いか?」
サイタマは、雪菜から視線を外して行列の最後尾を指差す。その間も主婦らしき人達が列を行列にしていく。
「え?あ、はあ。分かりました」
サイタマは、スキップしながら行列の後ろに並びサイタマの隣に雪菜が並んだ。
「あ、そうだ。確か。姫柊だったよな?」
「はい」
「姫柊も並ぶなら食料確保を手伝ってくれ」
唐突に発せられた言葉に意味を理解するまで数秒。時すら止まったように感じた雪菜は一言、こう答えるしか無かった。
「え?」
「いや。え?じゃなくてさ。良いだろ、どうせ並ぶんだからさ」
「それは構いませんけど...なんか先輩って変わってますよね」
「そうか?」
「はい。まず真祖が並んでまでバーゲンの品を買おうとするなんて思いませんし」
雪菜は、サイタマに会ってから戸惑いを隠せなくなっていた。あまりにも真祖には程遠い存在だったから。
近くにいても魔力は感じない。野望も見えない。隙だらけ。こんな人物が本当に真祖なのか。
「だから俺は真祖じゃねーって言ってるだろ?」
「ですけど....。あ、ところで先輩」
「ん?」
「わたしは何を買えば良いんですか?」
「玉子だ」
「たま、ご?」
「ああ。今晩のうちの晩ご飯がかかってるからな。一人1パック。それが買えて余裕があれば豚肉も頼む」
少し凛々しい顔で何故かそう言ったサイタマに真剣に考えているのも馬鹿馬鹿しくなっている雪菜は、溜め息を混じりながら答えた。
「分かりました。やれるだけやってみます」
これから雪菜とサイタマによる
修正箇所あれば教えてくれると助かります。
雪菜がサイタマをサイタマと呼ぶのが違和感があると言われたので予定より早めに先輩呼びに変更しました。