「えっ?どうして俺の名前を?」
「分かりますよ、私の目は特別なのです」
「目?」
じぃーっとアラミスの目を見つめる
アラミスは恥ずかしがる事も嫌がる事もなく、
竣を真っ直ぐに見つめ返す
その目に吸い込まれそうになり慌てて目をそらす
「ふふ、私の勝ちですね」
「えっ?」
「竣さん、先に目をそらしました」
そう言って、クスクスと笑うアラミス
こんな笑い方も出来るんだ____
少し親近感が湧いた竣。思い切って今の事を説明しようとした
しかしそれをアラミスは制する
「全て分かります、貴方の目でね」
「そ、そうなんだ…!」
「今すぐ、ダルタニアンの所に行かなくては行けませんね」
「うん、でも先に行った皆んなとはかなり距離が離れてて…」
アラミスは全く問題ないといった表情で
その部屋の奥へ行き、1つの鏡の前に立つ。
「これは?」
「これは、我々聖杯を護る3人とダルタニアンに与えられた…いわば連絡通路みたいなものです」
そこで、竣は少し疑問を感じる
時間はないが気になってしまったので、
取り敢えず聞いてみることにする。
「何故今、ダルタニアンと3人を分けて言ったの?」
「…………………」
「アラミス?」
アラミスは喋るべきか迷っていた
しかし先程見た、竣の真摯な瞳。それを信じてみようと思った。
「………ダルタニアンは…後から加えられたのです」
「後から?」
「元々は聖杯の鍵となる3つを我々三銃士が護っていました、しかしある時。我々に護る命を与えてくださった方が1人の女の子を連れてきたのです」
竣はてっきり、ダルタニアンは男だと思っていたので驚いていた。
アラミスはそのまま話し続けた。
「それがダルタニアン。彼女は気弱で戦闘力も低く、我々3人とは気も馬も合いませんでした。特に、ポルトスとは……一応、ダルタニアンにも連絡通路は与えられたのですが、それをポルトスは使えなくしてしまったのです」
「ポルトスが…」
「彼はあの方に説明します、3人で十分だと。しかし、あの方はこうなる事を予想していたのでしょうか、絶対にダルタニアンを引き下げることはしませんでした」
「だから……3人とダルタニアンには壁みたいなものがあるんだね…」
「はい……ですが私はそこまで彼女を嫌っては居ません。今こそ協力するべき時だと判断しました」
そう言うと、鏡に片手を付ける。
そして目を閉じる。するとアラミスの周りを不思議なオーラが包み込む
鏡が波打つ、するとアラミスは竣の腕を掴む。そしてそのまま鏡の中へ入って行く
橘達はあと少しでダルタニアンの居る場所へ着くという時、
向こうの方で衝撃音を感じ取る
「もしかして…!」
「もう始まっているな、戦いが」
朝倉は冷静な目で衝撃音の元を見ていた
「い、行きましょう!」
「そうね!!」
4人は急いでダルタニアンの元へと駆けつける
そこには、神威とボロボロのダルタニアンが睨み合っていた。
「…………来たか」
神威が振り向く
その凄まじい殺気と覇気に橘や星崎は気弱な気持ちになってしまう
朝倉やルシファーも気弱にはならなくとも、
少なからずこの戦いが苦戦するものだと感じている。
「貴女がダルタニアン?」
ボロボロになっている女の子に聞く橘
するとか細い声で彼女は返してきた
「そうです…」
すると橘の後ろにいた朝倉がボソッと呟く
「思ったより臆病な性格だな」
確かにと、橘も思った。
これでは、守れるものも守れないのでは?
そう感じていた時、不意にダルタニアンがソワソワし始める
「………早く殺して欲しいんだな」
神威は更にダルタニアンに躙り寄る
ダルタニアンはそれに合わせ一歩二歩後ろに下がる
「………くる……誰か来る……」
誰か来る______
そう聞こえた橘、ダルタニアンにどこから来るのかを聴き返した
「それはどこから来るの!」
「……………か、鏡…」
「鏡?」
周りをキョロキョロしてみるが一切鏡などない
一瞬橘はこの子が妄想癖や幻覚を見ているのではと思えてしまった
しかし慌ててその考えを頭から消し去る。
橘は誰にでも公平に、先入観無しに人を見るのがモットーだからだ。
「何もしないなら殺すぞ」
神威が痺れを切らせたように剣を構える
金色の剣で神威が力を込めると光を放ち始めた
「……………………」
ダルタニアンは怯えて腰を抜かしてしまい
喋ることも忘れてただ恐怖に慄いている。
「聖杯は俺のものだ」
そう言ってダルタニアンに剣を振り上げる
「待ちなさい!!」
橘や珍しく声を上げた朝倉の制止を聞くわけもなく、
剣は振り下ろされる
「…………………ふぇ?」
しかしその剣はダルタニアンを切り裂いては居なかった
「……………ふん、来たのか」
「ああ、お前を倒しにな!」
神威の剣をすんでのところで止めたのは竣
両手にはそれぞれ一本の剣を持って、それをクロスさせ神威の攻撃を止めていた
「二刀流……」
橘たちはどうやってここまで来たのか、
そして何故神威の一撃を止めるほどの力を持ったのか、
そして_______
「あれは誰だ?」
どうやら、朝倉も同じ考えだったようだ。
竣の後ろから現れた翠眼の女性は誰_?
誰かに似ているような、そんな気がしていた。
「………………あ、アラミス…」
なんとか声を振り絞り翠眼の女性に話しかける
「ダルタニアン……」
アラミスはダルタニアンを心配はしていたが、
複雑な事情もあって、なんとも言えない表情をしていた。
「ではまず、貴様から殺してやろう」
「やれるものならな」
一方で、
少し引いたところで神威と竣は睨み合う
竣は、二刀流。
神威にも情報はなく、どのような戦い方をするのか見極める必要があった
「行くぞっ!」
2つの剣を構えながら、神威の懐へ突っ込む
「戦い方は同じか……」
そう判断した神威は、
多少落胆しつつ軽々と避けようとした。
しかし神威の足が地面に着いた時、自分の手が凄まじい衝撃で麻痺を起こしていることに気づく
「な…に?」
「…………ふっ」
側では竣が誇らしげに笑っている
一体何をしたのか、想像するには固くは無かった。
「衝撃と同時に衝撃で生じた衝撃波を手に浴びせた、そんなところか」
しかし攻撃の原理は分かったとしても、
どうやってこれほどの力が出せるのか。
そこが全く想像出来なかった、悔しいが神威は竣にこの事を聞くことにした。
「何故だ、何故これほどの力を…」
「さぁ?なんでかな……」
竣の挑発的な笑みに神威は殺意を剥き出しにする
「へぇ、凄い殺気だね」
全く動じていない。
神威は気づく、力が強くなったのではない。
物事を冷静に見る力が急激に上がったのだと、
力はあっても臨機応変に物事に対応させなければ相手に効果的なダメージは与えられない、
誰かが竣に冷静になる事を教えたのだ。
「気づいたか?」
「……ああ」
「俺に冷静になること、物事を眼と心で見ることを教えてくれたのは。アラミスさ」
神威がふとアラミスを見ると、
ダルタニアンに駆け寄り何か話していた
するとたちまち、ダルタニアンの顔に安堵の表情が伺えた
「………標的変更」
「そうはさせない!」
しかし殺気を剥き出しにした神威の攻撃はそう簡単に凌なかった
鍔迫り合いになるが、少しずつアラミスの方へ押されていくのを感じとる
こんな時こそ冷静に。
竣は慌てることなくこの事態をどう回避するか_______
考えた末に。
「はっ!」
「…!」
敢えて抵抗するのをやめた
誰もがアラミス達がやられてしまうと思ったが。
神威は竣との鍔迫り合いの勢いを殺しきれず、
足踏みをして踏みとどまるもアラミスを通り越し、
壁ギリギリまで飛んできていた
ルシファーはその行動に驚く
「中々考えたわね、竣」
竣がまた1つ強くなったことに満足するルシファー
この竣とならある事を任せられるとそう考えていた。
「……やはり貴様を先に殺すべきか」
神威はやはり驚異的な伸びを見せている、
竣を先に始末することに決めた
「かかって来い!」
竣も刀を構え攻撃に備える
そして神威が竣に向かって攻撃を仕掛けてきた
しかし竣は神威の攻撃方法が変わっていることに気づいた
刀を振り上げるでも構えるでもなく、
ただ手に持っているのだ
何を考えているのか理解出来ない竣
冷静に考えても理解不能な行動だった
もう考えている暇はない
目の前まで神威が迫ってきた
後先考えず刀を振りかざし、刀を構えてすらいない神威に攻撃をしようとした
「待ちなさい!」
不意に上の方からルシファーの声が聞こえる
しかし踏みとどまる事は出来ない、
こんなチャンスを無駄に出来るわけない。
「…………ふっ」
ルシファーは気付いていた、
神威の本当の目的に。しかしそれももう遅い。
神威の懐に攻撃を加える瞬間、
神威が笑った、そんな気がした
「……まずい!」
笑った意味がようやく分かった
神威は元々俺を攻撃するなんて考えていなかったのだ、
もちろん竣の攻撃を受けることになるが、
それを踏まえた上で優先させたかったこと。
それは____ダルタニアンを始末する事。
神威は刀を後ろに投げ、
アラミスと共にいる、無防備なダルタニアンを殺そうとしたのだ
竣は神威が邪魔になり、ダルタニアンがどうなったか。
それを見る事は出来なかった、
とにかく神威に攻撃を当て向こうの壁まで吹き飛ばした。
その後急いでダルタニアンの方を見ると______
神威がこちらに刀を投げてきたのが見えた。
咄嗟に考える、
今助かるべきなのは私なのか?
それとも…彼女なのかと……
答えは決まっていた、
彼女はその答えに沿うように自分の体を動かした。
「……………ア…アラミス…」
左胸に突き刺さった刀。
神威が投げた刀は、
完璧なまでにアラミスの心臓を貫いていた。
登場人物
曽谷竣
ルシファー
星崎涼子
鴨居京太/神威
橘美沙
朝倉唯湖
アラミス
ダルタニアン