ワールドオブスピリットオンライン ――相棒は犬――   作:ヒタク

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二十二話 闘技大会 そして、選手紹介

「さて、いよいよこの日がやってきました! みなさん待望の闘技大会の日です! 今回は私、月金(ムーンゴールド)が司会を務めさせていただきます」

 

 闘技大会を行う為に作成されたというコロッセオの中央で月金が口火を切る。

 コロッセオには多くの人でにぎわい、皆思い思いに戦闘が始まるのを待っていた。

 

「前もってHPで告知していますが、今回の闘技大会は人数が多くなりすぎるのを防ぐためにランク6の称号スキルを持つ方だけに参加してもらうことになっています。しかし! 本日までに称号スキルを手に入れることが出来なかった方も嘆くことはありません! 称号スキルを得た方は我々運営が見込んだ方です! プレイヤースキルが突出している! あるいは根っからの研究気質! はたまた面白い行動を期待できるプレイヤー! そして、全てをひっくり返すジョーカー! 様々な称号スキルを得た方々がこの場に揃っています!」

 

 ここで一度月金は言葉を切り、周りを見渡す。

 この場に集まったプレイヤー達は14842人。一万人いるベータテストに当選したプレイヤーが、二人まで参加できる端末を通して参加していた。

 

 さらにWOSOを宣伝するために外部接続用インタフェースとして、NPC――観戦用インタフェースと呼ばれていた――も用意されている。この観戦用インタフェースは中のプレイヤー達と会話をすることこそ出来ないが、携帯端末を用いてある程度外部から操作がすることが出来、観戦用インタフェースの目から映った映像は現実世界で見ることも出来る。この数がおよそ四万人。合計五万五千人ほどの人々がコロッセオに収容され、ほぼすべての席が埋まっていた。

 

「観戦する皆さま方には臨場感あふれる映像をお楽しみいただけるようスキル≪映像投影≫を付与しています。このスキルは観戦用インタフェースも使えますので、ご安心ください」

 

 月金の言葉を聞いたプレイヤーや観戦用インタフェースは思い思いにスキル≪映像投影≫を使う。効果はコロッセオの中央を目の前に立体映像として映し出し、思考操作によって自由に拡大、視点の移動が行えるとのことだ。

 

「では、早速ですが今回の栄えある16人の選手を紹介いたしましょう。――まずはタイプ『剣』のプレイヤー『ルース』です!」

 

 月金がプレイヤーの名前を言った瞬間、コロッセオ中央の広場上空にプレイヤー『ルース』の映像が投影された。

 

「このプレイヤーは称号スキル『刀剣の担い手』を持っています。圧倒的な火力を誇り、ボスでも簡単に粉砕してしまうほどです! しかし、今回の闘技大会では皆が皆強敵ばかり! 今までのような簡単に倒れてくれるような敵がいない中、どんな戦いを繰り広げてくれるか非常に楽しみにさせてくれるプレイヤーです」

 

 歓声が沸きあがる。会場の至る所で「こいつが優勝するんじゃないか」といった旨の会話がなされていた。

 

「皆様! お待ちください! 先ほど紹介した『ルース』選手以外にも様々な選手が今大会には集まっています! そして何より、称号スキルには相性というものが存在しています」

 

 月金はそこで言葉を切る。

 月金の言葉が気になったのか、先ほどまで歓声で沸いていた会場が今では少しのざわめきを残すばかりで静まりつつあった。

 その様子に満足したのか、月金は満足気に頷くと言葉を続けた。

 

「まずは称号スキルのタイプについて説明しましょう。先ほど紹介しました『ルース』選手のタイプ『剣』。それ以外にも研究気質のものが得た称号スキルのタイプである『観測』。加えて突飛な行動を行う者たちに与えられた称号スキルのタイプである『ネタ』。そして、全てをひっくり返す可能性のあるプレイヤーに与えられた称号のタイプである『鬼』。これら四つの称号スキルのタイプが存在しています」

 

 月金が色々な称号スキルのタイプを紹介していく度に闘技場の中央上空にはプレイヤーを模した映像が浮かび上がる。

 

 大剣を持った剣士のようなプレイヤー。

 

 フラスコを持ったまるで科学者のようなプレイヤー。

 

 ピエロのような恰好をしているプレイヤー。

 

 そして、最後の姿は鬼面の映像が浮かび上がり、プレイヤーの姿が現れない。

 称号スキルのタイプを表している映像にもかかわらず、タイプ『鬼』はいったいどんなタイプか、観客たちにはわからなかった。

 

「タイプ『剣』のプレイヤーは強力なスキルを所持しています! その力は他のタイプに追随を許さないでしょう! タイプ『ネタ』が持つ特殊スキルをものともしないタイプとなっています!」

 

 映像の剣士がピエロへ斬りかかり、ピエロは必死に逃げている。観客が映像を見ていると先ほどまで動いていなかった科学者が剣士の前に立ちふさがった。

 剣士は何故か斬りかかるのを戸惑うかのような動きをしている。

 

「タイプ『剣』といえども万能ではありません! その強大な力はタイプ『観測』の前では意味を成さないでしょう! タイプ『観測』は通常の攻略とは異なり、データを観測し、観測し尽くした者が得た称号です! 攻撃パターンからどんな攻撃か読み、それに対する対応を即座に考え付く。そんな者たちにかかれば攻撃だけのタイプ『剣』を攻略することは容易いでしょう! その研究から得られた情報は計り知れないほどであり、ぶっちゃけ私達よりも詳しかったりします!」

 

 あまりにもあんまりな月金の言葉に思わず、笑いをこぼす観客に呆れを覚える観客。

 そんな人々の考えを気にすることなく、月金は続けた。

 

「しかし! タイプ『観測』にも弱点はあります! それはタイプ『ネタ』です!」

 

 空中に投影されている映像がまた動く。先ほどまで科学者の後ろに隠れていたピエロが立ち上がった。

 

「タイプ『ネタ』は枠にとらわれない存在です! このタイプの称号を持っているプレイヤーはどんな動きをするのか全く読めません! その特殊な動きや攻撃に翻弄され、タイプ『観測』のプレイヤーは大いに苦戦を強いられることは間違いないでしょう!」

 

 映像のピエロが攻撃をすると思ったのか、科学者は身構える。しかし、ピエロは何故か唐突にボールを取り出すとジャグリングを始めた。映像の科学者はそんなピエロの様子を見て困惑しているようだった。

 そして、そんな科学者とピエロの様子を見ていた剣士がまたもやピエロに対して攻撃を仕掛けようとして――鬼面が現れた。

 

「さて、みなさんは先ほどまでのタイプを聞き、大いに思ったことでしょう! それはすなわち――タイプ『鬼』とはどんなタイプなのか、と」

 

 映像の鬼面は先ほどまで争っていた三人に対し、何もしようとしていなかった。しかし、剣士、科学者、ピエロは鬼面に対して険しい表情を浮かべている。

 

「タイプ『鬼』は所謂ジョーカーというべき存在です! その力は他の称号スキルから見ても反則と言ってもいいレベルの強さを誇っています! どんなスキルなのかは実際に見てお楽しみください!」

 

 鬼面が三人を食らおうと大きく口を開く。そして、その口に三人が飲み込まれる――瞬間、映像は消えた。

 

「さて! 長らくタイプの説明をしてしまいましたが、改めて選手紹介の続きを行おうと思います!」

 

 続けて月金が紹介を始めた。

 

 

         ◇

 

 

「ヒカリちゃんの映像可愛かったね!」

「お姉ちゃん、カッコよかったよ!」

「……もう二人ともやめて……」

 

 リーンとミイが僕を褒めちぎる。映像が出てからずっとこの調子だ。正直、もう勘弁してほしい。中央に浮かぶ映像から逃げるように僕は身を縮めた。

 

「それより、ヒカリのタイプは『ネタ』なんだよな? そのスキルで本当に勝つことは出来るのか? 司会は『観測』に対しては大きな効果を持つなんて言っていたが、実際のところどうなんだ?」

 

 阿部が僕に問う。

 僕の持つ称号スキルである≪天使ちゃん≫は≪変身≫と≪変化≫の二つしかまだ技能がない。阿部の心配するようにこれでは闘技大会で勝ち残ることが出来るのか怪しい。……まあ、意表を突くだけなら簡単に出来そうではあるけど。

 

「実際に戦ってみないと分からないな。でも、かなり厳しい戦いになると思う」

「大丈夫だよ! お姉ちゃんには私があげたスキルがあるじゃない! 絶対に勝てるに決まっているよ!」

 

 ミイの励ますような言葉を聞いて少しだけ勇気が出てきた。

 

「ミイちゃんはもうヒカリちゃんにスキル譲渡していたんだね」

 

 リーンが言うように僕はミイからスキル譲渡を受けていた。

 スキル譲渡はルースと一緒にエクストラボスを倒した時に解放された機能だ。

 

 その機能は文字通り個人が持っているスキルを他人に渡すことが出来るようになる機能だった。かなり有用な機能なのだが、渡されたとしても強化されたレベルはそのままになることはなく、レベル1に戻ってしまうという欠点があった。そして、更にはもう一つ決定的な欠点もあった。スキルが特に重要なWOSOである以上、スキル譲渡が解放されたとはいっても制限が強いらしい。

 

 僕は闘技大会に出ると言うこともあり、ミイからスキル≪絆≫と≪獣人化≫を受け取っていた。……本当は≪ブラッシング≫のスキルを貰ってスキル合成で強化したか……げふんげふん。

 

「どうせなら俺のスキルも渡しておこうか?」

「それなら私のスキルも使ってよ!」

 

 阿部とリーンもまた僕にスキルを渡してくれようとする。

 

「すまないが、二人からスキルを受け取ることは出来ないんだ」

 

 本当ならありがたく受け取りたいが、スキル譲渡の欠点のために受け取ることが出来ない。その理由を僕は二人に伝えた。スキル譲渡には渡すことが出来るコストみないなものが存在しているということを。

 

「なるほど。ミイちゃんのスキル≪獣人化≫と≪絆≫は両方ともランク5だもんね。スキル譲渡の制限であるコスト10をその二つだけで満たしちゃうか」

 

 リーンが残念そうに言う。

 

「仕様なら渡せないのは仕方がないな。それじゃ、俺はヒカリの為に武器や防具でも作るか。……まだ時間はあるか?」

「ああ、大丈夫だ。まだ時間はある。実は闘技大会の参加者は前もって何試合目に戦うかを伝えられているんだ。それによると僕は第六試合になっている。まだ時間はあるからよろしく頼む」

「任せておけ」

 

 今までもいい装備を作ってくれていたんだ。きっと今回もまた強力な装備を作ってくれるに違いない。阿部の言葉に期待するとしようじゃないか。

 

「あれ? お姉ちゃんの試合ってもう第六試合だって決まっていたんだ。相手は誰なの?」

「そこは運営からのメールには書いてなかったんだ。きっとそろそろ表示されるだろう――」

 

 僕が言い終わる時に丁度空中へトーナメント表が表示された。

 

 

第一試合

スサノオ(タイプ:鬼)vs勇者ああああ(タイプ:剣)

 

 

第二試合

変態紳士(タイプ:ネタ)vs月読命(タイプ:ネタ)

 

 

第三試合

割れなかったコロンブスの卵(観測)vs筋肉魔法使い(タイプ:剣)

 

 

第四試合

村人A(タイプ:観測)vsレオナルド(タイプ:観測)

 

 

第五試合

ルース(タイプ:剣)vs残像剣(タイプ:観測)

 

 

第六試合

ヒカリ(タイプ:ネタ)vs異能ただ高(タイプ:観測)

 

 

第七試合

アマテラス(タイプ:剣)vsもふもふ?もふっもふっ!(ネタ)

 

 

第八試合

緑茶に砂糖(タイプ:ネタ)vsチョコレートの密売人(タイプ:剣)

 

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