その未来にあるもの   作:spirits77

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消化不良

「行きますよ!」

 

そう言うと竣は、

右手を天に翳しこう告げる

 

「行くぞ、アヴァロン」

 

それを聞いたルシファーが少し驚いた顔をして、

 

「貴方は…アヴァロンの力を得たのかしら?」

 

と尋ねてきた。

その言葉にコクリとだけうなづいた竣。

 

すると、

竣の周りを赤いオーラが包み始める。

 

「はぁっ!」

 

朝倉に対して正面から向かっていった

朝倉ももちろんその攻撃を受け流そうとしたのだが、

竣の攻撃は前方からでなく背後からの強烈な蹴りであった。

 

防御する事もままならず、

まともに受けた朝倉は先程竣が飛ばされた木へと激突していた。

 

「くっ……あり得ない…貴様何を…」

 

口から零れる血を拭きながら

立ち上がった朝倉が竣を睨みつけつつ問いかける。

しかし竣はそれには応えない、

さらに攻撃をたたみかけた。

 

ふらっと立ち上がった朝倉に、

高速で足払い。態勢を崩した朝倉の鳩尾に強烈なひざ蹴りを食らわせる

 

「げほっげほっ!……」

 

腹を抑えなかなか起き上がる事の出来ない朝倉。

既に第二人格は鳴りを潜め、

少しずついつもの性格へと戻ってきていた。

だが、竣はそれを気にする事なく攻撃を続ける。

 

四つん這いになり腹を抑えている朝倉の足を持ち、

上空へと放り投げる。

そして一層赤いオーラが増したかと思うと、

突風とともに放り投げた朝倉より上空へ。

そのまま両手を組み体をめいいっぱい反らす。

 

そして、放り投げられた朝倉が竣の元へと来た瞬間。

組んだ両手を振り下ろす。

ガッという鈍い音とともに、朝倉は地面へ叩きつけられた。

 

 

その様子を見ていた橘が止めに入った。

 

「もうやめなさい!!会長はもう平気なの!!」

 

両手を広げ地面に叩きつけられた朝倉を庇う姿勢をとる。

 

地上に降り立った竣

制止している橘前に立ち、拳を構える。

 

「た、戦うつもりなの…?」

 

流石の橘も少し不安の色が出てきていた。

このまま殴られれば1発で気を失う可能性もあるからだ。

 

竣はゆっくりと拳を後ろへ持って行き力を貯める。

 

「…………………」

 

殴られる、そう覚悟した橘だったが殴られる前にルシファーが竣に言う

 

「私と、戦いなさぁい」

 

今のルシファーはこう思っていた。

人間の中ではかなりの実力を持つ朝倉をたった数発で沈める力を持った竣なら、

久し振りに面白い戦いが出来るのではないかと。

 

ルシファーは、

神威との一戦で普段のぐうたらとした雰囲気より、

以前まとっていた戦いを好み力を求める雰囲気になっていた。

 

 

竣はその言葉を聞くと、

ルシファーに目線を移す

そして一瞬で目の前に移動すると右腕から強烈なパンチを繰り出す

 

「………………」

 

それを避けずに左頬で受けるルシファー

しかしビクともしていなかった。

 

「っ…………!」

 

驚いた竣。

すぐさま気を取り直し膝蹴りを鳩尾に食らわす。

 

「なかなか骨のある攻撃ね」

 

しかしその攻撃さえも涼しい顔で受け止めていた。

 

そしてルシファーは更に言った。

 

「今の貴方は消化不良なのよ、せっかく強い力を手に入れたのに試す相手があぁも弱かったら、つまらないでしょ?」

 

「なっ!」

 

それを聞いた橘がルシファーを睨みつけるが

それを受け流すか如く無視をした。

 

 

未だに起き上がる気配のない朝倉。

意識こそあるものの体が言う事を聞いてくれないのだ。

そんな朝倉を心配そうに橘が見守っていた。

 

 

そしてルシファーは言葉を続ける。

 

「だからこの私と戦うのが一番なのよ、まぁ勝たせる気はないけど」

 

と、勝ち誇ったように笑ったルシファー。

すると竣からにじみ出る赤いオーラが少しずつ質を増していく

 

「あら、綺麗な色になってきたじゃない」

 

少しずつ、

普通の赤色から澄んだ赤色へと変わっていくのであった。

それはもちろん、力もその分上昇している事になる。

 

 

 

「……………………」

 

そしてその様子を2人を守りつつ、

心配そうに遠くから見ていた星崎。

彼女の心の気がかりは1つ、また暴走をしてしまうのではないかという事だった。

 

「はぁぁっ!」

 

息を整え、再び攻撃に転じる竣

正面から行くと見せかけて、背後から攻撃を仕掛ける。

 

「甘いわ」

 

しかし背後から振るった拳は、

軽々とルシファーが差し出した手のひらに収まる。

そしてそのまま投げられ、頭から地面に落ちる

 

「ぐぅっ…」

 

痛みを感じる暇はない、

倒れこんだ姿勢から一気に体制を立て直し、

足払いを仕掛ける。

 

「つまらないわね」

 

しかしその足払い、

ルシファーがわざと出した左足によって受け止められる。

ルシファーの方にも少し衝撃が行ったが、

全く問題なし。代わりに受け止められた竣にはかなりの衝撃が足を襲った。

 

「少し本気を出させてもらうわ」

 

そう言うと、

まだ痺れて動けていない竣の右足を踏みつける。

 

「っ!!」

 

強烈な痛みに襲われ、必死にルシファーの足を動かそうとするがビクともしない。

 

「ぐぅ…うぐ……離せっ…!」

 

メキメキという音がしてきている、

そろそろ折れてしまうのではないか。その時だった

 

「ルシファーさん!もう止めて!」

 

遠くから見守っていた星崎が、

ダルタニアンとアヴァロンを抱えてやって来ていた。

 

「な、何してるの!離れなさい!!」

 

橘が星崎に向かって警告する。

 

「嫌です!これ以上曽谷君が傷つくのを見たくありません!!」

 

そう言って、橘の元へダルタニアンとアヴァロンを預けると、

ルシファーの目の前にいき、対峙する。

 

「邪魔しないでくれるかしらぁ?」

 

そう言うと更に力を強める。

 

「ぐあぁぁぁっ!!」

 

もう抵抗する力もなく、ただ痛みにもがいているだけであった。

 

「やめて!!」

 

我慢出来なくなった星崎。

非力なのは分かっているが今は何かしたかった。

魔法を発動しようとルシファーに向かって手を翳した。

 

その時ルシファーは心の中で、

これは利用出来る。そう思った。

何に利用するのかと言うと、更に彼の力を引き出すためのきっかけとして。

ただやり方は相手を気にしない本気の攻撃であったが。

 

「魔法を喰らいなさい!」

 

そう言って魔法を発動した星崎。

しかし発動したのが後か、

ルシファーの右足からの回し蹴りが星崎の体を捉える。

 

そのまま星崎は、

真横に生えていた木を何本も薙ぎ倒し、

かなり遠くの方まで飛ばされてしまった。

 

「……………そ……た…に…………く…ん………」

 

そして何本も先の木の根元で、

倒れこむ星崎。

意識が遠のく寸前まで、星崎は竣の事を気にしていた。

 

「………………っ……」

 

そしてそのまま目を閉じてしまった。

 

 

その様子を見ていた竣。

 

大きく目を見開き、

今起こった状況を理解する。

そしてそのままルシファーを睨みつけ

 

「お前……今何をした………」

 

ルシファーは竣の足を踏みつけたまま、

見下ろして話す。

 

「何って、邪魔だから消えてもらっただけよ」

 

そう言うと、ニヤリと人を嘲笑うような笑みを浮かべる。

ルシファーはこれで竣が怒り、さらなる力を出してくれると踏んでいた。

そしてその通り、竣から徐々に赤いオーラがまた滲み出てきていた。

 

竣は、

怒りとともに体の中に冷たい力が流れて来るのを感じた。

それと同時に脳裏にある事が思い浮かぶ。

そう、龍から吐き出される前に聞いた、

力をためておくには長すぎた_______と。

 

「………………ふふ」

 

不敵な笑みで起き上がる竣。

もちろん、星崎を攻撃したルシファーへの怒りはある。

だが、その尋常では無い程の怒りという負の想いが聖杯の力を狂わせる。

 

 

アヴァロンは前に言った。

邪に染まったものも居ると。

邪に染まれば聖杯の力を制御出来なくなり消滅してしまう、とも。

 

 

「あら、何がおかしいのかしら?」

 

その様子が気になり、

ルシファーは竣に対して問いかける。

 

「ふ………ふはははは」

 

すると竣は少し笑った後、

ルシファーを見据えてこう言った。

 

 

「素晴らしい。この力があれば、お前など5分もあれば倒せる」

 

 

竣の心は憎悪によって、邪に染まっていた。

力を求めた哀れな邪に。

しかし、邪になっても尚、聖杯の力を制御出来ているのは何故か。

それは簡単なこと、彼の精神の半分はアヴァロンなのだから。

彼女が彼から出る負の想いを制御し、何とか持ちこたえている。

 

そんな事とはつゆ知らず、竣は力を持ってしてルシファーをねじ伏せようと考えていた。

 

 

「ふっ!」

 

 

澄んだ赤いオーラをまとった竣が、

ルシファーに向かって右ストレート。

 

もちろん、ルシファーはそれを受け止めるが、

ルシファーの左手は一瞬にして痺れ、感覚がマヒしていた。

 

「!!」

 

流石のことに驚きを隠せないルシファー。

竣はニヤリと笑い、そのまま右足でヒザ蹴りを食らわす。

 

これが、初めてルシファーにダメージが入った瞬間だった。

少し苦悶の表情を浮かべたルシファーだったが、

すぐ様攻撃に転じる。

 

そのまま足を踏ん張り、

思いっきり頭突きを食らわす

 

「っ……中々荒々しい戦い方だな」

 

「でも、そのお陰であなたに少し隙ができたわ」

 

一瞬で間合いを詰め、鳩尾にパンチ。

怯んだところで小さめのレーザーを放つ

 

すると、竣が一言。

 

 

「待ってたよ……それを」

 

「それで良い……」

 

レーザーを避けることはしなかった、

ギリギリまで引きつけて、レーザーの出力。威力。色。様子。

それを観察したのだ。

 

「何がしたいのかしら?」

 

「まぁ見てろよ………はっ!」

 

竣が右手の人差し指を前に突き出すと、

そこから赤い光線が放たれる。

まさに、ルシファーの出した光線と同じ種類である。

 

「へぇ……凄いじゃない」

 

感嘆の声を漏らすルシファー。

自分の元へ来た光線を手で弾き飛ばす

 

「でも、威力は相当に低いわ」

 

そう言って距離を縮めてくる

 

「近距離が好きだな」

 

構えを取ろうとした竣たったが、

ついに力のバランスが崩れ始める。

負のオーラに飲み込まれないよう、アヴァロンが調整をしていたのだがそれももう限界。

どんどん制御が効かなくなって行く。

 

「くっ………」

 

「隙あり、ね」

 

そこにルシファーが回し蹴りを繰り出してきた、

体に言うことが効かず、防御が出来ない竣はそれを喰らってしまう。

 

反撃だ_________

 

竣の脳内でその声が聞こえた。

その直後、竣はオーラを爆発させる。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

あまりにも強い衝撃に、

ルシファーも数歩後退り。

朝倉やアヴァロンの本体、ダルタニアンを守っていた橘も必死に守っていたが、

衝撃波によって吹き飛ばされる。

 

辺り一帯が赤く染まる。

 

「…………………」

 

ルシファーは、そんな最中竣の眼を見た。

力は制御出来ず、

半ば暴走状態に入っていても尚。

変わることのない真っ直ぐな眼を。

 

 

オーラを爆発させた竣は、

そのまま気絶し、地面に倒れこんだ。

 

 

 

全てが終わった。

神威の暴走、聖杯の奪い合い。激動の数日間。

カレンダーは5月を指していた。

ダルタニアンは一時的に、朝倉の家で保護している。

崩壊した学園の復旧。

負傷した生徒はいるものの死者は出なかった。

 

竣は自宅で休養を取っている、

学園を復旧する為に朝倉や橘、星崎らは学園に赴いている。

そして、竣の家にはもう1人。

いや、2人。

 

「ちょっと飛んでくるわぁ…」

 

そう言いながら、窓を開けて飛び立ったルシファー。

 

「今の内に掃除しなきゃな」

 

そう言って立ち上がる竣。

まだ体の節々が痛い。

筋肉痛、関節痛、沢山の戦いの末貰った名誉の傷。

 

そんな竣を宥めるように口を開く

 

「あまり動かない方が良いと言っていた」

 

アヴァロンだ。

彼女はあの戦いの後、本体の体力を回復させ自分の意識を本体へと移したのだ。

まだ彼女も満足に動けないが、話せる位なら容易いことだ。

 

「一応な…リハビリも兼ねてだよ」

 

よいしょっと立ち上がった竣は、

2階へと上がっていきある部屋へ入った。

 

そう、ここは元々来客用の部屋だったのだが、

今ではルシファーの寝床として完全に私有化されている。

 

普段なら許すはずもないが、

今回の戦いのMVPはルシファーだ。

ルシファーが居なければ、竣は愚かあの場にいた全員死んでいただろう。

だから借りを返す。そういう意味で、部屋を貸しているのだ。

 

「あんまり埃はないな………ん?」

 

ふと、机の脇に手帳らしきものが置いてあるのを見つける。

手にとって中を開けてみると、

なにやら人間の文字ではない文字が書かれていた。

 

不思議に思い、

なんとなしにその文字を指でなぞってみた。

 

「?…………えっ!?」

 

すると、その文字が光を放ち始める。

 

呆気に取られてみていると、

窓を叩く音が聞こえた。

 

慌てて窓を見てみるとルシファーが開けろとジェスチャーしている、

急いで開けると、詰め寄ってきた。

 

「まさか、これに触ってないわよね?」

 

「………………さ、触っちゃった…」

 

するとルシファーはギロリと睨んで、

 

「仕方ないわ……行くしかないわね」

 

行く?______どこに?

 

その疑問をぶつける暇もなく、

ルシファーはなにやらメモを書くと、竣の腕を掴んだ。

そして目の前の何もない壁に向かって______

 

「ぶつかる!!」

 

 

アヴァロンが異変を感じ、竣の部屋に来た時にはもう遅し。

机の上に、しばらく竣を借りるというメモ書きだけが残されていた。

 

「皆んな…怒るよきっと…」

 

多少の憐れみを竣に向けつつ。

再び部屋を出た。

 

 

 

「…………………あれ?」

 

壁にぶつかると思い目を瞑った。

しかしぶつかる感触は無かった。

 

そして目を恐る恐る開いてみる。

 

すると、そこには_______

 

「な、なにここ!?」

 

ふと見ると、ルシファーはスタスタと歩き始めていた。

歩いていたルシファーは振り返ることなく、

 

「天使界よ、天界とも呼ばれているけど」

 

「へっ!?」

 

天使界____?

 

天使の世界_____?

 

じゃあ目の前にある大きな建物は___?

 

「ここは本堂。天使たちが沢山いるわ、竣はそこで待っているのよ」

 

「う。うん…」

 

と言っても、全く事態が掴めない。

本堂と呼ばれた、この大きな建物に入る気にもなれない…

 

すると、どこからか歌声が聞こえてきた______

 

 

 

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