カランカラン
「…あれ?亜矢香?」
「あ、店長さん、お疲れ様です。」
「ああ、お疲れ様。ごめんな、一人で店番やらしちゃって。」
「いえ、お客さんもいないことですし、特に問題は起きませんでしたよ。」
「そっかそっか。俺も隣座っていいか?」
「あ、すみません一人で退屈だったものですから…。」
「いいんだよ、一人で席に座って黄昏れるメイドさんもなかなか絵になってるぞ?」
「て、店長さんったら…何を言ってるんですか、もう。」
「はは、ごめんごめん。」
「でも、今日は夕陽が綺麗ですよね。」
「ああ、ちょうど午前中雨が降っていたからな。」
「?雨が降っていると夕陽が綺麗になるんですか?」
「ああ、よく聞かないか?雨上がりの夕方は夕陽が綺麗になるんだ。」
「初めて聞きました。何故なんでしょう?」
「さあ、なんでだろうな?」
「り、理由は知らないんですね…。」
「すまんな、耳年増なもんで。」
「それだと色んな意味が間違っています…。」
「?」
「そ、それにしても、本当に夕陽が綺麗ですね。」
「そうだな。」
「私、この時間帯が好きなんですよ。」
「ほう。
「私、学校ではこの時間帯によく一人で本を読んでいることが多かったんです。ちょうど、泉水さんと仲良くなる前ですね。」
「そうなのか。」
「窓際で夕陽を見ながら、一人本を捲る音だけが私の友達でしたね。」
「ふむ…。」
「それでも泉水さんと仲良くなってからはとても楽しくて騒がしい毎日です。」
「それはよかったじゃないか。ここでバイトすることになってから友達も増えたみたいだし。」
「そうですね、ここの人達は皆さん良い方たちです。でもまだ怜さんや薫子さんとお話しする時は多少緊張してしまいますが…。」
「はは、そうか。」
「はい。でも作品世界に行くようになってからは色んな衣装を着るようになって、毎日コスプレしてるようで楽しいですね。するのも見るのも。」
「まぁ、そうだな。毎週のようにいってるもんな。」
「この間のバニーガールは恥ずかしかったですけど…。」
「はは。でも作品世界以外でもコスプレしたりとかしないのか?そういうイベントとかで。」
「あ、はいたまにします。でもやはり仲間が少ないといいますか、ぼっちになってしまうので少し気後れはしてしまいますね。」
「たまに街中とかでもコスプレしてる人とか見るけどな。まだオタク文化が衰退していないいい証拠なんじゃないかと思ってるけど。」
「でも、街中で普通にコスプレしているのは、個人的にいただけないことかなって思います。
「ふむ?」
「コスプレというのはマナーや節度を持って行うのが大切です。異文化といいますか、非日常的なものですから。やはり免疫のない方はびっくりしてしまいますので。」
「まぁ、そんなものなのかな?」
「そうですよ。酢豚にパイナップルを入れるのと同じです。」
「俺別に嫌いじゃないんだけど。」
「そ、それは失礼しました…。」
「いやまぁ、言いたいことは分かるぞ?亜矢香はそういった気遣いのできる優しい子だからな。」
「そ、そんなことないです…えへへ。」
「あ、そうだごめん。買い出しの用事を忘れてたよ。亜矢香、一人でも大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫です、ねじうささんもいますし。」
「まぁ、そうだな。じゃあ行ってくる。」
「はい、お気を付けて。」フリフリ
バタン
「…ふぅ。」
「なんのため息ぴょん?」
「ふぁっ?!ね、ねじうささんいたんですか。」
「さっき亜矢香が自分で言ってたぴょん。」
「そ、そうですね。」
「で、なんのため息ぴょん?ちょっとお疲れぴょん?」
「い、いえ。ただ店長さんとお話しするのは一番緊張するというか何というかごにょごにょ…。」
「へぇ~、そういうことぴょんね~。」
「な、何ですか。」
「別になんでもないぴょん。」
「ていうかいるなら出てくればよかったじゃないですか?」
「そこは僕空気を読むうさぎぴょん。」
「…ならガチャでも空気読んでください…。」
「何か言ったぴょん?」
「…?何も言ってないですよ?」
「ならいいぴょん。」