曽谷竣 聖杯獲得
ルシファー
星崎涼子
鴨居京太/神威(死亡)
橘美沙
朝倉唯湖
アラミス(死亡)
ダルタニアン
星崎はもう冷たくなってしまったアラミスを抱きかかえていた。
「守ってやれませんでした……」
そう言うと静かに涙を流し始める
「あなたのせいじゃないわよ、私達が守れなかったの」
そう言って橘が星崎を励ましている。
その傍らでダルタニアンはまだ恐怖が消えていないのか、
怯えた表情でアラミスを見ている。
「中々強いんだな」
朝倉はルシファーに近づきながら言う
するとルシファーは手を前に出して止まれと合図した
「ん?」
なんだと思い、ルシファーが見ている方向を見るとそこには2つの光が見えていた。
そう、神威の中から出てきた上半身と下半身だ。
光はルシファーの元へと近づいてくる
「あなたたちの在るべきところはここじゃないわ、彼よ」
そうルシファーが言うと、
2つの光はいとも簡単に進路を変え、気を失っていた竣の体へと入っていった
「何者なんだ…お前は…」
朝倉は心底驚いていた、
神威を軽々倒せるほどの力を持ち、
そう簡単に変えることのできないことも変えてしまう。
不思議であるが、一歩間違えれば全てを変えれるほどの能力。
ルシファーはまさに不思議な存在であった。
「………んん……」
竣は光によって、目を覚ましていた。
傷は癒えていないが、なんとか歩ける位にはなっていた。
「お疲れさま」
朝倉が竣に励ましの言葉をかける
すると、竣はにこりと笑いつつ
「先輩もお疲れさまでした」
と、返した。
事はもう終わったかと思ったが、
肝心な事が残っていたのだ。
一行がアラミスを抱えて、かつていた場所へ戻ろうとした時、
竣が突然走りだしのだ。
走り出したというよりは、何かに引き寄せられるように……
「うわわわわわぁっ!」
「何が起こってるの!?」
橘があたふたしている。
その横で星崎も何事かと思い慌てていた。
竣は真っ直ぐに聖杯の元へと駆けていく。
「こ、これって…」
聖杯に着いた竣。
すると聖杯が光始める、
それを見ていたダルタニアン。
再び怯えるように声を発する。
「復活…する………!」
「復活?誰が?」
朝倉がそう聞き返す。
「………あ、あ……ドラゴンが……」
一同は聞きなれないといった表情だったが、
ルシファーだけは何か思い当たる節があるようだ。
そうしている間にも、
一行がいる場所が大きく揺れ始める。
すると壁だと思われていた一面が、半分から真っ二つに割れた。
そしてそこから出てきたのは…
「……龍…!」
出てきたのは龍であった。
赤いオーラを纏った龍。
龍は少しの間全く動きを起こさなかったが、
不意の瞬間、竣めがけて飛びかかってきた。
スピードは桁違いであった、
そしてその突風とともに瓦礫がルシファー達に飛んでくる。
ルシファー達は竣を助ける事もままならず、
瓦礫の処理に追われていた。
「……来る…!」
龍の狙いが自分だと悟った竣。
仲間を巻き込むわけにはいかない、
真っ向から迎え撃つことにした。
「………………」
深呼吸をし精神を整える。
次の瞬間、龍は竣に突進し、
そのまま反対の壁を突き破り森林を突っ切って行ってしまう。
龍の口先に食らいついている竣。
凄まじいスピードなので、風も凄く身動きを取る事が出来なかった。
しかしこのまま何もしなかったら、いつか山などにぶつかって死んでしまう。
一か八か持っていた刀を龍の皮膚に突き立てる。
「………………っ!」
キィィィン!
そんな音を立てて、刀は真っ二つに折れてしまった。
その様子を見ていたのか、
龍は突然口を大きく開けると竣を飲み込もうとした。
「……………させるか…!」
抵抗して閉まる口を押さえて、
外に飛び出ようとするがもう力が残っていなかった。
ルシファー達は唖然としていたが、
急いで竣の元へ追いかけようとしていた時だった。
向こうの方から再び大きな音が聞こえる。
何かが風を切り裂く音……そう、龍だ。
「戻ってきたの…?」
特殊な装置を構えながら橘は言う
星崎も魔法の杖を構え、既に臨戦態勢だ。
龍はこちらに突っ込んでくるかと思われたが、
そんな様子は全くなかった。
橘達のいる前で止まりゆっくりとこちらに進んでくる。
そんな時、ルシファーと朝倉は龍の口からなにやら布が落ちるのを見つけた。
朝倉がその布を取りに行く。
しかしそれを龍が見ていた。
橘は朝倉が龍が攻撃する気だと気付いてない事に気付く。
「会長!攻撃されます!」
声を張って朝倉に伝えるが、
朝倉はその布を見て全く動かなかった。
龍の尻尾が朝倉の頭上めがけて振り下ろされる。
橘と星崎は既に攻撃をする態勢に入っていた。
龍の尻尾は朝倉の頭を捉えることは無かった。
朝倉の周囲には紫色のバリアが張られている。
そう、ルシファーが張ったバリアだ。
「あなた、私が助けに来ると思って?」
ルシファーが呆れたように朝倉に話しかける。
「…………それもあるかもしれないな……でも。今はあいつの攻撃食らっても死なない気がしたんだ。いや死ねない、絶対に。」
「まぁ、何でも良いわ。それよりその布は何?」
「これか………これはな。可愛い私の弟のものだ」
ルシファーにはそれが誰を指すのかが分かった。
そしてその弟に当たるのは____
「竣の……形見ってわけ…」
橘と星崎も竣がどうなったのか、それが分かってしまった。
いや、はなっから分かってはいたが、分かりたく無かったのだ。
そして、橘は朝倉とルシファーから何やら悍ましい何かを感じ取っていた。
「……………ふふ」
2人は不敵に笑う。
喜びの笑いではない、狂気の笑いだ。
そんな2人の龍を見る眼は、
憤怒と憎悪に満ちていた。
「……………返せ」
静かに朝倉が龍に問いかける。
しかし龍は何も答えない。
すると朝倉は龍に近づいていき
「返せ。」
少し強い口調で龍に訴えた。
龍は朝倉を見てはいるが全く聞く耳を持たないようであった。
すると今度は、右手を構えながら
「返せと言っているんだ!!」
滅多に出さない大声で龍に命令した。
そしてそのまま右手を龍の胴体に殴りつける
頑丈な龍の体。
その程度ではビクともしなかった。
「くっ………」
すると後ろからルシファーも近寄ってきて
「……………」
無言で龍に触れる。
「………グゥ!?」
すると龍が初めて異変を示した。
ルシファーが手を離すと、
そこには焼けただれたような跡が残っていた。
「良いかしら、全身こうなりたくないならさっさと彼を返しなさぁい」
龍の目の前でルシファーが命令している。
2人とも竣を返して欲しいという気持ちは一緒なのだ。
しかし朝倉はコンプレックスを感じていた。
ルシファーにはあって、朝倉には無いもの。
それは_______力だ。
「良いわ、全身焼け爛れにしてあげる」
ルシファーがそういうのが聞こえた。
「私もやる。許せないんだ、力の無い自分が」
「勝手にしなさぁい」
2人の怒り。
それは彼を奪われた怒り、
そして非力であった己への怒り。
「………………………」
冷んやりしている。
ここは体の中。
ふと倒れている彼の頬に
より冷んやりした感触が伝わる。
「……………ん」
彼はその感触で目を覚ます。
「………………」
その彼の前には、1人の少女が立っていた。
「……………君は?」
目の前の少女に問いかける
そう、龍に飲み込まれた竣は食べられた訳ではない。
ただ、飲み込まれただけなのだ。
「……………………」
少女は口を動かして何かを伝えようとしているが、
何も聞こえてはこなかった。
「………………………」
しかし少女が次に話しかけた時、
その声は竣の元へ聞こえていた。
それも耳に聞こえたのではなく、心に脳に直接聞こえているのだ。
「……一体…どうやって…!それに……俺は!」
混乱する竣をジッと見つめる少女。
少女の声は次々に脳へと流れ込んでくる。
「私の名前はアヴァロン…古に龍に飲み込まれたものの、外に出る事も叶わず死ぬ事も叶わず、このような冷たき場所で生きながらえた。何百年も喋らないせいで、声帯は退化し声はほとんど出ないわ。けれど、直接脳に訴えかけることができる能力を見出したの、ただしこれは聖杯を目覚めさせた者にのみ有効な能力」
「………………」
少女の言うことを一つ残さず、しっかりと聞いている竣。
自然と開いた口もふさがっていた。
「貴方の前にも2人、ここへ来た者が居た。しかし1人は邪悪の心に満ちていたためすぐ様龍の気によって消滅。もう1人は聖杯の力を手に入れた後、邪に染まり聖杯の力を制御できなくなり消滅。これから分かること、貴方がもし悪しき心を持つのなら聖杯を手にするのはやめた方が良い」
少女の語りが止まったところで、
竣は一つ疑問をぶつける。
「もし俺が聖杯を手にするのをやめたら…君はどうなるの?またその中で何十年、何百年も人を待ち続けるの?」
少女はこくりとうなづく
すると竣は決意を固めた表情で少女に言った
「ならもう答えは決まってる。聖杯を手に入れて君ごと外に出る!」
少女は少し驚いたような表情をしたが、
その後すぐに何やら口を動かした。しかしそれは脳内には流れてこない
「なんて言っ……!!」
そう聞く前に、少女から赤いオーラが放たれる。
そして竣は気づいた、彼女が本体なのだと。
そして少女が再び竣の両頬を触る。
すると、竣の中に冷たい何かが流れるのを感じた。
「………………力を留めておくには長すぎた。本当はもっと温かいものだった」
それと同時にそのような事が脳内に流れてきた。
そして次の瞬間には、
竣は龍の口から吐き出されていたのだ。
龍に幾度となく攻撃を加える2人。
ルシファーの攻撃でさえ、中々芯に当たる事がなかった。
「くっ………」
暫くするうちに朝倉が息を乱し始めた。
それもそのはず、戦い始めてから既に30分以上は経っている。
しかも普段とは違い、怒りに任せた攻撃。
攻撃力は上がるがその分消費する体力も激しい。
「あら、もう息切れ?」
ルシファーは涼しげな顔で、龍に攻撃を加え続けていた。
中々、攻撃が当たらず、当たったとしても大したダメージにもならないイラつき、
そしてルシファーとの圧倒的な攻撃力、体力、スピードの差。
それが朝倉の思考を狂わせた。
「うるさいな…貴様と私では違うんだよ」
その言葉を聞いた橘は、
青ざめた顔で星崎に抱きついた
「ど、どうしたんですかっ?」
「あ、あ、あ、あの喋り方……まずいわ……会長の第二人格が……」
「だ、第二人格?」
橘は怯えながら、星崎に少しずつ会長の過去について語り始めた。
「か、会長…今は冷静でお淑やかで、それでいて運動も勉学も出来る。優等生だけれど、昔は違ったのよ。昔は毎日外で遊んでは怪我をして帰ってきたような元気な子。よく周りからは男の子とからかわれていたらしいわ」
「それが第二人格と何の関係が…?」
「良いから聞いて。それから少し経った時、会長が小学2年生の時。会長はある男の子を好きになったの。そしてある時その子に告白したのよ、そしたらもっと女らしくなったら良いよって言われたらしいの、そこから会長は女らしく生きるようにしたわけ、そして1年ほど経ったくらいにまたその子に告白したのよ」
そして次の瞬間、橘から衝撃の事実が伝えられる。
「その子は…」
あ、本当に女らしくしたんだ_______
そう言って彼は笑った。
私を馬鹿にするかのような笑いで。
悪いけど、付き合う気はないから。それじゃあ________
私は何も言えなかった。
好きな事を我慢して女らしく生活した1年。
女らしくが分からず、苦労して生活した1年。
それが一瞬で無駄になった。
「会長の不幸はそれだけじゃない…」
翌日、3年2組の教室のドアを開けた私。
するとクラスにいた皆んなが私を見てにやついたりヒソヒソ話をしたりしている。
そして、近くにいた男子が私に話しかけてきた。
なぁ、お前前田に好かれるために女らしくしたんだって?_________
ははははは!お前最高のバカ女だな!__________
クラス中が笑いの渦に包まれる。
お前気付かなかったのか?前田、その時付き合ってた奴いるんだぜ?_________
知らなかった……
付き合ってるなんて前田君から言われてない。
じゃあどうして…………
「じゃあどうして女らしくなったら良いなんて言ったの」
自然と口に出ていた。
するとその男子が代わりに答えた。
そんなの一つしかないだろ?お前は__________
遊ばれたんだよ____________
気付いた時には目の前に立っていた男子は、
肩を押さえうずくまっていた。
ふと手を見ると、自分の手にはハサミが握られていた。
床にも手にも血がベッタリと付いていた。
クラスにいた子達は、
パニックで逃げ出すもの、驚いて腰を抜かしてしまうもの。
その場で泣き出してしまうもの。様々だった。
そんな様子を見てポツリと幼き朝倉は呟く。
「…………ふざけるなよ……貴様ら……」
「という訳なのよ、だからその時に第二人格ができてしまったの…全く女を弄んだ最低な奴よ!会長はそんな奴のせいで1年も辛い日々を送ってきたって言うのに!」
と、橘は自分の事のように怒っている。
「じゃあ、朝倉先輩の第二人格が出るきっかけって何なんでしょうか?」
「多分、かなり大きな感情の起伏よ」
「そうですか…!だから!」
「そう、今会長はルシファーとの差だったり竣を助けられなかったイラつきで感情が不安定になっていたのよ」
朝倉は、普段こそ冷静でいられる分。
自分が冷静でなくなった時、平常時まで戻す術に対しては他人より劣っている。
そう説明した橘は、心配そうに朝倉を見ていた。
「なぁに?八つ当たりかしら?」
朝倉の言うことに冷静に対処するルシファー。
「そうかもな……なら、八つ当たり。させてもらう……よっ!」
朝倉は不意にかかと蹴りをルシファーに向けて仕掛ける
咄嗟に仕掛けられ流石のルシファーも少しばかり反応が遅れる。
ルシファーはこの時油断していた。
ただ普段の朝倉から想定する、八つ当たりが飛んできただけなのだと。
しかしその八つ当たりは想像以上のものであった。
「っ!」
かかと蹴りは想像以上に重い攻撃だった。
衝撃を受け止めきれる事が出来ず、3歩ほど後ずさりする。
「まだだ」
朝倉が次の攻撃を仕掛けようとした時。
龍の口から何かが飛び出すのが見えた。
朝倉もそれに気付いたようで、攻撃をやめ出てきたものを見て目を丸くしていた。
「し、竣……」
橘と星崎も竣に近づこうとした、
するとその時、竣を吐き出した龍がだんだんと白くなっていき、
やがてそのまま消えて行ってしまった。
竣の脳内にはアヴァロンの声が響く。
「龍は聖杯を受け渡す役目を終えて地に還っただけ、貴方が聖杯から離れた時再び復活するわ。それと今はもう私の本体はボロボロよ、だから一時的に貴方の精神に私の精神を介入させてもらうわ。問題はないわ、貴方と私は相性が良いみたいだから」
「分かった…じゃあ本体は……星崎!」
竣に名前を呼ばれた星崎
急いで竣の元へ駆けつける
「い、生きてたの!?」
「ああ、あとで説明する。今はこの子を預かっていてくれ」
「え?あ、うん!」
言われた通り、渡された細い体の少女を抱えて、
橘の元へと戻る。
既に2人にはダルタニアンと少女、2人を守る役目が課されていた。
次に竣はルシファーと朝倉の方を向き
そちらの方へ歩いて行った
「竣、生きていたのね」
ルシファーはとても嬉しそうな顔をしていた。
「うん、心配かけて悪かった」
竣もいつもより素直に、ルシファーに接していた。
やはり、2人の間には何か不思議なもので結ばれていた。
そして、竣が朝倉にも話しかけようとした時。
アヴァロンから再び声が聞こえる。
「彼女は今、普通の精神状態じゃないわ。詳しい事は分からないけれど、貴方が聖杯の力を試す良い機会」
「機会?戦えっていうのか?」
「そうでもしないと、今の彼女は止まらないと思うわ。力でぶつかってみて」
「分かった……」
しかし信じきれるわけもなく、
いつもの様に朝倉に近寄り声をかける。
普段通り朝倉は竣を見ていた。
「先輩、心配かけさs……っ!!」
しかし普段の先輩からは思いもしない様な速さでパンチが飛んできた
聖杯の力を使う暇もなく、まともに受け後ろにある木に背中を強打した。
「ぐっ…いてて……」
しかし思った以上に怪我は軽い
「これも聖杯の力よ」
そうアヴァロンが静かに言う。
ルシファーや橘達は、
竣が誰と話しているのか分からないので、
とても怪訝な顔をしていた。
しかし今それを説明している暇は無かった。
朝倉はそのまま詰め寄ってきて、竣を見下ろす。
「せ、先輩……?」
するとルシファーが竣に対して
「今の彼女に語りかけても無駄よ、完全に頭にきているわ」
「なっ……」
一体何があったというのか、
それを聞こうとしたが冷たく睨みつける朝倉の視線に、
その言葉が口から出てくる事は無かった。
「ね、言ったでしょ。今彼女に想いを伝えるなら力でぶつかるしかないわ」
アヴァロンもそう言ってきている。
迷った末、止むを得ず聖杯の力を出してみることにした。
「先輩……勝負です…!」
戦ってきて一度も勝った事はない。
いつも強さで言えば雲の上であった。
しかし自分の中にある聖杯の力、それがどこまでその差を縮めてくれるのか少し楽しみでもあった。
登場人物
曽谷竣 聖杯獲得 アヴァロンと意識共有
ルシファー
星崎涼子
鴨居京太/神威(死亡)
橘美沙
朝倉唯湖
アラミス(死亡)
ダルタニアン
実はこの部分は1年も前に書いたものなので、文章がおかしかったり拙過ぎる部分がありますが、温かい目で見て下さい。