「ちまり~…。」
「あ、はいどうしましたナオくん?」
「ボクに料理教えて~…。」
「え、それは構いませんが…どうしたんですか急に?」
「今日さ、ミナちゃんの誕生日でしょ?」
「そうですね、もちろん私も覚えてます。」
「ちまりは何か用意してるの?」
「はい、私は小さなワンホールのケーキを。既にお店の冷蔵庫に仕込んであります。」
「ボクもそういうことしたいんだよー!」
「ど、どうしたんですかホントに。」
「だってさ、いつもミナちゃんにお店の仕事とかコーヒーの汲み方とか教わっててさ。調理系に関しては全部任せきりなんだよ、誕生日くらい何か作ってあげたいじゃん。」
「そうですね…ミナちゃん料理得意ですもんね。」
「だから!今日くらいは何かつくーる!」
「い、いつになくナオくんが料理に気合いいっぱいです…しかも巻き舌で。」
「ボクにも作れる誕生日っぽいの、ないかな?」
「そうですね…うーん。ケーキといっても今日中に完成させるのは難しそうですし…。」
「作るだけだ日が変わりそうだもんね。」
「あ、じゃあ、ホットケーキはどうでしょうか?あれなら簡単ですよ!」
「ホットケーキかー…出来るかなボクに。」
「出来ます!大事なのは出来るか出来ないかじゃありません!やるかやらないかです!」
「ボクはやって出来るのが一番いいなぁ…。」
「そうと決まれば早速取りかかりましょう!キッチンへゴー!です!」
「おー!」
…
ガチャ
「…あれ?」
「あ、店長さん。お疲れ様です。」
「…南海?お疲れ。何してんだキッチンの入り口の前で…。」
「うふふ、店長さんちょっと静かに来てくれる?」
「?ああ。」
「中、覗いてみてほしいんよ。」
「なんだよ、何かあるのか?」
「ええからええから、ほら。」
「ふむ…どれ。」
キィ…
「はわわ、ナオくん!それお砂糖じゃなくてお塩ですー!」
「ご、ごめーんちまりー!もうボールに入れちゃったよぉー!」
「ま、まずいです、冷蔵庫の卵がもう残り一回分しか…。」
「て、店長にバレる前に買い出ししないと…、
」
「と、とりあえず、お塩入りのやつで焼く練習しましょう。フライパンを用意していただけますか?」
「うん、これだね。」
「ナオくんそれ中華鍋ですー!」
「あー!ごめーん!」
…
「…なんだあれは新手のコントか。」
「うふふ、かわええやろ二人とも。」
「何してんだあの二人、店のもの勝手に使ってるし全く…。」
「店長さん、今日何の日だか覚えてるやろか?」
「ん?ああもちろん。南海の誕生日だろ。」
「せや、だから多分あの二人ホットケーキ作ろうとしてくれてるみたいなんよ。」
「ああ、道理で…。」
「ちまちゃんはナオくんのお手伝いかな、微笑ましいわぁ。」
「驚かせようと思ってたのかな、ばればれだけど。」
「んーん、その気持ちだけでも嬉いんよ。」
「はは、そうだな。南海、おめでとう。」
「ありがとう、店長さん。」
…
「強火すぎですー!焦げちゃいますよぉー!」
「わー!ちまりこれどうやってひっくり返すのぉー?!」
「そそそそこのひっくり返すやつで下からすくいあげるんですー!」
「こ、こここれ?」
「ナオくんそれしゃもじですー!」
…
「…そろそろ助けた方がいいかな?」
「せ、せやな。今日キッチン使えなくなってまうし…。」
「ああ、南海は少し遅れて気づかないふりして入ってきたらどうだ?あの二人もサプライズしたかったみたいだし。」
「…ふふ、せやなぁ。今日くらいは、お世話される側にまわるのもありかもしれへんね?」
「誕生日は一年に一回だ、ばちは当たらんさ。」
「ふふ、ありがとう、店長さん。」