ストライク・ザ・ブラッド --------ハゲの監視 作:ワンパンチマン
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夏休み最後の1日。
サイタマが起きた時間は、まだ早く太陽が上がっていない。部屋の中は未だに薄暗く目が覚めてしまったので仕方なく起き上がる。
何時もとは異なり痛む背中。昨日からサイタマを監視する為に来たと言った中学生の雪菜はサイタマのベッドの中で寝息を立てている。
昨日の夜、引っ越し業者が来て雪菜の荷物を置いていった。大きめな段ボールを二つ。中身は確認してないが、着替えや生活必需品なのだろう。歯ブラシも出てきた。器用に一つの段ボールを解体する雪菜を見ていると何故か段ボールを床に拡げて寝始めた。
流石のサイタマも、自分が布団で寝ている隣で女子中学生が段ボールで寝る、という暴挙を見過ごす事は出来ず、サイタマが段ボールで寝ることになった。
夏だとはいえ段ボールで寝たせいで背中が痛くなったサイタマは、目を覚ますために洗面台に向かった。
洗面台にあるのはコップ。そしてコップの中に入っている、青色の歯ブラシとピンク色の歯ブラシ。何時もとは異なる風景に少し浮き足立つ心を落ち着かせて青色の歯ブラシを掴んで歯を磨く。
「あ..先輩。おはようございます」
「ああ、おはよう」
歯を磨いているサイタマに起きてきた雪菜は気付いて、生真面目な口調で挨拶をする。気のせいか顔が少し赤い気がするが真夏だというのに冷房も付けない部屋のせいだろうと一人で納得する。
「あの...昨晩はありがとうございました」
少し俯きながら答える雪菜にサイタマは、昨晩にあったことを思い出す。
「......」
考えるが何も思い付かない。あるとすれば泊めたことくらいだが、あれは雪菜が半ば無理矢理言ってきた事であり今更謝るとも思えない。
「その...先輩が段ボールで寝ることになってしまって」
「ああ、別に気にしてないから。それよりも姫柊はベッドを買ってきてくれ」
「わたしも買いに行きたいんですけど...」
言い訳するようにチラリとサイタマを見る雪菜。物言いたげな表情を見て、サイタマは雪菜が言おうとしている事を理解した。昨晩サイタマに2万円支払った雪菜はお金がないのだと。
「え?何、お金なら無いよ?」
「違いますよ!!先輩にお金のことに関して頼んだりしません!そうではなくて、ですね。わたしは、先輩の監視役なので見張らなくてはいけないんです」
「だから?」
「ですから、その....一緒に来てください」
「なんだそんなことか。いいぜ、暇だからな」
「え...良いんですか?」
「別に良いだろ。それよりお昼奢ってくれ」
サイタマの言葉に目を点にした雪菜は、次には笑っていた。
「え?いやなんだよ」
「先輩は本当におかしな人なんですね」
そう言って雪菜は、少し嬉しそうに微笑んだ。
それから朝御飯を食べ、買い物をするためにサイタマと雪菜は、アイランド・サウスの地区にあるホームセンターに来ていた。
サイタマは、あまりホームセンターには来ないが別段見慣れない商品はない。だがホームセンターの中に入った途端に雪菜は目を丸くして固まった。
本土から遠く離れている学究都市である糸神島には、怪しげな商品を取り扱っている店も少なくはない。だがこの店はごく一般的な日用品を売っている店だ。
しかし雪菜の態度や言動からは、今までホームセンターなんて来たことすら無いように思える。
「これは何という武器ですか?鎚の一種のようですが」
「いやそれゴルフクラブだから」
真面目な表情で聞いてくる、雪菜に対して答えていくサイタマ。
「そうですか。ではこの火炎放射器のような重装備は...」
「それは....それは高圧洗浄器だ」
雪菜が聞いてきた商品に見覚えが無かった、サイタマは値札を見ながら答える。
「これは間違いなく武器ですね。映画で見たことがあります」
「そうだな。それより早くベッド見に行かない?」
こんな会話を30分ほど繰り返しており、中々ベットまで辿り着けずにいた。
「あ、そうですね!そうでした、忘れてました。全く...魔族特区とはこんなにも身近に武器が売られているなんて」
「なあ、そろそろベッドを見に」
「あ、これも獅子王機関で習いました!これとこれを混ぜると毒ガスが!」
そんなこんなでベッドを販売しているエリアに辿り着いた時には、サイタマは体力を完全に消耗し尽くしていた。
「あ!先輩!見てください、可愛いベッドですね!」
雪菜が指差したベッドは、シングルサイズのベッドでピンクを基準に作られており女子受けが良さそうな商品だった。
「うん。良いじゃない?でも金ってあるの?」
サイタマは、素朴な疑問を聞いてみた。一般的な中学生がベッドを買う。それは簡単なことではないだろう。雪菜が選んだベッドも高くは無いが、布団と枕も込みという値段で9万9千900円と値札が貼られていた。サイタマなら買える値段ではない。
因みにサイタマの家にあるベッドは、矢瀬が新しくベットを買い直すから三万円で売ってもらったベッドである。
「はい。必要経費を前払いにしてもらった支度金がありますから」
「支度金?」
「はい、簡単に言うと先輩の監視をするにあたっての餞別というような物です」
「ふーん。いくら?」
「一千万円くらいですね」
「いっせ.....!?は?」
平然と答える雪菜を凝視しながら、イチ、ジュウ、ヒャクと頭の中で数を数えていくサイタマ。だが10万を超えた辺りから機械がショートして壊れてしまったかのようにフリーズしてしまう。
「第四真祖が相手ということで、いつ死んでも悔いが残らないようにしておけと獅子王機関の....て先輩。聞いてますか?」
「......はっ!おい姫柊!俺にもその仕事やらせてくれ」
「は?い、いえ先輩の監視がわたしの仕事なので先輩には出来ません!て、先輩近いです!」
「大丈夫だ、俺がその仕事を受け持つ。安心してくれ最後までやり遂げるから」
「何をやり遂げるんですか!!近いです!近いですって!」
ふらふらと少しずつ雪菜に近付いていくサイタマに恐れ少しずつ下がっていく雪菜。
「先輩これ以上近付くと本気で怒りますよ!」
注意 ここはホームセンターの中です。
「くっ...雪霞狼!!」
注意 ここはホームセンターの中です。
「頼む、姫柊」
「何が頼むなんですか!!はぁあああ!!」
「そこまでだ、バカもの共」
漆黒に染まった鎖がサイタマと雪菜に絡み付き幼い女の子の声がホームセンターに響き渡る。
「げっ...」
「げっとはなんだ。サイタマ、こっちは朝から馬鹿の補習のせいで忙しいんだ、手間を取らせるな。全く、連絡が来て至急止めてくれと言われたときは、誰かと思ったがな」
「どなたですか...?」
「私はそこの馬鹿の担任の教師だ。転入生。うちの中等部の制服を着て暴れるとは良い度胸だな。....それは」
「っ!あ、いえすいませんでした」
雪霞狼を慌てて背中に隠しながら謝る雪菜を訝しげな目で見る。雪菜をサイタマが見ると顔は青ざめており、それは優等生タイプでこういう現場に慣れていないからか、背中に隠したものが見られたのが原因なのかそれは、サイタマには分からない。
「ふんっまあいいだろう。今回は厳重注意ということにしておいてやる。次は無いからな」
その言葉を残して那月は一瞬にして目の前から消え、同時に鎖も消えていた。
「はあ。良かった、あれだけですんで。姫柊大丈夫か?」
「....大丈夫か?じゃないですよ!先輩!」
「え?...いやどうした?」
「先輩がこんなにもいやらしい人だなんて思いませんでした...!」
顔を真っ赤に染めながら雪菜は言ってくる。
「は?いや俺が?」
「あんなに近付いてくるなんて!不潔です!いやらしいです!」
雪菜の叫び声で、店員が動こうとしているのが見えた、サイタマは謝ることにした。まさかお金欲しさに、やったことがこんなことになるなんて思いもせずに。
サイタマは、サイタマ自身に一千万もの大金がかけられているのかと、ちょっとズレた事を考えながら、暫く謝り続けた。
次回は話を進ませます。