さよならジョジョ先生―改稿版―   作:パラレル。

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第弐拾話 糸色望と2のへ組その①

「パンドラの箱」。

その中には災いが入っているという箱で、『触れてはいけないもの』や『知ってはいけないもの』として今日でも使われる一種の慣用句である。

つまり、望たちの『秘密』をこれから知る承太郎たち五人は“そいつ”に触れることになるわけだ。

 

 

現在8時50分。約束の9時より少々早く「糸色医院」についた5人であった。

昨日の騒動で疲れが出てもおかしくないのに不思議とそんな気にならなかった。どうしても『秘密』を知りたくて、おちおち寝ていられないからだ。

「糸色医院」は今、シャッターで閉じられていて、入り口の扉が見当たらない。辺りも奇妙なほどに殺風景だった。

 

 

やがて、固く閉じられていたシャッターが開き、中から男性が出てきた。

その男性は医師らしく白衣を着ており、メガネをかけていて、その容姿は糸色望に似ていた。

 

 

「お前・・・望・・・なのか?」

「ナルシソ・アナスイさん・・・ですよね。残念ながら私は望ではありません。その兄の糸色命(いとしきみこと)と言います」

 

 

出てきた男が望と似ていたので目を丸くしたアナスイは確認するが、彼は望ではなく、その兄で医院を営んでいる命だった。

自己紹介ついでに5人全員に名刺を渡す命。その名刺を見てちょこんと置いてあるものの名前を言うような心情でエルメェスは呟いた。

 

 

「糸・・・・・色・・・・・命??・・・『絶命』??」

「『絶っっ・・・・・命』・・・・・・・・うおあああああああああああああああああああああ!!!だから私の医院は流行らないんだよッ!!周りがこんな殺風景な空気を出してるのもそのせいだぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!」ドスン ドスン ドスン

「先生!!落ち着いてください!!」

 

 

エルメェスの呟きで半狂乱になって壁に頭突きする命。それを見て近くにいた看護婦はそんな命を止めにはいった。

五人全員がデジャブのようなものを感じて、「ああ・・・兄弟なんだな・・・やっぱ」と思った後、ようやく落ち着いた命が話しかけてきた。

 

 

「アハハハハ。いや~~~~お見苦しいところを見せてしまいましたねぇ~~~。安心してください。“こういう”のは慣れっこなので・・・」

「いや・・・あの・・・なんだ・・・何ていうかその・・・あの・・・すまんな」

「いやいや。それより望が待っているのでどうぞあちらに・・・」

 

 

立ち直った命を見ていると、罪悪感というものが湧き出て、エルメェスは顔向けできず、謝った。

命は望が待っているからと話を打ち切り、承太郎たちを奥の通路へ案内した。

そして、五人は通路を進むが、その通路はすぐに行き止まりになっており、正面には巨大な絵が掛けられており、右側には診察室があった。

 

 

「診察室に入ればいいのでしょうか?」

「いえ。その必要はありません。入る部屋はそこではなく“ここ”ですから」

「えっ!?そこって・・・どういうことですか?」

「見れば分かりますよ」

 

 

診察室に頭だけ入れて、辺りを見渡すエンポリオだが、命に間違いを指摘され、かつ、巨大な絵に指を指してより多く頭の上にはてなマークが出た。

それをよそに命は絵の下側の額縁を両手で掴み、引き上げた。すると、大きさの割にたやすく引き上げられ、壁に組み込まれている何らかのセキュリティー装置があり、その装置にパスワードを入力して、胸元からカードを取り出してかざすと、セキュリティーが解除されて、壁の一部がドアとなり開門した。

入り口は妙に薄暗く、監視カメラも無数にあった。そしてそのまま下へ続いていた。

 

 

「この中です。足下に注意して明るい部屋がある階まで降りてください」

 

 

五人は命に従って降りるが、エルメェス、アナスイ、エンポリオは言葉にできないほど先程の出来事に仰天する。ただ、空条親子は全く動じなかったが・・・。

最前列に承太郎、最後列に命がいる状態で地下を何階か降りると明るい部屋があるので承太郎はそこに入る。

その中には多くの白衣を着た研究者らしい者がいて、最新精密機器の一式が配置されていた。

そして、その中の円形テーブルに置いてある紅茶を飲んでいる望がいた。

 

 

「午前9時・・・時間通りに来ましたね」

「ああ・・・なんせこれから『秘密』とやらを知るんだからな」

 

 

承太郎が来たことに気づいた望は腕時計を見た後イスに座り、カップを皿の上に戻した。

そして、承太郎が挑発的なセリフを言って、研究者たちは彼らの存在を初めて知覚して、自分がしていた仕事を中断して、五人に視線を向ける。

 

 

「みなさん。ご心配なく、私の客人です。速やかに持ち場に戻ってください」

 

 

気まずい空気になりかけたので、命は研究者たちの警戒を解かせた。それによって、張り詰められた空気が緩んで、研究者たちは自分の持ち場に戻った。

それを確認すると、命は五人を円形テーブルに招き入れ、席につかせて話し始めた。

 

 

「さてと、改めて言いますが、ようこそ。糸色医院の秘密の研究室へ」

「研究室ねぇ〜〜。よくそんなものをここに作れるねぇ〜〜」

「仕方ないですよ徐倫さん。ここで取り扱っているものは非常に“危険なもの”で、誰にも知られる訳にはいかないのですから」

「ほぉ。ではその“危険なもの”は何処にあるんだ?」

「あそこの・・・あのシェルターの中の棺に収監してあります」

「棺の・・・中だと・・・?」

 

 

命、徐倫、望、承太郎は会話の中に入り、『秘密』を共有し始める。そして、ここの研究対象の“危険なもの”が保管されているシェルターに彼ら全員は近付いた。

そのシェルターは近くに寄れば寄るほど迫力が増し、いかにも頑丈であることが理解できた。

 

 

「ふ〜〜〜む。悪いがシェルターを開けてくれないか?」

「えぇ、構いませんが皆さんはまずこれを着てください」

「ん!??手袋ッ??」

「そうです。これから見る“もの”は手袋なしでは見ることはできませんから」

 

 

承太郎がシェルターを開けるよう言った時、望は五人全員に手袋を渡したので、不思議に思う。望が正しければそれほど危険なので、この場には異様なムードが流れた。

やがて、厳重なセキュリティーチェックを受けて頑丈なシェルターが命によって開いた。そして、望と命の二人で中の棺を引っ張り出した。気がつくと辺りには研究者らはおらず、棺との距離を充分に空けて近づこうとはしなかった。

 

 

「よし・・・それでは中身を確認させてもらうぞ「お待ちください、承太郎さん」・・・なんだ・・・望・・・」

 

 

承太郎が棺を開けるためにふたに手を置いたとき、目つきが鋭く、どこか必死さが窺える望が待ったをかけた。

何故こんな時に中断させたのかと思っている承太郎は渋々望の言い分を聞いた。

 

 

「私はあなたたちを信頼しています。例え“彼女”を見ても決して悪用しないと・・・」

「“彼女”?どういうことだそれは?」

「我々にとって『悪用』が一番恐怖していることです。世界を乱世にしてしまうという“恐怖”が・・・」

「だからッ!!それがどういうことだって言っていやが・・・「ガラララン」・・・ッ!!?こ・・・こいつは・・・!??」

 

 

望の台詞がじれったく感じて、勢いよくふたを開けた承太郎は“その中身”に驚きを隠せなかった。他の四人も然りだ。

“その中身”は白い装束に包まれている15~16歳の“少女の遺体”が入っていた。

 

 

「そう・・・それが我々が必死に隠していたもの・・・“赤木杏(あかぎあん)さん”です」

ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

彼女を見て五人の誰もが口に手を覆った。あまりにも意外なものが入っていたので、しばらく口から手を外すことはできなかった。

 

 

「パルチェの言っていたことはまさか・・・“これ”のことだったとは・・・しかし、どうしてこんなことを・・・」

「論より証拠ですね。しばしお待ちを・・・」

 

 

以前パルチェが死ぬ間際に悟ったことがこれだと理解した徐倫だが、それと同時に何故彼女の遺体を保管する必要があるのかと言う疑問が浮上したが、そこは望が一つの瓶を用意して証明してくれた。

その中には1匹のゴキブリがいて、そのふたを取り、逆さにしてゴキブリを外に出して、杏の上に落とした。

 

 

グアブギャァァ!

「ゲ・・・!!?こ・・・こいつ“生きているのか”!??ゴキブリを・・・“取り込み”やがったぁぁぁぁあああ!!!」

「『スタンド能力』ッ!!明らかにこれは『スタンド能力』だッ!!」

 

 

杏の上にゴキブリを落とした途端、彼女の肉体自身がゴキブリに食らいついたのを見て、エルメェスは戦慄し、この現象をスタンド能力かと見なしたエンポリオ。

二人がそういったリアクションをしている間に、ゴキブリは彼女の肉体の中に消えてどこかに消えてしまった。

 

 

「そう。彼女に発現しているスタンド・・・名を“ヴードゥー・キングダム”と呼んでいるこの能力は生命ある物の肉体を食らうもののことです。そして能力の性質上、肉体は不死身と化し、永久に死なないのです。その証拠に私もそのスタンドを移植して完全なる不死身の体になっているのです」

「なるほど・・・そういうことだったって訳か・・・・・死んでも尚発現しているスタンドは聞いたことはあるが、実際見るのは初めてだ」

 

 

望のあり得ないほどの再生能力について理解できた承太郎は、初めて見るタイプのスタンドに好奇心が芽生えたが、ふと何かを思い出した。

否それだけじゃない。仰天のオンパレードだったため、忘れていたが根本的なことを思い出した。

 

 

「彼女の顔・・・・・どこかで見たことがあると思ったら・・・この顔、お前のスタンド“ミニット・エンジェル”に酷似しているじゃねぇか!!」

「・・・・・!!・・察しがいいですね承太郎さん」

「それに・・・根本的なこと・・・・・お前達が言う『計画』、彼女と一体どういう繋がりがあるんだ?お前らは何がしたいんだ?」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

あくまで重要なのは彼等が言う『計画』。赤木杏とへ組、そして、望。複雑に絡み合うそれらが何のためにどういう経緯で、何処へ向かうのか・・・・・そう言った核心に控えることなく触れる承太郎。果てしなく較べようのない空気の変化にびくつくことなく彼は慎重にメスを入れるように謎を解明させようとする。

 

 

「その話をするには十五年前まで遡る必要がありますよ。空条承太郎さん」

「・・・ッ!??誰だ!?お前は・・・」

 

 

望の口から語られそうな時に、入り口から聞いたことのない声が聞こえた。承太郎たちは振り返ると、そこには望に容姿と服装までよく似ているが、明らかに発しているオーラが違う男がいた。

それだけではなく、その彼の後ろに四人の男女が後からやってきた。その一人は髪や体を洗っていないのかフケや垢だらけの容姿で知的と思わせる眼鏡をかけた小汚い男性。もう一人は前述の男とは真反対で清潔感に溢れ、着物を綺麗に着飾っている大和撫子風の少女。そしてその彼女に付き添っている初老の執事。最後の人物は承太郎達も既に面識のある女性。

 

 

「え・・・(えにし)兄さん・・・それに(けい)兄さんに、時田(ときた)に、(りん)も・・・それに智恵先生まで・・・全く、何も全員来る必要はないでしょう・・・」

「バラすんですから今のうちがいいでしょう?糸色先生」

「そうですわよお兄様。抜け駆けは許しませんよ」

「ここにいる智恵先生以外全員初登場なのですぞ。後々出てきたら『あれ?誰だこいつ?』みたいなことは我々は避けたいのですよ」

「尤もな理由をつけるなら全員お前に協力しているだろう、望。伏線回収なんてまどろっこしいことは作者も疲れるし、忘れちゃうからいいんだよ」

「そういうことだ望。ここは我々のわがままを聞いてくれ」

「・・・仕方がないですね・・・」

 

 

少々説明するのがめんどくさいほどカオスになってしまったが、とにかく望の代わりに縁が重要な発言をしてくれた。

 

 

「十五年前だと・・・!??」

「そうです・・・私が当時高校入学して間もない時まで遡らなければなりません」

「一体何があったんだよ、おい・・・」

 

 

承太郎とエルメェスが驚きを隠せないほど昔のことを話すつもりの望。その時、彼の表情が哀しく見えていた。

そんな哀しき思い出を彼はまるで昨日のように鮮明に振り返っている。

 

 

 

 

 

 

15年前・・・1997年の春。

高校生になったばかりの望だが、早くも憂鬱になっていた。

それは受験のリバウンドの“燃え尽き症候群”ということではない。クラスでいじめられているということでもない。

それは・・・怪しげな部活に入ってしまったことで起こった。

 

 

「ネガティ部」

一時のテンションで入ったものの全てがネガティブなことをする後ろ向きな部活だったので、希望に満ちあふれていた望には痛恨の大打撃を受けてしまう。

やめようにも入部時にもらい、装着したポジティブなことを考えると孫悟空の禁箍児(きんこじ)のように締め付けるメガネが外れないので、強制的にネガティブにされ、やめられなくなってしまった。

そして追い打ちをかけるように“恋愛”というものに疎遠になってしまって、恋人ができているクラスメイトの大半と大きな差が生まれ、絶望の淵に立っていた。

しかし、神様は誰しもにも平等に幸せを与えてくださるようだ。“彼女”との出会いはそんな状態に耐えきれず、ついに発狂し、散り終えそうな桜通りを爆走していたときだ。

 

 

望は何か小さいものがその通りを横切ろうとしている時に出くわし、ぶつかって尻もちをついた。

尻もちをついた望はぶつかったものを確認すると、それは幼稚園生の少女だった。しかも仰向けに倒れていた。

その頭にたんこぶをつけている左の前髪に十字型の髪留めをつけた少女は起き上がると、目に涙を浮かべて泣きださずにただけろっと笑って彼に話した。

 

 

「えへへ。みんなとはぐれちゃった」

 

 

その澄んだ、闇を感じない声で望の何かが救われた。当時の望はそれが何なのかまでは知ることはできなかったが・・・。

とにかく、望はその名も知らぬ少女が気の毒に感じて、彼女の担任のもとに送らないといけないと思い、彼女を近くの空き家に連れて行って入った。

中には誰もいなかったが、幸い電気は通っているので電話をかけて迎いに来させようとする望。そこでその少女に何処の幼稚園かを聞こうと彼女を捜すと、ちょうどテレビの前にいた。

電源をつけてその番組を石のようにじっと見ている少女に話しかけようとした時、思わぬものを見てしまった。その番組では臨時ニュースが流れており、そのニュース内容が望の心臓の心房に至るまで硬直させた。

 

 

その内容は、幼女の失踪について取り上げられており、文京区のある幼稚園の園児―赤木杏(あかぎあん)―5才が昼にクラスの皆と散歩をしている間に姿が見えなくなってしまったというものだ。

それで捜索願を出して、警察が誘拐であることを前提として捜し回っていることを聞いた瞬間望は冷や汗をかきだして、がたがたと震えだした。そのニュースで出た幼女の顔とこの少女の顔とのが一致していたからだ。

つまり、その幼女を怪しげな家に連れ込んだ・・・どうあがいても誘拐犯としか思われないような状態であることを思い知って、これ以上事態が悪化しないように手を回すしかないと決意した。

 

 

早速、電話の受話器を取り、糸色財閥の信頼できる人員にかけて、一連の事件をなるべく穏便に済ませるように手配させて、彼女を無事に送り届けた。

一時はどうなるかと心配した望だが、何事もなく終わってほっとした。

しかし、その時の望は知らなかったし、見ていなかった。彼の去り際をその少女、杏が目をキラキラさせて、見つめていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれから10年の歳月が流れ、2007年、望が25歳のときだ。

からくもあの忌まわしきメガネをたたっ壊したが、あのときの癖が中々抜けず、そのせいで職にも就けず、途方に暮れていた。

なんとか親のすねで今までやって来られたとはいえそろそろ限界だろうと思いながら、必死に就職活動に励む望。

しかし、ここぞって時に癖のネガティブ思考が働きかけ、その機会を失っていた。

そろそろ彼のメンタルが耐えきれず、何もかもに絶望しかけて虚空を見ているときにとある少女の肩とぶつかって、彼女が持っていたビニール袋の中の本が散らかってしまった。

そこで望ははっと我に返って、彼女に謝りながらその本を拾い上げていると、その少女は突然くすっと笑い始めた。

 

 

「うははははは。デジャブですよ。デジャブ。幼い時にぶつかった人とあなた近いですよ」

 

 

突然何を言い出すかと思った望だが、彼女の顔を見てはっきりと思い出した。10年前の“あのこと”を。

何という皮肉、何という奇妙な運命。落とした本を取ろうとする望を全て見透かしているような眼でその少女、赤木杏は見つめていた。

 

 

15歳となった杏に奇跡的に再会した望はそれをからきりに町中で頻繁に彼女と出会うようになり、会いに行くようになった。

二人は会うと何気ない話や受験の話で盛り上がり、望にとってはいやな現実から隔絶してくれる気がしてとても楽しかった。

彼女は望とは正反対のポジティブな子であるため、彼のネガティブ発言を全てプラスにしてくれたので、彼は次第に彼女を女神のように思えてきて、尊敬を通り越した恋心のようなものも芽生え始めた。

 

 

そんでもって望は思い切って彼女に人生初のプロポーズをしたところ、何の拒絶もなく彼女は受け入れた。

それからしばらくして彼女の両親の耳にも入ったのか彼女の家に呼ばれた。汗が止まらなくなるほど緊張して望はやって来たが、予想外にも彼女との交際をあっさりと承諾してくれたので、望は内心奇妙と思いながらも話はとんとん拍子に進んでいった。

望と杏との交際は順風満帆であるように思われたがここである異変が起こる。

 

 

 

 

彼が誕生日を迎えた時、彼女のおごりで誕生日を喫茶店で祝った帰りに、彼女は咳をした。それも血を吐くほどだ。

それに仰天する望に大丈夫ですよと痩せ我慢をする杏だが、数歩歩いた瞬間倒れ込んだので、彼は119番を呼んだ。

杏が病院に運ばれたことを知ってやって来た両親に望は彼女のことをおそるおそる聞いた。両親の口は重たかったが、杏のパートナーとして話すべきだと思って彼女について話した。

 

 

実は彼女の左脳にはガンがあって、それに伴い合併症が発症して彼女の体を衰弱させた。

既に現代医術ではもう手の出しようがないほどの深刻なもので、余命は約半年と推測された。

だからせめて、両親は彼女の思うがままにやらせてあげた。望とつきあうのもその一つだ。

それを聞いた望は力がただ抜け、ずっと目を背けていた現実を思い知った。残酷な現実を。

それでも杏は前と何も変わらず前向きに生きていた。望からしてみると空元気をしているに他ならないと思っていたが――。

だが望はそんな彼女を受け入れた。自分を受け入れてくれたように、彼は彼女の望むことを全て叶えてやった。彼女の寿命の続く限り。

望は側にいた。どんな時でも・・・。彼女の笑顔を守るために・・・。

 

 

それが応えたのか医師達が予想していた月日を超え、彼女が行きたい高校の受験に受かり、卒業式に出席した。

既に3月末で彼女はガンを患っているとは思えないほど元気がいっぱいで年相応の若々しさがあった。

 

 

だが、運命って奴は彼女を幸せにはさせてくれなかった。

 

 

 

 

4月になって間もない頃入学前の準備をかねて二人は都会でデートをしていた。

そのところ日差しに弱くなった杏はつばあり帽子をかぶって望と練り歩いていた。

 

 

「これくらい私だけでもいけると思いますが・・・・・」

「大丈夫です。望さんと一緒なだけで心が落ち着くんです」

 

 

彼女の体の心配をする望だが、一緒にいると落ち着くと言われて少々赤面する。

そのとき電光掲示板の臨時ニュースにここより少し離れたところで強盗事件が発生したと報道され、物騒だなぁと二人は思った。

その後、横断歩道渡ろうとするときに杏は元気いっぱいに走り出して望より先に渡って、早く来るようにピョンピョン跳ねている。

やれやれと思った望は少し急ぎ足で渡っていると、ふとそよ風が吹いて、杏の帽子がさらわれて、望より後ろ数メートルの所の横断歩道に着地した。

まだ信号は点滅していないので望は早速彼女の帽子を取りに行った。

 

 

そして、帽子を拾い上げた瞬間、望は誰かに強く突き飛ばされて前のめりに倒れ、その直後に車と急ブレーキ音と何かがぶつかった鈍い音が聞こえた。

突き飛ばされた拍子にメガネを落としたので、それを拾い上げて後ろを確認すると、柵と標識にぶつかったワゴン車とその手前で血まみれになって倒れている赤木杏がいたのだった・・・・・。

 

 

 

 

To Be Continued・・・・・⇒

 




原作との辻褄を合わせながら作ったので、強引なところが多々あると思いますが、温かい目で見守ってください。

次回、まさかの「奴」がやってくる!?
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