その夜。
ある場所で会議が行われていた。
題材は、竣の排除について。
「とにかく……あいつを排除したの!!」
そう詰め寄るのは竣に歯が立たなかったリーダー天使
そして詰め寄られているのは…
「追いだせないの?貴女の力で!ミカエル!!」
ミカエルだ。
この2人の他にも、10人程度格の高い天使が集まっている。
「無理無理、いくら大聖天使の私でも訪問者を追い出す権限はないよ」
「あ、あれが訪問者とでも!?」
いくら言い聞かせても引き下がらないリーダー天使。
彼女のランクは聖天使Aランク、本来なら引き下がるべきである。
「はぁ……貴女も強情ね、わかったよ」
呆れたようにため息をつくと席に立ちドアの方へ歩いて行く。
「な、何をしてくれるの!」
「…………力を封じ込めれば満足?それならやるけど」
そう振り返りつつ聞くと、リーダー天使はとても満足そうな顔をして。
「それで構わない!早くやってくれるかしら!!」
「分かったよ」
そう言うと、静かに話を聞いていた他の天使たちの方を向き
「彼の能力の封印と、天使に危害を与えた罰を与えることに賛成の人」
すると、満場一致で賛成の意見となった。
ミカエルは全員を見渡した後、口角を上げ言いはなつ
「これで決定よ、彼は必ず私のものにする……ふふふふ……」
一方でリーダー天使も狂ったような笑みを浮かべ
「あ……ははは…あはははは!!!これで……仕返しができる……ふふ……ついてくる人!?」
すると、その内の3人が手を挙げた。
格式で言えば同じ聖天使のSランク達だ。
「早速行くわよ!ふふふふ…あはははははは!!!」
その頃、部屋を出たミカエルはある部屋に入る。
「ん……なんの御用ですか、ミカエル」
目をつむり椅子に腰掛けていた天使が立ち上がってミカエルを一瞥する。
「この前天使界に来た、竣君のね。力を封印して欲しいの」
「…………目的は?」
「そんなの決まってるでしょ?彼を私のものにするの、最高の契約相手よ…ふふふ」
「………………」
しかし返事を渋っているのか、中々返答してこない。
するとミカエルはその天使に近づいて行く。
「貴女も追放されたい?」
「……………分かりました、離れていて下さい。危ないですから」
「ふふふふ、最初からそう言えば良いのに」
脅しが効いたのか、その天使は素直に承諾する。
この天使、魔術を操るタイプでミカエルはこの天使に竣の力を魔術で封印してもらおうと考えている。
「……………………!」
何か呪文のようものを呟いたかと思うと、
彼女の周りが紫色に染まっていく。
そしてそれは手先に集中し、やがて弾け飛ぶ。
部屋中が紫色一色で幻想的であった。
「終わりました……これで彼の力は封印されましたよ」
「ふふふ、ご苦労様っ」
そう言うと機嫌良さそうに部屋を出て行った。
リーダー天使は、竣の部屋の前に来ていた。
「既に力はないはず……たっぷり痛めつけてあげる…!」
他の3人の天使に目配せをすると、
ドアを突き破り中へと侵入した。
「…………!?」
変な音で目が覚めた竣。
直後に腹に思い衝撃が走る。
「ぐふっ!…げほっげほっ!」
何者かが自分の上に乗っている、それを認識するだけの余裕しか無かった。
「………ふふふふ、じっくり……いたぶってあげるわ」
その声に聞き覚えがあった。
ついこの間聞いたような……
「お前は!今朝の…!!」
竣も相手の正体に気付いたようだ。
「それと、もう1つ気付かない?」
「何?……………!」
そう力が殆ど入らないのだ。
のし掛かっているだけのリーダー天使を退かす力も無かった。
「ど、どうなってる…」
「教えてあげるわ!あなたはね……今はゴミ屑同然なの!!愉快でしょう?殆どの力を封印させてもらったわ、これで今朝のようには行かない!」
狂った笑みを浮かべて顔を近づけ挑発するリーダー天使。
それに何もすることが出来ない竣。
「まずは……」
そう言うと拳を振り上げる
「くっ………!」
防御しようにも手に力が入らない、
そしてこの拳が顔面に当たる
「がぁっ!!」
あまりにも重い一撃に意識が飛びそうになる。
「あら、意識飛ばさせなんてしないからね?苦しむ顔が見たいのだから!!」
再び殴る、竣は何回やっても防御すら出来ずまともに喰らう。
口は切れて血が滲む、鼻血も出てきているが拳は振り下ろされる。
時計の針は丁度、長針と短針が重なり合う時。
「…………まだまだこれからよ?」
彼女の拳は血で赤く染まっている、
他の3人の天使の服にも血が多少付いている。
そしてその4人に囲まれた真ん中で蹲っている竣。
意識は朦朧として、聖杯の力も出せず苦しんでいた。
助けも来ない、一体いつまで続くのかと。
これが彼女達の復讐だった。
「……………………」
気がつくと部屋の真ん中で丸まって寝ていたようだ。
起き上がろうとすると、全身に激痛が走る。
骨は折られていないようだが、打撲箇所が多いらしい。
「くっ……………」
時計を見ると朝の4時を指していた。
4時間近く'復讐'されていたのだろうか。
昨日の記憶があんまりない。
痛む身体を起こして、部屋を出る。
「…………………」
すると向こうから、天使がやってくるのが見えた。
その天使は竣に気付くとこちらに駆け寄ってきた。
「竣君!おはよう」
「ああ、ミカエル……おはよう」
口を開くと血の味がした。
歯が折れてないか、それも心配であった。
「んー?元気ないなぁ、どうかしたの?」
心配そうにミカエルは顔を覗き込む
竣は少し明るい声で
「はは、まだ眠いからかも…顔を洗ってくるよ」
そう言って立ち去ろうとするが、ミカエルに腕を掴まれた。
「…………嘘でしょ?」
「…………………」
「何があったの?私に教えてくれない?」
まぁ___全部知ってるんだけどね_______
私の狙いは貴方を手に入れる事______
彼女達が貴方を虐め____疲れた貴方を私が癒す___
彼女達は鬱憤が晴らせて__私は貴方を手に入れれる__最高の計画____
「……………実は……」
竣はよっぽど精神的に来ていたのか、
彼女に昨日合った事すべてを話してしまった。
「そんな事が…………分かった、私が何とかするよ、竣君を守るからね!」
そう言って手を握ってくるミカエル、
今の竣には本当の天使のように見えていた。
竣も手を握り返す。
「ありがとう……ミカエル…!」
「ううん、気にしないで。私は竣君を助けたいだけ!」
うまく引っかかった_____
所詮人間__こんな軽い餌にも引っかかってくる_____
絶対この契機は逃さない_____
彼は_____私のもの_______
「それじゃあ、朝食持ってくるね?」
「良いの?」
「もちろん!だって大変でしょ?その状態で食堂まで行くの」
「うん…結構辛い…」
情けないなと自嘲して笑う。
しかしミカエルは首を横に振り。
「そうやって私に素直に言ってくれるの嬉しいよ!」
その笑顔が眩しかった。
傷付いた心に少しばかりの癒しが舞い込んだ。
この後、毎日夜になっては'復讐'
朝になっては'救済'
正反対の日々を送っていた。
相変わらず、
あんまり良い待遇をされていないラファエル。
その元にも竣が元気が無く、
何かがあった。という知らせだけは届いた。
気になってリーダー天使に聞いてみる事にしたラファエル。
竣君のためなら…苦手なリーダー天使にも聞いてみようと思ったのだ。
「あ、あの…」
「何?」
この所、リーダー天使の機嫌が少し良いのも気掛かりであった。
なんせ、こないだの2人の戦いを見ていたから。
「竣君に…何があったか…知りませんか?」
「…………………」
すると、一瞬曇った表情を見せたが、
すぐ様いつもの顔に戻って
「いや、知らないわ」
「………そ、そうですか…」
その場は引き下がったが、
絶対に何か隠している。そう確信した。
そして少ない人脈を伝って情報収集を始めるのであった。
その夜。
竣の元にリーダー天使は来なかった。
久し振りに安眠出来る日々、しかし連日の恐怖は睡眠を悉く妨げた。
そしてその苛立ちや恐怖は、封印されていた竣の聖杯へと注がれていく。
リーダー天使は、裏でコソコソ嗅ぎ回っているラファエルの存在に勘付いていた。
核心に触れる前に、何とかして口封じをしようと考えていたのだが、
ラファエルの事だ、単純な脅しでは応じてはくれない。
「一体どうしたら……」
すると竣への復讐に参加した1人の天使がある事を言う。
「物理的がダメなら、精神的に追い詰めては?」
「精神的に?」
「はい、例えば………霊体室とか」
「…………………あそこ…ね…」
そして翌日。
ラファエルはリーダー天使に呼ばれた。
「な、なんでしょう…?」
「ちょっと連れて行きたい所があるわ」
そう言って先に歩いて行く。
慌ててラファエルも後ろから付いて行く。
すると、歩きながらリーダー天使はラファエルに話しかける。
「貴方、私があの人間に何かしたんじゃないかって、嗅ぎ回っているでしょ?」
「えっ!………そ、それは…」
「バレバレだから。それでね、まぁ貴方の言う通り隠している事はあるわ」
「やっぱり…!それは何ですか!」
「……………良いわ、教えてあげる」
そして全ての事を話した、復讐。をしている事も。
ミカエルがそれを利用して、救済。をして竣を我が虜にしようとしている事も。
2人はWinWinの関係なのだと。
「そ、そんな事……許されません!」
ラファエルが全てを聞き終わった後リーダー天使に怒鳴ったが、
全く聞く耳を持たずにある部屋の前で止まる。
「こ、ここって……」
「ええ、霊体室よ」
「どうしてここに…?」
「だって……秘密を知られちゃ、口封じしなきゃいけないしねぇ?貴方、精神的に脅さないと言うこと聞かなそうだし」
そう言って、ラファエルの腕を凄い力で掴む
「い、痛いっ…!」
「ほら、ここで頭でも冷やしなさい………ふふふふふ」
そしてグイッと引っ張り自分の前に引きずり出すと、
そのまま背中を蹴り飛ばす。
ラファエルはいきなりの事で前のめりに倒れる。
「ばいばーい」
ラファエルはそのまま霊体室の中に入ってしまい、
それを見たリーダー天使が扉を閉めてしまった。
「や、やめて!!出して!!!」
ラファエルの悲痛な叫びも虚しく、
もうそこには誰もいなかった。
本来、人が寄り付かない場所。
中でラファエルは必死に助けを求めるが扉が開く事は無かった。
夕方。
「そろそろ出してあげようかしら」
リーダー天使が扉の前に立つ。
そしてゆっくりとその扉を開ける、
中から冷ややかな空気が染み出していた。
「ラファエル、どこにいるのかしら?」
入り口の近くには居なかったので、
どこかに隠れているのかと思い部屋の中を歩き回る
しかし、どこを探してもラファエルの姿は無かった。
「お、おかしいわね…ラファエル!どこにいるの!」
声を上げるがただ自分の声が反響しただけ。
少しずつ顔が青ざめていくのを感じる、
ここは霊体及び霊魂が納められている部屋。
居なくなった理由は分からないが、きっと嫌な予感しかしない…
部屋を出るとすぐにミカエルの部屋に駆け込む
「ミカエル!大変よ!」
ソファーに寝っ転がって眠たそうに欠伸をかいていたミカエル
のっそりと起き上がると
「何?ラファエルはどうしたの?」
「そ、それが…!」
霊体室に居なかった事を告げると、
ミカエルも少し焦りの表情を見せていた。
「………嫌な予感がするよ…」
すると突然ドアが開く。
「何が嫌な予感なのかしら?」
入ってきたのはルシファーだった。
「ど、どうしてここに!」
リーダー天使が驚きの表情でルシファーを見る。
それをルシファーは一瞥して。
「たまたまよ、ミカエルに聞きたいことがあってね」
「聞きたいことってなに?」
「ええそれはね。ラファエルはどこにいるのかしら?」
丁度事の核心をついてきた。
反応に困っていると、ルシファーが続けて言う。
「それと、どうして霊体室を開けたのかしら?」
「っ!!……そ、それは…」
ルシファーの目が妖しく光る。
「ラファエルと霊体室、何か関係があるのよねぇ?」
するとミカエルが口を開く
「うん、あるよ…彼女がラファエルを霊体室に入れた、そしたら居なくなってたんだってさ」
まるで他人事のようにルシファーに訴える
それはリーダー天使への裏切りでもあった。
「ミ、ミカエル!どういう事!?貴女もそれには賛成してっ…!」
「私、そんな事言ったっけ?」
嘲笑うかのような笑みを浮かべる
リーダー天使が更に言い返そうとした時、
ルシファーがそれを制した。
「今は誰が入れたかなんてどうでも良いわ、とにかく2人は付いてきて」
そう言って霊体室へと向かったのであった。
ルシファーは霊体室の扉を開け中に入る、
そして一番奥の壁の前で立ち止まる。
「な、何があるの?」
後ろからミカエルが声をかける。
それには答えず足元に置いてある箱を退かす、
するとそこに小さな扉が現れた。
「えっ?こ、こんな扉…!」
2人は知らないといった表情で顔を見合わせる
ルシファーはその扉を開け、這いつくばるように中へと入って行く。
中は更に冷んやりとしていた。
冷気とも言えるべき空気であった。
そこに居るだけで気分が重くなり、憂鬱な気分になるような重い空気でもあった。
「ここには、昔。我々天使達が束になっても勝てる事が出来なかった者共を封印している」
突如ルシファーが喋りだす。2人は黙ってその話を聞いていた。
「霊体室に収められているのは弱い力の霊達。ここに居るのは、絶対に封印が解けてはならない強い霊達。全部で7人居る、そして……」
ある1つのカプセルの前で立ち止まるルシファー。
埃が被り文字は薄れ読み取る事が出来ない、しかしその中が空っぽだと言うことは分かった。
「此処にいたのは、はるか昔の天使リュエル。彼女は、元々今のラファエルの様な待遇を受けていた、そして彼女は深く憎しみを抱いていた。その憎しみは彼女に少しずつ力を与えていった。そしてある時……」
その結末を言おうとした時天使界全体が大きく揺れる。
「な、何が起こったの!?」
「…………手遅れだったようね…」
「どういう事?」
「説明してる暇はないわ、今すぐ竣に力を戻しなさい」
「えっ!?ど、どうしてそこまで…!」
「お見通しよ、早く心を返してあげる事ね。こっちも手遅れになるわよ」
ミカエルはルシファーが何故全てを知っているのか、納得が行かなかった。
しかし今は天使界に何かが起ころうとしているのは分かった。
リュエルの霊が居ない事、ラファエルが居ない事。
2つが指す答え。
「早くしなさい、リュエルとラファエルは霊融合をしたわ…きっとね」
「霊融合ってなによ?!」
今度はリーダー天使がルシファーに問い詰める。
ルシファーは語気を強めて言う
「早く竣の心を返しなさいと言っているの、聞こえないのかしら?」
そう言ってミカエルを睨みつける
「わ、分かったよ……戻せば良いんでしょ、戻せば!」
そう言って、魔術使いの天使がいる部屋へと向かった。
そしてルシファーは残ったリーダー天使に向き直る。
「霊融合、それは言葉で言うなら簡単。霊と人間が融合した、ただそれだけ」
「そ、それだけって…」
「でも取り憑いた訳ではないわ、霊の意思と人間の意志が合致した時お互いの意識を共有し1つにする。それが霊融合。きっと彼女達の心にあるもの、それは………不遇に対する憎しみ、己の非力に対する憤り、そして孤独に対する哀しみ。」
「ち、ちょっと待ちなさい!ラファエルとそのリュエルってのが、霊融合するとどうなるのよ!」
「…………天使界が滅びる。ただそれだけよ」
そう言うとルシファーも部屋を出て行ってしまった。
その場に立ち尽くすリーダー天使、
一体どれほどの事が起きているのか、全く飲み込めていなかった。
「…………竣さん………どこにいるの……?」
天使の館を遠くから見ている天使がボソリと呟いた。
ゾロゾロと天使の館から天使たちが飛び出してくる。
外には既に100人程度の天使たちが、
状況を把握しようと扮装していた。
ルシファーも館から外に出る。
するとその後ろから、ミカエルが追いかけてきた。
「力を戻したのかしら?」
「戻したよ!ただ…」
ミカエルの表情が曇る
理由をルシファーが問いただす
「ただ……彼の心には負荷がかかり過ぎてるって言ってた」
「負荷ねぇ………どこぞのバカな天使さん達が無力の彼を痛めつけたからじゃない?」
皮肉を込めて言い返すと、
ミカエルは言い返す言葉もなく黙り込んでしまった。
すると、天使達の中でランクの高い天使達が固まっているのを見つける。
2人もそこに歩いて行く。
「どうなっているのかしら?」
「わ、分からない……ただ、外部の何者かの攻撃としか…」
既にそこでは話し合いが行われていた。
どうやら、ここが天使達の本部のようだ。
「外部の攻撃なんかじゃないわ」
天使達が一斉に振り返る。
ルシファーはその輪の中へと入っていき、話を続ける。
「そこにいるミカエル達が何をしたか、それを話さないといけないわね」
時間がない中、大事な事だけを掻い摘んで説明する。
天使達が大体理解した上で、先ほどの話に戻した。
「だからこの攻撃は、霊融合したラファエルとリュエルのものよ」
すると黙って話を聞いていた天使の1人が、
輪の外で遠慮がちに話を聞いているミカエルに向かって言う。
「貴女の処分はこの事態が収束したら速やかに行います、それまで貴女はこの事態に対して最大限の協力を。」
彼女は大聖天使のSランク、即ちこの天使界のトップ。
彼女が言う事は絶対的な力を持っていた。
「わ、分かりました…」
「それじゃあ、何といったかしら……竣?とかいう人間を呼んできなさい」
すると横にいた天使が館の入り口を指差して
「彼ならあそこにいます!」
「そう、ならこちらに呼んで頂戴」
そしてその輪の中に竣も加わる。
「………………………」
「貴方が人間の竣ね、貴方は強い力を持っている、そしてラファエルとも親しい。心を戻したばかりで疲れてるでしょうけれど、協力してもらうわ」
多少冷たく命令するように言う、
しかし竣はチラッと一瞥しただけで、うんともすんとも言わなかった。
「……………嫌なのかしら?」
多少語気を強める、
すると竣が重い口を開く。
「…………ああ、嫌だ。悪いけど俺は一切協力するつもりないから」
一瞬、周囲の空気が凍りついた_______
無力の竣が受けた数日間の暴力、ラファエルが受けた精神的苦痛、
その憎しみや哀しみなどの負の感情は、そう簡単に埋まるものでも無く。
2つは呼応しあい、引き寄せ合う。
天使界は最悪の局面を迎えようとしている。
「ふふふ……竣さんみぃーーっけ…」
銀色の羽を広げ空高く飛び上がった
彼女こそ、ラファエルとリュエルの霊融合した姿。
ラファエルの体にリュエルの意思が混ざっているので、
ラファエルαと言ったところだ。
「あ、あそこに天使が!」
天使の1人がラファエルαに気付いて指を指す。
周囲の天使達はラファエルαの方を見る。
「あれは……ラファエル…?」
「で、でも羽が銀色だし…様子が変だよ」
様々な声が上がる
ラファエルαはゆっくりとこちらに近づいてくる。
そしてゆっくりと手を翳し、
天使の館に向かって強烈なエネルギーを放った。
「まずい!防御を!!」
誰かがそう叫んだときには遅かった。
凄まじい光と爆風によって視覚聴覚は一時的に失われる。
ルシファーや大聖天使達でも数秒間身動きが取れなかった。
「くっ……どうなったの…」
本部の1人が薄っすらと目を開け状況を確認する。
そこには真っさらな地面に少しの瓦礫が残っているだけであった。
「う、嘘………」
「あ、あいつ…一瞬で館を消滅したのか…」
本部の天使達も騒然とする。
圧倒的な力過ぎるのだ。
そんな中トップは落ち着いていた。
「館はまた建てれば良い。今はここにいる全員で彼女を倒すのよ。殺す許可も出す、好きにして」
天使達もその言葉を聞いて多少落ち着いたようだった。
「殺しても良いなら…」
「本気でやって良いんだもんね!」
そうして、多くの天使達がやる気を出した。
そして未だ空中からこちらを見下ろしているラファエルαに向かっていこうとした。
「流石にこの人数なら、彼女1人では相手出来ないわ」
トップは冷静に分析をしていた。
相手は1人、圧倒的な力があっても数で押せば勝てると。
しかし、そんな彼女にも誤算があった。
ラファエルαの前に立ちふさがる人影。
「1人なら処理は難しいかもな…じゃあ2人ならどうだ?」
その人影から赤きオーラが立ち込める。
「くっ…!竣…!」
ルシファーが睨みつけるように人影を見上げる。
「俺は………ラファエルの味方だ……ラファエルをこれ以上傷付けるなら……お前ら全員………ぶっ倒す!!」
「竣……どうしてなのかしら?」
ルシファーが立ちはだかる竣に向かって問いかける。
「この天使界をこの有様にしたのは彼女よ?」
すると竣はフッと息を吐きつつルシファーを見据える。
「じゃあ…そのラファエルをこんなにしたのは誰だ?もちろん、ラファエルを虐めていた奴だけじゃない…それを見ず知らずのフリをした………くぅっ…!………お前ら全員だろぅがあぁぁ!!!」
歯を食いしばり拳を血が出るほどきつく握る。
そして震え上がるほどの怒りによって更に聖杯の力を高める竣。
辺り一帯が赤色に染まってゆく。
「…………それもそうねぇ……もう、言葉ではどうにもならないわ」
そう言うとルシファーはより一層竣の瞳を見つめる。
「ひとつ聞かせてくれるかしら……それは本心なの?」
また竣もルシファーの瞳を見て答える。
「………今回は俺の意思だよ…前見たく暴走なんてしていない、俺の心からの想い……!」
暫く見つめあう2人
するとルシファーがフッと笑うと、
後ろを振り返り他の天使達に告げる。
「私が彼と戦うわ、貴女たちは全員でラファエルを倒しなさい」
「む、無茶ですよ!幾ら…ルシファーさんでもっ」
天使の1人が止めに入る、
しかしその制止を聞くこともなく、竣と同じ目線へと飛び立つ。
「私をなめないで欲しいわぁ……私も昔は……大聖天使…天使界のトップよ…!!」
すると黒紫の羽を大きく広げる
「本気を……見せてあげる……!」
すると、今度は空気が揺れるような感覚がした。
そして辺りは紫に染まっていく。
ルシファーの周りには神聖な天使の気が纏っている。
「私こそが…堕天使…ルシファー!」
その様子を見ていた竣は自然と笑みが溢れていた。
ルシファーを見ると、ルシファーもまた笑みを浮かべていた。
「行くよ……ルシファー」
「ええ、来なさい竣………貴方が強くなれば…私ももっと強くなれるわ…!」
「はあぁぁぁっっ!!」
聖杯の力を高めてルシファーに向かっていく
右拳を後ろに構えて力を貯め、
ルシファーに近づいたところでそれを突き出す。
「っ!」
ルシファーはそれを左手で受け止める。
そして左手を軸に竣を回転させ、地面へと吹き飛ばす。
「はっ!」
手を付きうまく受け身を取り着地する。
そしてすぐさま上空へと飛び立つ
「まだまだ!」
先ほどよりも早い一撃。
「くっ!?」
強烈な流し蹴りを食らったルシファー
少し後ろへと下がる
「俺の怒りは………こんなものじゃ無い………怒りを力に…哀しみを力に……う……ああぁぁぁぁぁっっ!!!」
拳を握り聖杯の力を更に高めていく
竣からは大きな赤いオーラが吹き出し、大地はその力に呼応するように震え始めた。
「竣さん……私も……うふふ」
ラファエルαも戦闘態勢へと入る。
目の前には100人以上の天使、それをこれから自分が殺せるかと思うとウズウズしていた。
「ますは……そこの天使さぁん…」
1人の天使に目をつける。
「わ、私…!き、きなさい!」
怯えつつもラファエルαを見返す、しかしそこにラファエルαはいない。
「もう来てるよ?」
のんびりとした声が背後から聞こえる、
振り返ろうとした時には目の前はエネルギーで包まれていた。
「ひぃっ!?」
それが最後の声となる。
強大なエネルギーが彼女も包み込む。
「それじゃあ………これあげるね」
ラファエルαはそのエネルギー玉を更に側に固まっていた天使たちに投げつける。
「う、嘘!」
「こんなのっ…!」
「いやああぁぁぁぁぁっ!」
誰もそれを止める術なく。
たった一撃で10人以上の天使が倒された。
「さぁ、お次は誰かしら?」
「私が戦う…」
「貴女は……大聖天使さん……殺してあげる……」
ラファエルαの前に立ちはだかるのは、
天使界のトップとその参謀2人であった。
「行くぞ、カリエル!ルノエル!」
トップ天使は横に並んだ天使たちに言う。
「はい!天使長……いえ、ミラエル!」
カリエル、ルノエルはトップ天使もといミラエルに応じる。
「私たちが負ければ……この天使界が負けたと言っても良いわ」
「全力で……戦います!!」
「最初っからフルパワーを出すのは久しぶりかも!」
3人はそれぞれ翼を広げ力を解放する。
「わぁ、皆さん凄い力……だからこそ…潰し甲斐がありますね…!」
ラファエルαはまずカリエルに攻撃を仕掛ける
瞬時に目の前に移動し膝蹴り、カリエルが怯んだところでカリエルの体をルノエルに投げつける。
「ぐぅっ!」
そしてその隙にミラエルに集中攻撃。
パンチ、蹴り、エネルギー玉。様々な攻撃を組み合わせてミラエルを混乱させていく。
「貴女は……素晴らしい才能よ…でも負けない…負けられない!!」
「その目………私の才能を認めず、異端児として冷ややかな目で見た彼奴らと同じ……腹立たしいです……凄くね!!」
今のラファエルαはリュエルが精神を支配しているようであった。
彼女の口から語られるのは昔の事、ラファエルとは無関係なのだ。
「貴女が昔に何があったか……それは今は関係ない……!!」
「そう………じゃあ私の怒りは?憎しみは?哀しみは??………1人で抱え込めと言うの?この子のように……ふふふふふ………そんなの御免だわ…だから発散するの……こうやってねぇっ!!」
「カリエル!ルノエル!防御態勢よ!後ろにいる天使たちを守って!!」
「はい!!」
「シールド展開!!」
2人の天使は手を繋ぎ同士に力を放出。
すると天使たちを守るベールが出現した。
「そんな弱っちい盾で何が守れるのかしら?」
「……さっさとしたら…どうっ?…はっ!」
ミラエルもラファエルαに両足で蹴りを食らわせ、少し離れた位置へ距離をとる。
しかし何故かバリアの中へは入らないようだ。
「ミラエル!バリアに入って!」
「いいえ、入らないわ……私が彼女の攻撃を……怒りやその全てを受け止める!!」
ラファエルαは既にエネルギーを貯め始めている。
「そんなっ……ダメです!ミラエルさんが居なくなったら……」
「大丈夫、私は天使長よ?そう簡単に死なないわ」
「お話は済んだかしら?」
ラファエルαはエネルギーを貯め終わったようだ。
右手には悍ましい黒に近いエネルギーが纏っている。
「ええ………さぁ!来なさい!!受け止めてあげるわ!」
「受け止める…………くっ………ふざけないで……何を今更ぁっっ!!」
憎しみの表情で黒きエネルギーをミラエルに向かって放つ。
「貴女の闇は……私が払う…光の精霊よ。私に力を!」
ミラエルの右手が光る。
そして光の粒子が集まって行き、ミラエルの手を覆う。
そしてそれを黒きエネルギーにぶつける。
光と闇のエネルギーは激しくぶつかり合い
そのまま大爆発を起こした。
ミラエルやカリエル、ルノエルとラファエルαの戦いの最中、
ルシファーと竣の戦いも続いていた。
「ふっ…!!はぁっ!」
背中に移動してかかと蹴りを繰り出す竣、
出した瞬間にルシファーは消え、攻撃は空振りする。
「どこだ………」
神経を集中させて場所を探る。
目で追っても見つからないものもある。
肝心なのは気だ。人が出すオーラだ。それが大気を震わせる。
「上だ!」
上を向いた瞬間、目前にはルシファーの顔があった。
「遅いわね、竣」
そして黒紫の羽で思いっきり体を吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
防御をし、地面を削りつつなんとか踏みとどまる。
明らかに力の差が出始めていた。
「どうしたのかしら?貴方の怒りはこんなもの?」
ルシファーもそれに気付いていた、
攻撃の手を止め質問をしてくる。
「違う……俺は……」
「気付いたんじゃなくて?ラファエルαがやった事は、幾ら何でもやり過ぎだって」
竣はその言葉に首を横に振る。
「違う…何故かは知らないけど、ただこれ以上の力を出したくないだけだ……でも…ルシファー。君は強い…だから……今度は、俺の意志で本気を出す!!」
すると竣は立ち上がり、
オーラを高めていく。
そして一刹那。そのオーラが爆発的な力を生み出した。
「……………くぅっ…!はぁっ!」
少し苦しそうな表情を浮かべつつ、
攻撃を始める。手から衝撃波を生み出す。
ルシファーはすぐさまそれを感じ取り上空へと避ける。
しかしそこには、既に竣が拳を構えていた。
「だあぁぁっ!」
そのパンチはルシファーにクリーンヒットする。
そのままルシファーは地に落とされる。
しかしこの変化は危険な変化であった。
彼自身は気付いていないが、今まで本気を出さなかった訳。
それは彼の体や精神だけが気付いていた事、
この状態を長く続ければ、いずれか彼の力に精神が追いつかなくなり壊れてしまう事に_____________
「………………」
地面に伏せる天使が1人。
その横には2人の天使が必死に声をかけている。
「ミラエル…ミラエル!!」
「起きて下さい!ミラエルさん!」
しかしミラエルはビクともしない。
天使の輪も消え、少しずつ体も消えかかっていた。
「死なないで………」
カリエルがミラエルの頬に手を伸ばす。
しかし頬に触れる直前、
ミラエルの体は消え去ってしまった。
「くっ……うぅぅ……」
涙を流すカリエル。
その横で立ち上がる音が聞こえた。
「ぅぅ……ルノエル…?何をするの…?」
「………倒す…あいつを…倒す!!ああぁぁぁぁっ!!」
完全に怒りと悲しみで我を忘れていた。
捨て身の勢いでパワーを解放する。
「待って!ルノエル!」
カリエルの制止も聞かず、一直線にラファエルαの元へと向かう
「ふふ……次は貴女を殺しちゃいますね」
ニコニコ笑いながらエネルギー玉を放った。
「こんなものおぉぉぉっ!」
ルノエルはそれを全て弾き飛ばす。
そのままラファエルαの体に突っ込んだ。
中々起き上がらないルシファーに痺れを切らせ、
上空から地上に降りると、ルシファーの元へ行く
「終わりだ、ルシファー」
再び手から衝撃波を放とうとする
「……………」
その時微かにルシファーの手が動いた。
「っ!」
危ないと思い飛び退こうとしたが、時既に遅し。
ルシファーの右手が竣の足を掴む、そしてそのまま地面に叩きつけられた。
「くっ……やはり…あの程度じゃやられないか…」
渾身の一撃だった事を告げる竣。
すると形勢逆転したルシファーは竣にまたがる。
「貴方は甘いわぁ…」
両手を掴み抵抗出来ないようにする。
そして顔を近づけ話を続ける。
「良いかしら?貴方、このまま力を上げ続ければ勝てるとでも思ってる?」
竣はオーラを高めて逃げ出そうとするが、
完全にルシファーの元から逃れられなくなっていた。
「…………」
「勝てないわ、それにいつか貴方は壊れる。力が精神を超えてしまうのよ」
ルシファーは竣の異変に気付いた様であった。
「それでも…………」
抵抗を止め、竣は口を開く。
「俺は………ラファエルの為なら……命を捨てる…」
「!」
流石にルシファーも驚いている。
ここまでラファエルに対する想いが強いのかと。
「だから………」
「ぐぅっ!」
手の拘束を解き、密着していたルシファーの懐に衝撃波を撃ち込んだ。
一瞬の間があって、ルシファーは口から血を流しつつ後方へと吹き飛ばされた。
「ああぁぁぁぁっ!!」
ルノエルはラファエルαに突っ込んだ。
しかしラファエルαはそれを見事に受け流し、後ろに回ってヘッドロックの状態へと持ち込んだ。
「このまま首。締めちゃいますね」
柔らかく言っているが、顔は本気の顔であった。
ニコニコしているが、目には確実に怒りの憎しみの色が映っていた。
「貴女達はここにいて!」
カリエルは守りきった天使達にそう告げると、
涙を拭い自分も戦いへ参戦していった。
「ルノエル!今助けるわ!」
「友情って素敵ですね……私も友達…欲しかったなぁ……」
ギリギリと首を締めるラファエルα。
「やめなさい!ラファエル!!」
「うふふ…私はラファエルじゃないわ、リュエルよ?」
「くっ…貴女はラファエルの体を乗っ取ってるじゃないの!」
「確かにそうとも言えるかも?……でも、私と彼女の意志が一致したからこうなったの。しかも誰かしら?彼女をあんな冷たい部屋に置き去りにするなんて…可哀想じゃない」
「そ、それに関しては…私達が悪かったわ…」
「ふふ、今更?………もう許しませんよ、絶対に。私は…竣さんだけ居れば良いのです…」
そう言ってさらに力を入れる、
ルノエルはもがいているがもう限界の様だ。
「………やめろぉぉぉぉぉっ!!」
カリエルはラファエルαに羽で攻撃を仕掛ける。
しかしその攻撃をわざと受けるラファエルα。
ダメージを負うが、首を締める力は緩めなかった。
「っ!離して!!」
「……………はい、どうぞ」
するとルノエルをカリエルに投げ渡す、
それを受け取ったカリエル。
しかしもう、ルノエルは息をしていない事が分かった。
そして再びミラエルの様に、少しずつ消えかけていく………
「くっ………今のは効いたわ……」
フラフラと立ち上がるルシファー。
もう説得も聞かない事を悟り、実力で倒すしかないと覚悟する。
視線を前に移すと、
黙ってこちらを見ている竣の姿があった。
「やるしかないのね…」
フワリと浮かび上がると、
いきなり超スピードになり竣の元へと向かっていった。
カリエルは独りになった。
もちろん、まだ生きている天使はいる。
しかし、ミラエル、ルノエル、カリエル。この3人は昔からの友達であり親友であった。
3人ともいつも競い合い、今の座についていた。
これからもずっと、この3人で天使界を率いていく。その事にどれだけの喜びを感じたか。
3人だったからこそ、辛い仕事も頑張れた。
しかしもう、2人は居ない。
守ってきた天使の館も消え去った。
誰の所為?………そう、私の所為。
「私の所為………これは罪……」
「どうしたのかしら?次は貴女を倒す番です」
「好きにすれば良い………私も好きにさせてもらう………もう守る者も……競い合う人も…何もない!!!!」
カリエルは手を自分の胸に翳す。
すると手の内から赤い血が流れて行く。
「私の………いえ……3人の力……三位一体の力…!」
「何か面白そうですね…ふふ、楽しみ」
その様子を見ていたガブリエル。
昔、館に置いてあった本で読んだ気がする。
手を胸に翳し血が出る。これを使用する奥義を。
「でもあれって……使っちゃいけない…」
その通り、
天使達は強くなくてはならない。
その過程で生まれるのは必ずしも成功例だけじゃない、
己の身を削る技や、契約者をも巻き込む技。
簡単に言えば禁断の技が幾つも生まれた。
その中の1つ、
「罪」であった。
昔、カリエル達の様に仲の良かった2人の天使がいた。
ある時、戦いの最中で片方の天使がもう片方の天使を庇い死んでしまう。
傷を負った天使は、死ぬ間際に己の心臓に手を翳し溢れる血から、
エネルギーを生み出し。それを片方の天使に授けた。
その血はとてつもない力を発揮したと言うが、その天使も自分が殺したと言う罪を感じ、
自分の命を少しずつ削って行き、
その戦いが終わった時には2人とも死んでしまったと言う。
超短期型の大技であった。
「はあぁぁぁっっ!!」
ラファエルαも流石にエネルギーの大きさを感じたのか、
牽制としてエネルギー玉を幾つか放った。
それをひらりとかわすカリエル。
しかし避けたエネルギー玉は後ろに散らばっていた、
天使達めがけて飛んで行く。
当然、天使達ではラファエルαのエネルギーを受け止めれるわけもない。
比較的前の方にいた天使達は受け止めきれず倒されていく。
そしてエネルギー玉の1つがガブリエルの元にも、
「くぅっ……」
無理だと悟りつつ、打ち返そうとするガブリエル。
しかしそのエネルギー玉は急に軌道を変え、ガブリエルの横を通り過ぎ地面に当たり爆発した。
「……え?」
何故?と理由を探るガブリエル。
すると視界の端に、赤いオーラが映った。
その方向を見ると、
竣が確実にガブリエルの方を見ていた。
「………!!まさか…私を守ってくれた…の?」
再び竣の方を見たが、
もうそこに竣の姿は無かった。
「………竣君…どうして…」