ストライク・ザ・ブラッド --------ハゲの監視   作:ワンパンチマン

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沢山のお気に入りと感想ありがとうございます。日間ランキング3位に入ることが出来ました!かなり快挙だと自分では思ってます。

嬉しかったのでつい更新。おかしなところがあれば指摘してくださると助かります。


「聖者の右腕篇Ⅲ」

バーゲンセール

 

それは主婦たちにとっての戦場であった。バーゲン開始の5分前になるとサイタマと雪菜の周りの空気が変わっていった。

 

空気がピリピリしており皆それぞれ買い物かごとチラシを持っている。

 

「それではバーゲンセールを開始します。只今より10分間となります。慌てずに危険の無いよ

うお願いします」

 

店員の一人の声を合図に今までの列は意味を成さずに我先にと主婦が駆け出していく。あまりの迫力に気圧された雪菜は暫くの間その場で立ち尽くしてしまった。

 

「おい姫柊、早く行かないと売り切れちゃうだろ」

 

「は、はい」

 

気圧された様子もなくただ動かない姫柊に声をかけたサイタマは、先にスーパーに入っていった。

 

「っ!」

 

雪菜は今までの気圧された意味ではなく別の意味で動けなくなってしまった。武術を嗜み、剣巫である自分がサイタマの動きを目で追うことすら出来なかったのだ。

 

額から汗が流れ落ちる。今までも自分より強者と戦うことはあり、見えないほどの攻撃を仕掛けてくる事もあった。だがそれはあくまで拳や脚、それに扱っている武器の話だ。体全体、ましてや魔力を行使しているわけでもないのに目で追うことすら出来ないなんて今まで無かった。

 

--------世界最強の吸血鬼。

 

その言葉の重みが今になってようやく雪菜は理解していた。

 

雪菜はその後ようやく動けるようになり、サイタマが向かったであろう方角を見ると何故かチラシを見ながら挙動不審になって震えていた。その姿からは、先程雪菜が感じた、第四真祖としての重みなんて皆無であり溜め息を吐きながら反対方向にある、玉子を買いにいった。

 

 

結果的に言うと玉子は買えた。

 

それも何故か二つ。一人につき一つが買える限度らしいのだが玉子を下さいと店員さんにお願いすると、おじちゃんからのサービスと言われて二つ買うことが出来た。その後豚肉を買おうと行ってみると売り切れになっていた。

 

雪菜は肩を落として、サイタマのもとに向かおうとすると知らないおじさんに話しかけられて特売品の豚肉を分けてもらった。雪菜がお礼を言うと何も言わずに立ち去ったのだ。

 

「頼まれていた食材を手に入れられたのは良かったですけど...この豚肉は本当に良かったんでしょうか」

 

500グラム入っているパックを見ながら呟く雪菜の後ろからサイタマが向かってきた。

 

「どうだった?...」

 

「あ、先輩。こちらは二つとも買うことが出来ました」

 

「ほ、ほんとか!?」

 

若干肩を落としながら近付いてきた、サイタマだが雪菜の言葉を聞いて一瞬で明るくなった。

 

「は、はい...それで先輩は?」

 

「いや、それが...」

 

サイタマは、鮭を買うために向かった。勿論余裕で間に合っていた。だがチラシに書いてあった値段と出してある値段が1円違っていた。安くなっていたのならいいだろうが、高くなっていた。そのせいで他の店で買った方が安くないか?などど考えている間に全部売り切れてしまったのだ。

 

「はぁ...遠くから見ていてなんとなく分かっていたので良いです。それじゃあ帰りましょう?先輩」

 

「ああそうだな、そろそろ。て、姫柊は何処まで着いてくるつもりだ?」

 

先程から姫柊は、サイタマの隣を歩いていた。

 

「先輩の家ですが」

 

特に表情も変えずに先程買った食材を揺らしながら雪菜はサイタマの隣を歩いている。

 

「いやうちに来るって何?」

 

「わたしは先輩の監視役ですから」

 

その言葉だけを残してまた歩いていく雪菜に今度はサイタマが止まりかけた足を早めて隣を歩く。

 

「いや駄目だろ?普通に考えて」

 

「この食材どうする気ですか?わたしの食材ですよ?」

 

「うっ...」

 

サイタマは、雪菜に買ってくれと頼んでいた。だがお金を渡していなかった。雪菜は自分でお金を払うことになり、現在確かに食材は、雪菜の物だった。

 

「食ったら帰れよ」

 

せめてもの譲歩で言ったつもりの言葉だった。だがその考えは甘かった。

 

「はい?これからは、先輩の家に泊まることになります。なのでよろしくお願いします」

 

「は?.......いやいやいやいやどう考えてもダメだろ」

 

「はい、わたしも出来ることなら嫌です」

 

「なら」

 

「でもこれについては先輩の責任です。住んでいる所が人の住める場所じゃないじゃないですか。わたしだって最初知ったときは驚きましたよ」

 

魔女同士の戦いで破壊された区域でまだ再建される予定が無いのは、サイタマの住んでいる区域くらいだろう。だからサイタマは暮らせているのだが。

 

「俺は自分一人でも精一杯なんだ。他の奴を養う余裕なんてないんだよ」

 

「そうですか」

 

「ああ、だから諦めてくれ」

 

「一月に2万円。払います。それで手を打ちませんか?」

 

「......」

 

サイタマは考えていた。やけに曇っている空を見上げ時折顔を出す月を見ながら、少し余裕のある生活を。

 

「ちゃんと歯ブラシは持ってこいよ?」

 

「準備は出来ています!」

 

こうしてサイタマと雪菜は、同じ家で暮らすことになった。監視者と監視対象者の夜は更けていく。

 

 

 

 

 

サイタマの家に着いた二人は夜ご飯を作っていた。ある食材は、豚肉と玉子、それに白いご飯。今日のご飯は豚肉丼になった。

 

 

「先輩。落ち着いたので、と言うわけではないのですが。聞きたいことがあります」

 

少し硬い声になり箸を置く雪菜。表情からは少し緊張していることが伝わってくる。

 

「ん?何?」

 

「先輩はここで何をするつもりなんですか?」

 

「何をするって?」

 

「学校に通い普通の生活をしています、皆には正体を隠して...魔族特区に潜伏しているのは、何か目的があるんじゃないですか?例えば、糸神島を陰から支配して登録魔族達を自分の支配下に置こうとしているとか。あるいは、自分の快楽の為に彼等を虐殺しようとしているとか....恐ろしい!」

 

どこか思い詰めたような顔で、妄想を語る雪菜だが、サイタマはサイタマで古城がそんなこと考えているのか?と考えて、ないなと思っていた。

 

「なあ、俺は何回も吸血鬼じゃないって言ってる筈だけど」

 

「そうですね。先輩は只の吸血鬼ではなくて、第四真祖でしたね」

 

「だから!俺は第四真祖でもねーって言ってるだろうが!!」

 

「そんな筈はありません。では仮に先輩が真祖ではなかったとして、何者なんですか?」

 

「人間だけど?」

 

「先輩のような人間がいるはずないじゃないですか。下手な嘘でももう少しマシな嘘をついてください」

 

雪菜は、サイタマの事を人間とは思っていない。その理由として、予め言われていたというのもあるが一番大きな要因は、バーゲンセールの時に見た速さだろう。剣巫である、自分が見えないほどの速さで動く人間がいるはずが無いというある意味での剣巫に対する自分の自信の現れでもある。

 

サイタマは、だらしなく頬杖をついて溜め息を吐きながら諦めたように肉丼を胃の中にかけこんだ。

 

「先輩。わたし獅子王機関から監視するように言われて来たって言いましたよね?」

 

「ああ」

 

「それだけじゃないんです。もし先輩が危険な存在なら抹殺するようにとも言われました」

 

「へー抹殺ね。.......抹殺!?え?え?いやなんで?俺なにもしてないだろ?」

 

平然と告げられた雪菜の言葉に、サイタマの体は硬直した。しかし雪菜は穏やかな口調で続けた。

 

「その理由がわかった気がします。先輩は少し自覚が足りません。とても危うい感じがします」

 

「えーとこの場合は110番か?あ、おまわりさn.....」

 

「先輩。何をしているんですか?」

 

警察に電話をかけていた所をギターケースの中から銀色に輝く槍が出てきて雪菜は、電話を真っ二つにしていた。笑顔で微笑みながら。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、糸神島を構成する4つの人工島の1つ、アイランド・ウエスト。

 

眠らない町として有名なこの場所では、飲食店や商業施設が集まっている地区でもある。数多くの店が夜遅い時間まで店を開けている。

 

魔族の多くは夜を好む。それゆえに魔族の数が飛び抜けて多いこの町では、彼等に対するサービスも充実していた。ある意味では、この眩いネオンの夜景こそ人類と魔族が平和に共存する糸神市という町の象徴なのかもしれない。

 

だがいくら闇を隠そうとしても闇を全て隠すことは出来ない。どれ程明るくしても闇が消えないように。

 

人気の絶えた夜の公園に一筋の風が舞い散り男達の悲鳴が木霊する。雲から月が現れて月の明かりで幼い女の子と金髪を短く刈った外国人風の男が照らされた。




思ったことが一つ。このままのペースで行くと聖者の右腕篇がメッチャ長くなりそうな気がします。
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