その未来にあるもの   作:spirits77

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テスト

翌日。

竣が目を覚ますと屋敷の天井が見えた。

 

そうか……

 

部屋に誰かが入ってくる。

 

「竣さん!」

 

ラファエルが顔を輝かせて駆け寄る。

 

「おはよう、ラファエル」

 

「はいっ、おはようございます」

 

気づいたらラファエルの頭を撫でていた。

 

「………し、竣さん…?」

 

「ありがとう」

 

言いたいことはあるはずだ、でも出てこない。

だから短く簡潔に。

 

「っ………もう、心配したんですよ!」

 

涙目になりながらも笑ってくれるラファエル。

そしてしばらくお互い無言の時間を楽しむ。

手を握ったまま、嫌な沈黙ではなかった。

それぞれが気持ちの整理をする時間。

 

すると今度はミカエルと朝倉が入ってきた。

 

「2人ともおは…よ……?」

 

朝倉はスタスタと竣に近づくと頬をつねる

 

「いててててて!」

 

「ふん、私達に苦労かけた罰だ。全く。いつもお前は無茶をする」

 

頬をさすりながらごめんなさいと謝る。

 

「竣君!アヴァロンもね、無事だよ!安静にしてたら平気だってさ!」

 

「そうか、よかった……運んでくれてありがとうな」

 

「へへっ、お安い御用だよっ!それより私の方こそ……「良いんだ」

 

竣が人差し指をミカエルの口の前で立てる。

しーっとしている。

 

「………えいっ」

 

ミカエルはそれをパクッとする。

竣は慌てて口から引っこぬく。

 

「そ、そういうことじゃないよ!?」

 

恐る恐るラファエルの方を見る。

 

「大丈夫ですよ竣さん、おでこに1回で手を打ちます」

 

腕を掴まれる。

これはデコピン痛いぞ…!

観念し目を瞑った瞬間、おでこに優しく柔らかい唇の感触が一瞬触れた。

 

「………え?」

 

「誰もデコピンなんて言ってませんよ?」

 

そうからかうような表情で笑うラファエルを初めて見た。

つられるようにミカエルと朝倉も笑う。

竣はただただ恥ずかしくて俯いていた。

 

 

朝食をとりひと段落した所で朝倉が真剣な話をする。

 

「レミリアの件だが、高坂家と繋がっているのは分かったから、後は我々の問題だ。任せておいて欲しい」

 

「はい、分かりました」

 

自分がしたいことはした。

これ以上出しゃ張るつもりはない。

 

「それと、もうすぐ期末テストがあるからな」

 

「……………」

 

「ただでさえ中間テストをサボったんだから、期末は一定以上の基準を取らないと退学だからな?」

 

「……………」

 

「それで竣特別の基準を設定したから、発表する」

 

「……………」

 

「筆記はまぁ…甘めに見てやるから全教科50点以上。実技は普通ならここのOBと戦って評価を付けるんだが…お前は強いからな、特別に国から派遣されてきた人と戦ってもらう」

 

「……………」

 

「今日が7月9日月曜日、テストは7月16日月曜日から始まる。皆んなもう既に勉強中だから、取り敢えず今日は私が教えてやる」

 

「……………」

 

「ん?どうした?」

 

静かに布団の中へと潜る。

 

出来る訳がない……!!

 

ゲシッ!

 

誰かが布団を踏みつけている、朝倉ではない。

 

「竣、もし退学なんて事になったらただじゃおかないわぁ」

 

「!?」

 

ガバッと布団から出る。

 

ルシファーがいた。

 

「それだけ動けるなら平気ねぇ、それじゃ夜ご飯楽しみにしてるから」

 

一番のスパルタはルシファーかもしれない……

 

でもルシファーも心配してくれてわざわざ屋敷まで来てくれたのだ、やはり優しいのだろう。

 

 

 

「それじゃまずは……」

 

その数分後、布団の上に教科書を広げ朝倉先生による特別授業が始まった。

7/11(水) テストまで後5日

 

しっかり歩けるほどに回復したので、数日ぶりの自宅へと戻る。

お世話になった人たちに挨拶に行き、最後にメイドさんの元へ。

 

「メイドさん!」

 

庭で水やりをしていた所に話しかける。

 

「あら、お帰りになるのですね?元気になったようで何よりです」

 

「ありがとうございます、何から何まで」

 

竣が風呂にも行けないくらい動けない時、体を拭いてくれたのもこの人だった。

トイレに行く時もこの人に支えになってもらったりもした。

 

「良いのです、前にも言ったでしょう?子供はヤンチャするものって」

 

「はい……あ、そう言えばあなたの名前は?」

 

「名乗るほどじゃないのですけど……夜空…」

 

「え?」

 

「ふふ、変な名前でしょう?」

 

恥ずかしそうに笑う。

竣は確かにこの人なら夜空が似合うと思った。

 

「似合ってますよ、夜空さん」

 

「…ありがとうね」

 

夜空さんに別れを告げて家へと帰る。

 

 

「ただいまー!」

 

家では先にラファエル達が掃除など家事をこなしていた。

何か手伝いたかったが、そこまで体力がないのと、テスト勉強をしなくてはいけないので無理であった。

 

「今日は先輩教えられないから、自分でやらなきゃな…」

 

机に向かうがどうも集中力がない。

ラファエルは頭は良いが、こちらの教科書の内容が出来る訳ではない。

 

日が落ち始め、ぼーっとし始めた時、ピンポーンとベルが鳴った。

下でラファエル達が応対しているのだろうか、気になったので下へ降りようとしたら部屋のドアをノックされる。

 

「竣さん、西蓮という方が用があるって来ましたよ」

 

「さ、西蓮!?」

 

ドアを開けると本当に西蓮がいた。

ラファエルはごゆっくりどうぞといって下へ降りて行った。

 

「な、なんでうちに?」

 

「勉強を教えに来ましたわ」

 

「西蓮が?」

 

「はい」

 

「それまた一体どうして?」

 

「貴方に退学されては困るからです」

 

「待て、どこでその情報仕入れた?」

 

「私の情報網は広いのですわ」

 

バレているのなら仕方ない。

大人しく勉強を教えてもらう事にする。

 

「それじゃあ…」

 

西蓮の教え方は上手だった、

朝倉よりスパルタじゃないので心も余裕があった。

朝倉と西蓮によって範囲の半分を何とか頭に詰め込むことが出来ている。

 

西蓮は夜の8時過ぎに家に帰って行った。

今度何かお返しをしなきゃと言ったが、帰り際に結構ですわと断られた。

如何してもというのなら、またお茶を点てに来てくださいな。との事だった。

喜んで行かせてもらうおう。

 

 

学校へと行けるようになったのはテスト3日前の7/13。

 

授業開始のチャイムが鳴るが、生徒は3分の2しかきていなかった。

 

「なぁ星崎」

 

「ん?」

 

「なんで来てない生徒が居るんだ?」

 

「だってテスト前だもん、家で勉強したほうが捗るって人もいるんだよ」

 

「あーそっか…なるほど」

 

 

うーんそれにしても眠い。

 

3時間目からどんどん睡魔が襲ってくる。

 

 

「竣君」

 

不意に後ろから突かれる。

 

「どうした?」

 

眠たい目をこすりながら後ろの星崎に向かう。

 

「次の時間体育でしょ?今日はペアになってタッグバトルするらしいの、だから一緒にやりたいなって」

 

「そうなのか、もちろん良いよ」

 

「良かった、ありがとう!」

 

「それじゃ、4時間目になったら起こして」

 

「え!?」

 

星崎が驚いてるのを尻目にスヤスヤと夢の中へ足を踏み入れた。

 

 

4時間目

 

「よし、では2人組を作れー!」

 

体育の先生が合図する。

今日は登校人数が少ないため男女一緒に体育をやる。

それを目当てにしている男子もいるのだが。

 

そして相変わらず西蓮は人気だった。

それに今日は高坂も登校していた。何かするのではと気になっていたが、とても大人しい。

 

「逆に怖いな…」

 

「ど、どうしたの?」

 

「え?あ、なんでもない」

 

声に出すほど考えていたのか、今はタッグバトルに集中だ。

 

 

「作ったなー、では本日の相手を紹介する。来てくれ!」

 

すると校舎の方から数人の3年生が出てきた。

 

周囲から3年生と!?嘘でしょ。と言った困惑の声が聞こえてくる。

 

「何、実技テストの練習と考えれば良い。3年生、本気は出すなよ?」

 

へーいと気の抜けた返事も聞こえる中、3年生の中に見覚えのあるやつを見かける。

相手もこちらに気づいたようだ。

 

「あ!てめぇ!」

 

随分前、朝絡んできたので勝負をし完膚なきまでに叩きのめした相手だった。

今は横に女子を連れている。

 

「お前は俺たちと勝負だ、良いな?」

 

「良いですよ」

 

数組がタッグバトルを終え、遂に竣たちの番に。

 

「頑張ろうな星崎」

 

「うん!」

 

2人は待っている間いろいろ作戦を練っていた。

 

 

「それでは、始め!」

 

 

「よっしゃ〜こないだの仕返しだ!」

 

横にいた女子が急に脱ぎ始める。

 

周囲の男子がおおぉぉぉぉと歓声をあげる。

 

「油断してんじゃねーぞ!」

 

竣の背後に回っていた男は拳を突き出す。

 

「甘いです!」

 

しかしさらに先回りをした星崎がバリアを張りダメージを防ぐ。

 

「チッ、だが…」

 

竣と自分との間に入ってきた星崎こそが狙い。

 

「てめぇは弱いんだよなぁ!」

 

「!?」

 

 

星崎は咄嗟に竣にくっ付き、悪足搔きの光を放つ。

 

「無駄無駄!」

 

光の中から星崎の髪の毛を掴み地面に押し倒す。

そのまま上からのし掛かり、パンチを食らわす。

 

「ぐっ!」

 

反抗的な目で睨み返す。

 

「イライラさせてくれんじゃねーか、へっ」

 

嫌な笑いをしながら星崎の胸に触れる。

 

「!」

 

「おらっ!」

 

触った瞬間に再び殴る。

卑怯極まりないが確実に動揺させダメージを加えられる。

 

 

 

 

「それが星崎ならな」

 

 

 

「………………は?」

 

 

 

声に聞き覚えがあった。

曽谷だ。

 

今目の前にいるのは、星崎の体をした曽谷…!

 

慌てて男が飛び退く。

 

星崎(竣)は起き上がると嫌悪感に満ちた顔で言う。

 

「男に胸触られるなんて気持ち悪いったらありゃしないですよ。なのでお返しに先輩の胸も触らせて下さい」

 

「…な、なに言ってんだよ………お、おい!」

 

と言った瞬間、胸の部分に拳の感触がした。

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

「竣君、それは触るというより殴るだよ」

 

 

 

竣(星崎)が言う。

 

拳は男の胸にめり込み衝撃波が体を突き抜け背中から抜けていった。

 

「ごはっ!」

 

男は血を吐きながら地面へ倒れる。

 

「右胸ですから大丈夫ですよ、先輩」

 

もう既に竣の姿へと戻っていた曽谷が男を見下ろす。

 

「俺に勝ちたいのなら、もっと綺麗な手で攻めて下さいね」

 

男の意識はそこで無くなった。

 

 

 

 

「まさか作戦失敗するなんて!」

 

残った女が慌てたように言う。

ちなみに全裸ではない、服は脱いだが下に水着を着ていた。

 

「先輩、凄い良い体ですね…ちょっと見させて下さいっ!」

 

星崎が目を輝かせながら女に近づく。

 

「へっ?え、あ、うん」

 

褒められたのを満更でも無いと感じたのか、星崎のボディタッチを許す。

 

「あの!先輩!もっとスベスベな肌になりたく無いですか?」

 

「そんな方法あるの!?」

 

「はいっ!」

 

そう言って肌に魔術をかける。

 

「それっ!」

 

 

 

 

「ぎゃあぁあぁぁぁぁいだいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

星崎は電撃魔法を唱えた、しかも直接肌に。

 

 

 

「星崎、それじゃあスベスベじゃなくてコゲコゲだ」

 

 

 

体からピリピリ発している女を見下ろしながら星崎は言う。

 

「先輩、色仕掛け失敗ですね!くふふ」

 

星崎の黒い笑いが見れた、女って恐ろしい。

 

 

「そこまで!」

 

担架で運ばれる2人。

 

「お疲れ星崎、決まったな」

 

「うん!すっごい気持ち良い!」

 

2人は興奮冷めやらぬ中、他の人たちの戦いを見ていた。

7/16のテストまで残り1日となった。

 

「良し、今日は今までやった事を詰めるぞ」

 

放課後、生徒会室に残り朝倉と2人で勉強会が開かれていた。

 

_______________

 

夏なので日はなかなか沈まない。

時計を見ると6時半を指していた。

 

「この位で良いだろう、後は家で復習するように」

 

「はい、ありがとうございます。先輩」

 

「私が教えたんだ、ちゃんとノルマを達成しろよ?」

 

「もちろんです、退学になるのも嫌ですし」

 

「それじゃあ帰って良いぞ、私はまだ仕事がある」

 

「分かりました、失礼します」

 

お辞儀をして、生徒会室を出る。

 

 

 

校門を出る。

 

「おいでミカエル」

 

誰もいないのに急に言う。

すると後ろから飛びついて来る。

 

「うわっ!」

 

よろけるも転ばないように踏ん張る。

 

「もう木に隠れても分かるぞ」

 

横に並びながら、ミカエルは鼻をこすりながらへへへっと笑う。

 

「もっと気配消さないとな」

 

「難しいよー」

 

「また修行しような」

 

「うん!」

 

最近はテストに追われてテストは愚か、体育の時以外体をほとんど動かせていない。

 

 

「ただいまー!」

 

「お帰りー!」

 

ガブリエルとすっかり元気になったアヴァロンがお迎えしてくれた。

 

「明日テストだから、今からまた勉強しなきゃ」

 

「えー竣君、全然遊んでくれない」

 

ねー。とアヴァロンとうなづき合うガブリエル。

するとリビングからエプロン姿のラファエルが出てきて。

 

「竣さんお帰りなさい、ガブリエル我慢しないとですよ?」

 

「ただいま」

 

「はーい、アヴァロンさっきの続きしよー!」

 

そう言って2人で部屋に入って行った。

 

 

自分の部屋に入る。

机に座って教科書やノートやらを広げ、ワークを解いていく。

 

「………………」

 

みんなと会話すると落ち着く。

集中して出来ている。

 

 

のだが。

 

「ミ、ミカエル。いつまで一緒に居るつもり?」

 

「む……」

 

いつになく声が真剣なので、流石に退室しようかと迷っていた。

 

「はぁ…」

 

「ご、ごめんn「ほら、暇ならこの教科書でも読んでなよ。ベッド使って良いから」

 

「あっ…」

 

キョトンとした顔のミカエル、

教科書を大事そうに胸に抱えると少しずつ笑顔になっていき。

 

「ありがとう!竣君!」

 

そう言って抱きついて来る。

 

「おい!それさせない為に渡したんだろー!」

 

「わー!怒らないでー!」

 

タオルケットの中に入り丸くなる。

 

「全く…静かにしててな」

 

「はーい!」

 

再び集中して勉強を始めるのであった。

 

そして夜9時。

皆んなは夜ご飯を終えてお風呂に入り始めて居る頃、

竣と途中で夢の世界へ行ったミカエルは下に降りて遅めの夕飯を食べる。

 

「ミカエル、あの内容分かったのか?」

 

「うーん…天使界にも同じような考え方はあるから感覚的には分かったよ!」

 

「そうなのか、流石大聖天使。知識は豊富だね」

 

「えっへん!」

 

ご機嫌なミカエルと共に食べ進めて、食べ終わり食器を片付ける。

キッチンではラファエルが洗い物をして居る途中だった。

 

「ラファエル、手伝おうか?最近何も出来てないし…」

 

「大丈夫ですよ、竣さんは退学にならないように勉強して下さい」

 

「そうか…ごめんな、それとありがとう」

 

「ふふ、あ。その食器はそこに置いておいて下さい」

 

「分かった、テスト終わったら沢山手伝うからな」

 

「はいっ、待ってます」

 

リビングに戻るとミカエルがウトウトしていた。

 

「ミカエルー起きてー、風呂入らないとだろー」

 

「うぅん…眠い…」

 

「汚い天使は嫌いだなー」

 

「!?」ガバッ

 

「入る!」

 

大急ぎで風呂場へと入る。

 

「あ、ガブリエル入ってたんだ。わ!ガブリエル少し胸大きくなった?」

 

「え!本当かな!」

 

「ちょっと鏡見てみなよ、ほら!」

 

「うーん…本当に少しだけ大きくなったような…?」

 

リビングまで聞こえて来る、下手したら外まで聞こえてしまう。

 

「そう言う話を大きな声でするなー!」

 

「「ごめんなさーい!」」

 

竣が痺れを切らし一括する。

なんだかんだテスト前の張り詰めた空気を和ませてくれるのである。

 

 

テスト当日の朝。

 

「それじゃあ、今日は筆記だから。頑張ってくる!」

 

「頑張れ竣君!」「ふぁいとー!」「美味しいご飯作って待ってますから」

 

それぞれに見送られて学校へと歩みを進める。

 

 

 

「それでは、試験開始!」

 

そして筆記テストが始まった。

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